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曲線と曲面の微分幾何 曲がり方を数で測る|武蔵野個別指導塾
円とらせんの曲率を計算し、円柱と球面の違いを第一基本形式から読み取ります。ガウス曲率と地図の歪みを結び、高校の微分・ベクトルから曲面の数学へ進む道筋を示します。

曲線と曲面の微分幾何 曲がり方を数で測る
屋台の行列は、どこで強く曲がっているのでしょうか
夏祭りの屋台の行列が、店先から通路の端へ伸びています。列の途中では人の向きが少しずつ変わり、曲がり角では隣の人との向きの違いが急に大きくなります。塾の講師として数学の話をするなら、「列が長いか」と「列が強く曲がっているか」を、まず別々に尋ねたいところです。長くてもほぼまっすぐな列もあれば、短い区間で大きく向きを変える列もあります。長さだけでは、形の特徴を言い表せません。
手元の会場案内図には、通路や屋台の位置が平面上に描かれています。ここでさらに問いを進めてみましょう。曲がった道の長さはどう計算するのでしょうか。地球のような球面を平らな地図に描くと、なぜ距離や角度のどこかに歪みが生じるのでしょうか。道の曲がり方と、道が載っている面そのものの曲がり方は、同じものなのでしょうか。
微分幾何は、こうした形の問題を微分積分と線形代数で扱います。微分で接線や接平面を取り出し、その向きの変化をさらに微分して曲がり方を測ります。積分は小さな長さや面積を足し合わせる役目を担います。高校で学ぶ接線の傾きが、空間の中を進む曲線や、球面上の距離を調べる道具へ広がっていくのです。
ただし、人が並ぶ列には途切れや鋭い角があります。ここでは形を滑らかな曲線として扱い、角のない部分の曲がり方を考えます。何を理想化し、どの条件のもとで式を使うかを明らかにすることも、大学数学への入口です。

接線の傾きから、移動する向きへ
高校数学の微分では、グラフ y=f(x) の点における接線の傾きを f′(x) で求めます。まず放物線 y=x² を使って、傾きと曲がり方の違いを確かめましょう。点を r(t)=(t,t²) と表すと、速度に当たるベクトルは r′(t)=(1,2t) です。t=0 では水平、t=1 では傾き 2 の接線になります。しかし、傾きが大きいことと強く曲がっていることは同じではありません。どんなに急な直線でも、進む向きは変化しないからです。
この曲線に沿って少し動いた距離を ds とすると、速度の大きさから ds/dt=√(1+4t²) となります。一方、接線が横軸となす角を θ とすれば、この例では θ=arctan(2t) と書けます。高校で扱う合成関数の微分を使うと、次の式が得られます。
dθ/dt=2/(1+4t²)
進む距離当たりの向きの変化は、時間に相当する t 当たりの変化を、距離の増え方で割って求めます。
dθ/ds=(dθ/dt)/(ds/dt)=2/((1+4t²)√(1+4t²))
この量の絶対値が平面曲線の曲率です。放物線の t=0 では 2、t=1 では 2/(5√5)≈0.178885 です。t=1 の方が接線は急ですが、単位距離当たりの向きの変化は小さくなっています。グラフを描くときに見ていた「右上がりか、右下がりか」に、別の測定の視点が加わったことになります。
ここには高校の複数の単元が集まっています。三角関数は接線の向きを表し、ベクトルは方向と大きさを分け、微分は変化率を調べます。積分を学べば、速度の大きさを足して弧長を求められます。大学の微分幾何では、これらを別々の計算として終えず、同じ形を説明するために組み合わせます。
また、すべての曲線が 1 つの関数 y=f(x) のグラフになるわけではありません。円では同じ x に対して上下の点があり、空間のらせんでは高さも変わります。そこで、点の位置を r(t)=(x(t),y(t),z(t)) と表す媒介変数表示を基本にします。t は時刻である必要はなく、曲線上の点に順番を付ける数と考えてかまいません。
同じ円をゆっくり一周しても速く一周しても、円そのものの形は変わりません。したがって曲がり方を測る数は、単なる速度の違いに左右されないように定義する必要があります。この要請から、曲線に沿った距離である弧長が重要になります。
曲率と基本形式で形を記述する
