溶けるととけるの混同は粒子の保存と粒の行方の未整理から生じる|武蔵野個別指導塾が薦める学習の仕方

連載「単元別のつまずき研究——その単元で、生徒は実際に何をどう誤るか」全50回の第25回です。学習の仕方の目次を見る

「食塩を水に溶かす」と「氷が水にとける」。どちらも「とける」と読みますが、理科では漢字が分かれます。中学生に「砂糖が水にとけるのは、状態変化ですか」と尋ねると、氷が水になるときと同じように考えて「はい」と答える場面があります。

この混同は、ただの漢字の覚え間違いではありません。粒子の見方で現象を整理できているかどうかが、そのまま表れています。状態変化では水そのものが姿を変えるのに対し、溶解では水の中に別の物質が分かれて入り込むという違いを、生徒がどう捉えているかが問われます。

今回は、状態変化と溶解をめぐるつまずきを、粒子概念の理解という観点から整理します。研究が示してきた子どもの粒子観の特徴を踏まえ、実際の誤答例と、机の前でできる確かめ方を具体的に示します。

あわせて、この分野の研究結果が教育現場で誤って使われがちな点にも触れます。「子どもは粒子を理解できない」という短絡的な読み方をすると、指導の手立てを見誤るからです。

要点(結論から)

  • 「溶ける」と「とける」の混同は、漢字の知識不足ではなく、物質が別の物質に変わるのか、同じ物質のまま姿だけ変わるのかを区別できていないことに由来します。
  • 状態変化では、水が氷や水蒸気になっても水であることは変わりません。一方、溶解では、水と溶かす物質がそれぞれ存在し続けます。この違いを粒子で説明できるかが分かれ目です。
  • 生徒は「見えなくなったから、その物質はなくなった」と考えがちです。食塩や砂糖が水に溶けて見えなくなると、物質自体が消えたと捉える誤りがよく見られます。

結論——「溶ける」と「とける」の混同は、粒子の保存と物質の同一性を分けて見る力の弱さから生じる

  • 「溶ける」と「とける」の混同は、漢字の知識不足ではなく、物質が別の物質に変わるのか、同じ物質のまま姿だけ変わるのかを区別できていないことに由来します。
  • 状態変化では、水が氷や水蒸気になっても水であることは変わりません。一方、溶解では、水と溶かす物質がそれぞれ存在し続けます。この違いを粒子で説明できるかが分かれ目です。
  • 生徒は「見えなくなったから、その物質はなくなった」と考えがちです。食塩や砂糖が水に溶けて見えなくなると、物質自体が消えたと捉える誤りがよく見られます。
  • 粒子の保存、つまり見えなくなっても粒子は残っているという考えは、一度の説明では定着しにくく、時間をかけて段階的に育つものです。
  • 指導では、「溶ける」と「とける」の用語の区別を最初に教えるだけでなく、粒子の絵やモデルを使って、溶ける前と後で何が残っているかを繰り返し確かめさせることが有効です。

理由——子どもは粒子を「消えるもの」として捉えがちで、状態変化と溶解の区別がつきにくい

見えなくなると「なくなった」と考えてしまう

食塩を水に入れてかき混ぜると、食塩の粒は見えなくなります。このとき、多くの生徒は「食塩は消えた」と表現します。目に見えるものがなくなれば、存在そのものがなくなったと考えるのは、日常の経験からすれば自然なことです。

しかし理科では、食塩は小さな粒子に分かれて水の中に広がっただけで、食塩として存在し続けていると説明します。この「見えないけれど、ある」という考え方は、子どもにとって大きな飛躍を必要とします。

初期の面接調査では、中学生が物質の粒子的な性質をどのように理解しているかが調べられました。そこでは、粒子を連続したものとして捉えたり、粒子の間に何もない空間があることを認めにくかったりする実態が報告されています。

Novick S, Nussbaum J. Junior high school pupils’ understanding of the particulate nature of matter: An interview study. Science Education. 1978;62(3):273-281.

この研究が示すのは、粒子の間の空間や、見えないところでの粒子の保存を、中学生が自然には想定しにくいということです。食塩が水に溶けて見えなくなったとき、「食塩の粒子が水の粒子の間に入り込んだ」という説明は、生徒の直感と衝突します。

だからこそ、「溶けた=消えた」という誤りは、単なる不注意ではなく、粒子概念が未形成であることの現れとして扱う必要があります。

状態変化と溶解は、粒子のレベルではまったく別の現象である

氷が水になるとき、水という物質はそのままです。固体から液体へと状態が変わるだけで、水の粒子が別の物質の粒子に変わるわけではありません。これが状態変化です。

一方、食塩が水に溶けるときは、水の粒子と食塩の粒子が混ざり合います。水は水のまま、食塩は食塩のままです。見た目は透明な液体になりますが、中には2種類の粒子が共存しています。

