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【化学】電解質水溶液の平衡を図解で総まとめ—電離定数・pH の計算・緩衝液・塩の加水分解・溶解度積|武蔵野個別指導塾

弱酸のpH、緩衝液への酸の添加、塩の加水分解、沈殿の判定を反応式からたどります。濃度と物質量を使い分ける4つの例題と3枚の図で、近似の条件まで確かめられます。
よくあるのは、駅前の本屋の参考書の棚で弱酸の問題を開き、同じ濃度なのに塩酸と酢酸のpHが違う理由を説明できず、次のページの緩衝液でさらに手が止まるという場面です。濃度をそのまま水素イオン濃度にしてよい問題と、平方根を使う問題が並ぶと、公式の使い分けだけが増えたように見えます。
この違いをほどく出発点は、水に溶かした量と、実際にイオンになっている量を区別することです。中和でも沈殿でも、まず何が反応し、反応後にどの粒子が残るかを追うと、計算の順番が決まります。弱酸の電離、緩衝液、塩の液性、溶解度積は、別々の暗記項目ではなく、水溶液中の平衡を異なる場面で調べる内容です。式に入れる数値の意味を確かめながら、pHや沈殿の有無を自分で判断できるようにしましょう。
この単元で身につけること
- 電離定数から弱酸の電離の程度を考えます。溶かした濃度のうち、どれだけがH⁺と陰イオンに分かれたかを、反応式の係数に合わせて表します。
- 水のイオン積とpHを結びつけます。H⁺とOH⁻の一方がわかれば他方を求められ、酸性・中性・塩基性を濃度の大小で説明できます。
- 緩衝液に酸や塩基を加えた後のpHを求めます。最初に中和による物質量の増減を処理し、その後で平衡の式を使う順序を身につけます。
- 塩の加水分解から液性を判定します。塩をつくるイオンのうち、水と反応してH⁺やOH⁻を生じるものを見つけます。
- 溶解度積を使って沈殿を判定します。混合による希釈を計算し、沈殿前のイオンの濃度の積が、平衡で許される値を超えるかを比べます。
化学基礎で学んだ物質量、モル濃度、中和の量的関係に、化学で学ぶ可逆反応と平衡定数の考え方を重ねる単元です。計算が止まったときは、平衡の公式を増やす前に、molとmol/Lのどちらを扱っているかを見直します。
基本の考え方
電離定数は平衡での濃度の関係を表す
電解質は、水に溶けるなどして陽イオンと陰イオンを生じる物質です。水溶液中でほぼ完全に電離するものを強電解質、一部だけが電離するものを弱電解質といいます。弱酸である酢酸は、水溶液中でCH₃COOHとして存在するものと、電離したものとが共存します。電離とその逆向きの反応は同時に起こり、両方向の反応速度が等しくなった状態が電離平衡です。
CH₃COOH ⇄ H⁺ + CH₃COO⁻
ここでH⁺は、水溶液中の水素イオンを高校化学で用いる形で表したものです。実際には水分子と結びついており、H₃O⁺と表すこともあります。以下では反応式を見通しよくするためH⁺を使い、水溶液は十分に薄く、濃度で平衡を扱えるものとします。
1価の弱酸をHA、その陰イオンをA⁻と書けば、反応式はHA ⇄ H⁺ + A⁻です。角括弧はその粒子のモル濃度を表し、酸の電離定数Kₐは次の式で表せます。
Kₐ = [H⁺][A⁻]/[HA]
Kₐが一定なのは、温度が一定のときです。値が大きい酸ほど、同じ濃度で比べたときに電離しやすいと考えられます。「酸が強い」は電離のしやすさを述べた言葉であり、「濃い」は溶液中に含まれる酸の量が多いことを述べた言葉です。濃い弱酸と薄い強酸のpHの大小は、名称だけでは決まりません。
弱酸だけを濃度c mol/Lになるように溶かし、そのうちx mol/Lが電離したとします。水から生じるH⁺を無視できる条件なら、平衡で[HA] = c − x、[H⁺] = [A⁻] = xです。図1のように、酸が減った量と、それぞれのイオンが増えた量は反応式の1:1:1に対応します。H⁺とA⁻を合わせて2xになるからといって、HAから2xを引いてはいけません。

