多読は級を上げるか——多読の効果量のメタ分析

多読は級を上げるか——多読の効果量のメタ分析

学習の場で、たくさん読めば級が上がる、という話が出ることがあります。多読を続ければ読解は伸びる、とも思う。冊数が足りないから級が止まる、とも思う。三つの声は、同じ「多読」に見えます。見え方と、研究が述べている層が同じかは、別です。

Nakanishi は、多読研究の全体的効果を、学習者の年齢と、多読の期間と、テスト得点の側から見ています [1]。論文の表題は “A Meta-Analysis of Extensive Reading Research” です。2015年の報告です。扱うのは、34 研究(博士論文 2・研究論文 32)が提供した 43 の効果量と、参加者 3,942 名です。英検の級や合格点、その対応を、直接測った研究ではありません。第二言語学習者の多読研究のメタ分析であり、英検の級の名簿ではない、ということを、この回は最初に言います。後でもう一度言います。英検にそのまま当てはまる、とは書きません。d = 0.46 と d = 0.71 を、英検の級や得点には換算しません。

Jeon と Day は、多読が読解力に与える影響を、別のメタ分析として置いています [2]。論文の表題は “The effectiveness of ER on reading proficiency: A meta-analysis” です。2016年の報告です。扱うのは、1980年から2014年の 49 の一次研究から集めた 71 の独立サンプルと、参加者 5,919 名です。英検準1級や2級などの級に、効果量を換算した研究ではありません。英語を外国語として学ぶ設定と、第二言語として学ぶ設定を含むメタ分析であり、英検の公式ではない、ということを、この回は最初に言います。後でもう一度言います。英検にそのまま当てはまる、とは書きません。成人で高い、ウェブベースの物語で高い、を、英検受験者全体の正解にはしません。

結論を先に言います。群間対比では中程度の効果量(d = 0.46)、前後対比ではより大きい(d = 0.71)、と2015年の報告は述べています [1]これまでの研究は多読が読解力を改善し、言語学習カリキュラムの一部であるべきだと示唆する、とも述べています [1]実験群対統制群対比と前後テスト対比の両デザインで、小〜中程度の効果が見られた、と2016年の報告は述べています [2]成人で子ども・青年より高い効果、外国語としての英語の設定で第二言語としての英語より高い効果、紙の本よりウェブベースの物語で高い効果、カリキュラムの一部としての多読が多読のタイプの中で最高の平均効果、とも述べています [2]。d = 0.46、と、何冊で何級、は違います。カリキュラムの一部であるべきだ、と、多読すれば必ず級が上がる、も違います。成人で高い、と、大人向けが英検の正解だ、も違います。どちらも、英検の級を上げる手順書ではありません。

先に、この回がしないことも言っておきます。一次証拠は、多読研究の二つのメタ分析です。英検の級・合格点を、一次資料としては扱いません [1]d = 0.46 と d = 0.71 と 3,942 を、「何冊で何級」の公式にしません。多読すれば必ず級が上がる、とも断定しません。群間対比と前後対比で効果量が違う、という記述を、消して書くことはしません [1]紙よりアプリ、成人向け、を、英検受験者全体の正解としては書きません。5,919 名と 71 の独立サンプルを、級の名簿にはしません [2]。語彙カバー率の話は、すでに別稿があります。この回では再説明しません。リスニングの話速の話も、試験対策の話も、すでに別稿があります。再説明しません。睡眠、運動、教室環境も、軸にしません。この回の軸は、多読メタ分析の効果量と、調整変数を、同じ重さで置くことです。受験者の冊数を、足りないと決めつけません。学習者の多読の量を、欠点の証明にもしません。

1. 多読と級の上昇は、同じ「伸び」ではない

学習者が「多読」と呼ぶものの中には、いくつかの層が混ざります。読解力のテスト得点。実験群と統制群の差。実験群だけの前後の差。級の名前。層が混ざったまま、「読めば上がる」と言うと、どの測定の、どの期間の、どの試験の話なのかが見えなくなります。

