根の細胞分裂、花粉管と受精、減数分裂を3枚の図で整理。細胞数と染色体数の例題を通して、成長と生殖の違いを筋道立てて比べると、違いが一目で整理できます。
よくあるのは、休日のベランダで鉢植えの新しい芽を見たあと、宿題の「植物が成長するしくみ」に「細胞が大きくなる」とだけ書いて手が止まるという場面です。その説明は一部を捉えていますが、芽や根の中では細胞の数も増えています。一方、同じ植物から新しい個体ができることは生殖です。大きくなることと、子をつくることは分けて考える必要があります。
この単元では、目に見える成長や生殖を、細胞とその中の染色体の変化につなぎます。「分裂すると何が増えるのか」「半分になるのは何の数か」を言葉にすると、似た用語を区別できます。根の細胞から受精卵までを順に追い、図の矢印を自分の言葉で説明できるところを目指しましょう。多くの教科書では中3で学びますが、出発点は、からだが細胞からできているという既習の内容です。
この単元で身につけること
- 成長を2つの変化で説明すること。 多細胞生物では、細胞分裂で細胞数が増えることと、それぞれの細胞が大きくなることが成長につながります。
- 体細胞分裂の順序を読むこと。 染色体が現れ、中央に並び、両側へ分かれる様子を手がかりに、観察図を並べます。
- 無性生殖と有性生殖を区別すること。 親の数だけで決めず、生殖細胞の合体による受精があるかを確かめます。
- 被子植物の受精と発生を追うこと。 柱頭についた花粉から花粉管が伸び、胚珠の中で受精し、受精卵が胚になる流れを説明します。
- 染色体数の変化を比べること。 体細胞分裂では分裂後の各細胞に同じ数が受け継がれ、減数分裂では半分になり、受精で元の数に戻る関係を読みます。
これまでに学んだ細胞の核と花のつくりを、時間の流れに沿って結び直す単元です。用語の位置を覚えるだけでなく、その場所でどのような変化が起こるのかを添えて整理します。
基本の考え方
細胞が増え、大きくなると成長する
からだをつくる細胞を体細胞といい、体細胞が分かれて増える分裂を体細胞分裂といいます。植物の根では、先端に近い部分で分裂が盛んです。根の先端そのものには、内部を保護する根冠があります。その少し内側の分裂が盛んな部分と、そこから根元側にある細胞が伸びる部分を区別します。根全体がどこでも同じように伸びるわけではありません。
核には、遺伝子を含む染色体があります。ふだんは観察しにくい染色体が、分裂のときには太く短くなって見えます。分裂に先立って染色体が複製され、その後に中央に並び、複製されたものどうしが分かれて両側に移動します。それぞれの側に核ができ、細胞が2つに分かれます。図1のように、植物では中央に仕切りができることで、2つの細胞になります。

図1は、複製された染色体が中央に並んだ状態からを示した模式図です。左右に分かれた後も、各細胞には分裂前と同じ数の染色体が受け継がれます。図中の色は動きを追う目印であり、実際の染色体の色ではありません。分裂直後の細胞は小さく、その後に大きくなります。したがって「分裂した瞬間に根の長さが2倍になる」とは考えません。
観察には、分裂中の細胞が多い根の先端に近い部分を使います。学校の実験では、うすい塩酸で細胞どうしを離れやすくし、酢酸オルセイン液や酢酸カーミン液などで核や染色体を染めます。試料を薄く広げるのは、細胞が重なって見えにくくなるのを防ぐためです。薬品や加温を伴う操作は先生の指示に従い、保護眼鏡を使い、薬品を皮膚や目につけないようにします。カバーガラスを割らないよう、押し広げる操作にも注意が必要です。
生殖は新しい個体をつくること
生物が自分と同じ種類の新しい個体をつくることを生殖といいます。受精によらない生殖が無性生殖です。単細胞生物が分裂して個体数を増やす場合や、ヒドラがからだの一部に芽をつくる出芽が例です。同じ細胞分裂でも、多細胞生物の根が伸びる場合は、個体数が増えないので、それだけで生殖とはいいません。
植物の根・茎・葉などから新しい個体ができる無性生殖を、栄養生殖といいます。ジャガイモのいもは地下の茎で、芽から新しい個体が育ちます。イチゴが地表をはう茎を伸ばして子株をつくることも例です。無性生殖では、子は基本的に親と同じ遺伝子を受け継ぎます。ただし、日当たりや水分などの環境が違えば、育ち方まで同じになるとは限りません。
