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経済学部・経営学部の小論文—誰が払い誰が得をするかで書く、データと提案の問い|武蔵野個別指導塾

商店街の空き店舗をどう生かすかと問われても、店の案から書き始めなくて大丈夫です。持ち主・借りる人・住民の払う物と得る物と効く時期を表に埋めれば、反論と打ち切りの線まで入る答案を組み立てられます。
経済の小論文の書き方で迷ったら、テーマの大きさに構わず、まず「誰が払い、誰が得をし、それはいつ効くのか」を下書き用紙に書き出してください。社会の仕組みに賛成か反対かを問われたなら、負担する側と得をする側を両方書いてから立場を選びます。地域や会社の困りごとに案を出す問いなら、思いつきの鮮やかさより、実行の順番と、うまくいかなかったときの戻し方まで書けるかどうかで答案の厚みが決まります。資料のデータを読む問いでも、読み取った変化を「誰の行動が変わったのか」に言い換えれば、意見の段へ進めます。
よくあるのは、「地域の商店街の空き店舗をどう生かすか」という題を前に、シャープペンの先が問題用紙の余白で止まっている場面です。頭には「おしゃれなカフェ」「若い人向けの雑貨店」と店の案がいくつも浮かんでいるのに、2行目が出てこない。余白に残っているのは、丸で囲んだ「カフェ」の3文字と、そこから伸びかけて途中で止まった矢印です。案はあるのに書けないのは、その店の家賃や改装の費用を誰が出し、通りの誰が得をするのかが、まだ1行も紙の上にないからです。
「お金がかかる」を3つの問いに割ると、経済の答案になる
経済学部の小論文の書き方で、最初に変えたいのは「お金」という言葉の使い方です。教室で空き店舗の題の下書きを預かると、「お金がかかるから難しい」と書いた答案と、「お金をかけてでも、にぎわいを取り戻すべきだ」と書いた答案が並びます。向きは反対でも、お金を1つのかたまりとして扱っている点は同じです。経済の問いは、限られたお金や時間や場所を、誰が出して誰が使うかという分け方の問いです。「お金がかかる」という一言の中には、誰の財布から出るのか、その代わりに誰が何を得るのか、得るのはすぐか数年後か、という3つの問いが畳まれたまま入っています。
図1のように、「お金がかかるから反対」を、誰が払うか(改装費や税金)、誰が得をするか(持ち主や住民)、いつ効くか(すぐか、数年後か)の3つに割ってから立場と提案を出すと、同じ題でも答案の中身が入れ替わります。

3つが開かれていない答案は、読み手には「意見はあるが、論じてはいない」と受け取られやすくなります。「にぎわいは大切だ」は値打ちを述べた文で、なぜかと問われると、同じ言葉を言い換えて繰り返すしかなくなるからです。反対に、「改装費を市が出せば、その分は住民全体の負担になる。先に得をするのは借りる人と持ち主で、通りのほかの店に客が回るかは、しばらく様子を見ないとわからない」と書けば、読み手はどこに賛成し、どこを疑えばよいかを答案の上で指させます。賛成でも反対でも、続きの議論ができる形になります。
使う経済の言葉は、高校の公共や政治・経済の教科書で意味を確かめられるものにとどめ、出すときは意味を1文で添えます。需要と供給は、借りたい・買いたいという量と、貸したい・売りたいという量のことで、その釣り合いで家賃や値段が動きやすいという見方です。費用と便益は、ある案のために手放す物と、その案から得られる良いことを並べて比べる考え方です。機会費用は、ある使い道を選んだときにあきらめた、ほかの使い道から得られたはずの値打ちを指します。言葉を知っていると見せるためではなく、3つの問いを短く言うための道具として使います。
問いの前提を疑うのも、問題提起の大事な仕事です。「どう生かすか」という題は、空き店舗は埋めるべきだという前提に立っています。けれど需要と供給で見れば、店が空いているのは、借りたい人の数に比べて家賃や改装の費用が重いからだとも考えられますし、店の奥が住まいで、持ち主にもともと貸す気がない場合もあり得ます。空いている理由を1つ仮に置くと、案の中心が「どんな店を入れるか」から「最初の負担をどう軽くするか」へ移ります。
