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【化学】希薄溶液の性質を図解で総まとめ—蒸気圧降下・沸点上昇 凝固点降下・浸透圧・コロイド|武蔵野個別指導塾

砂糖水と食塩水の違いを粒子数から考え、凝固点降下や浸透圧から分子量を求める例題へ進みます。3枚の図で濃度の使い分けを整理し、コロイドの透析と浸透の違いまで確かめられます。
よくあるのは、図書館の机で問題集を開き、砂糖水の凝固点は計算できたのに、同じ濃度の食塩水の問題で答えが合わなくなるという場面です。隣のページには浸透圧の式があり、そこでは分母が水の質量から溶液の体積に変わっています。公式を一つずつ覚えたつもりでも、何を数え、何を基準にした濃度なのかが見えないと、似た問題ほど迷いやすくなります。
この単元の中心は、薄い溶液の性質を「溶けた粒子の数」で整理することです。水に溶かす物質の名前だけでなく、水の中で分子のまま存在するのか、イオンに分かれるのかを見ると、食塩水で計算を変える理由がつながります。さらに、粒子の大きさや膜を通れるかどうかに注目すれば、コロイドの性質も整理できます。まず現象の向きを確かめ、次に濃度の分母を選び、最後に粒子数を数える順で進めましょう。
この単元で身につけること
- 蒸気圧降下を出発点に、沸点が上がる理由を説明します。「蒸発しない」のではなく、同じ温度で溶媒の蒸気圧が純溶媒より低くなることを押さえます。
- 沸点上昇と凝固点降下の式を使います。どちらも溶媒1 kgを基準にした質量モル濃度で計算し、温度の変化量と実際の温度を区別します。
- 電解質が電離したあとの粒子数を数えます。同じ物質量の溶質でも、非電解質の分子と電解質から生じたイオンでは、溶液中の粒子数が異なります。
- 浸透の向きを図から読み取り、ファントホッフの法則で浸透圧を求めます。ここでは溶液1 Lを基準にしたモル濃度と、絶対温度を使います。
- コロイドのチンダル現象、ブラウン運動、透析、凝析、塩析を整理します。現象の名前だけでなく、光・粒子の運動・膜・電解質のどれに関係するかを説明できるようにします。
化学基礎で学んだ物質量と電離、前の濃度の単元で学んだ「溶質・溶媒・溶液」の区別が土台です。計算が止まったら、新しい公式を増やす前に、この3語のどれを問題文の数値が表しているか確認します。
基本の考え方
蒸気圧が下がると沸点はどうなるか
溶質は溶かされる物質、溶媒はそれを溶かす物質、溶液は両者が混ざったものです。希薄溶液とは、溶質の濃度が低い溶液を指します。この節では、砂糖のように蒸発しにくい不揮発性の溶質を溶かした、十分に薄い溶液を考えます。アルコールのように溶質自身もよく蒸発する場合は、同じ説明をそのまま当てはめられません。
密閉容器の中では、液体から気体へ移る蒸発と、気体から液体へ戻る凝縮が同時に起こります。両者がつり合ったときの蒸気の圧力を、その温度での蒸気圧といいます。液体が目に見えて減らない状態でも、分子の行き来は止まっていません。
不揮発性の溶質を加えると、同じ温度で比べた溶媒の蒸気圧は、純溶媒より低くなります。これが蒸気圧降下です。高校化学では、液面にある溶媒分子の割合が小さくなり、純溶媒の場合より蒸発が起こりにくくなる、と考えると現象の向きをつかめます。ただし、溶質が水面をふさいでふたを作るという意味ではありません。溶質は溶液中に分散しており、溶媒分子は引き続き液面を出入りします。
図1のように、同じ温度の純溶媒と溶液を比べると、溶液側では気相にある溶媒分子が少ない状態でつり合います。青い丸は溶媒、橙の丸は不揮発性の溶質です。図の粒子数は仕組みを示すための模式的な表現で、実際の濃度や蒸気圧の比を示すものではありません。

沸騰は、液体の蒸気圧が外圧と等しくなったときに起こります。同じ外圧なら、蒸気圧が下がった溶液は、純溶媒の沸点まで加熱してもまだ沸騰の条件に達しません。さらに温度を上げる必要があるため、沸点が上がります。この変化が沸点上昇です。蒸気圧降下は「同じ温度での圧力の差」、沸点上昇は「同じ外圧での沸騰温度の差」であり、比較するときに固定する条件が違います。