Nakanishi が置いているのは、多読の全体的効果です [1]。英検の級別の合格点そのものではありません。置いているのは、群間対比と前後対比という、2 種の実証研究です。種があることと、多読すれば必ず級が上がる、という口語の助言は、最初から違います。違うものを、同じ「多読」という言葉で結ぶと、効果量が一つの勝者に見えます。見せません。

Jeon と Day が置いているのも、多読が読解力に与える影響です [2]。英検準1級や2級などの級ではありません。読解力の効果量と、当日の級の名前は、層が違います。層が違うものを、次の級へ移る時期の手順に溶かすことはしません。次の級の話は、すでに別稿があります。この回では再説明しません。

英検の会場に、読んだ量の記憶が載ります。載ることと、2015年のメタ分析が測っている一次研究が同じであることは、別です。別である、を、本番では多読は関係ない、と読むこともしません。関係がある、と著者が書いているのは、多読が読解力を改善するという側です。側があることと、英検の級の点が同じ式であることは、違います。違う、を、この回の入口に置きます [1] [2]

学習者本人が読むときの形も、同じ範囲に置きます。「たくさん読んだのに級が止まっているから、自分は冊数が足りない」。その物語を、この二つの報告は支えていません。支えていないことと、多読が無い、は、また別です。効果量の話があることと、向き不向きの判定であることは、層が違います。層を混ぜて、本人を責める文にはしません。

2. 一次証拠は多読のメタ分析である。英検の級ではない

入口のあと、対象を固定します。ここでも、最初に限界を言います。2015年も2016年も、多読研究のメタ分析です。どちらも、英検そのものの研究ではありません。級の合格点を測った一次資料ではありません。

  1. Nakanishi が含めたのは、統制群と実験群の群間対比と、実験群のみの前後対比の 2 種である。
  2. Jeon と Day が集めたのは、1980年から2014年の 49 の一次研究である。

メタ分析、です。一つの教室の前後テスト、ではありません。一次研究を束ねた、という位置です。位置を、英検の公開会場の観察にはしません。観察にすると、束ねた効果量が、級の証明に見えます。見せません [1]

第二言語学習者、です。外国語としての英語の設定と、第二言語としての英語の設定です。英検ではありません。対象が言語学習の多読である、という位置は、公開試験の外側にあります。外側であることと、無関係、は違います。違う遠さを、英検の対応表にはしません。対応表が無い以上、多読は、その名前のまま使います [2]

テスト得点、という語も、2015年の目的の位置です [1]。多読期間がテスト得点に与える影響を検討した、と著者は書いています。テスト、です。英検、ではありません。影響を検討した、です。級が上がる、という記述ではありません。記述でない影響を、合格点の顔で出すことはしません。出さない、を、テスト得点は無関係だ、と読むこともしません。関係がある、と著者が書いているのは、多読の期間とテスト得点です。関係がある得点と、英検の合格点が同じ式であることは、違います。違う、がこの節の上限です [1] [2]

3. 34 研究、43 の効果量、参加者 3,942 名。群間と前後を分けた

対象の隣に、Nakanishi は、束ね方を置きます [1]。ここでも、英検の受験者数ではありません。

  1. 多読の全体的効果、学習者年齢の影響、多読期間がテスト得点に与える影響を検討した。
  2. 34 研究(博士論文 2・研究論文 32)・43 の効果量・参加者 3,942 名を含んだ。

34 研究、です。博士論文 2、研究論文 32、です。43 の効果量、です。参加者 3,942 名、です。大きな束ね、です。大きな束ねであることと、英検の級の名簿であることは、別です。別である人数を、公開会場の何人分、として足すことはしません。足すと、著者が書いていない会場の物語が生まれます。生まれた物語を、根拠の顔で出すことはしません [1]

