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英語長文の読み方の手順|武蔵野個別指導塾が薦める学習の仕方

連載「学習の仕方」第22回/全50回。英語長文の読み方の手順
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連載「武蔵野個別指導塾が薦める学習の仕方」全50回の第22回です。全50回の目次を見る

模試の長文で、最後の設問まで届かない。家で辞書を引きながらなら訳せるのに、時間を計ると何も頭に残らない——この記事は、その状態から抜けるための工程だけを書きます。なぜ読めないのかという原因の切り分けは別の記事にまとめてありますので、ここでは扱いません。扱うのは、英文を前にして最初の30秒に何をして、どこで止まり、何に印をつけ、どこで引き返すか、という手の動かし方です。

先に結論を1文で書きます。読む速さは、読む量を増やす前に「読める文章を選ぶこと」と「同じ文章を測りながら繰り返すこと」から先に動きます。順番を逆にして、自分の語彙に合っていない文章を大量に読むと、時間だけが消えます。研究が示しているのもその方向です。

以下では、研究が示した数値と、当塾が手順として置いている目安値を、はっきり分けて書きます。学年で配分が変わるところは中学生と高校生に分け、小学生は英語に触れる段階として短く触れます。

連載「学習の仕方」第22回/全50回。英語長文の読み方の手順
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この記事の結論

読む前の1分——既知語率を数える

英語の長文練習で最初にやるべきことは、読むことではなく数えることです。どれだけ語を知っていればその文章を理解できるかについては、長く議論があり、95%と98%という2つの数値が争われてきました。まずこの2つを両方見てから、手順に落とします。

ラウファー(Laufer)らは、語彙サイズ、その語彙が文章を覆う割合、読解得点の関係を調べ、2つの閾値を提案しました。最適な水準は、固有名詞を含めて98%を覆う語彙、最小の水準は95%を覆う語彙です。同時に、覆う割合をほとんど上げないような小さな語彙の増加でも、読解には寄与すると報告しています。

Laufer. Lexical threshold revisited: Lexical text coverage, learners’ vocabulary size and reading comprehension. Reading in a Foreign Language. 2010;22(1):15-30.

一方、シュミット(Schmitt)らは、8か国の661人に、文章から抜いた語の知識を測らせ、同じ文章を読ませ、読解テストを受けさせました。結果は、知っている語の割合と理解度がほぼ直線の関係にあるというもので、ある割合を超えると理解が急に上がるような「閾値」は見当たりませんでした。そのうえで、学術的な文章の目標としては98%のほうが妥当だろうと述べています。

Schmitt. The percentage of words known in a text and reading comprehension. The Modern Language Journal. 2011;95(1):26-43.

さらに、98%という数値の出どころそのものを検証した研究があります。クレメル(Kremmel)らは、この数値がニュージーランドの大学生66人の回帰分析に基づくものであることを指摘し、スリランカの成人学習者104人で追試しました。元の研究の結果は完全には再現されませんでした。つまり98%も95%も、動かない線ではありません。

Kremmel. Unknown vocabulary density and reading comprehension: Replicating Hu and Nation (2000). Language Learning. 2023;73(4):1127-1163.

なお、98%をはじめに出したのはヒュー(Hu)とネイションの研究です。閾値は揺れていますが、実務上の使い方は変わりません。割合を線として信じるのではなく、目盛りとして使うのです。

  1. これから読む問題集や本を開き、本文の真ん中あたりを見ます。前書きではなく、実際に読む密度の場所を選びます。
  2. 連続した100語を鉛筆で囲みます。1行がおよそ10語前後ですので、まず10行を囲み、語数を数えて増減させます。
  3. その100語のうち、意味がすぐに出てこない語に丸をつけます。人名と地名は数えません。
  4. 丸の数がそのまま未知語の個数、100から引いた数が既知語率(%)です。
  5. 2語以下(98%以上)なら、辞書なしで読み通せる材料。3〜5語(95〜97%)なら、精読と設問演習に向く材料。6語以上(95%未満)なら、今日の材料ではありません。

この数え方は目安であり、研究が示した手続きではありません。それでも教材を1冊買う前に3分使う価値はあります。「難しいほうが力がつく」という思い込みで選んだ教材が、最も時間を溶かします。

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1本の長文を処理する順番

次に、時間を計って解く場面の工程です。ここでの原則はひとつだけ、初読では止まらないことです。止まって考えることは、通し読みが終わってからまとめて行います。600語程度の英文を20分で解く想定で書きます。