一方、溶液から純粋な溶媒の結晶ができ始める温度は、純溶媒の凝固点より低くなります。これが凝固点降下です。水溶液が凍り始めるとき、溶質をほとんど含まない氷が分かれ、残った液体側に溶質が多く残ります。したがって、凍結が進むと残液の濃度が変わり、その凝固点も変わります。純水の冷却で見られる一定温度の区間を、溶液全体が凍る間にもそのまま期待してはいけません。
温度変化は溶媒1 kgあたりの粒子数で決まる
溶媒1 kgに溶けている溶質の物質量を質量モル濃度といい、単位はmol/kgです。ここでは記号bで表します。非電解質が分子のまま溶けていて、会合などが起こらない希薄溶液では、次の関係が成り立ちます。
ΔTᵦ = Kᵦb
ΔT𝒻 = K𝒻b
ΔTᵦは沸点上昇度、ΔT𝒻は凝固点降下度で、どちらも変化の大きさを表す正の値です。Kᵦはモル沸点上昇、K𝒻はモル凝固点降下といい、溶媒の種類によって決まる定数です。単位はK·kg/molです。温度差については1 Kと1 ℃が同じ大きさなので、式で求めた値を℃での温度差として使えます。
例えば水の凝固点降下度が0.20 Kなら、凝固点は0.00 ℃から0.20 ℃下がって−0.20 ℃です。降下度そのものを負の数にすると、最後に引き算する段階で符号を重ねて間違えやすくなります。「差の大きさ」と「温度計の読み」を別々の行に書くと整理できます。
砂糖や尿素のように、溶けてもイオンに分かれない物質を非電解質といいます。これに対し、塩化ナトリウムのように水溶液中でイオンに分かれる物質が電解質です。完全に電離すると仮定したNaClでは、NaCl 1 molからNa⁺ 1 molとCl⁻ 1 molが生じ、粒子としての物質量は合計2 molです。CaCl₂なら、Ca²⁺ 1 molとCl⁻ 2 molで合計3 molになります。
溶かす前の化学式を基準にした物質量に対する、溶液中の粒子の物質量の倍率をiと書くと、式はΔTᵦ = iKᵦb、ΔT𝒻 = iK𝒻bと表せます。非電解質なら通常i = 1、完全電離を仮定したNaClならi = 2です。粒子を数え直したあとの濃度を使う方法でもよいですが、その場合にもう一度iを掛けてはいけません。
電離が一部にとどまる場合は、イオンだけでなく、電離せずに残った分子も粒子として数えます。また、実際の電解質溶液ではイオンどうしの影響などがあり、整数倍からずれる場合があります。問題で「完全に電離する」「粒子間の影響を無視する」と与えられたとき、その条件に従って計算します。濃い食塩水まで単純に2倍とする規則ではありません。
このように、希薄溶液で溶質の種類よりも粒子数に依存する性質を束一的性質といいます。蒸気圧降下、沸点上昇、凝固点降下、浸透圧を別々の暗記項目にせず、「何個の粒子が溶けているか」という共通点で結べます。ただし、同じ質量の砂糖と食塩で粒子数が同じになるわけではありません。質量をモル質量で割り、さらに電離を考える必要があります。
浸透とコロイドは膜と粒子の大きさに注目する
溶媒は通しても、考えている溶質は通さない膜を半透膜といいます。この膜で純溶媒と溶液を隔てると、溶媒は正味では純溶媒側から溶液側へ移動します。これが浸透です。両方向への分子の移動自体は起こっていますが、初めは溶液側へ移る量のほうが大きい、と読み取ります。
溶液側に圧力を加えて、この正味の移動をちょうど止めるのに必要な圧力差が浸透圧Πです。希薄溶液では、ファントホッフの法則ΠV = nRT、またはΠ = cRTが使えます。Vは溶液の体積、nは溶質粒子の物質量、cは溶質粒子のモル濃度、Tは絶対温度です。溶かす前の化学式を基準にしたモル濃度c₀を使うなら、Π = ic₀RTと書けます。
ここで分母が溶媒のkgから溶液のLへ変わることに注意します。気体の状態方程式と似ていますが、溶質が気体になっているわけではありません。水溶液中の粒子について成り立つ関係です。なお、半透膜があることだけで常に同じ現象が起きるのではなく、その膜が対象の溶質を通すかどうかを確かめる必要があります。