経済・経営の小論文でよく出る問いは、型で見ると3つに分かれます。1つ目は資料やデータを読んで論じる型で、数字の増減を文に写したところで手が止まり、その変化で誰が得をし誰が困ったのかへ進まないと崩れます。2つ目は社会の仕組みに賛成か反対かを問う型で、負担する側と得をする側を書き出す前に立場を決めると崩れます。3つ目は企業や地域の課題に案を出す提案型で、自分が店や会社を動かす側に立って書く問いです。この型では、案を出したところで答案を閉じると崩れます。3つの型のどれでも、崩れる場所は「誰が払い、誰が得をし、いつ効くか」のどこかが空いている所です。
空き店舗の題を「払う物・得る物・効く時期」の表に分ける5つの手順
下の分数は、試験時間60分・800字の答案を想定して、塾の練習で使っている目安です。本番の持ち時間は問題用紙の表紙で確かめ、違えば同じ比で縮めたり伸ばしたりしてください。手順の1から5までは、下書き用紙か問題用紙の余白で行い、答案用紙にはまだ書きません。
- 題の「生かす」の前提を疑う1行を書く(2分・問題用紙の余白)。「生かす」は誰にとってか、空き店舗はなぜ空いているのかを、語と矢印で書きます。空いている理由は、借りたい人が少ない、家賃や改装の費用が重い、持ち主に貸す気がない、のように2つか3つ仮に置き、答案で使う1つに丸を付けます。この丸が問題提起の芯になります。
- 関わる人を下書き用紙の左端に縦に並べる(2分)。空き店舗の題なら、店舗の持ち主、新しく借りる人、通りのほかの店、近くに住む人、予算を出すなら市、の5つです。「地域」「みんな」とまとめて書かず、払う物と得る物が違う相手ごとに行を分けます。
- 1行ずつ「払う物」「得る物」「いつ効くか」を埋める(6分)。払う物はお金に限りません。働く時間、手間、客を取り合うおそれも書きます。手順の下に置いた表は、「市が改装費の一部を出し、半年の期間を区切って安く貸す」という案で埋めた例です。
- 案を1つに絞り、3段の順番と打ち切りの線を書く(5分)。順番は、持ち主と話す、借りる人を募る、半年の期間で貸す、の3段です。打ち切りの線は、何を数えて、どうなったらやめるかを先に決めておくことで、この案なら、来た人の数と通りのほかの店の売り上げが増えなければ次の年度は打ち切る、と書きます。見積もりの数字を入れるなら、前提を一緒に書きます。たとえば、1日に来る人を40人、1人が使う額を800円、1か月の営業日を25日と置くと、1か月の売り上げは80万円です。40人が20人なら40万円に減ります。前提を書いておけば、読み手は「40人は多すぎないか」と前提のほうを検討できます。前提を書かずに「月80万円の売り上げが見込める」と書くと、数字を作ったように読めます。
- 反論を1つ選んで再反論を書き、段ごとに何字使うかを決める(5分)。表の中で「見込み」や「おそれ」としか書けなかった欄が、反論の来る場所です。そこから反論を1つ選び、手順4の打ち切りの線で答える再反論をメモします。800字の答案なら、たとえば問題提起に150字、主張と提案に250字、反論と再反論に250字、結論に150字ほどに分けると、表の中身が収まります。
| 関わる人 | 払う物 | 得る物 | いつ効くか |
|---|---|---|---|
| 店舗の持ち主 | 安くした分の家賃 | 空いたままより入る家賃と、改装された店舗 | 貸した月から |
| 新しく借りる人 | 半年分の家賃、仕入れ、働く時間 | 小さく試せる店の場所 | 開店して数か月たってから |
| 通りのほかの店 | 客を取り合うおそれ | 通りを歩く人が増える見込み | 半年たってから見える |
| 近くに住む人 | 市の予算を通じた負担 | 歩いて行ける店と、明るくなる夜道 | 開店した日から |
| 市 | 改装費の一部 | 空き店舗が減ることと、買い物の便利さ | 年度の終わりに数えて確かめる |