まず曲線の定義を整えます。区間 I から 3 次元のユークリッド空間 R³ への十分滑らかな写像 r:I→R³ が、すべての t∈I で r′(t)≠0 を満たすとき、正則曲線と呼びます。正則という条件は、接線の方向を速度ベクトルから決められることを保証します。曲線全体で自己交差がない、という意味ではありません。
r が閉区間 [a,b] 上で連続微分可能なら、その区間の弧長 L は次で定義されます。
L=∫ₐᵇ |r′(t)| dt
縦棒はベクトルの長さです。正則な曲線では、基準点からの弧長 s を媒介変数として使えます。このとき |dr/ds|=1 となり、単位接ベクトル T=dr/ds は進む向きだけを表します。曲率 κ は、弧長に対する単位接ベクトルの変化の大きさとして定義します。
κ=|dT/ds|
これが「単位距離を進む間に、向きがどれだけ変わるか」の正確な表現です。直線では T が一定なので κ=0 です。長さの単位を考えると、κ の単位は長さの逆数になります。大きな円ほど曲がり方が緩いという感覚は、円の曲率が半径の逆数になることに対応します。
κ>0 の区間では、主法線ベクトル N=(dT/ds)/κ を定義できます。さらに外積を使って従法線ベクトル B=T×N を定めると、T,N,B は互いに直交する単位ベクトルになります。捩率 τ は、この B がどれだけ回転するかを表す量で、次のように定義します。
τ=-(dB/ds)・N
記号「・」は内積です。曲率は非負ですが、捩率には符号があります。主法線や従法線をこの順序で定める約束のもとで、空間内のねじれ方を区別します。曲率が 0 の点ではこの方法による N が定義できないため、捩率の式もそのまま適用してはいけません。
次に曲面を考えます。平面 R² の開集合 U 上の滑らかな写像 X:U→R³ に対し、偏微分ベクトル Xᵤ=∂X/∂u と Xᵥ=∂X/∂v が各点で一次独立であるとき、X を正則な曲面の局所表示として使います。同じ点を重複して表す問題を避けるため、必要に応じて近傍を小さく取ります。一次独立という条件は、面を表しているつもりの式が線へつぶれていないことを意味します。
Xᵤ と Xᵥ の張る平面が接平面です。接ベクトル V=aXᵤ+bXᵥ の長さの 2 乗は、内積を展開すると次の形になります。
|V|²=Ea²+2Fab+Gb²
ここで E=Xᵤ・Xᵤ、F=Xᵤ・Xᵥ、G=Xᵥ・Xᵥ と置きました。この接ベクトルの内積を与える仕組みを第一基本形式と呼び、微小な距離の表現として I=E du²+2F du dv+G dv² と書きます。たとえば面上の道を u=u(t),v=v(t) と表すと、その速度の大きさは √(Eu′²+2Fu′v′+Gv′²) です。曲面の地図で道の長さを測るには、座標の差だけでなく、この係数が要ります。
正則性から EG-F²>0 であり、面積要素は dA=√(EG-F²) du dv となります。これは微小な座標の長方形が、空間内では Xᵤ と Xᵥ の張る平行四辺形になることから理解できます。面積は外積の大きさ |Xᵤ×Xᵥ| で決まり、その 2 乗が EG-F² なのです。
向きを 1 つ選んだ単位法線を n=(Xᵤ×Xᵥ)/|Xᵤ×Xᵥ| とします。第二基本形式は、曲面の二階微分のうち法線方向の成分から作る形式です。
II=e du²+2f du dv+g dv²
係数は e=Xᵤᵤ・n、f=Xᵤᵥ・n、g=Xᵥᵥ・n です。接方向へ進んだときに面が接平面からどれだけ離れていくかを測っています。この符号の約束では形作用素は S=-dn であり、その 2 つの固有値 κ₁,κ₂ を主曲率と呼びます。S は接平面上の自己共役な線形写像なので、主曲率は実数です。
ガウス曲率 K は主曲率の積として定義され、基本形式の係数では次のように書けます。
K=κ₁κ₂=(eg-f²)/(EG-F²)
法線を逆向きにすると第二基本形式と主曲率の符号はともに反転しますが、積 K は変わりません。第一基本形式は面に沿った測定、第二基本形式は空間内での曲がり方を記録します。この 2 種類の情報の関係が、微分幾何の中心的な問いになります。

円とらせん、円柱と球面を計算する
半径 R>0 の円を r(t)=(R cos t,R sin t,0) と表しましょう。速度の大きさは R なので、0≦t≦2π の弧長は 2πR です。単位接ベクトルは T=(-sin t,cos t,0) で、dT/ds=(1/R)dT/dt ですから、κ=1/R となります。円周という高校の公式と、曲率という新しい量が、同じ媒介変数表示から求まりました。