コロイドは、直径がほぼ1 nmから100 nm程度の粒子が、ほかの物質中に分散した状態です。境界は厳密に一律ではありませんが、普通の小さな分子やイオンより大きい粒子を考えます。コロイド粒子そのものを分散質、それを取り囲む物質を分散媒といいます。液体中に分散した流動性のあるコロイドをゾルといい、網目構造などにより流動性を失った状態をゲルといいます。
細い光を当てると光の通路が見えるチンダル現象は、コロイド粒子による光の散乱です。粒子が不規則に動くブラウン運動は、分散媒の分子がコロイド粒子に衝突することで起こります。前者は光の見え方、後者は粒子の運動なので、説明の主語を区別しましょう。コロイド粒子も粒子数に応じて浸透圧を示しますが、同じ質量なら小さな分子より粒子数が少なくなる場合が多く、粒子の大きさと個数を混同しないことが大切です。
例題で解き方を確かめる
計算では、教科書で用いる近似値として、水のKᵦ = 0.52 K·kg/mol、K𝒻 = 1.86 K·kg/mol、気体定数R = 8.3×10³ Pa·L/(mol·K)を使います。℃からKへの換算はT = t + 273とし、この先も各問題の条件に従います。途中の数値はできるだけ丸めず、答えで有効数字を整えます。
例題1 同じ溶液の沸点と凝固点を求める
尿素CO(NH₂)₂を3.0 g、水を100 g用いて希薄水溶液を作りました。尿素は非電解質とし、原子量をH = 1.0、C = 12、N = 14、O = 16とします。この外圧で純水の沸点は100.00 ℃、凝固点は0.00 ℃です。水のKᵦ = 0.52 K·kg/mol、K𝒻 = 1.86 K·kg/molとして、沸点と凝固点を小数第2位まで求めましょう。加熱中の蒸発による濃度変化は無視します。
- 尿素のモル質量を求めます。炭素1個、酸素1個、窒素2個、水素4個なので、12 + 16 + 14×2 + 1.0×4 = 60 g/molです。質量を物質量に直す準備です。
- 溶質の物質量を計算します。3.0 g ÷ 60 g/mol = 0.050 molです。尿素はイオンに分かれないので、この値をそのまま粒子の物質量に使えます。
- 水の質量をkgへ直して濃度を出します。100 g = 0.100 kgより、b = 0.050 mol ÷ 0.100 kg = 0.50 mol/kgです。103 gという溶液全体の質量で割らない点が重要です。
- 温度の変化量を求めます。ΔTᵦ = 0.52×0.50 = 0.26 K、ΔT𝒻 = 1.86×0.50 = 0.93 Kです。沸点には上昇度を足し、凝固点からは降下度を引きます。
答え:沸点は100.26 ℃、凝固点は−0.93 ℃です。
2つの計算で共通する部分は、溶質の物質量と溶媒の質量からbを出すところまでです。そのあとに使う定数と、最後の足し引きが変わります。凝固点降下のほうが大きいのは、この条件の水ではK𝒻がKᵦより大きいからであり、「冷やすほうが強く作用する」といった印象で決めるものではありません。
例題2 電離による粒子数の違いを比べる
質量モル濃度がいずれも0.100 mol/kgの、グルコース水溶液、NaCl水溶液、CaCl₂水溶液があります。NaClとCaCl₂は完全に電離し、粒子間の影響を無視できるとします。K𝒻 = 1.86 K·kg/molとして、各水溶液の凝固点降下度を有効数字3桁で求めましょう。
- 電離後の粒子を数えます。グルコースは非電解質でi = 1、NaCl → Na⁺ + Cl⁻よりi = 2、CaCl₂ → Ca²⁺ + 2Cl⁻よりi = 3です。イオンの電荷の大きさではなく、できる粒子の個数を数えます。
- 共通するK𝒻bを計算します。1.86×0.100 = 0.186 Kです。溶媒も濃度も同じなので、この部分は共通です。