学習者年齢の影響、です。多読期間がテスト得点に与える影響、です。影響を検討した、です。検討、という語が正確です。年齢別の級の目安が出た、という書き方ではありません。目安にすると、著者が書いていない切点が生まれます。生まれた切点を、次の級へ移る時期の規則として配ることはしません。次の級の話は、すでに別稿があります。この回では再説明しません。

群間対比と前後対比、です。2 種です。種を分けた、という位置が、この報告の入口です。入口を外して、多読の効果は一つだ、という文にはしません。一つにすると、あとで出てくる d = 0.46 と d = 0.71 の差が消えます。差を消すと、デザインの違いが、同じ「伸び」に見えます。見せません [1]

全体的効果、です。全体的、という語は、束ねたあとの位置です。一人の学習者の一冊、ではありません。一冊の話に読み替えると、メタ分析が、今日の宿題の証明に見えます。見せません。著者が置いているのは、34 研究の束ねです。束ねと、受験者の次の一冊は、別です。

4. 群間は d = 0.46、前後は d = 0.71。読解力を改善し、カリキュラムの一部であるべきだと示唆する

束ね方のあと、Nakanishi は結果を置きます [1]。結果の主語が、英検の級ではなく、効果量である、という位置を外しません。

  1. 群間対比では中程度の効果量(d = 0.46)、前後対比ではより大きい(d = 0.71)。
  2. これまでの研究は多読が読解力を改善し、言語学習カリキュラムの一部であるべきだと示唆する。

d = 0.46、です。中程度、です。d = 0.71、です。より大きい、です。群間対比と前後対比で、数字が違います。違う数字を、平均した新しい効果量は、作りません。作ると、著者が分けた 2 種が、一つの公式に見えます。見せません。d = 0.46 も d = 0.71 も、英検の級や得点には換算しません。換算表は、この報告からは出てきません。出ない表を、何冊で何級、として足すことはしません [1]

多読の指導を受けた学生と、受けなかった学生の比較です。比較であることと、英検の受験者と未受験者の比較であることは、別です。別である比較を、級の合格者と不合格者の差に読み替えることはしません。読み替えると、効果量が、合否の証明に見えます。見せません。

読解力を改善し、言語学習カリキュラムの一部であるべきだと示唆する、です。示唆する、という語が正確です。英検の対策に必須だ、という記述ではありません。記述でないべきだ、を、実施要項への要求にはしません。要求にすると、カリキュラムの話が、制度批判の一点に見えます。見せません。著者が書いたのは、言語学習カリキュラムの一部であるべきだ、という示唆です。示唆と、級の合格の保証は、別です [1]

より大きい、の主語は、前後対比の効果量です。群間より大きい、です。大きい、を、必ず級が上がる、と読むことはできません。前後対比は、実験群のみです。統制群との差ではない、という位置が残っています。残っている位置を消して、前後の伸びを多読の効果そのものだ、と短くすることはしません。短くすると、デザインの差が消えます。消えた差を、根拠の顔で出すことはしません。

5. 49 の一次研究、71 の独立サンプル、参加者 5,919 名。1980年から2014年である

2015年の隣に、2016年のメタ分析を置きます [2]。隣に置く、を、同じ数字だ、とは言いません。ここでも、最初に限界を言います。1980年から2014年の 49 の一次研究です。英検の級の名簿ではありません。効果量を、英検準1級や2級などの級には換算しません。

  1. 多読が読解力に与える影響を検討するメタ分析を行った。
  2. 1980年から2014年の 49 の一次研究から、71 の独立サンプル・参加者 5,919 名を集めた。
  3. 実験群対統制群対比と前後テスト対比の 2 デザインで効果量を別に算出した。

49 の一次研究、です。71 の独立サンプル、です。参加者 5,919 名、です。2015年の 34 研究・43 の効果量・3,942 名とは、束ねが違います [1]。違う束ねを、平均した新しい人数は、作りません。作ると、二つのメタ分析が、一つの標本に見えます。見せません。5,919 名を、英検の受験者全体には一般化しません [2]

