忘れるのは時間のせいではない——干渉と、思い出すことによる忘却|武蔵野個別指導塾が薦める学習の仕方

連載「学びの意思決定——行動経済学・社会学・認知心理学から考える」全50回の第27回です。学習の仕方の目次を見る

新しい英単語を覚えたら、前に覚えた似た単語が出てこなくなった。歴史の年号を追加で覚えたら、以前のものと混ざった。こうした経験は、忘却が「時間とともに自然に薄れる」現象ではないことを示しています。忘れる原因の相当部分は、他の記憶による干渉です。

さらに厄介なことに、思い出す作業そのものが忘却を引き起こす場合があります。あるものを繰り返し思い出す練習をすると、関連する別のものが思い出しにくくなる。この現象は検索誘導性忘却と呼ばれています。

要点(結論から)

  • 忘却の相当部分は、他の課題や記憶との干渉によって説明される。時間が経ったから消えるのではない。
  • 似たものを続けて覚えると干渉が強くなる。混同が起きるのは、覚え方ではなく配置の問題である。
  • 一部を繰り返し思い出す練習をすると、同じカテゴリーの練習しなかった項目の再生が損なわれる。

結論——忘却は時間ではなく、混み合いによって起きる

  • 忘却の相当部分は、他の課題や記憶との干渉によって説明される。時間が経ったから消えるのではない。
  • 似たものを続けて覚えると干渉が強くなる。混同が起きるのは、覚え方ではなく配置の問題である。
  • 一部を繰り返し思い出す練習をすると、同じカテゴリーの練習しなかった項目の再生が損なわれる。
  • この抑制は出力干渉を統制しても残り、一定時間持続することが示されている。
  • 実務的には、似たものを離して扱う・全体を均等に取り出すの2点で対処できる。

理由——干渉の2つの形

忘却の主因としての干渉

アンダーウッドは、忘却における干渉の役割を論じた古典的な総説を残しています。当時すでに、課題どうしの干渉が忘却のかなりの部分を生み出していることは、広く受け入れられていました。

Underwood BJ. Interference and forgetting. Psychological Review. 1957;64(1):49-60.

干渉には2つの方向があります。後から学んだものが前の記憶を妨げる場合と、前に学んだものが後の記憶を妨げる場合です。どちらも、似ているほど強くなります。

この「似ているほど強い」という性質が、実務では重要です。英単語の似た綴り、数学の似た公式、歴史の似た年号。まとめて覚えると効率がよさそうに見えますが、干渉の観点からは最も条件が悪くなります。

思い出すことが、忘却を生む

アンダーソンらの研究は、さらに直感に反する現象を示しました。参加者は8つのカテゴリーの項目を学習し、そのうち半分のカテゴリーについて、半分の項目だけを検索テストで反復練習しました。

Anderson MC, Bjork RA, Bjork EL. Remembering can cause forgetting: Retrieval dynamics in long-term memory. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition. 1994;20(5):1063-1087.

その結果、練習したカテゴリーの中で、練習しなかった項目の再生が、遅延テストで損なわれていました。練習していないカテゴリーの項目より成績が低かったのです。

さらに、この障害は出力の順序による干渉を統制しても残りました。単に「練習した項目が先に出てくるから」という説明では足りず、検索に基づく抑制が働いていると解釈されています。

実務に直すと、こうなります。得意な項目ばかり思い出す練習をすると、同じ範囲の苦手な項目が、かえって出にくくなる。

具体例——干渉が起きやすい場面

場面 何と何が干渉するか 対処
似た綴りの英単語をまとめて覚える 綴りどうし 日を分ける。用例で区別する
公式を一覧で暗記する 公式どうし 使う場面とセットで覚える
年号を数字だけで覚える 数字どうし 因果の流れに埋め込む
解ける問題だけ復習する 検索誘導性忘却 範囲全体から均等に取り出す

4行目は見落とされやすい落とし穴です。復習でつい手が伸びるのは、解ける問題です。気分もよく、進んでいる感覚があります。しかし研究が示すとおり、それは同じ範囲の他の項目を押し下げる可能性があります。

今日からできること

  1. 似たものは、同じ日に並べない。 紛らわしい2つは、間を空けて別々に扱います。
  2. 区別の手がかりを1つ足す。 似た語には用例を、似た公式には使う場面を添えます。区別できれば干渉は減ります。
  3. 復習は、範囲全体から均等に取り出す。 得意なところだけを回さないようにします。
  4. できなかった項目を、別のリストに集める。 集めたリストの中では、すべてが練習対象になります。
  5. 混同した組み合わせを記録する。 どれとどれを取り違えたかは、干渉の地図になります。