  1. 設問を先に読む(30秒)。 選択肢は読みません。設問文の固有名詞と数字だけを拾い、本文の余白に書き出します。探すものが決まっていないと、全部が重要に見えます。
  2. 骨組みだけ読む(1分)。 第1段落と最終段落を通して読み、間の段落は1文目だけを読みます。ここで「何についての文章か」を日本語で1行書きます。
  3. 通しで読む(8分)。 未知語には丸、意味が取れない文には行頭にスラッシュを1本。印をつけたら、そのまま次へ進みます。戻って読み直さないこと。段落が終わるたびに、余白へ3語程度の日本語メモを置きます。
  4. 設問に答える(7分)。 本文の該当箇所に下線を引き、設問番号を添えます。根拠の行が示せない選択肢は選びません。
  5. 印をつけた文だけ分解する(3分)。 スラッシュのついた文を、後述の手順で分解します。全文を訳し直すのではなく、止まった文だけを扱います。

採点の後も決めておきます。間違えた設問について、「語が分からなかった」「文の構造が取れなかった」「両方とれたのに設問で外した」のどれかを1文字で記録します(語・文・問)。3回分ためると、自分の弱点が数で見えます。

知らない語に出会ったときの3択

飛ばすか、推測するか、引くか。この判断をその場の気分で決めていると、時間の使い方が安定しません。あらかじめ語数で決めておきます。基準は既知語率の数え方と同じです。

100語あたりの未知語 その場での扱い 読み終えた後の扱い
2語以下 飛ばす。丸だけつけて進む 設問に関わった語だけ引く
3〜5語 推測する。前後の文と接続語から 丸のついた語を全部引き、品詞と一緒に書く
6語以上 読むのをやめる 教材の水準を下げる。語彙の側で手当てする

推測の手順も決めておきます。①その語が名詞か動詞か形容詞かを位置から決める。②同じ段落に言い換えがないか探す(but、however、that is は定義の合図)。③段落全体と矛盾しない意味を1つ当てる。出なければ、その語は「分からないまま置いておく語」として確定させます。

試験中に「引く」選択肢はありません。ですから練習でも、時間を計っている間は引かない規律を守ります。計らない練習では引いてよいのですが、そのときも引く語を設問に関係した語に限定します。丸をつけた語を全部引いて全部覚えようとすると、読む練習が単語の練習にすり替わります。

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1文が読めないときの分解手順

スラッシュをつけた文の扱いです。ここで大事なのは、頭から順に訳そうとしないことです。骨を先に取り、肉を後で戻します。順番は次のとおりです。

  1. ピリオドまでを1文として囲みます。セミコロンでも切ります。
  2. 主語と述語動詞にだけ印をつけます。主語には二重下線、動詞には波線。この段階では意味を考えません。
  3. カンマ、関係詞(that、which、who)、前置詞、to不定詞、-ing形、-ed形の前で、修飾のかたまりを括弧でくくります。
  4. 括弧を全部外し、残った骨だけを声に出して読み、日本語にします。ここで意味が通れば、構造は取れています。
  5. 括弧を1つずつ戻し、どの語を説明しているのかを矢印で結びます。
  6. それでも取れなければ、その文に使われている文法項目の名前を余白に書きます(例:関係代名詞の目的格、分詞構文、仮定法過去完了)。書けなければ、書けないと書きます。

最後の手順を軽く見ないでください。読解と最も強く結びついていたのは文法知識だったという報告があります。チョン(Jeon)とヤマシタは、読解と10個の要素の相関を集めたメタ分析を行い、文法知識(r = 0.85)、語彙知識(r = 0.79)、文字と音の対応の処理(r = 0.56)を上位3つとして挙げました。聞き取りの理解も強く(r = 0.77)、メタ認知は最も弱い相関でした(r = 0.32)。母語の読解力も、証拠の多い4つの要素のひとつに入っています。

Jeon. L2 reading comprehension and its correlates: A meta-analysis. Language Learning. 2014;64(1):160-212.