2 デザインで効果量を別に算出した、です。別に、という語が正確です。Nakanishi も、群間と前後を分けました [1]。分け方が近い、を、同じ効果量だ、とは言いません。近い分け方と、同じ数字は、層が違います。層が違うものを、同じ「中程度」という言葉で結ぶと、2015年の d = 0.46 が、2016年の小〜中程度の別名に見えます。見せません。数字の対応表は、この回が使う範囲にはありません。無い表を、足すことはしません。

1980年から2014年、です。期間がある、という位置です。英検の現行の級の設計そのものではありません。期間があることと、いまの公開試験がこの期間の内側であることは、別です。別である期間を、実施要項の年表にはしません。年表にすると、メタ分析の対象年が、級の改定の証明に見えます。見せません [2]

6. 両デザインで小〜中程度の効果。過去 30 年で関心が高まっている

束ねのあと、Jeon と Day は、効果の大きさと、関心の向きを置きます [2]。向きを、級の上昇の保証にはしません。

  1. 両デザインで小〜中程度の効果が見られた。
  2. 過去 30 年で多読への関心が高まっている。

小〜中程度、です。両デザイン、です。実験群対統制群対比と、前後テスト対比です。両方で、小〜中程度、です。大きい、ではありません。無い、でもありません。小〜中程度を、必ず級が上がる、という文に翻訳することはしません。翻訳すると、効果の幅が、合格の保証に見えます。見せません [2]

Nakanishi は、群間を中程度(d = 0.46)、前後をより大きい(d = 0.71)と書きました [1]。Jeon と Day は、両デザインで小〜中程度、と書きました。近い言葉です。近い言葉を、同じ効果量だ、と読む対応表は、ありません。無い対応表を、二つのメタ分析の勝者比べにはしません。比べにすると、束ね方が違う報告が、一つの順位表に見えます。見せません。

過去 30 年で関心が高まっている、です。調整変数分析が示した、と著者らは書いています。関心、です。効果の大きさそのもの、ではありません。関心が高まっている、を、多読が以前より効くようになった、と読み替えることはしません。読み替えると、関心の話が、効果量の上昇に見えます。見せません。著者が置いているのは、分野における関心の高まりです。高まりと、英検の級の上昇は、別です [2]

小〜中程度であることと、多読は無意味だ、と読むこともしません。無意味だ、と読むと、効果が見られた、という記述が消えます。消すと、メタ分析が、否定の証明に見えます。見せません。残る報告は、両デザインで小〜中程度の効果が見られた、です。見られた効果と、級の合格点は、別です。

7. 成人、外国語としての英語、ウェブベース、カリキュラムの一部。受験者全体の正解にはしない

効果の大きさの隣に、著者らは調整変数を置きます [2]。調整変数を、英検受験者全体の正解にはしません。

  1. 成人で子ども・青年より高い効果。
  2. 外国語としての英語の設定で、第二言語としての英語より高い効果。
  3. 紙の本よりウェブベースの物語で高い効果。
  4. カリキュラムの一部としての多読が、多読のタイプの中で最高の平均効果。

成人で高い、です。子ども・青年より、です。比較です。英検の大人の級が取りやすい、という記述ではありません。記述でない比較を、中高生には多読は効かない、という文に翻訳することはしません。翻訳すると、調整変数が、年齢の欠点の証明に見えます。見せません。著者が書いたのは、成人の群で、子ども・青年の群より高い効果が見られた、という向きです。向きがあることと、受験者の年齢が勝者であることは、別です [2]

外国語としての英語の設定で高い、です。第二言語としての英語より、です。日本の英検が外国語としての英語の設定だ、という判定を、この回は足しません。足すと、著者が書いていない国の対応表が生まれます。生まれた表を、根拠の顔で出すことはしません。設定の名前があることと、英検の会場がこの名前であることは、別です。別である名前を、公開試験の内側の説明に読み替えることはしません。