この2つを混同する生徒は、「氷がとける」と「食塩が溶ける」を、どちらも「固体が液体の中に入って見えなくなる」という表面的な共通点で結んでいます。粒子のレベルで見れば、状態変化は1種類の物質の変化、溶解は2種類の物質の混合です。

この区別を教えるには、まず「その物質は、変化の前と後で同じ物質か」を問うことが有効です。氷と水は同じ物質、食塩と食塩水は食塩と水の2種類が混ざったもの、という整理を繰り返すと、生徒の理解が安定してきます。

粒子概念は段階的に育つものであり、誤りは通過点になり得る

粒子概念の理解は、一度の授業で完成するものではありません。長期にわたる調査では、子どもたちの粒子理論の理解が、単純な誤りから科学的に受け入れられるモデルへと段階的に進む様子が報告されています。

Johnson P. Progression in children’s understanding of a ‘basic’ particle theory: a longitudinal study. International Journal of Science Education. 1998;20(4):393-412.

この研究は、子どもが見せる「別の考え方」が、必ずしも行き止まりではなく、科学的なモデルへ向かう途中の段階であり得ることを示しています。つまり、「食塩は消えた」という誤りも、粒子の保存という考えに至る前の一時的な理解として位置づけられます。

指導上重要なのは、誤りを単に訂正するのではなく、その考えがどの段階にあるのかを見極めることです。「消えた」と言う生徒には、まず「見えなくなっただけで、味は残っているね」と感覚に訴え、そのあとで粒子の保存へと橋渡しをする手順が考えられます。

また、この研究は、教え方そのものが「別の考え方」を最終地点として固定してしまう危険も指摘しています。粒子を単なる小さな粒として描くだけでは、粒子の間の空間や保存まで理解させたことにはなりません。指導の順序と表現を丁寧に選ぶ必要があります。

誤答の例——「溶ける」と「とける」の混同が生む具体的なつまずき

よくある誤答 その子が考えていること 確かめる問いかけ
「食塩が水に溶けたら、食塩はなくなった」 見えなくなったから、物質自体が消えたと考えている 「この水をなめたら、しょっぱいかな。しょっぱさは何が残っている証拠かな」
「氷がとけるのも、食塩が溶けるのも、同じ『とける』だ」 固体が液体になる、または液体に消えるという見た目の変化だけで分類している 「氷がとけたあとの水は、もとの氷と同じ物質かな。食塩水の中の食塩は、もとの食塩と同じ物質かな」
「水が蒸発したら、水は空気に変わった」 状態変化で物質が別のものに変わると考えている 「空気中に出ていったのは、水のままかな。それとも空気の成分に変わったのかな」
「食塩水をろ過したら、食塩と水に分かれた。これは状態変化だ」 分離できたことをもって、状態変化と同じ枠組みで捉えている 「ろ過の前と後で、食塩は食塩のままだったかな。状態が変わったのはどの部分かな」
「砂糖を水に溶かすと、砂糖は液体になった」 固体が液体の中に入ったので、砂糖自体が液体に状態変化したと考えている 「砂糖水をなめると甘いね。甘さは固体の砂糖が残っているからかな、それとも砂糖が液体になったからかな」

机の前で1対1で確かめるときは、次の手順が有効です。

  1. まず「氷がとける」と「食塩が溶ける」の2つの文を書かせ、漢字の違いを確認します。このとき、漢字の正誤を問うのではなく、それぞれの現象で何が起こっているかを言葉にさせます。
  2. 次に、氷がとける前と後で、物質が同じかどうかを尋ねます。水のままであることを確認したら、食塩が溶ける前と後で、食塩が残っているかどうかを尋ねます。
  3. 食塩水をなめさせたり、水を蒸発させて食塩を取り出したりして、見えなくなっても食塩が残っていることを感覚と操作で確かめます。
  4. 最後に、粒子の絵を描かせます。状態変化は水の粒子の並び方が変わるだけ、溶解は水の粒子の間に食塩の粒子が入り込む、という2つの絵を対比させます。
  5. 「溶ける」と「とける」のどちらの現象かを、粒子の絵を見て分類する問題を数問出し、定着を確認します。

小学生では、粒子のモデルを本格的に使う前の段階です。まずは「見えなくなっても、味や重さが残っている」という経験を積ませることが優先されます。食塩水をなめる、水を蒸発させる、重さをはかるといった操作を通じて、物質の保存を感覚的に捉えさせます。

中学生では、粒子のモデルを導入し、状態変化と溶解を粒子の絵で区別させます。このとき、粒子の間の空間をどう描くかが重要です。粒子を隙間なく並べる描き方では、溶解の説明ができません。粒子の間に空間があることを明示的に教える必要があります。

