関係詞のつまずきは語順の切り替えと埋め込みの往復で起きる|武蔵野個別指導塾が薦める学習の仕方

連載「単元別のつまずき研究——その単元で、生徒は実際に何をどう誤るか」全50回の第39回です。学習の仕方の目次を見る

「彼が昨日買った本は面白い」という一文を、生徒が「彼が、昨日、本を買った。面白い」と順番に訳してしまう。関係詞の学習でよく見る場面です。単語は読めているのに、文の構造が取れず、結果として意味がずれてしまうのです。

関係詞は、文法問題として解くだけなら「先行詞が人だから who」「目的格だから whom」という選び方で乗り切れることもあります。しかし、長文読解や英作文になると、埋め込まれた文がどこから始まり、どこで終わるのかを処理できずに崩れてしまいます。今回は、この「埋め込み文の処理」に焦点を当てます。

本記事では、関係詞のつまずきを「知識不足」ではなく「文を処理する際の負荷」という観点から整理します。そのうえで、実際の誤答例と、机の前で1対1で確かめる手順を示します。研究知見を根拠にしながらも、教室で使える具体的な動きに落とし込むことを目指します。

なお、本記事で扱うのは英語の関係詞です。国語の連体修飾節とは区別して読み進めてください。

要点(結論から)

  • 関係詞の誤りは、who と which の選択ミスよりも、埋め込まれた節の範囲を正しく捉えられないことに集中します。
  • 主格・目的格の区別ができていても、関係詞節が長くなると処理が破綻しやすくなります。
  • 学習者は、関係詞節の終わりを早く閉じすぎたり、逆に主節の述語まで関係詞節に含めてしまったりします。

結論——関係詞のつまずきは「選び方」より「埋め込み文の切れ目」で起きる

  • 関係詞の誤りは、who と which の選択ミスよりも、埋め込まれた節の範囲を正しく捉えられないことに集中します。
  • 主格・目的格の区別ができていても、関係詞節が長くなると処理が破綻しやすくなります。
  • 学習者は、関係詞節の終わりを早く閉じすぎたり、逆に主節の述語まで関係詞節に含めてしまったりします。
  • 埋め込み文の処理負荷は、関係詞節が主語の位置に来るか目的語の位置に来るかで変わります。
  • 指導では、関係詞の「訳し方」だけでなく、節の始まりと終わりを括弧で示す作業を先に徹底することが有効です。

理由——埋め込み文は処理の負荷が高い

関係詞節は文の中に文を入れる作業である

関係詞の本質は、ある名詞を修飾する文を、別の文の中に埋め込むことです。たとえば「The book is interesting.」と「I bought the book yesterday.」を組み合わせると、「The book that I bought yesterday is interesting.」となります。このとき、学習者は「The book is interesting.」という主節の骨格を保持しながら、その主語に「I bought yesterday」という別の文を差し込む処理をしなければなりません。

この処理は、文を最後まで読むまで主節の述語が現れないという負荷を生みます。主語の直後に動詞が来るという英語の基本的な語順の期待が裏切られるため、学習者は一時的に「文の骨格を見失った」状態になります。文法知識として関係詞を理解していても、この処理負荷が残る点が、つまずきの背景にあります。

埋め込み文の処理負荷については、次の研究が理論的な枠組みを提供しています。

Gibson E. Linguistic complexity: locality of syntactic dependencies. Cognition. 1998;68(1):1-76.

この研究は、文の複雑さを「統語的な依存関係の距離」から説明します。関係詞節のように、離れた要素同士を結びつける必要がある文では、その距離が長くなるほど処理の負荷が高まるという考え方です。教室の言葉で言えば、「関係詞が入ると文が読みにくい」のは、学習者の努力不足ではなく、文の構造そのものが持つ性質だということになります。

主語の位置の関係詞節は特に負荷が高い

関係詞節が主語に付く場合と目的語に付く場合では、処理の難しさが異なります。たとえば「The student who read the book answered the question.」では、主語「The student」の直後に関係詞節が入り、主節の述語「answered」がかなり後ろに来ます。一方、「I know the student who read the book.」では、主節の述語「know」が先に現れるため、文の骨格を早く確定できます。

学習者は、主語の位置に関係詞節が来ると、関係詞節の中の動詞を主節の動詞と誤認しやすくなります。上の例で言えば「read」を主節の述語だと思い込み、「The student read the book answered…」のように文が壊れてしまうのです。これは、英語の語順に対する期待が強いほど起こりやすい誤りです。

第二言語として英語を学ぶ学習者を対象に、関係詞節の処理の難しさを複数の課題で調べた研究があります。

Izumi S. Processing Difficulty in Comprehension and Production of Relative Clauses by Learners of English as a Second Language. Language Learning. 2003;53(2):285-323.