学年で変えるところ

  • 小学生——漢字の似た形、計算の似た手順で干渉が起きます。まとめて練習するより、日を分けるほうが確実です。
  • 中学生——英単語と文法で干渉が目立ちます。似た語をまとめた教材は効率的に見えますが、扱い方に注意が要ります。
  • 高校生——範囲が広く、復習が偏りやすくなります。均等に取り出す仕組みを、自分で作る必要があります。

「時間が経ったから忘れた」という説明の限界

忘却を時間の経過で説明する見方は、直感に合います。しかし、この見方では説明できない観察が多くあります。同じ期間が空いても、間に何をしたかによって残り方が違うからです。

この違いは、実務的な意味を持ちます。時間が原因なら、対処は「早く復習する」だけになります。ところが干渉が原因なら、間に何を入れるかも対処の対象になります。似た内容を続けて詰め込まない、混同しやすい組み合わせを離す。いずれも時間の管理とは別の工夫です。

加えて、この見方は自己評価にも影響します。「忘れっぽい」という自己評価は、能力の問題として受け取られがちです。しかし、忘却の相当部分が配置の問題だとすれば、直せるのは能力ではなく配置のほうです。第14回で扱ったとおり、原因を変えられないものに置くと、対処が消えます。

取り出す順番が、次の取り出しを変える

検索誘導性忘却が示しているのは、記憶が独立した箱に入っているわけではないということです。同じカテゴリーの項目どうしは、互いに競合しています。ある項目を強く取り出せるようにすると、競合する項目は相対的に出にくくなります。

この競合の見方は、試験中の経験とも合います。ある答えが頭に浮かんでしまうと、別の答えが出てこなくなる。いったん離れて別の問題に移り、戻ってきたら思い出せる。競合している項目が活性化したままだと、他が出にくくなるためです。

実務的な対処としては、試験中に出てこないときは一度離れるのが合理的です。粘り続けると、誤った候補がさらに強くなります。1分粘って出ないなら次へ進み、後で戻る。この運用には、記憶の競合という根拠があります。

練習の場面でも同じです。ある語が出てこないとき、正解を見る前に長く粘りすぎると、誤った連想が強まることがあります。短く試して、出なければ確認する。そのうえで、間を空けてもう一度試す。この形のほうが、誤りの固定を避けられます。

「まとめて覚える」は、なぜ効率的に見えるのか

似たものをまとめた教材は、書店に多くあります。似た意味の語、似た形の漢字、紛らわしい文法事項。一覧になっていると、違いが明確に見えます。

この見え方には理由があります。比較している最中は、区別がはっきりするからです。2つを並べて違いを説明されれば、その場では納得します。問題は、本番では並んで出てこないことです。単独で出てきたとき、どちらだったかを判断する必要があります。

したがって、まとめた教材を使うこと自体は悪くありませんが、まとめて覚えたあと、単独で取り出す練習が要ることになります。比較した記憶と、単独で取り出せる記憶は別物です。

実務的には、比較で違いを理解し、その後は日を分けて単独で練習する。この2段構えが、干渉を避けながら区別を作る形になります。

よくある失敗——得意なところを回して安心する

検索誘導性忘却の知見が最も効くのは、この場面です。テスト前に、解ける問題を繰り返し解く。できる感覚が得られ、不安が減ります。

しかし、この作業には2つの問題があります。第一に、できる項目の練習は、伸びしろが小さい。第二に、研究が示唆するとおり、同じ範囲の練習しない項目を押し下げる可能性があります。

対処としては、取り出す対象を範囲全体からランダムに選ぶのが確実です。ページを開いてランダムに1問、あるいは番号をくじで選ぶ。選ぶ作業を自分の好みに任せないことが要点になります。

加えて、できなかった項目を別に集めるのも有効です。集めたリストの中では、すべての項目が練習対象になるため、抑制される側が生まれにくくなります。

間を空けることが、干渉を減らす

干渉は、時間的に近い記憶どうしで強くなります。だから、間を空けることには2つの意味があります。第一に、忘れかけたものを思い出す作業が定着を高めること。第二に、似たものどうしの距離を離すことです。

実務的には、単元ごとに日を割り当てる形が扱いやすくなります。1日に複数の似た単元を詰め込むより、離して配置するほうが、同じ総時間でも混同が減ります。

ただし、離しすぎると全体像が見えなくなります。第23回で述べたとおり、まとまりを作るには要素を関係づける必要があり、そのためにはある程度まとめて扱う場面も要ります。順序としては、まず関係づけて全体を作り、その後は離して個別に練習する。この形が両立しやすくなります。