この濃度を代入すると、Kₐ = x²/(c − x)となります。電離した割合が十分に小さいときはc − x ≒ cと置けるため、x ≒ √(Kₐc)を得ます。この式は弱酸なら無条件に使える公式ではありません。求めたxについてx/cが十分に小さいかを確かめて、近似の妥当性を判断します。
電離度αは、溶かした電解質のうち電離した割合で、この場合はα = x/cです。αが小さい範囲ではα ≒ √(Kₐ/c)なので、同じ弱酸を薄めると電離度は大きくなります。一方、[H⁺] ≒ √(Kₐc)は小さくなります。電離する「割合」が増えても、単位体積中の水素イオンの「量」が増えるとは限らないことに注意しましょう。
水のイオン積とpHをつなぐ
水もごくわずかに電離しており、その平衡を簡潔にH₂O ⇄ H⁺ + OH⁻と表します。水のイオン積Kwは[H⁺][OH⁻]で、以下の数値計算では教科書で用いる25 ℃の値Kw = 1.0×10⁻¹⁴ (mol/L)²を使います。問題に別の温度や定数が示された場合は、その条件を優先します。
25 ℃の中性水溶液では[H⁺] = [OH⁻] = 1.0×10⁻⁷ mol/Lです。酸性なら[H⁺] > [OH⁻]、塩基性なら[H⁺] < [OH⁻]となります。酸性の水溶液にもOH⁻はあり、塩基性の水溶液にもH⁺はあります。どちらかが完全になくなるという意味ではありません。
pHは[H⁺]をmol/Lで表した数値について、常用対数をとり、符号を反転させた値です。高校化学ではpH = −log₁₀[H⁺]と書きます。対数の中に入れるのは濃度の数値で、pHそのものには単位を付けません。[H⁺]が1.0×10⁻³ mol/LならpHは3.00、1.0×10⁻⁵ mol/Lなら5.00です。pHが1増えると[H⁺]は10分の1になります。
OH⁻から考える場合は、pOH = −log₁₀[OH⁻]を用いると、25 ℃ではpH + pOH = 14.00となります。塩基性の計算でも、Kwを使って[H⁺]に直してからpHを求める方法と同じ結果になります。非常に薄い酸や塩基では水の電離を無視できなくなるため、加えた酸の濃度だけでpHを決める近似から外れることも覚えておきましょう。
緩衝液・加水分解・沈殿も平衡で考える
緩衝液とは、少量の酸や塩基を加えてもpHが変わりにくい溶液です。代表例は、酢酸と酢酸ナトリウムをともに含む水溶液です。酢酸ナトリウムはほぼ完全に電離し、CH₃COO⁻を供給します。酸を加えるとCH₃COO⁻ + H⁺ → CH₃COOH、塩基を加えるとCH₃COOH + OH⁻ → CH₃COO⁻ + H₂Oの反応が起こり、加えたH⁺やOH⁻の大部分が消費されます。
電離定数の式を変形すると、[H⁺] = Kₐ[HA]/[A⁻]です。両成分が十分に存在し、電離などによる増減が小さければ、中和後のHAとA⁻の濃度をここに入れられます。同じ溶液の体積で割るので、濃度比は物質量の比に置き換えられます。ただし、これは比の中で体積が打ち消し合うためです。Kₐの元の式へmolをそのまま代入してよいわけではありません。
一方、塩だけを水に溶かした場合にも、そのイオンが水と反応することがあります。この反応を塩の加水分解といいます。酢酸ナトリウムのCH₃COO⁻は、水からH⁺を受け取ってCH₃COOHになり、OH⁻が生じます。
CH₃COO⁻ + H₂O ⇄ CH₃COOH + OH⁻