受精から新しいからだができる
精子と卵、精細胞と卵細胞のような、生殖に関わる特別な細胞を生殖細胞といいます。これらが合体し、核が合体することを受精といい、受精による生殖が有性生殖です。動物では精子と卵が受精し、受精卵ができます。受精卵は体細胞分裂を繰り返し、からだのつくりを変えながら育ちます。受精卵が細胞分裂を始め、個体としてのからだができていく過程を発生といい、その初期のものを胚と呼びます。
被子植物では、花粉が柱頭につく受粉の後に花粉管が伸びます。花粉管の中を精細胞が移動し、胚珠の中の卵細胞と受精します。受精卵は胚になり、胚珠は種子に、子房は果実になります。花粉そのものを精細胞と呼んだり、受粉した瞬間に受精が終わると考えたりしないようにしましょう。
例題で解き方を確かめる
例題1 細胞分裂の写真を並べる
根の同じ部分から、A「染色体が両側へ分かれている」、B「核が2つでき、中央に仕切りができている」、C「染色体が中央に並んでいる」という3種類の写真が得られました。分裂の進む順序と、異なる状態の細胞が同時に見える理由を答えます。
- まず中央に並んだCを探します。これから染色体が両側へ分かれる位置にあるためです。
- 次に、移動中のAを置きます。それぞれの細胞に染色体を分ける段階だからです。
- 最後に、核と仕切りができたBを置きます。2つの細胞へ分かれる段階に進んでいるためです。
答えはC → A → Bです。細胞ごとに分裂が始まる時刻が異なるので、1つの試料で異なる段階が見えます。写真は1個の細胞を追跡した映像とは違います。撮影した位置の順に並べず、細胞内で起きている変化を読み取ります。
例題2 分裂後の細胞数を求める
最初に1個の細胞があります。すべての細胞が1回ずつ2つに分かれることを3回繰り返すと、何個になりますか。ただし、途中で失われる細胞はないものとします。
- 1回後を1 × 2 = 2個とします。1個から2個になる分裂だからです。
- 2回後を2 × 2 = 4個とします。増えた2個の両方が分裂するためです。
- 3回後を4 × 2 = 8個とします。毎回1個を足すのではなく、全細胞が2倍になる条件だからです。
答えは8個です。式をまとめると、1 × 2 × 2 × 2 = 8個です。この計算は細胞数を求めるもので、からだの長さや重さが8倍になることを意味しません。また、ここでの「3回」は全細胞がそろって分裂する回数であり、実際の根の細胞が必ず一斉に分裂するわけでもありません。
例題3 花粉から種子までを説明する
図2を使い、花粉が柱頭についてから胚ができるまでを説明します。あわせて、種子になる部分を答えましょう。

- 図2の上端で、花粉がついた柱頭を見つけます。受粉が起こる場所が流れの出発点だからです。
- 橙色の花粉管を柱頭から下へたどります。精細胞が花粉管の中を通って胚珠へ運ばれる道筋を確認するためです。
- 胚珠の中の卵細胞に注目します。ここで精細胞と卵細胞が受精し、受精卵ができるためです。
- 受精卵と胚珠のその後を分けて答えます。1個の細胞と、それを含む部分全体では、変化した後の名前が違うためです。
答えは受粉 → 花粉管が伸びる → 精細胞と卵細胞が受精する → 受精卵が分裂して胚になるです。種子になるのは胚珠です。図2では位置関係を見やすくするため、花びらなどを省き、胚珠を大きく描いています。受精卵が種子全体になるのではなく、種子の中で新しい植物のもとになる胚へ育つと説明します。
例題4 染色体数を追う
ある動物の体細胞1個にある染色体を12本とします。卵、精子、受精卵、受精卵が体細胞分裂してできた各細胞の染色体数を求めます。
- 生殖細胞をつくるときの減数分裂に注目します。染色体数が体細胞の半分になる分裂だからです。卵も精子も12 ÷ 2 = 6本です。
- 受精では6 + 6 = 12本とします。卵と精子の両方から染色体を受け継ぐためです。
- その後の各細胞も12本とします。体細胞分裂では、分裂前と同じ数が各細胞に受け継がれるためです。
答えは順に6本、6本、12本、12本です。問われているのは「各細胞の染色体数」です。分裂後の2個をまとめた合計を答えないよう、何個の細胞についての数かを最初に確認します。
つまずきやすいところと直し方
「分裂なら染色体も毎回半分になる」