空間内の曲線として、a>0、b が実数のらせん r(t)=(a cos t,a sin t,bt) を考えます。速度の大きさは c=√(a²+b²) で一定です。この c を使うと、次のように計算できます。
T=(-a sin t,a cos t,b)/c
dT/ds=(-a cos t,-a sin t,0)/c²
したがって κ=a/c²=a/(a²+b²) です。さらに N=(-cos t,-sin t,0)、B=(b sin t,-b cos t,a)/c となり、B を弧長で微分すると dB/ds=-(b/c²)N です。定義から τ=b/(a²+b²) が得られます。a=2、b=1 なら κ=2/5、τ=1/5、1 回転の長さは 2π√5 です。b=0 にすれば半径 a の円に戻り、捩率も 0 になります。
ここで、フレネ=セレの公式を一般の曲線について述べておきます。弧長 s で表示された C³ 級の正則曲線で κ>0 が成り立つ区間では、先ほど定義した T,N,B,κ,τ に対し次の 3 式が成立します。
dT/ds=κN
dN/ds=-κT+τB
dB/ds=-τN
証明の要は、単位ベクトルの微分がそのベクトルと直交することです。T・T=1 を微分すれば 2T・(dT/ds)=0 となります。また T・N=0 を微分すると、T・(dN/ds)=-(dT/ds)・N=-κ です。これで中央の式の T 方向の係数が -κ と決まります。残る成分も直交関係と捩率の定義で定まり、式の符号まで理由を持って追えます。
次は円柱です。R>0 として、X(u,v)=(R cos u,R sin u,v) と置きます。u は円周方向の角度、v は高さです。ここでは Xᵤ×Xᵥ から外向き法線が得られ、計算結果は次のとおりです。
E=R², F=0, G=1, e=-R, f=0, g=0
したがって K=0 です。円周方向の主曲率は -1/R、高さ方向の主曲率は 0 なので、その積は 0 になります。円柱が目に見えて曲がっていることと、ガウス曲率が 0 であることは両立します。平面も K=0 ですから、K だけで空間内の見た目がすべて決まるわけではありません。
円柱の第一基本形式は I=R² du²+dv² です。ここで q=Ru と置けば I=dq²+dv² となり、平面の距離の式と一致します。円柱の一部分を縦に切って平らに広げるとき、伸び縮みなしで展開できる理由がこの式に表れています。ただし、円周を一周する座標をそのまま平面上の単一の座標とすることはできません。局所的な距離の一致と、面全体のつながり方は区別します。
球面はどうでしょうか。半径 R>0 の球面を、極を避けた領域で X(θ,φ)=(R sin θ cos φ,R sin θ sin φ,R cos θ) と表します。0<θ<π とし、φ も局所的な区間に取ります。外向き法線 n=X/R を使えば、次を得ます。
E=R², F=0, G=R² sin²θ
e=-R, f=0, g=-R sin²θ
これより K=1/R² です。主曲率は両方とも -1/R ですが、ガウス曲率は正です。極でこの表示が正則でなくなるのは座標の問題であり、球面が尖っているからではありません。別の座標を選べば極でも滑らかに扱えます。
ガウスの驚異の定理は、滑らかな正則曲面のガウス曲率が第一基本形式とその微分だけで決まる、という定理です。特に、滑らかな 2 つの曲面の間の局所微分同相が第一基本形式を保つなら、対応する点のガウス曲率は等しくなります。このように接ベクトルの内積を保つ写像を局所等長写像と呼びます。曲面を外から見た曲がり方で定義した K が、面に沿って測った距離の情報だけからわかる点が驚きなのです。
球面では K=1/R²、平面では K=0 です。そのため、球面の開いた一部分を平面へ移し、すべての接方向の長さを保つことはできません。円柱と球面の違いは、どちらも丸く見えるという印象ではなく、この不変量によって判定できます。
さらに、局所の曲率が面全体のつながり方に結び付くのがガウス=ボンネの定理です。滑らかなコンパクトで向き付け可能な境界のない曲面 M に対して、次が成り立ちます。
∫ₘ K dA=2πχ(M)
χ(M) はオイラー標数で、有限三角形分割の頂点数 V、辺数 E、面数 F を用いて χ(M)=V-E+F と定義できます。この値は三角形分割の選び方によらず決まります。ここでの E,F は数え上げの記号で、第一基本形式の係数とは別です。