そのため酢酸ナトリウム水溶液は塩基性です。逆に塩化アンモニウムのNH₄⁺は、NH₄⁺ ⇄ H⁺ + NH₃と表せる反応でH⁺を生じ、酸性になります。NaClのNa⁺とCl⁻は高校化学で扱う条件では加水分解をほぼ起こさないため、その水溶液は中性です。強酸と強塩基からできた塩、弱酸と強塩基からできた塩、強酸と弱塩基からできた塩を、イオンの反応まで書いて整理します。弱酸と弱塩基からできた塩は、両方の作用の強さを比べる必要があり、名前だけで中性とは決められません。
難溶性の塩にも、固体が溶ける反応とイオンが固体に戻る反応の平衡があります。AgClではAgCl(固)⇄ Ag⁺ + Cl⁻です。固体が共存する飽和溶液で、Kₛₚ = [Ag⁺][Cl⁻]が成り立ち、このKₛₚを溶解度積と呼びます。固体そのものの量はこの式に入れません。沈殿前の濃度の積をQとすると、Q > Kₛₚなら沈殿が生じる方向に進みます。Q < Kₛₚなら未飽和、Q = Kₛₚなら飽和の境界です。
例題で解き方を確かめる
例題1 弱酸のpHと近似の確認
25 ℃で、0.10 mol/Lの酢酸水溶液のpHを求めます。Kₐ = 1.8×10⁻⁵ mol/Lとし、水の電離を無視します。電離による酢酸の濃度変化は小さいと近似し、計算後に確かめます。必要に応じてlog₁₀1.34 = 0.127を使い、pHは小数第2位まで示します。
- 電離した濃度をx mol/Lと置きます。CH₃COOHが1だけ電離するとH⁺とCH₃COO⁻がそれぞれ1生じるので、Kₐ = x²/(0.10 − x)となります。
- 0.10 − x ≒ 0.10と近似して、x ≒ √(1.8×10⁻⁵×0.10) = 1.34×10⁻³ mol/Lを得ます。平方根をとるのは、H⁺とCH₃COO⁻の濃度が等しく、その積がx²だからです。
- x/0.10 ≒ 0.013、すなわち電離度は約1.3%です。酢酸の濃度変化は小さく、水の電離による濃度も求めたxに比べて十分小さいため、今回の近似と整合します。
- pH = −log₁₀(1.34×10⁻³) = 3 − 0.127 ≒ 2.87とします。濃度を有効数字2桁で表すと1.3×10⁻³ mol/Lですが、対数計算の途中では余分な桁を残します。
答え:近似によるpHは2.87、電離度は約1.3%です。
近似せずにx²/(0.10 − x) = 1.8×10⁻⁵を解くと、xは約1.33×10⁻³ mol/Lです。近似による濃度との差は約0.7%です。近似しない場合のpHは約2.88となり、今回は丸める位置の近くにあるため、小数第2位まで示すと0.01の違いが出ます。近似の確認では、単に「弱酸だから」と書くより、求めた電離度を添えると判断の根拠が伝わります。
例題2 緩衝液に強酸を加える
25 ℃で、0.10 mol/Lの酢酸100 mLと0.10 mol/Lの酢酸ナトリウム水溶液100 mLを混合します。これにHClを1.0×10⁻³ mol加えたとき、添加前後のpHを求めます。Kₐ = 1.8×10⁻⁵ mol/Lとし、緩衝液中の電離・加水分解による各成分の物質量の変化は、中和による変化に比べて小さいものとします。log₁₀1.8 = 0.255、log₁₀2.2 = 0.342を使います。
- 反応前の物質量を求めます。酢酸、酢酸イオンの供給量はともに0.10×0.100 = 0.010 molです。体積をLに直すのは、濃度の単位がmol/Lだからです。
- 添加前は[HA]/[A⁻] ≒ 1なので、[H⁺] ≒ 1.8×10⁻⁵ mol/L、pH ≒ 4.74です。同量という条件があるため比が1になるのであって、緩衝液ならいつでも[H⁺] = Kₐになるわけではありません。
- 加えたH⁺は主にA⁻と反応します。中和後はHAが0.010 + 0.0010 = 0.011 mol、A⁻が0.010 − 0.0010 = 0.0090 molです。平衡の計算の前に、速やかに進む中和を物質量で処理します。
