中心角を半分にする前に、どの弧に対する角かを確認しましょう。3枚の図と4つの例題で、半円の弧と直角、円周角の定理の逆、相似を使う長さの求め方まで順にたどれます。
よくあるのは、図書館の机で円の問題を解いていて、中心に120°と書いてあるのを見つけ、「半分にすればよい」と60°を書いたのに、解答と合わないという場面です。計算は合っていても、見ている弧が違えば、使う角も変わります。円周角の問題では、数字を探す前に、角の2本の辺が円周のどこに届いているかをたどることが出発点です。
円の図には線が重なり、どの三角形に注目すればよいか迷うことがあります。しかし、角の頂点と弧の両端を区別すると、複雑に見える図にも同じ決まりが現れます。角度を求める問題から始め、4点が同じ円周上にあることの判断、相似を使った長さの計算まで進みましょう。多くの教科書では中3で学びますが、土台になるのは三角形の内角・外角と二等辺三角形の性質です。
この単元で身につけること
- 円周角と中心角を見分けます。頂点が円周上にあるか、中心にあるかを最初に確認します。
- 角に対応する弧を特定します。円周角の頂点を含まない側の弧を選ぶことが、計算の向きを決めます。
- 同じ弧に対する円周角が等しいことを使います。離れた場所にある角どうしでも、弧の両端を追えば等しさを説明できます。
- 半円の弧に対する円周角が90°であることを使います。直径を見つけると、三角形の直角が定まります。
- 円周角の定理の逆で、4点が同じ円周上にあると判断します。角の大きさだけでなく、点が直線のどちら側にあるかも確認します。
- 円の中にある三角形の相似を証明します。等しい角を2組見つけ、対応する辺の比から長さを求めます。
これまで学んだ三角形の角の性質に、円周角という新しい根拠を加える単元です。相似条件を復習しておくと、角度の問題と長さの問題が別々のものではなく、続きのある問題として見えてきます。
基本の考え方
頂点と弧の両端を区別する
円周上の2点A、Bを結ぶ線分ABを弦といいます。AからBまで円周に沿って進む部分が弧です。A、Bを決めると円周は2つの弧に分かれるため、「弧AB」とだけ書かれたときも、どちら側を指すかを図や条件で確認します。
円周上にA、Bとは異なる点Pをとると、∠APBは円周角です。角の記号では真ん中の文字Pが頂点で、AとBが弧の両端です。この円周角に対する弧は、Pを含まないほうの弧ABです。一方、円の中心Oを頂点とする∠AOBは中心角です。どちらもA、Bへ線が伸びますが、頂点の位置が異なります。
丸い池の岸にA、Bという目印があると考えると、Pは岸の上の観察位置、Oは池の中心にあたります。ただし、景色の見え方だけで角度を判断するのではありません。数学では、Pが円周上にあり、どの弧を見込んでいるかという条件を使います。
円周角は同じ弧に対する中心角の半分
円周角の定理は「1つの弧に対する円周角は、その弧に対する中心角の半分である」という決まりです。図1の赤い下側の弧ABに対する中心角は120°なので、円周角∠APBは120°÷2=60°になります。点Qも同じ弧の反対側にあり、∠AQBも60°です。

図1のように頂点PをQへ動かしても、同じ弧に対する円周角の大きさは変わりません。中心角が共通なので、その半分どうしも等しくなるからです。同じ円で同じ長さの弧に対する円周角も等しくなりますが、弦が同じように見えるというだけでは根拠になりません。
この定理のもとには、半径を2辺にもつ二等辺三角形があります。Pから中心Oを通る直線を引き、円とのもう1つの交点をDとします。まず、Oが∠APBの内側にある場合を考えます。∠APO=α、∠OPB=βとおくと、OA=OPより∠OAP=αです。三角形AOPの外角に注目すると∠AOD=2αになります。同様に∠DOB=2βなので、対象の中心角は2α+2β=2(α+β)、円周角はα+βです。
Oが角の辺の上にあるときは片方の三角形だけで説明でき、Oが角の外側にあるときは、対応する2つの角を引いて説明できます。足す場合も引く場合も、中心角が円周角の2倍という関係は同じです。暗記に不安があるときは、「半径で二等辺三角形を作る」という理由に戻ってみましょう。
直径の発見と定理の逆