取り違えの地図を作る

干渉への対処で最も効率がよいのは、自分がどれとどれを混同するかを知っておくことです。混同の組み合わせは、人によって違います。他人の一覧は役に立ちません。

作り方は簡単です。間違えたとき、正解だけを書くのではなく「AをBと書いた」という形で残します。これを続けると、数週間で自分の取り違えの一覧ができます。

一覧ができたら、そこに載っている組み合わせだけを対象に、区別の手がかりを作ります。用例、語源、使う場面、図。手がかりは何でも構いませんが、2つを分けるものである必要があります。共通点を覚えても、区別には効きません。

この作業の利点は、対象が絞られていることです。範囲全体に対して区別の手がかりを作るのは現実的ではありませんが、実際に混同している数組だけなら扱えます。第23回で述べたまとまりの作り方と同じで、対象を絞ることが実行可能性を決めます。

保護者ができること——「混ざったもの」を記録させる

家庭でできることは限られていますが、干渉は記録すると見える種類の問題です。

  1. 間違いを「取り違え」として記録させる。 「AとBを混同した」という形で書くと、干渉の組み合わせが見えます。
  2. 同じ組み合わせが繰り返されていないか確認する。 繰り返されているなら、区別の手がかりが足りていません。
  3. 「解けるものだけやっていない?」と聞く。 復習の偏りは、本人には見えにくい部分です。

いずれも内容の知識は要りません。記録の形式を整えるだけで、対処すべき場所がはっきりします。

似た科目を続けて学ぶとき——混ざり合いを防ぐ

干渉という見方は、英単語の暗記だけでなく、似た性格の科目を続けて学ぶときにも当てはまります。たとえば社会の用語と理科の用語は、どちらも漢字の熟語として並ぶため、続けて触れると混ざりやすいことがあります。同じ夜に両方を詰め込むと、後から触れたほうが前に触れたほうを押しのける形になりかねません。

似た手順を持つ科目でも同じことが起こります。数学の解法と理科の計算問題は、使う記号や式の形が近いため、片方の手順がもう片方に染み出すことがあります。本人は「どちらも分かっている」と感じていても、いざ取り出す段になると、混ざった形で出てくることがあります。

そこで、似た科目を同じ時間帯に並べるのを避けるという工夫が考えられます。間に別の性格の作業を挟む、時間帯を分ける、日をずらす。こうした配置の調整は、内容そのものを変えずに、混ざりを減らす助けになることがあります。何を学ぶかと同じくらい、どの順で並べるかも影響すると考えられます。

記録が続かない——混同の原因を追えない

取り違えを減らすには、混ざった箇所を書き留めておくことが助けになります。ただし、これを実行に移すと、記録そのものが続かないというつまずきが生じやすいものです。間違いを書き出す作業は、勉強の成果として実感しにくく、後回しにされがちだからです。

たとえば英単語の小テストの直後に、混ざった単語の組を書き残そうとしても、次の課題に移るうちに忘れてしまいます。ノートの端に書いても、どこに書いたか分からなくなり、見返す習慣が定着しないことがあります。記録の場所と形式が決まっていないと、せっかくの気づきが流れてしまいます。

また、記録を取ることに意識が向きすぎると、肝心の学習そのものが止まってしまうこともあります。取り違えの一覧を作ること自体が目的化し、その後の確認がおろそかになる場面も考えられます。記録は短く、決まった場所に、決まった形で残す程度にとどめ、見返す機会のほうを先に決めておくことが現実的だと考えられます。

この記事で言えないこと

検索誘導性忘却は、実験室の統制された条件で確認された現象です。教科書の内容のように、要素が意味で結びついている材料で同じ強さの抑制が起きるかは、条件によります。抑制の持続時間についても、実験の条件に依存します。

また、干渉を完全に避けることはできません。学習が進むほど、似た内容は増えます。ここで示したのは、干渉を減らす配置の工夫であって、消す方法ではありません。混同が起きること自体は、学習が進んでいる証拠でもあります。

当塾の立場

似たものを離す、区別の手がかりを足す、範囲全体から均等に取り出す。いずれも費用はかかりません。

武蔵野個別指導塾で行っているのは、確認の際に出す問題を担当が選ぶことです。本人に選ばせると、解ける問題に偏ります。範囲全体から、前回できなかったものを含めて出す。加えて、取り違えの組み合わせを記録に残し、次回その2つを離して扱います。混同は本人の注意力の問題ではなく、配置で減らせる問題だと考えています。

出典

  1. Underwood BJ. Interference and forgetting. Psychological Review. 1957;64(1):49-60.
  2. Anderson MC, Bjork RA, Bjork EL. Remembering can cause forgetting: Retrieval dynamics in long-term memory. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition. 1994;20(5):1063-1087.

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