- [H⁺] ≒ 1.8×10⁻⁵×(0.011/0.0090) = 2.2×10⁻⁵ mol/Lより、pH ≒ 5 − 0.342 = 4.66です。両成分は同じ全体積中に存在するので、体積の値を求めなくても比を使えます。
答え:pHは添加前が約4.74、添加後が約4.66です。
図2のように、酸を加えると酢酸が増え、酢酸イオンが同じ物質量だけ減ります。図では1 mmol = 1.0×10⁻³ molとして、10 mmolずつから11 mmolと9 mmolへの変化を示しています。H⁺がそのまま蓄積するのでなく、比が少し変わることでpHが決まる点を読み取ります。

緩衝作用には限界があります。今回のA⁻の供給量を使い切るほど強酸を加えると、添加した酸を消費する相手が不足します。また、両成分を同じ割合で薄めれば濃度比はほぼ保たれますが、同じ体積中で酸や塩基を受け止める量は小さくなります。「pHが変わりにくい」と「どれだけ加えても変わらない」は違います。
例題3 酢酸ナトリウム水溶液のpH
25 ℃で、0.10 mol/Lの酢酸ナトリウム水溶液のpHを求めます。酢酸のKₐ = 1.8×10⁻⁵ mol/L、水のKw = 1.0×10⁻¹⁴ (mol/L)²とします。加水分解はわずかとし、水だけから生じるOH⁻は無視します。log₁₀7.45 = 0.872を使います。
- CH₃COO⁻ + H₂O ⇄ CH₃COOH + OH⁻を書き、OH⁻が生じると判断します。Na⁺はこの加水分解の式に入らないため、酢酸イオンに注目します。
- この反応の平衡定数をKₕとすると、Kₕ = [CH₃COOH][OH⁻]/[CH₃COO⁻]です。これに酢酸のKₐを掛けると、酢酸と酢酸イオンの濃度が打ち消し合い、KₐKₕ = [H⁺][OH⁻] = Kwとなります。したがってKₕ = Kw/Kₐ = 5.6×10⁻¹⁰ mol/Lです。
- 生じたOH⁻の濃度をy mol/Lとすると、Kₕ = y²/(0.10 − y) ≒ y²/0.10です。途中でKₕを丸めずに計算すると、y ≒ 7.45×10⁻⁶ mol/Lとなり、y/0.10は約7.5×10⁻⁵なので濃度変化を無視する近似が成り立ちます。
- pOH ≒ 6 − 0.872 = 5.13なので、pH ≒ 14.00 − 5.13 = 8.87です。OH⁻を求めた直後の対数はpHではなくpOHであることを確かめます。
答え:pHは約8.87で、塩基性です。
例題1と似た平方根の計算でも、求めたイオンは異なります。弱酸の電離ではH⁺、酢酸イオンの加水分解ではOH⁻が生じます。式の形だけを覚えず、反応式の右辺に印を付けると取り違えを減らせます。
例題4 混合による沈殿の判定
25 ℃で、4.0×10⁻⁵ mol/LのAgNO₃水溶液50 mLと、同濃度のNaCl水溶液50 mLを混ぜます。AgClのKₛₚ = 1.8×10⁻¹⁰ (mol/L)²として、沈殿が生じるか判定します。体積は加算できるものとし、他の反応は考えません。
- 混合後の全体積を100 mLとします。それぞれの溶液の体積が2倍に薄まるため、沈殿がまだ生じていないと考えた濃度は[Ag⁺] = [Cl⁻] = 2.0×10⁻⁵ mol/Lです。
- 濃度の積Q = (2.0×10⁻⁵)×(2.0×10⁻⁵) = 4.0×10⁻¹⁰ (mol/L)²を計算します。沈殿する前の濃度で、固体をつくる方向に進むかを調べるためです。
- Q > KₛₚなのでAgClが沈殿します。沈殿後はAg⁺とCl⁻が減り、固体が共存する平衡では濃度の積がKₛₚになります。混合直後のQを、沈殿後も維持される値として扱わないようにします。
答え:Q = 4.0×10⁻¹⁰ (mol/L)² > Kₛₚなので、AgClの沈殿が生じます。