ただしこれは相関であって、文法をやれば読解が上がるという因果の証明ではありません。読める人は文法もできる、という関係が含まれています。実務上は、名前が書けない文法項目が3つ以上たまったら長文演習をいったん止め、その項目だけを文法書で確認する運用にします。

時間の測り方と、速く読む練習

速く読むための練習は、新しい文章を次々に読むことではありません。同じ文章を、測りながら繰り返します。日本の学習者を対象にした研究が複数あります。

シモノ(Shimono)は、日本の大学生55人を1学期にわたって追い、時間を計った読みと音読の繰り返しを組み合わせた群、時間を計った読みだけの群、比較群に分けました。訓練を受けた2群は毎分13語から27語の伸びを示し、理解度はどちらも70%をやや下回る水準でしたが、速さの伸びとともに理解も上がっていました。タグチ(Taguchi)らの研究では、音声を聞きながら同じ文章を繰り返し読む方法が、多読と同じ程度に黙読の速さを伸ばしています。

手順にします。以下の時間と回数は研究が示した用量ではなく、当塾の運用上の目安です。

  1. 既知語率98%以上の文章を1本選びます(300語前後)。
  2. 1回目を読んで秒数を記録します。読み終えたら内容を日本語で3行書きます。
  3. 同じ文章を2回目、3回目と読みます。毎回秒数を記録します。3回目で1回目の8割以下の時間になることを目標にします。
  4. 翌日、同じ文章をもう1回読みます。ここで内容を3行書けなければ、速さだけが上がっています。
  5. 新しい文章に移ります。1回15分、週4回で、8週間続けて秒数の推移を見ます。

ここで必ず理解の確認を挟むのには理由があります。フッキンク(Fukkink)らは、オランダの中学2年生に語の認識を速くする訓練を行い、訓練した語の処理が実際に速くなったことを確認しました。しかしその速さは、読む速度にも文章全体の理解にも移りませんでした。語を速く処理できることと、文章を読めることは、自動的にはつながりません。

多読をどう入れるか——量と水準

やさしい本をたくさん読む多読には効果が報告されています。ただし効果量は中程度であり、条件がつきます。

ナカニシ(Nakanishi)は、34本の研究から43の効果量、参加者総数3,942人を集めてメタ分析を行いました。対照群との比較では中程度の効果量(d = 0.46)、事前事後の比較ではより大きな効果量(d = 0.71)が得られています。

Nakanishi. A meta-analysis of extensive reading research. TESOL Quarterly. 2015;49(1):6-37.

チョン(Jeon)とデイ(Day)は、49本の一次研究から71の標本、参加者総数5,919人を集め、どちらの研究デザインでも小から中程度の効果を見出しました。加えて、子どもや思春期の学習者より成人で効果が高く、多読が授業の一部として組み込まれている形が、最も高い平均効果を示しています。放課後に本を渡して終わり、という形ではないということです。

量の目安については、日本の学習者のデータがあります。ビグラー(Beglar)らは、日本の大学1年生97人を1年間追い、多く読んだ群ほど読む速さが伸びたこと、2週間に1冊以上読むことが最も効果的だったこと、そして簡約された読み物のほうが未簡約のものより速さの伸びが大きかったことを報告しています。理解度は事前も事後も高いままで、速さは理解と引き換えではありませんでした。

手順に落とします。①既知語率98%以上、つまり100語に未知語2語以下の本を選ぶ。②1回20分、週5回。③4週間で1冊が終わらなければ、本の水準を1段下げる。④読み終えた本の題名と日数だけを記録する。感想文は書かない。多読に確認テストを付けた瞬間、それは多読ではなくなります。②と③は目安の値です。

学年別の組み立て

工程は学年で変わりませんが、配分が変わります。下の表は当塾の運用上の目安であり、研究が示した数値ではありません。

学年 1週間の配分(目安) この時期に決めること
小学生 音声つきの短い読み物を1回10分、週3回 文字と音を結びつける。訳さない
中学生 教科書の音読1回10分+やさしい読み物1回15分 主語と動詞に印をつける習慣
高校生 時間を計った演習1回20分+分解15分 設問の根拠に下線を引く規律

小学生——英語に触れる段階

この時期に長文の読み方を教える必要はありません。音声を聞きながら文字を目で追う形だけを作ります。日本語に訳させないことが唯一の禁止事項です。訳す習慣がつくと、後で読む工程を作り直す手間が増えます。

中学生——定期テストと高校入試

定期テストの長文は教科書本文からの出題が中心で、既知語率はほぼ100%です。ここで練習すべきは速さではなく、主語と動詞に印をつける手の動きです。教科書本文で毎回それをやり、初見の文章で同じことができるかを確かめます。過去問に入る時期には、100語の数え方で志望校の文章の水準を測っておくと、残りの配分が決まります。未知語が6語以上なら、長文演習より語彙の手当てを先に置きます。

