氷がとけても質量が変わらない理由を粒子の図で読み解き、加熱曲線の読み取りや密度の計算、蒸留で集まる液体まで例題で一つずつ確かめていく構成です。
よくあるのは、夕方の台所のテーブルで、氷の入ったコップを見ながら「氷がとけると小さくなるのに、なぜ質量は変わらないのだろう」と宿題の答えに迷う場面です。見た目の大きさと物質の量を同じものだと考えると、教科書の説明と目の前の様子がつながりません。水蒸気になると見えなくなることも、「物質がなくなった」という思い込みにつながります。
この単元では、目に見える体積や温度の変化を、目に見えない粒子の並び方や動きと結びつけます。氷、水、水蒸気を別々に覚えるのでなく、同じ物質の状態として追うのが出発点です。温度のグラフが横ばいになる理由を説明できると、融点や沸点を使って物質を調べる方法や、混合物から液体を取り出す蒸留も理解しやすくなります。
この単元で身につけること
- 固体・液体・気体を粒子で説明します。粒子そのものの大きさと、粒子の間隔を区別して考えます。
- 状態変化の前後で質量を比べます。物質が外へ出たり外から入ったりしなければ、体積が変わっても質量は変わりません。
- 融点と沸点を読み取ります。温度の数値だけでなく、その間にどの状態が共存しているかまで確かめます。
- 純物質と混合物を見分ける手がかりを学びます。状態変化のときの温度の変わり方が、物質を調べる材料になります。
- 蒸留の仕組みを説明します。液体を気体にし、再び液体に戻す操作を、沸点の違いと結びつけます。
小学校で学んだ水のすがたの変化や、これまでに学んだ密度が土台になります。密度は「同じ体積あたりの質量」なので、同じ質量の物質で体積が変われば密度も変わります。このつながりを使うと、状態変化を用語の暗記だけで終わらせずに考えられます。多くの教科書では、中1で学ぶ内容です。
基本の考え方
変わるのは物質の種類ではなく状態です
物質が温度によって固体・液体・気体の間で姿を変えることを、状態変化といいます。氷がとけても水という物質であることは変わりません。砂糖が水に溶ける場合は水という別の物質に混ざりますが、氷がとける場合は、氷だけで液体の水になります。「とける」という言葉が同じでも、起きていることは異なります。
固体から液体への変化を融解、液体から固体への変化を凝固といいます。液体から気体になる変化が気化、気体から液体になる変化が液化です。固体と気体の間を液体にならずに変わる状態変化は、中学校では昇華として扱います。名前を覚えるときは、「何から何へ」と矢印の両端を言葉にすると、向きの取り違えを防げます。
図1の丸は、物質をつくる小さな粒子を表す模式的なものです。固体では粒子がほぼ決まった位置で振動し、液体では粒子が互いに近いまま位置を入れ替えます。気体では粒子どうしが大きく離れ、空間を動き回ります。固体は形を保ち、液体は容器に合わせて形を変え、気体は容器全体に広がるという違いを、この動きと対応させます。

図1は同じ数の粒子を同じ大きさの丸で描いています。加熱して体積が増えるのは、粒子自体が風船のようにふくらむからではありません。特に気体への変化では、粒子の間隔が大きくなります。丸の数や大きさと、丸が広がる範囲を分けて読むことが、モデルを使うこつです。
質量と体積は別々に確かめます
物質の出入りがなければ、状態変化の前後で粒子の種類と数は変わらず、質量も変わりません。一方、粒子の並びや間隔が変わるため、体積は変わります。水を開いた容器で長く加熱して質量が減るのは、水蒸気が容器の外へ出るためです。状態変化で水の粒子が消えたわけではありません。
多くの物質は固体から液体になると体積が増えますが、水には例外的な特徴があります。同じ質量なら、氷の体積は液体の水の体積より大きくなります。そのため氷がとけると体積が減り、密度は大きくなります。粒子の一般的なモデルだけを見て、水も必ず固体の方が小さいと決めないようにしましょう。
気化には蒸発と沸騰があります。蒸発は液体の表面から起こり、沸点より低い温度でも進みます。沸騰は液体の内部からも気体が生じる現象です。水が十分に沸騰しているときの泡の主な中身は水蒸気であり、空気ではありません。洗濯物が常温で乾くのは、沸騰せずに水が蒸発するためです。
一定になる温度に物質の特徴が表れます