表を埋めてみると、払う物の欄が「おそれ」で、得る物の欄が「見込み」になるのは「通りのほかの店」の行です。新しい店はほかの店にとって、客を呼んでくれる相手にも、客を取り合う相手にもなり得るからで、答案ではここが反論の入口になります。表の中に「いつ効くか」の欄があることで、費用は貸した月から出ていくのに、ほかの店への効き目は半年たたないと見えない、という時間のずれも目に入ります。このずれがあるから、手順4で半年の期間と打ち切りの線を先に決めておくのです。
図2のように、5つの手順は上から順に進め、2と3で作った表を見ながら4と5を書きます。

ここまでで20分です。残りの40分は、たとえば33分で答案用紙に書き、最後の7分で表の欄と答案の文を突き合わせて、払う人・得る人・効く時期のどれかが答案から落ちていないかを見ます。表にあるのに答案に無い行があれば、その行を1文で足すか、なぜ書かなかったのかを自分で説明できるかを確かめます。
空き店舗の答案を直す前と直した後
1組目は答案の前半、問題提起から提案までです。
直す前
商店街の空き店舗は、若い人が集まるカフェにして活用するべきだ。カフェができれば人が集まり、商店街ににぎわいが戻る。にぎわいは地域にとって大切なものなので、市はお金を出してでも空き店舗を減らすべきである。
弱いのは3か所です。まず、空き店舗がなぜ空いているのかに触れず、店を入れれば埋まるという前提のまま案に飛んでいます。次に、「市はお金を出してでも」の一言で、誰がその費用を負担するのかが消えています。最後に、「にぎわいは大切なものなので」が理由の場所に座っていますが、これは値打ちの言い直しで、なぜカフェならにぎわいが戻るのか、誰ににぎわいが戻るのかには答えていません。
直した後
空き店舗をどう生かすかを考える前に、なぜ空いているのかを確かめたい。借りたい人に比べて家賃と改装の費用が重いなら、入れる店の種類を選ぶより、最初の負担を軽くするほうが効くはずだ。そこで、市が改装費の一部を出し、半年の期間を区切って安く貸す試みを提案する。費用を負担するのは市の予算、つまり住民全体であり、先に得をするのは借りる人と持ち主である。通りのほかの店に客が回るかどうかは、半年たってみないとわからない。
カフェという店の種類は消えましたが、代わりに、空いている理由、払う人、得る人、効く時期が1つずつ文になりました。最後の1文で「わからない」と書いたことで、次の段で反論を受け止める場所ができています。
2組目は答案の後半、反論と再反論です。
直す前
お金がかかるという反対の意見もあるだろう。しかし、商店街がにぎわえば、いずれ税収も増えるので、お金の問題は心配しなくてよい。
ここでは、反論をいちばん弱い形で置いて、すぐに片づけています。「いずれ」は時期を書いていないのと同じで、にぎわいから税収が増えるまでの筋道も書かれていません。何より、同じお金をほかに使えば得られたはずの物、つまり機会費用が抜けています。
直した後
この案には、同じ予算を古くなった歩道の補修に回すべきだという反論が考えられる。空き店舗に予算を使えば、その分の補修はあきらめることになる。経済の言葉でいえば、補修をあきらめることが、この案の機会費用である。だから案は、期間と数える物を先に決めておく。半年の間、来た人の数と通りのほかの店の売り上げを商店会に記録してもらい、増えなければ次の年度は打ち切って、予算を補修へ戻す。改装した店舗は持ち主の手元に残るので、打ち切っても改装費がまるごと消えるわけではない。
反論を強い形で置き直したことで、再反論が願いではなく、数える物と打ち切りの線という段取りになりました。読み手は、半年という期間が短すぎないか、数える物が売り上げでよいか、と案の中身で議論を続けられます。
経済・経営の答案が一般論に戻ってしまう3つのつまずき
関わる人を「地域」「みんな」とひとまとめにしてしまう
「地域のためになる」「みんなが喜ぶ」と書くと、払う人と得る人が同じ1つの言葉の中に溶けてしまいます。空き店舗の題で言えば、新しい店は持ち主には家賃を、近くに住む人には歩いて行ける店をもたらしますが、通りのほかの店には客の取り合いをもたらすかもしれません。損と得が逆になる相手がいる、と書けた答案は、その一文で一般論から一歩出ています。直し方は、手順2の表の左端の行を答案の主語に使うことです。「地域が」と書きかけたら、「持ち主が」「近くに住む人が」のどれなのかを選び直します。