高校生——共通テストと個別試験

共通テストの英語は語数が多く、時間の制約が強い試験です。ここでは初読の工程を固定することが最も効きます。設問を先に読む30秒を省略しない、通し読みで戻らない、この2つだけを毎回守ります。個別試験で和訳や説明が課される場合は、分解の手順(骨を取り、括弧を戻す)をそのまま答案の作り方に使えます。

効かない条件

ここまでの手順が効かない場面を、はっきり書いておきます。

この記事で言えないこと

ここに挙げた数値は、大学生や成人の学習者を対象にした研究から多く来ています。中学生や高校生にそのまま当てはまるかは分かりません。98%や95%という割合も揺れている数値で、クレメルらの追試が示したように、対象や文脈が変われば再現しないことがあります。同じ既知語率でも、背景知識のある話題とない話題では理解度が変わります。

手順のなかで「目安」と書いた数値——1回何分、週何回、何週間——は、当塾が運用のために置いている値であって、研究が最適だと示した値ではありません。2週間で秒数が縮まなければ配分を変える、というように、記録を見ながら各自で調整してください。成績が上がることを保証するものではありません。

当塾の立場

この記事に書いた工程は、塾に来なくても実行できます。100語を数えるのに必要なのは鉛筆だけですし、秒数の記録も家でできます。初読で戻らない、設問を先に読む、骨を先に取る——これらはすべて、ひとりで守れる規律です。ここまでで十分に伸びる生徒は、実際にいます。

それでも人手が要る場面が2つあります。ひとつは既知語率の判定です。「意味がすぐに出てこない語」を自分で正しく数えるのは意外に難しく、知っているつもりの語が数から漏れます。もうひとつは、分解しても名前の書けない文法項目が出たときで、何を確認すべきかを自分で決められません。文法知識が読解と最も強く相関していたという報告を踏まえれば、ここを放置する損失は小さくない。武蔵野個別指導塾では、この2点を講師が担い、残りの工程は生徒が自分で回せる形に作ります。

出典

  1. Laufer, B., & Ravenhorst-Kalovski, G. C. Lexical threshold revisited: Lexical text coverage, learners’ vocabulary size and reading comprehension. Reading in a Foreign Language. 2010;22(1):15-30.
  2. Hu, M., & Nation, P. Unknown vocabulary density and reading comprehension. Reading in a Foreign Language. 2000.
  3. Schmitt, N., Jiang, X., & Grabe, W. The percentage of words known in a text and reading comprehension. The Modern Language Journal. 2011;95(1):26-43. doi:10.1111/j.1540-4781.2011.01146.x
  4. Kremmel, B., Indrarathne, B., Kormos, J., & Suzuki, S. Unknown vocabulary density and reading comprehension: Replicating Hu and Nation (2000). Language Learning. 2023;73(4):1127-1163. doi:10.1111/lang.12622
  5. Nakanishi, T. A meta-analysis of extensive reading research. TESOL Quarterly. 2015;49(1):6-37. doi:10.1002/tesq.157
  6. Jeon, E.-Y., & Day, R. R. The effectiveness of ER on reading proficiency: A meta-analysis. Reading in a Foreign Language. 2016;28(2):246-265.
  7. Beglar, D., Hunt, A., & Kite, Y. The effect of pleasure reading on Japanese university EFL learners’ reading rates. Language Learning. 2012;62(3):665-703. doi:10.1111/j.1467-9922.2011.00651.x
  8. Taguchi, E., Takayasu-Maass, M., & Gorsuch, G. J. Developing reading fluency in EFL: How assisted repeated reading and extensive reading affect fluency development. Reading in a Foreign Language. 2004;16(2):70-96.
  9. Shimono, T. R. L2 reading fluency progression using timed reading and repeated oral reading. Reading in a Foreign Language. 2018;30(1):152-179.
  10. Jeon, E. H., & Yamashita, J. L2 reading comprehension and its correlates: A meta-analysis. Language Learning. 2014;64(1):160-212. doi:10.1111/lang.12034
  11. Fukkink, R. G., Hulstijn, J., & Simis, A. Does training in second-language word recognition skills affect reading comprehension? An experimental study. The Modern Language Journal. 2005;89(1):54-75. doi:10.1111/j.0026-7902.2005.00265.x
  12. Ueno, S., Ikeda, M., Takeuchi, O., & Teng, M. F. Impact of reading strategy instruction on improvement of strategy use and reading comprehension: A meta-analysis. Reading in a Foreign Language. 2025;37(2):227-250.
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宮川 涼 Founder
早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。

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