つまずきやすいところと直し方
濃度をそのまま水素イオン濃度にする
誤った書き方は「0.10 mol/Lの酢酸だから[H⁺] = 0.10 mol/L」です。どこが違うかというと、溶かした酢酸の全量が電離するものとして数えている点です。酢酸の大部分は分子のまま存在するため、全濃度と水素イオン濃度を分ける必要があります。
正しい書き方は「[H⁺] = x、[CH₃COO⁻] = x、[CH₃COOH] = 0.10 − xと置き、Kₐ = x²/(0.10 − x)を使う」です。図1の3つの欄に戻って、減る成分と増える成分を対応させます。強酸の水溶液でも極端に薄い場合は水の電離が無視できないため、最初に問題の条件を読む習慣が役立ちます。
緩衝液の中和を省略する
誤った書き方は「酢酸と酢酸イオンが同量だったので、HCl添加後も[H⁺] = Kₐ」です。どこが違うかというと、添加したH⁺が酢酸イオンを消費し、酢酸を増やしたことを反映していません。緩衝液のpHは一定に固定されるのでなく、少量の添加に対して変わり方が小さくなります。
正しい書き方は「中和後のn(HA)とn(A⁻)を求め、[H⁺] ≒ Kₐ n(HA)/n(A⁻)とする」です。nは物質量を表します。酸を加えたのにpHが上がる答えになった場合は、濃度比を逆にしていないかを確かめます。塩基を加えた場合はHAが減りA⁻が増えるため、H⁺の濃度は下がり、pHは上がる方向です。
混ぜる前の濃度で沈殿を判定する
誤った書き方は「例題4のQ = (4.0×10⁻⁵)²」です。どこが違うかというと、混合により各イオンが存在する体積が増えたことを無視しています。正しい書き方は「各イオンの物質量を全体積で割り、その濃度の積Qを求める」です。沈殿の境界に近い問題では、この希釈の見落としが判定を逆にします。
図3の曲線は、[Ag⁺][Cl⁻] = 1.8×10⁻¹⁰ (mol/L)²を満たす境界です。横軸・縦軸とも、目盛り1は1.0×10⁻⁵ mol/Lを表します。同じ[Cl⁻]で比べると、曲線より上はQ > Kₛₚ、下はQ < Kₛₚです。点Pは例題4の混合直後の濃度で、曲線より上にあります。点Rは両イオンが1.0×10⁻⁵ mol/Lずつの場合で、沈殿は生じません。

同じ溶解度積でも、イオンの係数が違えば式は変わります。例えばCaF₂(固)⇄ Ca²⁺ + 2F⁻では、Kₛₚ = [Ca²⁺][F⁻]²です。純水中でのモル溶解度をs mol/Lとし、他の反応を無視できるなら[Ca²⁺] = s、[F⁻] = 2sよりKₛₚ = s(2s)² = 4s³となります。すべての塩にKₛₚ = s²を使うのは誤りです。
また、AgClの純水中のモル溶解度をsとすればKₛₚ = s²ですが、初めからCl⁻がある溶液では[Cl⁻] = sではありません。共通するイオンを加えると電離や溶解が抑えられる現象を共通イオン効果といいます。酢酸ナトリウムを加えて酢酸の電離が抑えられることも、同じ見方で説明できます。
練習問題
以下はすべて25 ℃とし、Kw = 1.0×10⁻¹⁴ (mol/L)²を使います。弱酸の電離は小さく、水の電離は必要な濃度に比べて無視できるものとします。pHは小数第2位まで、濃度や物質量の答えは有効数字2桁を目安に示します。
練習1
濃度0.020 mol/L、Kₐ = 5.0×10⁻⁶ mol/Lの1価の弱酸HAがあります。[H⁺]、pH、電離度を近似で求めてください。また、電離によるHAの濃度変化を無視してよいか説明してください。
練習2
HAを0.020 mol、A⁻を0.010 mol含む緩衝液に、NaOHを0.0050 mol加えます。Kₐ = 1.0×10⁻⁵ mol/Lとして、中和後の各成分の物質量とpHを求めてください。中和後も両成分が十分に残り、電離などによる物質量の変化は無視できるものとします。