- iを掛けます。グルコースは0.186 K、NaClは0.372 K、CaCl₂は0.558 Kです。したがって、この条件ではCaCl₂水溶液の凝固点が最も低くなります。
答え:凝固点降下度はグルコース0.186 K、NaCl 0.372 K、CaCl₂ 0.558 Kです。
図2は、横軸を溶かす前の化学式に基づく質量モル濃度b、縦軸を凝固点降下度として、グルコースとNaClを比べたものです。図2のように、同じ横軸の値でNaClの降下度は2倍になります。線は上向きですが、上がっているのは「下がる量」であって、凝固点そのものではありません。

例題3 凝固点降下から分子量を求める
ある非電解質を1.20 g、水を100 g用いて溶かすと、凝固点降下度は0.124 Kでした。溶質は分子のまま溶け、会合も電離もしないとします。K𝒻 = 1.86 K·kg/molとして、溶質の分子量を有効数字3桁で求めましょう。
- 温度差から質量モル濃度へ戻ります。b = ΔT𝒻 ÷ K𝒻 = 0.124 ÷ 1.86 mol/kgです。先に溶質の種類を推測する必要はなく、粒子数に関係する測定値を利用します。
- 溶媒の質量を掛けて物質量を出します。n = (0.124 ÷ 1.86)×0.100 = 0.006666… molです。mol/kgにkgを掛けるとmolになり、単位の確認もできます。
- 質量を物質量で割ります。1.20 g ÷ 0.006666… mol = 180 g/molなので、分子量は1.80×10²です。モル質量にはg/molを付けますが、分子量には単位を付けません。
答え:分子量は1.80×10²です。
粒子数から逆に分子の大きさを調べる問題では、「同じ質量でも、1分子が重ければ分子の個数は少ない」という関係が働いています。もし電離が起こる物質を非電解質として計算すると、粒子数を分子数と取り違えるため、求めた値は本来の分子量と一致しません。公式に代入する前に、問題の非電解質という条件を確認する意味がここにあります。
例題4 浸透圧から高分子の分子量を求める
ある高分子の非電解質0.20 gを水に溶かし、溶液全体を100 mLとしました。27 ℃での浸透圧が5.0×10² Paであったとき、分子量を有効数字2桁で求めましょう。高分子は膜を通らず、会合や電離は起こらないとします。R = 8.3×10³ Pa·L/(mol·K)です。
- 温度と体積の単位をそろえます。T = 27 + 273 = 300 K、V = 0.100 Lです。Rの体積の単位がLなので、mLのまま代入してはいけません。
- ΠV = nRTから物質量を求めます。n = (5.0×10²×0.100) ÷ (8.3×10³×300) = 2.008…×10⁻⁵ molです。ここでのVは水だけの体積ではなく、できあがった溶液全体の体積です。
- モル質量へ戻します。0.20 g ÷ 2.008…×10⁻⁵ mol = 9960 g/molとなります。有効数字2桁では9.96×10³から1.0×10⁴へ丸めます。
答え:分子量は1.0×10⁴です。
高分子では同じ質量に含まれる分子の数が少ないため、凝固点降下などの温度変化は小さくなりがちです。浸透圧の測定は、こうした物質の分子量を調べる方法として用いられます。ただし、実際に用いる膜がその高分子を通さず、水を通すという前提が欠かせません。
つまずきやすいところと直し方
誤り1 濃度の分母をすべて溶液にする
誤った書き方:例題1でb = 0.050 ÷ 0.103とします。どこが違うかというと、0.103 kgは尿素と水を合わせた溶液の質量であり、質量モル濃度の分母ではありません。正しい書き方はb = 0.050 mol ÷ 0.100 kg = 0.50 mol/kgです。
この誤りは、質量パーセント濃度で溶液の質量を分母にした経験から起こりやすくなります。計算欄の分母の横に「溶媒」と一語添えると、数値を写す段階で確かめられます。一方、浸透圧で使うcの分母は「溶液の体積」です。「希薄だから全部同じ」と省略する前に、まず定義に合う数値を選びます。密度の条件なしに100 gを100 mLへ置き換えることもできません。