球面では面積要素が R² sin θ dθ dφ なので、曲率との積では R² が打ち消し合います。θ を 0 から π、φ を 0 から 2π まで積分すると、全曲率は 4π です。一方、球面の三角形分割として四面体の表面と同じつながり方を使えば、χ=4-6+4=2 となり、定理の右辺も 4π です。半径を変えると点ごとの曲率と面積は変わりますが、その積分には形のつながり方を表す量が残ります。
曲がり方の研究は、測定の意味を問い直してきました
曲率の歴史を読むときには、現在の定義を過去へそのまま重ねるのではなく、何を測ろうとしていたのかに注目すると見通しがよくなります。曲線の接線を追う段階から、曲面で方向ごとに異なる曲がり方を調べる段階へ進むと、単に二階微分を計算するだけでは足りなくなります。曲面上には進む方向が無数にあるため、方向を変えたときの曲率を整理する仕組みが必要になるからです。
曲率という考えの発展を、ニュートンからガウスの驚異の定理までたどる歴史研究もあります(Bardini・Gianella, 2014)。この研究の題名に示された射程を学習の道案内にすると、「曲がって見える」という感覚が、微分を用いた量となり、さらに距離の情報から決まる不変量へ進む流れが見えてきます。先ほどの円と円柱の計算は、この違いを自分の手で確かめる小さな入口になります。
曲面の曲がり方を 1 つの数にまとめるだけなら、主曲率の和を使うことも積を使うことも考えられます。しかし、和と積は同じ性質を持ちません。主曲率の平均 H=(κ₁+κ₂)/2 は平均曲率と呼ばれ、円柱では外向き法線について H=-1/(2R) です。平面では H=0 なので、平面を円柱へ丸める操作で H は変わります。これに対し K は両方で 0 のままです。どの量を選ぶかによって、保存される情報も変わることがわかります。
驚異の定理が公表された後の受容を扱う研究では、フランス、イタリア、ドイツの同時代の数学者たちが、その内容の一部を捉え直し、曲面の問題に適した方法や技法をめぐって議論したことが分析されています(Cogliati, 2018)。完成した定理を 1 行で覚えるだけでは見えにくい、表現や手法を整える営みがあったわけです。
高校の計算では、座標をうまく選ぶことが解答を短くします。大学の幾何では、それに加えて、座標を取り替えても変わらない内容を取り出します。第一基本形式の E,F,G は座標によって変わりますが、それらが与える接ベクトルの長さは幾何学的な量です。球面の極で座標表示が崩れても球面自体は滑らかだという例は、式の見た目と対象の性質を切り分ける必要を教えてくれます。
この厳密化は、直感を捨てる作業ではありません。どの直感がどんな条件で正しいかを、計算と言葉で分ける作業です。紙を丸める実験からも、保存される長さ、変化する法線、変化しないガウス曲率という異なる観点を取り出せます。
平面の地図と三角形の模型で現れる曲率
地図の歪みを具体的に見るため、半径 R の球面で緯度を λ、経度を φ とします。極を避ければ、第一基本形式は次の形です。
I=R² dλ²+R² cos²λ dφ²
この式は θ=π/2-λ を先ほどの球面の式へ代入したものです。南北方向の微小な長さは R|dλ|、東西方向では R cos λ|dφ| になります。緯度が高くなるほど同じ経度差に対する実際の東西の距離が短くなることが、係数に表れています。
単純な平面図として x=Rφ、y=Rλ と置いてみましょう。平面側の距離の式は dx²+dy²=R² dφ²+R² dλ² です。南北方向の長さは一致しますが、東西方向の微小な長さは球面上に比べて 1/cos λ 倍になります。赤道では 1 倍、緯度 π/3、すなわち 60 度では 2 倍です。ここでいう倍率は、その点の東西方向における局所的な倍率であり、任意の 2 地点の直線距離が一律に 2 倍になるという意味ではありません。
面積にも違いが出ます。球面側の面積要素は R² cos λ dλ dφ ですが、この平面図では R² dλ dφ です。緯度 60 度では局所的な面積倍率も 2 になります。地図を読むときには、面積を比べたいのか、角度を見たいのか、特定の道の距離を知りたいのかを区別する必要があります。投影方法の選択は、どの測定を優先するかという数学的な設計でもあります。