練習3
NaCl、CH₃COONa、NH₄Clをそれぞれ水に溶かしたときの液性を答えてください。酸性または塩基性になるものについては、その原因となるイオンの反応式も書いてください。空気中の気体の溶解は考えません。
練習4
2.0×10⁻⁵ mol/LのAgNO₃水溶液50 mLと、同濃度のNaCl水溶液50 mLを混ぜます。体積は加算でき、AgClのKₛₚ = 1.8×10⁻¹⁰ (mol/L)²とします。沈殿の有無を判定してください。さらに、他の反応を無視したときのAgClの純水中のモル溶解度を求めてください。
答えと解説
練習1:[H⁺] ≒ √(5.0×10⁻⁶×0.020) = 3.2×10⁻⁴ mol/L、pH ≒ 3.50、電離度は約0.016、すなわち約1.6%です。pHには丸める前の濃度を用います。電離度は十分小さく、今回の条件ではHAの濃度を0.020 mol/Lとする近似が使えます。
練習2:HA + OH⁻ → A⁻ + H₂Oなので、HAは0.020 − 0.0050 = 0.015 mol、A⁻は0.010 + 0.0050 = 0.015 molです。両成分の比が1となり、[H⁺] ≒ Kₐ = 1.0×10⁻⁵ mol/L、pH ≒ 5.00です。添加前の物質量の比をそのまま使わないことが要点です。
練習3:NaClは中性、CH₃COONaは塩基性、NH₄Clは酸性です。CH₃COO⁻ + H₂O ⇄ CH₃COOH + OH⁻によりOH⁻が生じ、NH₄⁺ ⇄ H⁺ + NH₃によりH⁺が生じます。塩に水素原子が含まれるかどうかで液性を決めず、水溶液中のイオンの反応を根拠にします。
練習4:混合後は[Ag⁺] = [Cl⁻] = 1.0×10⁻⁵ mol/Lなので、Q = 1.0×10⁻¹⁰ (mol/L)² < Kₛₚとなり、沈殿は生じません。図3の点Rに対応します。純水中のモル溶解度はs = √Kₛₚ = 1.3×10⁻⁵ mol/Lです。混合した未飽和溶液の濃度と、固体が溶けて飽和したときの濃度を区別します。
次の単元へのつながりと家庭での確かめ方
水溶液の平衡は、無機化学で金属イオンを沈殿として分離するときや、有機化学で酸と塩の性質を考えるときに使います。反応式を覚えた後に、「どの粒子の濃度を増やすと、どちら向きに進むか」と問い直すと、生成物の名前だけでなく、条件と反応の関係まで説明できます。
家での5分の確認は、紙と筆記具だけでできます。1つ目は、酢酸・酢酸ナトリウム・両者の混合液を横に並べ、主に存在する粒子とH⁺またはOH⁻を生む反応式を書く方法です。2つ目は、例題4の混合前の濃度だけを半分にし、沈殿の判定がどう変わるかを計算する方法です。薬品を用意する必要はありません。
個別指導で確かめる場合は、pHの対数操作だけでなく、濃度からmolへの換算、反応式の係数、混合後の全体積まで戻って答案を読みます。式を選び間違えたのか、式に入れる量を作り間違えたのかが区別できると、練習する箇所が具体的になります。
まとめ
答えが出ても、[H⁺]を求めたのか[OH⁻]を求めたのか、反応前の量か平衡での量かを言葉にして確かめましょう。近似には「小さいとみなした変化」があり、沈殿の判定には「まだ沈殿していないとして求めた濃度」があります。その前提を一言添えるだけで、計算の道筋を後から点検できる答案になります。
平衡計算の確かさは、公式の数ではなく、式の中の濃度がどの時点のどの粒子を表すかで決まります。
本気になった日が、入塾の日。
お子様の教育、迷ったら「丸投げ」してください。必ず、期待以上の結果で返します。武蔵野で育む、武蔵境で学ぶ。
電話は年中無休。365日、24時間、お電話可能。