高校生では、溶解を化学変化や電離と関連づけて整理します。食塩が水に溶けるとナトリウムイオンと塩化物イオンに分かれることを学ぶと、「溶ける」の意味がさらに広がります。中学までの粒子モデルを土台に、イオンという新しい粒子の見方を重ねていく段階です。

よくある誤読——研究結果を「子どもは粒子を理解できない」と決めつけて読まない

誤用されがちな読み方——「粒子概念は中学生には無理だ」

初期の研究で、中学生が粒子の間の空間や粒子の保存をなかなか理解できないことが報告されると、そこから「中学生に粒子概念を教えても無駄だ」という短絡的な結論が導かれることがあります。しかし、これは研究結果の一面だけを取り出した読み方です。

研究が示しているのは、粒子概念の理解が難しいという事実であり、教える価値がないということではありません。むしろ、どのような誤りがどの段階で現れるかを知ることで、指導の手がかりが得られます。

「子どもは粒子を理解できない」と決めつけると、粒子のモデルを使わずに用語の暗記だけで済ませる授業になりがちです。それでは、生徒の誤りは表面化せず、テストのときだけ漢字を書き分けるという対症療法に終わります。

正しい読み方——誤りは進行の途中にある

長期研究が示唆するのは、子どもが見せる「別の考え方」が、科学的なモデルへ向かう進行の一部になり得るということです。「食塩は消えた」という考えは、粒子の保存を理解する前の段階として位置づけられます。

Johnson P. Progression in children’s understanding of a ‘basic’ particle theory: a longitudinal study. International Journal of Science Education. 1998;20(4):393-412.

この視点に立つと、誤りは「直すべき欠陥」ではなく「次に進むための足場」として扱えます。生徒が「消えた」と言ったとき、それを否定するのではなく、「消えたように見えるけれど、何か証拠は残っていないかな」と問いかけることで、粒子の保存へ向かう思考を促せます。

また、教え方が誤りを固定化する危険にも注意が必要です。粒子を単なる小さな粒として描くだけでは、粒子の間の空間や、見えないところでの保存まで伝わりません。指導の表現を点検し、粒子モデルが何を説明するためのものかを明確にすることが求められます。

今週やること——「溶ける」と「とける」を粒子の絵で区別する練習を3段階で

  1. まず、身近な「とける」現象を5つ書き出させます。氷、食塩、砂糖、バター、金属など、生徒が思いつくものを列挙し、それぞれ「同じ物質のまま姿が変わる」か「別の物質と混ざる」かを分類させます。
  2. 次に、状態変化と溶解の2つの粒子の絵を、生徒自身に描かせます。水の粒子を丸で描き、状態変化では丸の並び方だけが変わること、溶解では水の丸の間に食塩の丸が入り込むことを表現させます。
  3. 最後に、描いた絵を見ながら「氷がとける」「食塩が溶ける」のどちらかを短文で説明させます。説明の中に「水は水のまま」「食塩は食塩のまま」という表現が入っているかを確認します。

この記事で言えないこと

この記事で紹介した研究は、特定の時期と環境で行われた面接調査および長期調査に基づいています。そこから得られた知見は、すべての生徒に同じ順序で同じ誤りが現れることを保証するものではありません。生徒の言語能力や既有知識、指導の文脈によって、つまずきの現れ方は変わります。

また、粒子概念の形成には長い時間がかかることが示されていますが、どのような指導をすればどの段階から次の段階へ確実に進むかという因果関係まで、この記事の出典から断定することはできません。指導法の効果については、別の研究が必要です。

さらに、個々の生徒が「溶ける」と「とける」を混同する背景には、漢字の読み書きの苦手さや、注意の向け方の偏りなど、理科以外の要因が関わる場合もあります。理科の指導だけで解決しないケースがあることも、あらかじめ認識しておく必要があります。

当塾の立場

「溶ける」と「とける」の区別は、ご家庭でも十分に取り組めます。食塩を水に溶かしてなめてみる、水を蒸発させて食塩を取り出す、氷をとかして水になるのを見る、といった操作は、特別な道具がなくてもできます。まずは家庭で、見えなくなっても物質が残っていることを体験させてください。

そのうえで、塾が担えるのは、生徒の描いた粒子の絵や説明を丁寧に点検し、どこで誤りが起きているかを特定することです。たとえば、粒子の間に空間を描けていない生徒には、粒子の絵を描く前に「水の粒子と粒子の間には何もない空間がある」ことを確認し、その空間に食塩の粒子が入り込むという描き方を一緒に作る手順を取ります。このように、家庭での体験を粒子モデルへつなぐ橋渡しを、1対1で行うことが当塾の役割だと考えています。

出典

  1. Novick S, Nussbaum J. Junior high school pupils’ understanding of the particulate nature of matter: An interview study. Science Education. 1978;62(3):273-281.
  2. Johnson P. Progression in children’s understanding of a ‘basic’ particle theory: a longitudinal study. International Journal of Science Education. 1998;20(4):393-412.

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