驚異の定理が禁止するのは、球面の開領域で全方向の長さを同時に完全保存することです。ある線に沿う長さを合わせたり、角度を保ったりする地図まで禁止しているのではありません。また、小さな範囲では平面による近似が有用です。「完全には一致しない」と「実用上の近似が使えない」は別の判断です。
もう 1 つの接点は、曲面を三角形の集まりとして扱う計算です。コンピュータの中では、滑らかな面を有限個の頂点と面で表す場面があります。滑らかな面の定理をそのまま代入するのではなく、離散的な形に適した曲率の定義が必要です。驚異の定理を離散的な対象で扱う研究として、「The Discrete Theorema Egregium」という論文があります(Banchoff・Günther, 2023)。ここではその題名にある問題意識に関連する、基本的な多面体の計算を見てみます。
閉じた三角形分割の多面体面で、頂点 p のまわりの各三角形の角を α₁,…,αₘ とすると、角欠損を δ(p)=2π-(α₁+…+αₘ) と定めます。これは滑らかな面の点ごとの K そのものではなく、頂点に集まった曲率を捉えるための積分量に当たります。平らに並べられる頂点のまわりでは角の和が 2π で、欠損は 0 です。
正四面体では各頂点に正三角形が 3 枚集まるので、角の和は π、欠損は π です。頂点が 4 個あるため、総和は 4π になります。さらに一般の閉じた三角形分割について、すべての角を合計すると各面が π ずつ寄与するため、角欠損の総和は 2πV-πF です。各辺が 2 枚の面に共有されるので 3F=2E となり、次が導かれます。
∑ₚ δ(p)=2πV-πF=2π(V-E+F)
この計算は三角形の内角の和と辺の数え上げだけで追えます。滑らかな球面の積分で得た 4π と、多面体の角の不足を足した 4π が、どちらもオイラー標数に結び付いています。形をデータとして扱う際にも、距離・角度・面全体のつながり方を区別する視点が役立ちます。
式の前に、何をどこで測るかを書きます
学び始めに混同しやすいのは、曲線の曲率 κ と曲面のガウス曲率 K です。円柱上の円周は曲線として κ=1/R ですが、円柱自体の K は 0 です。「同じ場所なのに答えが違う」と感じたら、測っている対象を言葉で書き添えてみてください。前者は空間内の道の向きの変化、後者は面の 2 つの主曲率の積です。対象を省略したまま公式を選ぶと、この違いを見失います。
空間の曲率を視覚的に捉える教材の検討として、物差しの収縮と「重いバナナ」の逆説を用いた説明が報告されています(Gruber ほか, 1991)。対象は空間曲率の概念を視覚化する 2 つの説明法であり、特定の学年の学習者について授業効果を検証した研究として一般化はできません。この観点を学習に取り入れるなら、図を眺めるだけで終わらず、その図で長さを何によって測るかを式につなぐ使い方が考えられます。
実際の学習は、次の手順で進めると、自分が止まった箇所を見つけやすくなります。
- 曲線なら媒介変数と r′≠0、曲面なら座標と Xᵤ×Xᵥ≠0 を確認します。計算の前に定義域と正則性を書き、どこまで式を使えるかを決めます。
- 微分ベクトルを先に求め、長さや内積を後から計算します。球面なら Xθ と Xφ を別々に書き、その直交性を内積で確かめます。
- 曲線では弧長による微分か媒介変数による微分かを明記し、曲面では法線の向きを固定します。円の d/ds=(1/R)d/dt を説明できるかが、よい確認になります。
- 求めた数を、既知の形へ戻して点検します。らせんの b を 0 にすると円に戻るか、球面の半径を大きくすると K が小さくなるかを調べます。
- 定理を使う前に、その仮定を問題の対象と照合します。境界のある面に、境界のない場合のガウス=ボンネの式をそのまま使わないことが一例です。
高校生のうちは、円を三角関数で表し、成分ごとに微分し、速度の大きさが一定になるところまで確かめれば十分な足場になります。次に放物線と円で曲率を比べると、二階微分が一定でも曲率は一定とは限らないことがわかります。接線の傾き、速さ、曲率という 3 つの量を、自分の説明で分ける練習が有効です。
塾で扱うなら、講師が途中式をすべて埋めるのではなく、ノートのどの行で方向と長さが混ざったかを一緒に探します。外積の符号を間違えたのか、媒介変数を弧長だと思い込んだのかでは、必要な復習が違います。高校の計算へ戻る位置を絞り、その計算が大学の定義のどこに使われたかまで結び直します。