この研究では、関係詞節の習得に関する複数の仮説を、理解と産出の両方の課題で検証しています。結果は、関係詞節の種類によって難しさが一様ではないことを示しており、学習者の処理上の問題を複数の課題で見ることの重要性を指摘しています。つまり、文法問題で正解できることと、実際に文を読んだり書いたりできることは、必ずしも一致しないのです。

「訳す」指導だけでは処理の練習にならない

関係詞の授業では「後ろから前に訳す」という手順がよく教えられます。これは日本語の語順に合わせた便宜的な方法であり、意味を取るための補助としては有効です。しかし、この方法に頼りすぎると、学習者は英語の語順のまま文を処理する力をつける機会を失います。

「後ろから前に訳す」ためには、まず関係詞節がどこで終わるかを特定しなければなりません。ところが、この「切れ目の特定」こそが最も難しい作業です。訳し方の手順を教えても、切れ目を見つける練習をしなければ、長い文では手が止まってしまいます。

指導では、関係詞節の始まりと終わりを括弧で囲む、主節の動詞に下線を引く、といった作業を先に行うことが有効です。これにより、学習者は「文の中に文がある」という構造を視覚的に捉えられます。訳すのは、その構造が確認できた後の仕上げとして位置づけるべきです。

誤答の例——埋め込み文の切れ目を見失う

よくある誤答 その子が考えていること 確かめる問いかけ
The man who lives next door is a doctor. を「その男は、隣に住んでいる。医者です」と訳す who 以下を主節の続きとして読み、is を主節の述語だと思っている 「この文の主語はどこまで? 主節の動詞はどれ?」
The book that I bought yesterday was interesting. を「その本を、私は昨日買った。面白かった」と訳す that 以下を関係詞節と認識できず、bought を主節の動詞と誤認している 「was interesting は誰がどうしたと言っている?」
I know the girl who is playing the piano. を「私はその女の子を知っている。ピアノを弾いている」と訳す 関係詞節の終わりを正しく捉えているが、日本語として自然につなげられない 「ピアノを弾いているのは、誰のこと?」
The student who read the book answered the question. を「その学生は本を読んだ。質問に答えた」と訳す read と answered の両方を主節の動詞として並列に捉えている 「この文の動詞はいくつある? 主節の動詞はどれ?」
This is the house which he lives in. を「これは家です。彼は住んでいます」と訳す 前置詞 in が文末にあることで、関係詞節の終わりが分からなくなる 「in はどの語とつながっている?」

机の前で1対1で確かめる手順は、次のように進めます。

  1. まず、文を音読させます。このとき、関係詞の前で区切らず、文全体を一息で読ませます。読めない場合は、単語の読みではなく文の構造に問題がある可能性が高いです。
  2. 次に、主節の主語と述語を探させます。「この文の中心は誰がどうした?」と問い、主節の動詞に印をつけさせます。関係詞節の中の動詞と主節の動詞を区別できているかを確認します。
  3. 関係詞節の始まりと終わりを括弧で囲ませます。終わりが分からない場合は、主節の動詞の直前までが関係詞節であることを、複数の例文で確認させます。
  4. 括弧で囲んだ部分を「名詞を説明する文」として読み、主節だけを先に訳させます。その後で、修飾部分を付け加えさせます。
  5. 最後に、同じ構造の文を自分で作らせます。主語の位置に関係詞節を入れる文と、目的語の位置に入れる文の両方を作らせ、どちらが難しいかを本人に言葉にさせます。

学年別の注意点です。小学生の場合、英語の関係詞を本格的に学ぶ段階ではないため、日本語の「〜する人」「〜した本」という連体修飾の感覚を育てることが先です。無理に英語の文法用語を持ち込まず、名詞を説明する文があるという意識を日本語で養います。

中学生の場合、関係詞は教科書で触れる程度の段階です。この時期は、関係詞を「後ろから前に訳す」という手順で覚えがちですが、それだけでは長文で使えません。短い文で主節と関係詞節を分ける練習を、音読とセットで行うことが大切です。