案を出して、実行の順番と戻し方を書かずに終えてしまう
教室の下書きでは、経営の視点で書く提案型にこのつまずきが目立ちます。「空き店舗をカフェにする」の後に、誰が最初に何をするのかが続かないと、読み手には思いつきの一覧に見えます。図3のように、順番は持ち主と話す、借りる人を募る、半年の期間で貸す、の3段で書きます。続けて、来た人と売り上げを数え、増えたら次の年度も続け、増えなければ打ち切って予算を補修へ戻すという分かれ道を置きます。持ち主と話すのを先頭に置くのは、持ち主が貸さないと言えば、市がいくら予算を用意しても先へ進まないからです。

戻し方を書くと、案が弱く見えるのではないかと心配する人がいます。けれど、うまくいかなかったときに何が残り、何が戻るかまで書いてある案のほうが、読み手には実行できる案として読めます。
覚えていない数字やニュースを根拠にしてしまう
「空き店舗は全国で年々増えている」と書きたくなっても、どこで読んだ何年の数字かを言えないなら、答案には書きません。資料が配られた問いなら資料の数字を使い、資料が無い問いなら、手順4のように前提を置いた見積もりにして、前提を文の中に書きます。普段の準備で数字を集めるときは、ネットの書き込みや話題になったばかりの話ではなく、省庁の白書や審議会の報告のように、確かめられる出どころにあたっておきます。
よくある質問
経済学部と経営学部で、小論文の書き方は変わりますか
立つ場所が変わります。経済学部の小論文として書くなら、空き店舗に市の予算を使うことが住民全体の負担に見合うかのように、社会全体での分け方を論じます。経営学部の小論文の書き方に寄せるなら、空き店舗を借りる一軒の店として、何を売り、家賃をどう払い、どの時点で続けるかやめるかを決めるのかという、1つの店や会社の決め方を書きます。どちらで書くかは学部の名前より設問の文で決まるので、問題用紙の「地域にとって」「あなたが店を開くなら」のような主語の部分に線を引いてから表を作ってください。
需要と供給のような経済の言葉は、使ったほうがよいですか
使うなら、意味どおりに使えるときに限ります。たとえば「家賃が高いのは需要と供給の問題だ」と書いても、借りたい人が少ないのか、貸したい人が少ないのかが読み手にはわかりません。「借りたい人の数に比べて貸す側の家賃が高く、釣り合っていない」と中身で書けるなら、経済の言葉が無くても論は通ります。言葉を使うなら、その中身の文を添えてください。
自分の町の商店街をよく知らなくても書けますか
書けます。問いが確かめているのは、商店街の実情の知識より、関わる人の負担と得を分けて考える筋道だからです。駅前で見たシャッターの下りた店のように、自分が見たことのある場面を1つ使うのはかまいませんが、店の名前や空き店舗の数を作って書かないでください。知らないことは、「家賃が周りの相場より高いのなら」のように条件の形にして書けば、知らないまま論を進められます。
個別指導で確かめること
空き店舗の答案を持ってきてもらったら、答案の文より先に、下書き用紙の関わる人の表を一緒に見ます。払う物や得る物の欄に空きがあれば、そこが答案で反論を受ける場所なので、表に戻って埋めてから本文を直します。
案が「カフェにする」の1行で止まっているときは、手順1の「なぜ空いているのか」まで戻ります。空いている理由が決まると、案の中身も、反論の選び方も、打ち切りの線の置き方も、自分の言葉で組み直せるからです。
まとめ
空き店舗の題で問われているのは、どんな店を入れるかという案の面白さではなく、その案の費用を誰の財布から出し、誰に何を返し、いつ数えて確かめるかという筋道です。関わる人の表の5行が埋まれば、立場も提案も反論も、その表から書き起こせます。空き店舗のシャッターの向こうに入れる店を思い描く前に、その店の請求書の宛名を、下書き用紙の左端に書いてください。
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