細胞が2つになるので染色体も半分になる、という考え方は、分裂前の複製を見落としています。体細胞分裂では複製された染色体が分かれ、各細胞に同じ数が受け継がれます。一方、減数分裂では染色体数が半分になります。図3のように、分裂の種類と受精の前後をセットにして整理します。

図3の12本と6本は、例題4の動物についての数です。すべての生物で同じ数という意味ではありません。受精で2つの細胞の染色体が合わさる前に半分にしておくことで、親から子へと世代を重ねても、その生物の染色体数が保たれます。「半分にする」「合わせる」「同じ数を保つ」のどの変化なのかを、矢印ごとに読んでください。
「1個体だけなら必ず無性生殖」
1個体で子をつくれば無性生殖だと判断すると、同じ個体の花粉による受粉を取り違えます。同じ個体に由来する生殖細胞どうしでも、受精があれば有性生殖です。逆に、茎の一部から新しい個体が育つ栄養生殖では、受精を経ません。親の個体数を数える前に、精細胞と卵細胞などの合体があるかを見ます。
同じ植物が有性生殖と無性生殖の両方を行うこともあります。ジャガイモという生物名だけで決めず、「いもの芽から育つ」のか「受精を経てできた種子から育つ」のか、問題に書かれた増え方を読み分けます。
「受粉と受精は同じできごと」
どちらも花に関係するため同じだと考えがちですが、起こる場所も段階も違います。受粉は花粉が柱頭につくこと、受精は胚珠の中で精細胞と卵細胞が合体し、核が合体することです。間に花粉管の伸長があります。図2に戻り、柱頭には「受粉」、卵細胞の近くには「受精」と対応させると、言葉の区別が位置の区別になります。
練習問題
練習1
根の成長を説明する文として、「細胞分裂で細胞数が増える」に何を加えるとよいですか。また、根のどのあたりで細胞分裂が盛んですか。
練習2
最初に2個の細胞があります。すべての細胞が1回ずつ2つに分かれることを4回繰り返しました。失われる細胞がなければ、細胞は何個になりますか。
練習3
イチゴの地表をはう茎から子株ができる増え方と、同じ個体の花粉が受粉し、受精を経て種子ができる増え方を、それぞれ分類してください。
練習4
ある動物の体細胞の染色体数は20本です。精子と受精卵の染色体数を答え、生殖細胞の染色体数が半分になる分裂の名前を書いてください。
答えと解説
練習1:それぞれの細胞が大きくなること。分裂が盛んなのは根の先端に近い部分です。 細胞数と細胞の大きさを分けて説明します。根冠そのものと混同しないようにします。
練習2:32個です。 2 × 2 × 2 × 2 × 2 = 32個です。最初の2は初めの細胞数で、残りの4つの2が4回の分裂に対応します。
練習3:前者は栄養生殖という無性生殖、後者は有性生殖です。 同じ個体に由来する生殖細胞でも、受精があれば有性生殖です。
練習4:精子は10本、受精卵は20本、分裂の名前は減数分裂です。 20 ÷ 2 = 10本となり、受精で10 + 10 = 20本に戻ります。
次の単元へのつながりと家庭での確かめ方
次の遺伝の学習では、染色体にある遺伝子がどのように親から子へ受け継がれるかを考えます。体細胞分裂と減数分裂の違い、受精で両方の親から染色体を受け継ぐことが、その土台になります。
家庭では5分ほどで、紙に1個、2個、4個の丸を順に描き、線で親子関係を結んでみましょう。各丸に同じ本数の短い線を描くと、細胞数が増えることと各細胞の染色体数が保たれることを区別できます。もう1つは、紙に「柱頭・花粉管・胚珠・受精卵・胚」と書き、図2を見ずに順序と位置関係を説明する方法です。
個別指導で確かめるときは、図のどこで説明が止まるかを見て、必要なら細胞の核や花のつくりまで戻ります。お子さまが用語を言えても、矢印の前後で何が変わるかを説明できるか、もう一段確かめます。
まとめ
分裂の図を見たときには、まず「細胞の数」と「各細胞の染色体数」を別々に読みます。花の図なら、器官の名前を答えたあとに、その場所で起こる変化を付け加えます。この読み方なら、見慣れない図でも、覚えた用語を順序立てて使えます。
「分裂だから半分」と書く前に、何が分かれ、何が保たれるのかを確かめましょう。成長と生殖の理解は、細胞が増える矢印と染色体を受け継ぐ矢印を区別するところから確かになります。