ABが直径なら、半円の弧ABに対する中心角は180°です。したがって、円周上の点PがA、Bと異なれば、∠APB=180°÷2=90°になります。直角になるのは直径の両端へ引いた2本の線の間であり、AやBの角ではありません。
円周角の定理の逆も大切です。A、B、P、Qが異なる4点で、P、Qが直線ABの同じ側にあり、∠APB=∠AQBなら、4点は同じ円周上にあります。定理は「同じ円周上にある」という条件から角の等しさへ進み、逆は「角が等しい」という条件から円の存在へ進みます。逆を使う場面では、初めから4点を通る円が描かれていなくてもかまいません。
例題で解き方を確かめる
例題1 中心角と円周角を行き来する
図1で、Oは円の中心、赤い弧ABに対する中心角は120°です。∠APBと∠AQBを求めましょう。また、別の円で、ある弧に対する円周角が38°なら、その弧に対する中心角は何度でしょうか。
- ∠APBの辺をA、Bまでたどります。頂点Pを含まない赤い弧が対象なので、図の120°を使えます。
- 中心角から円周角へ進むため、120°÷2=60°とします。∠AQBも同じ赤い弧に対する円周角なので60°です。
- 後半は円周角から中心角へ戻るため、38°×2=76°とします。「いつでも半分」ではなく、求める角の種類で演算を選びます。
答え:∠APB=60°、∠AQB=60°、後半の中心角は76°です。
例題2 直径から三角形の残りの角を求める
ABを直径とする円周上に点Cがあります。CはA、Bと異なり、∠BAC=32°です。∠ACBと∠ABCを求めましょう。ノートには円をかき、中心を通るABと、その上側の点Cを結んでください。
- ABが直径であることを確認します。Cから直径の両端A、Bへ引いた線が作る角なので、半円の弧に対する円周角を使えます。
- ∠ACB=180°÷2=90°とします。直角の印をCのところに入れると、次に使う三角形がはっきりします。
- 三角形ABCの内角の和から、∠ABC=180°-90°-32°=58°とします。円の性質で1つの角を決めた後は、三角形の計算です。
答え:∠ACB=90°、∠ABC=58°です。
例題3 同じ円周上にあることを判断する
異なる4点A、B、P、Qがあり、P、Qは直線ABの同じ側にあります。∠APB=47°、∠AQB=47°です。この4点は同じ円周上にあるといえるでしょうか。
- 2つの角の両端を読みます。∠APBも∠AQBも両端がA、Bなので、定理の逆で比べる形になっています。
- 頂点P、Qが直線ABの同じ側にあることを確認します。角が等しいという条件と、点の位置の条件をそろえる必要があるためです。
- ∠APB=∠AQBなので、円周角の定理の逆から結論を述べます。まだ同じ円周上にあるとわかっていない段階で、通常の円周角の定理を使わないことが大切です。
答え:円周角の定理の逆により、4点A、B、P、Qは同じ円周上にあります。
例題4 円周角から相似を証明して長さを求める
図2では、4点A、B、C、Dがこの順に円周上にあり、弦ACとBDが点Eで交わっています。AE=6cm、BE=3cm、CE=4cmのとき、DEの長さを求めましょう。まず、△ABEと△DCEの相似を証明します。

- EがBD上、AC上にあるので、∠ABE=∠ABD、∠DCE=∠DCAです。∠ABDと∠DCAは同じ弧ADに対する円周角だから、∠ABE=∠DCEとなります。
- 同様に∠BAE=∠BAC、∠CDE=∠CDBです。∠BACと∠CDBは同じ弧BCに対する円周角だから、∠BAE=∠CDEとなります。
- 2組の角がそれぞれ等しいので、△ABE∽△DCEです。対応はAとD、BとC、EとEであり、AEとDE、BEとCEが対応する辺です。
- DE=xcmとおくと、AE:DE=BE:CEより6:x=3:4です。比例式の外側の積と内側の積が等しいので3x=24、x=8となります。
答え:DE=8cmです。
図2の三角形は向きが違いますが、角の対応で順番を決めれば比を正しく作れます。また、Eの対頂角を等しい角の1組として使っても証明できます。求めた後は6:8=3:4を確かめると、対応する辺の比がそろっていることまで確認できます。
つまずきやすいところと直し方