固体がとけて液体になるときの温度を融点、液体が沸騰するときの温度を沸点といいます。純粋な水では、通常の大気圧のもとで融点は0 ℃、沸点は100 ℃です。気圧が変わると沸点も変わるので、物質どうしを比べるときは同じ気圧という条件をそろえます。
純物質は1種類の物質からなり、混合物は複数の物質が混ざっています。純物質が融解している間や、一定の気圧で沸騰している間は、加熱を続けても温度が一定に保たれます。受け取った熱が状態を変えるために使われるからです。混合物では一般に、このような一定の温度が続かず、変化に幅が見られます。ただし、温度の記録1点だけで純物質と決めることはできません。変化の途中を継続して測る必要があります。
例題で解き方を確かめる
例題1 氷がとけたときの質量と密度
質量18 g、体積20 cm³の氷がすべてとけて、体積18 cm³の水になりました。こぼれたり蒸発して逃げたりした水はないものとします。水の質量と、氷と水それぞれの密度を求めましょう。
- まず物質の出入りを確認します。問題文に出入りがないとあるため、質量は保存され、とけた水も18 gです。
- 氷の密度を求めます。密度 = 質量 ÷ 体積なので、18 ÷ 20 = 0.9 g/cm³です。質量をg、体積をcm³で入れたため、この単位になります。
- 水の密度を求めます。18 ÷ 18 = 1.0 g/cm³です。質量が同じでも体積が小さくなったので、密度は大きくなります。
答えは、質量18 g、氷の密度0.9 g/cm³、水の密度1.0 g/cm³です。「体積が2 cm³減ったから質量も2 g減る」という計算はできません。体積と質量は違う量であり、つなぐには密度が必要です。この問題では、体積の変化より先に質量の保存を使います。
例題2 加熱曲線の横ばいを読む
図2は、一定の気圧で純粋な水を氷から水蒸気まで変化させるときの温度変化を、読み取り用に単純化した図です。時刻や各区間の長さは説明用で、実験で必ずこの時間になるという意味ではありません。融点、沸点、加熱開始から3分と10分の状態を答えましょう。

- 縦軸が温度、横軸が時間であることを確かめます。時間の目盛りは2分ごとで、傾きを読む前に軸の意味を押さえます。
- 最初の横ばいを探します。2〜4分は0 ℃で一定なので、融点は0 ℃です。3分はその途中にあり、氷と水が共存しています。
- 次の横ばいを探します。8〜12分は100 ℃で一定なので、沸点は100 ℃です。10分はその途中にあり、水と水蒸気が共存しています。
答えには温度だけでなく、状態を二つずつ書きます。横ばいの途中では、まだ状態変化が終わっていないためです。0 ℃という数値だけを見て「全部が氷」「全部が水」と決めることはできません。加熱の流れのどこに位置するかが判断の根拠になります。また、図2の右端は液体がなくなった後の水蒸気の加熱を表しています。開いたビーカーの水が、そのまま120 ℃になるという読み方はしません。
例題3 純物質を見分ける手がかり
物質Aは加熱すると60 ℃でとけ始め、とけ終わるまで60 ℃でした。物質Bは45 ℃でとけ始め、55 ℃でとけ終わりました。この観察では、どちらが純物質と考えられるでしょうか。測定中の温度のむらや読み取りの誤差は考えないものとします。
- 比べる区間を「とけ始めからとけ終わりまで」にそろえます。固体のまま温まる区間まで含めると、純物質でも温度が上がるためです。
- その区間の温度変化を比べます。Aは一定で、Bには10 ℃の幅があります。
- 融解中の温度が一定という性質を使い、Aが純物質と考えられると答えます。Bは混合物と考える手がかりを示しています。
温度の高い方が純物質、という判断ではありません。Aの融点が60 ℃であることと、融解中に温度が変わらないことを区別しましょう。実際に物質を特定するときは、密度など別の性質も合わせて調べます。
例題4 蒸留で先に集まる液体
水とエタノールの混合物を蒸留すると、初めに集まる液体は元の混合物と比べてどうなるでしょうか。通常の大気圧で、エタノールの沸点は約78 ℃、水の沸点は100 ℃です。
- 沸点を比較します。エタノールの方が低いため、この混合物から出る蒸気にはエタノールが比較的多く含まれます。
- 蒸気を冷やした後を考えます。蒸気が液化するので、初めに集まる液体もエタノールの割合が元より高くなります。
- 「純粋なエタノール」とは答えません。水も一緒に蒸発するため、集まった液体にも水が含まれます。