誤り2 凝固点降下度に負の符号を付ける
誤った書き方:例題2のNaClについて、ΔT𝒻 = −0.372 Kとし、凝固点を0 − (−0.372) = +0.372 ℃とします。どこが違うかというと、降下度は下がる大きさなので正の値です。正しい書き方はΔT𝒻 = 0.372 K、純水の凝固点を0.000 ℃とすれば溶液の凝固点は0.000 − 0.372 = −0.372 ℃です。
図2の縦軸が温度そのものか、温度差かを読み取ることが修正の出発点です。グラフの線が右上がりでも、溶液の凝固点は濃度とともに低くなります。また、Ca²⁺を「電荷が2だから2粒」と数える誤りにも注意します。Ca²⁺は1個のイオンであり、CaCl₂から生じる粒子数は1 + 2 = 3です。電荷の上付き数字と、粒子数を表す係数には別の役割があります。
誤り3 浸透で溶質が膜を通ると考える
誤った書き方:「濃度をそろえるため、溶質が純水側へ移動する」とします。どこが違うかというと、ここでの半透膜は対象の溶質を通しません。正しい書き方は「水が正味では純水側から溶液側へ移動し、溶液側の液面が上がる」です。濃度の違いだけでなく、何が膜を通れるかを言葉にします。
図3のように、初めに液面がそろっている装置では水が溶液側へ移動します。液面差ができると、その高さに対応する圧力差が浸透を妨げる向きに働きます。やがて正味の移動は止まりますが、水分子の往来そのものは続きます。図は移動前と移動後の向きを示した模式図で、液面差から圧力を数値計算するための縮尺ではありません。

浸透圧の問題文が「最初の濃度」を与えるのか、「液面差ができたあとの濃度」を与えるのかにも気を配ります。水が流入すると溶液の体積が増え、濃度は下がるためです。図3の右側では左側より溶液が薄くなります。体積変化を無視すると指定された場合を除き、同じcを無条件に使い続けないようにします。
コロイドで混同しやすい現象を整理する
透析は、コロイド粒子は通さず、小さな分子やイオンは通す膜を使って、コロイド中の不純物を取り除く操作です。浸透の説明では水の正味の移動に注目しましたが、透析では不要な小粒子が膜の外へ移ることに注目します。同じ「膜が出てくる問題」でも、溶質をすべて一括りにせず、コロイド粒子と小さなイオンを分けて考えます。普通のろ紙では多くのコロイド粒子が通り抜けるため、ろ過と透析も同じではありません。
水になじみにくい疎水コロイドは、粒子が帯びる同符号の電荷による反発などで分散を保っています。少量の電解質を加えると粒子が集まって沈殿する現象を凝析といいます。一般に、粒子と反対符号のイオンの価数が大きいほど凝析させる作用は強くなります。正に帯電したコロイドなら陰イオン、負に帯電したコロイドなら陽イオンに注目します。電解質全体の名前だけで作用の強さを決めるのは不十分です。
水になじみやすい親水コロイドは、粒子の周囲に水分子が結び付く水和によっても安定しています。多量の電解質を加えることで沈殿する現象が塩析です。凝析と塩析を区別するときは、疎水性か親水性か、必要な電解質が少量か多量かを組にします。また、疎水コロイドに親水コロイドを加えると凝析しにくくなることがあり、このとき加えた親水コロイドを保護コロイドといいます。
電場中で帯電したコロイド粒子が移動する現象は電気泳動です。正に帯電した粒子は陰極へ、負に帯電した粒子は陽極へ移動します。ここまでの性質を整理すると、ブラウン運動は不規則な動き、電気泳動は電場による方向性のある動きです。似た「粒子が動く」記述でも、原因と向きが異なります。
練習問題
練習1
グルコースC₆H₁₂O₆を1.8 g、水を200 g用いて希薄水溶液を作りました。原子量はH = 1.0、C = 12、O = 16、グルコースは非電解質とします。水のK𝒻 = 1.86 K·kg/mol、純水の凝固点は0.000 ℃です。質量モル濃度と凝固点を有効数字2桁で求めましょう。
練習2