弧を確かめず、小さい中心角を半分にする
誤った書き方は「中心の小さい角が120°だから、円周角はすべて60°」です。違うのは、円周角の頂点がどちらの弧にあるかを見ていない点です。図3では、Pは上側、Qは下側の弧にあり、2つの円周角が対応する弧は別です。

正しくは、∠APBは下側の120°分の弧に対するので60°です。一方、∠AQBはQを含まない上側の弧に対し、その中心角は360°-120°=240°なので、240°÷2=120°です。中心角には、このように180°を超える角も考えます。図3のP、Qは直線ABの反対側にあるため、「同じA、Bにつながるから等しい」とは書けません。この配置では60°+120°=180°になっています。
直径があるだけで、別の角を直角にする
誤った書き方は「ABが直径だから∠BAC=90°」です。違うのは、直径の端Aを頂点にしている点です。円周上のCからA、Bへ引くことで半円の弧に対する角ができるので、正しくは∠ACB=90°です。
また、中心を通ると示されていない弦を、見た目だけで直径として扱うこともできません。問題文の「直径」という言葉か、A、O、Bが一直線上にある条件を確認してから、直角の印を入れましょう。
相似な三角形の対応を入れ替える
例題4での誤った書き方は「6:4=3:x」です。違うのは、AEとCEを対応する辺として比べている点です。等しい角から決めた対応はAとD、BとCなので、正しくは6:x=3:4となります。
図の左側どうし、短く見える辺どうしという選び方はやめ、相似を表す△ABE∽△DCEの文字を縦に対応させてください。相似の比を使う前に、どの2組の角が等しいのか、その根拠も書いておくと、対応を途中で見失いにくくなります。
練習問題
各問では、計算式の前に使う性質をひと言添えてみましょう。図を自分でかくときも、円の中心と円周上の点を区別してください。
練習1
ある弧に対する中心角が146°です。その弧に対する円周角を求めましょう。
練習2
ABが直径で、CがA、B以外の円周上の点です。∠ABC=41°のとき、∠BACを求めましょう。
練習3
異なる4点A、B、P、Qがあり、P、Qは直線ABの同じ側にあります。∠APB=∠AQB=62°のとき、4点が同じ円周上にあるといえる理由を書きましょう。
練習4
図2と同じ点の並び方で、長さをAE=5cm、BE=2cm、CE=6cmに変えます。DEを求めましょう。図2の見た目の長さは使わず、相似の対応を利用してください。
答えと解説
練習1:73°です。円周角の定理より146°÷2=73°です。
練習2:49°です。半円の弧に対する∠ACBは90°なので、180°-90°-41°=49°です。
練習3:円周角の定理の逆によります。P、Qが直線ABの同じ側にあり、両端をA、Bとする角が等しいため、4点は同じ円周上にあります。
練習4:15cmです。△ABE∽△DCEより5:DE=2:6なので、2×DE=30、DE=15cmです。
次の単元へのつながりと家庭での確かめ方
円周角で直角を見つける考え方は、三平方の定理で辺の長さを求めるときにも使います。また、円周角で等しい角を探す手順は、相似の証明の入口になります。円だけの決まりとして閉じず、三角形へつなげて使いましょう。
家での5分の確認には、次の2つが向いています。1つ目は円にA、B、Pをとり、∠APBに対する弧を色でなぞることです。2つ目は図2の角の印を隠し、△ABEと△DCEの対応を声に出して説明することです。保護者の方がお子さまに尋ねるなら、「なぜ半分なのか」より先に「どの弧を見ているのか」を指してもらうと、迷いの位置を確かめられます。
個別指導では、角の記号の読み方、三角形の外角、相似の対応のうち、説明が止まったところまで戻って確認します。計算だけをやり直すより、使う条件を自分で選べるかを確かめます。
まとめ
線が多い円の図でも、必要な角を1つ選び、その両端と対応する弧をたどれば、使える関係が絞られます。答えが違ったときは、割り算からやり直す前に、頂点と弧の位置に戻ってみてください。
証明でも、角が等しい理由を弧までさかのぼって書けば、相似の対応や辺の比がつながります。円周角の答えを決めるのは、図の見た目ではなく、頂点を含まない弧です。