家庭では、お子さまが専門用語をいくつ覚えたかより、「円柱は曲がって見えるのに、なぜ K=0 なのか」を図とともに話せるかに耳を傾けると、学習の進み方が見えます。保護者が公式を覚えて採点する必要はありません。説明の途中で本人が曖昧さに気付いたら、その点を次の学習の問いとして残せばよいのです。
ここで手が止まるなら、止まった単元まで一緒に戻ります。武蔵境の数学塾(1 対 1)/お問い合わせ
曲がった面を学ぶ前の3つの疑問
二階微分を取れば、いつでも曲率になりますか
そのままではなりません。弧長で表示された正則曲線なら κ=|d²r/ds²| ですが、一般の媒介変数では速度の影響を取り除く必要があります。平面のグラフ y=f(x) では、f が C² 級なら κ=|f″(x)|/((1+f′(x)²)√(1+f′(x)²)) です。放物線の二階微分は一定でも曲率は位置で変わる、という入口の計算を思い出すと区別できます。
球面上の三角形でも内角の和はπですか
辺の意味によります。単位球面で、北極と、赤道上の経度が π/2 だけ異なる 2 点を結び、各辺を短い大円弧にすると、内角はすべて π/2 です。内角の和は 3π/2 になります。この領域の面積は球面全体の 1/8 に当たる π/2 で、内角の和が π を超える分と一致します。これは測地線を辺に持つ領域のガウス=ボンネの式の具体例です。滑らかな向き付けられた曲面上で、単純な区分的滑らかな境界が円板状の領域を囲む場合には、曲率の面積積分に境界の測地的曲率の積分と外角の和を加えて 2π とします。この例では辺が測地線なので、辺の測地的曲率は 0 です。
高校のうちに曲面の定理まで覚える必要がありますか
定理の名前を先取りするより、微分、積分、内積、外積を具体の図と結び付ける方が、その後の学習につながります。多くの理系学部では、土台となる微積分と線形代数を 1〜2 年で学びます。曲面の式に出会った際に、どの量が高校の延長で、どこが新しい定義なのかを見分けられれば、学ぶ順番を自分で整理しやすくなります。
夏祭りの屋台の行列へ視線を戻すと、列の長さ、曲がり方、会場案内図の距離は、それぞれ別の問いとして見えてきます。微分幾何を学ぶことで増えるのは、難しい形の名前だけではありません。同じ図に含まれる異なる量を見分け、式で測り、条件を確かめて結論へ進む手段が増えます。円柱と球面を自分の手で計算した経験は、目に見える曲がり方と、面に沿って測れる曲がり方を結び付けます。曲線の接線を 1 本描くところから、地図が必ず歪む理由まで、計算でたどれます。
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あわせて読む(数学の地図・高校数学の単元解説)
参考文献
- G Bardini, GM Gianella(2014)「On the Evolution of the Idea of Curvature, from Newton to Gauss’ Theorema Egregium」Applied Mathematical Sciences. https://doi.org/10.12988/ams.2014.411924
- Cogliati, Alberto(2018)「The reception of the Theorema egregium 1828–1868」Bollettino di Storia delle Scienze Matematiche. https://doi.org/10.19272/201809201002
- Thomas F. Banchoff, Felix Günther(2023)「The Discrete Theorema Egregium」The American Mathematical Monthly. https://doi.org/10.1080/00029890.2023.2263299
- Gruber, Ronald P., And Others(1991)「Space Curvature and the “Heavy Banana ‘Paradox.’”」Physics Teacher. https://doi.org/10.1119/1.2343254
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