このように、液体を沸騰させ、生じた気体を冷やして液体として集める操作が蒸留です。沸点の違いを利用するのであって、液体に溶けた成分をろ紙で捕まえる操作ではありません。
つまずきやすいところと直し方
白く見えるものを水蒸気と考えてしまう
「湯気が白いから、水蒸気も白い」という考えは、気体と小さな液体の粒を混同しています。水蒸気そのものは無色で目に見えず、湯気は水蒸気が冷えてできた小さな水滴です。気体になる段階と、液体に戻る段階を分けて説明しましょう。
図3は蒸留の状態変化と成分の移動を表した模式図です。実験装置の組み立て図ではありません。加熱して気体にする矢印と、冷やして液体に戻す矢印をたどると、蒸留には二つの状態変化が必要だとわかります。

横ばいなら加熱が止まったと考えてしまう
「温度が上がらないから、熱は伝わっていない」という判断では、状態変化に使われる熱を見落としています。図2では横ばいの間も加熱を続け、氷が減ったり、水蒸気になる水が増えたりしています。温度の記録に加えて、物質の様子も見る必要があります。
直すときは、横ばいの区間に「固体と液体」「液体と気体」と書き込みます。温度一定は変化がないという意味ではなく、二つの状態の割合が変わっている途中だと読み直せます。
沸点の低い物質だけが先に出ると考えてしまう
「78 ℃になればエタノールだけが出て、水は全く出ない」という考えは、沸騰していない液体も蒸発することと矛盾します。図3のように、初めに集まるのはエタノールの割合が高い液体です。「多く含む」と「それだけからなる」は区別します。
学校で蒸留を行うときは先生の指示に従い、保護眼鏡を使います。エタノールは引火しやすいため、直接火で加熱しません。装置を密閉せず、沸騰石は加熱前に入れ、熱い液体へ後から入れないようにします。出口の管を受ける液体に浸さないなど逆流を防ぐ配置も必要です。液体がなくなるまで加熱せず、集めた液体を味見してはいけません。家庭では蒸留を試さず、図で流れを確かめましょう。
練習問題
練習1 質量27 g、体積30 cm³の氷が、外へ出入りする水なしにすべてとけて体積27 cm³になりました。水の質量と密度を求めましょう。
練習2 図2で、加熱開始から6分の温度と状態を答えましょう。また、融解にかかった時間は何分ですか。
練習3 常温で皿の水が減る現象は、蒸発と沸騰のどちらですか。また、湯気は固体・液体・気体のどれに当たりますか。
練習4 水とエタノールの混合物を蒸留して初めに集まる液体を、「エタノールだけ」と答えるのが誤りである理由を説明しましょう。
答えと解説
練習1 27 g、1.0 g/cm³です。質量は変わらず、密度は27 ÷ 27で求めます。体積が減ったことだけで質量を減らさないようにします。
練習2 50 ℃、液体の水です。4〜8分の直線の中点を読みます。融解は2〜4分なので、4 – 2 = 2分です。
練習3 蒸発、液体です。蒸発は沸点以下でも表面で起こり、湯気は小さな水滴からなります。
練習4 水も一緒に蒸発し、冷やすと集まる液体に含まれるためです。初めの液体では、元の混合物よりエタノールの割合が高くなります。
次の単元へのつながりと家庭での確かめ方
状態変化で物質の種類が変わらないことは、後に学ぶ化学変化と比べる基準になります。また、水蒸気が液体に戻る見方は、雲や結露の学習にもつながります。
家庭で5分ほど確かめるなら、一つ目は、氷を1個小皿に置き、表面に水ができる様子を観察する方法です。完全にとける前にも、固体と液体が共存する時間があります。二つ目は、常温の水で皿を薄くぬらし、乾いた部分が広がるか比べる方法です。湿度などによって5分では変化が小さいこともあるので、見えた範囲を記録します。
個別指導で確かめるときは、グラフの読み違いなら軸と目盛りへ、質量の誤りなら物質の出入りへ戻ります。用語を増やす前に、どの観察を根拠に答えたのかを一緒に整理します。
まとめ
氷が小さくなったという観察から、質量まで減ったとは決められません。温度が横ばいという記録から、加熱が止まったとも決められません。理科の説明では、見えたことに対して、粒子の数、物質の出入り、状態の組み合わせという根拠を添えます。迷った問題は「変わった量は何か」「変わらなかったものは何か」の二つに分けて読み直してみましょう。状態変化を理解する境目は、見えなくなった水にも行き先を説明できるところにあります。