高校生の場合、関係詞の種類が増え、前置詞を伴うものや非制限用法も出てきます。この段階では、文法問題の正解率が高い生徒でも、長文の中で関係詞節の切れ目を見失うことがあります。文の骨格を先に取る練習を、読解の冒頭で毎回行うと効果的です。

よくある誤読——研究結果を「難しさの順番」として固定しない

「主語の位置の関係詞節が常に一番難しい」と決めつける誤用

関係詞節の難しさに関する研究は、しばしば「どの型が難しいか」の順位表のように受け取られます。しかし、研究が示しているのは、難しさが課題の種類や学習者の状態によって変わるということです。理解課題で難しい型が、産出課題でも同じように難しいとは限りません。

Izumi S. Processing Difficulty in Comprehension and Production of Relative Clauses by Learners of English as a Second Language. Language Learning. 2003;53(2):285-323.

この研究では、複数の仮説の予測を複数の課題で検証し、課題によって異なる結果が見られたことを報告しています。つまり、「この型が一番難しい」という単純な序列を教室に持ち込むことは、研究の読み方として正確ではありません。指導では、生徒がどの課題でつまずくかを個別に見る必要があります。

「処理負荷が高いから教えない」と後回しにする誤用

埋め込み文の処理負荷が高いという知見は、「だから関係詞は難しい単元だ」という諦めの根拠に使われることがあります。しかし、処理負荷が高いからこそ、構造を可視化する練習が必要だというのが、研究知見を指導に生かす正しい方向です。

Gibson E. Linguistic complexity: locality of syntactic dependencies. Cognition. 1998;68(1):1-76.

この研究は、文の複雑さを理論的に説明するものであり、特定の指導法を推奨するものではありません。しかし、依存関係の距離が負荷を生むという考え方は、文の骨格を先に確認する指導の根拠として読むことができます。難しいから避けるのではなく、難しいからこそ手順を分解して練習するのです。

今週やること——埋め込み文の切れ目を可視化する

  1. 関係詞を含む文を5つ用意し、それぞれについて主節の主語と述語に印をつける練習を毎日5分行います。関係詞節の中の動詞と主節の動詞を色分けすると、構造が見えやすくなります。
  2. 関係詞節を括弧で囲み、その括弧ごと名詞の直後に置き換える練習をします。たとえば「The book that I bought yesterday」を「The book」に置き換えて、主節だけを先に読む練習です。
  3. 自分で関係詞を使った文を2つ作ります。1つは主語の位置に関係詞節を入れた文、もう1つは目的語の位置に入れた文です。作った文を音読し、どちらが読みやすいかを記録します。

この記事で言えないこと

本記事で引用した研究は、第二言語として英語を学ぶ学習者を対象としたものであり、日本の教室で学ぶ中学生・高校生にそのまま当てはまるとは限りません。研究の参加者と、個別指導塾に通う生徒とでは、学習環境や母語の背景が異なるため、結果の一般化には慎重であるべきです。

また、関係詞のつまずきは、本記事で扱った処理負荷以外にも、語彙力や音読の流暢さ、母語での文法理解など、さまざまな要因が関わります。ある生徒が関係詞を苦手とする理由が、必ずしも埋め込み文の処理にあるとは言えません。個別の診断が欠かせません。

さらに、本記事で示した指導手順は、あくまで一つの例です。生徒の年齢や習熟度、学習スタイルによって、適切な手順は変わります。特に、文法用語を使った説明が有効な生徒と、例文のパターンから学ぶ生徒とでは、同じ手順でも効果が異なる可能性があります。

当塾の立場

関係詞の埋め込み文の処理は、家庭でも十分に練習できます。本記事で示した「主節の動詞に印をつける」「関係詞節を括弧で囲む」といった作業は、紙と鉛筆があればできることです。まずは家庭で、短い文から始めてみることをお勧めします。塾に行かなければ身につかない内容ではありません。

そのうえで、塾が担える部分があるとすれば、生徒が自分では気づかない処理の癖を、1対1で観察して指摘することです。たとえば、関係詞節の終わりを毎回早く閉じすぎる生徒には、主節の動詞を探す前に「文末まで目を動かす」という手順を、その場で一緒に繰り返すことができます。このような個別の観察と修正は、集団授業では手が届きにくい部分です。

出典

  1. Izumi S. Processing Difficulty in Comprehension and Production of Relative Clauses by Learners of English as a Second Language. Language Learning. 2003;53(2):285-323.
  2. Gibson E. Linguistic complexity: locality of syntactic dependencies. Cognition. 1998;68(1):1-76.

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