CaCl₂の質量モル濃度が0.020 mol/kgの希薄水溶液について、沸点上昇度を有効数字2桁で求めましょう。CaCl₂は完全に電離し、粒子間の影響を無視できるとします。水のKᵦ = 0.52 K·kg/molです。
練習3
非電解質の希薄水溶液のモル濃度が2.0×10⁻³ mol/Lでした。27 ℃での浸透圧を有効数字2桁で求めましょう。電離や会合は起こらず、R = 8.3×10³ Pa·L/(mol·K)、T = t + 273とします。
練習4
正に帯電した疎水コロイドに少量の電解質を加えると、粒子が集まって沈殿しました。この現象の名称と、Cl⁻とSO₄²⁻では一般にどちらが沈殿させる作用が強いかを答えましょう。また、混在する小さなイオンを、コロイド粒子を残して膜で取り除く操作の名称も答えましょう。
答えと解説
練習1:質量モル濃度は0.050 mol/kg、凝固点は−0.093 ℃です。モル質量は12×6 + 1.0×12 + 16×6 = 180 g/mol、物質量は1.8 ÷ 180 = 0.010 molです。水は0.200 kgなので、b = 0.010 ÷ 0.200 = 0.050 mol/kgとなります。ΔT𝒻 = 1.86×0.050 = 0.093 Kより、凝固点は0.000 − 0.093 = −0.093 ℃です。
練習2:沸点上昇度は0.031 Kです。CaCl₂ → Ca²⁺ + 2Cl⁻よりi = 3なので、ΔTᵦ = 3×0.52×0.020 = 0.0312 Kとなり、有効数字2桁に丸めます。Ca²⁺とCl⁻という「2種類」のイオンだから2倍、としてはいけません。1 molから合計何molの粒子になるかを数えます。
練習3:浸透圧は5.0×10³ Paです。T = 300 Kより、Π = cRT = 2.0×10⁻³×8.3×10³×300 = 4980 Paです。27をそのまま代入すると温度の基準が変わってしまいます。濃度とRでLが打ち消され、最後にPaが残ることも確かめます。
練習4:現象は凝析で、一般にSO₄²⁻のほうが強く作用します。正に帯電したコロイドに対しては陰イオンに注目し、その価数を比べます。膜を使って小さなイオンを取り除く操作は透析です。塩析は親水コロイドに多量の電解質を加えた場合として区別します。
次の単元へのつながりと家庭での確かめ方
溶けた粒子を数える見方は、次に電解質水溶液や電離の程度を学ぶときにも使います。高分子の単元では、1分子が大きい物質の分子量とコロイドの性質が再びつながります。さらに、蒸気圧と温度の関係は、状態変化を熱やエネルギーの面から考える土台にもなります。
家庭での確認は、加熱や薬品を使わず紙の上でできます。1つ目は5分間で、例題1と例題4の数値を「溶質の質量」「溶媒の質量」「溶液の体積」に色分けし、それぞれの公式の分母へ線で結ぶ方法です。答えを覚えていても、濃度の選び方を説明できるか確かめられます。
2つ目は別の5分間で、NaClとCaCl₂について電離後のイオンを丸で描き、1 molから生じる粒子の物質量を声に出す方法です。最後に半透膜の両側を描き、水の矢印を1本加えます。個別指導では、計算結果だけでなく、その矢印と濃度の分母まで確認します。必要なら物質量の定義やgからkgへの換算に戻り、式を選ぶ前の判断を確かめます。
まとめ
図書館の机で似た公式が並んで見えたときも、問題文の中には選び分ける手掛かりがあります。水100 gという条件は温度変化の計算へ、溶液100 mLという条件は浸透圧の計算へつながります。電離の記述があれば、濃度をそのまま使う前に粒子を数え直せます。式の直前に「何を、どれだけの溶媒または溶液に対して数えるか」を書ければ、計算の意味を自分で点検できます。
希薄溶液の計算を決めるのは、溶質の名前だけでなく、溶けたあとに存在する粒子の数です。
本気になった日が、入塾の日。
お子様の教育、迷ったら「丸投げ」してください。必ず、期待以上の結果で返します。武蔵野で育む、武蔵境で学ぶ。
電話は年中無休。365日、24時間、お電話可能。