紙の本よりウェブベースの物語で高い、です。高い、です。紙は無意味だ、ではありません。無意味だ、と読むと、紙の本が、誤りの証明に見えます。見せません。ウェブベースの物語、です。アプリが正解だ、という口語の助言ではありません。口語の助言にすると、調整変数が、道具の宣伝に見えます。見せません。著者が置いているのは、ウェブベースの物語と紙の本の比較です。比較を、英検受験者全体の正解にはしません [2]

カリキュラムの一部としての多読が、タイプの中で最高の平均効果、です。最高、の範囲は、多読のタイプの中です。英検対策の全手段の中、ではありません。範囲を外して、多読が一番だ、という文にはしません。Nakanishi も、言語学習カリキュラムの一部であるべきだと示唆すると書いています [1]。近い「カリキュラム」です。近い語を、同じ授業の時間割だ、とは言いません。示唆と、最高の平均効果は、層が違います。層が違うものを、英検の対策教室の公式に溶かすことはしません。

外国語としての英語と第二言語としての英語の設定で、多読を効果的に実施する方法の提案をした、とも著者らは書いています [2]。提案、です。英検の級別の手順書、ではありません。提案の中身の個条を、この回が足して一覧にすることはしません。足すと、著者が抄録に書いていない手順が生まれます。生まれた手順を、根拠の顔で出すことはしません。提案があることと、当日の読み方の正解があることは、別です。

8. 二つの研究を並べる。何冊で何級、にはしない

ここまでを一度だけ表にします。新しい数値は足しません。

著者が述べていること
2015年の対象 34 研究(博士論文 2・研究論文 32)。43 の効果量。参加者 3,942 名。英検の級そのものではない [1]
2015年の効果量 群間対比 d = 0.46(中程度)。前後対比 d = 0.71(より大きい)。級・得点への換算はしない [1]
2015年の示唆 多読は読解力を改善し、言語学習カリキュラムの一部であるべきだと示唆する。必ず級が上がる、ではない [1]
2016年の対象 1980年から2014年の 49 の一次研究。71 の独立サンプル。参加者 5,919 名。英検の級の名簿ではない [2]
2016年の効果 両デザインで小〜中程度。過去 30 年で関心が高まっている。関心は効果の大きさそのものではない [2]
2016年の調整変数 成人、外国語としての英語、ウェブベースの物語、カリキュラムの一部。受験者全体の正解ではない [2]
英検の級と合格点 この二つの報告からは決まらない。何冊で何級、も、必ず級が上がる、も、出てこない

表の読み方は、上下の勝敗ではありません。上段の2015年は、群間と前後で数字が違う効果量と、カリキュラムへの示唆です。中段の2016年は、小〜中程度と、調整変数です。下段の英検の級は、どちらの報告にも無い層です。無い層を、表の空欄のまま置きます。

d = 0.46 と、小〜中程度を、平均した新しい効果量は、作りません。測っている束ねが違います。一方は、34 研究の 43 の効果量です。他方は、49 の一次研究の 71 の独立サンプルです。近い「多読」を、同じ量の反復としては読めません [1] [2]

学習の場での見え方に一度だけ引き直します。新しい数値は足しません。たくさん読めば級が上がる、という声。2015年の報告は、d = 0.46 と d = 0.71 を書き、同時に、デザインで数字が違う、とも書いています [1]。2016年の報告は、両デザインで小〜中程度だ、と書き、成人やウェブベースの物語で高い、とも書いています [2]。引き直した結果として出てくるのは、当日の冊数の命令ではありません。メタ分析の効果量と、調整変数を、英検の級の手順に溶かさない、という確認の形です。

語彙カバー率の話は、すでに別稿があります。この回の二つの報告は、その話ではありません。多読の効果量と、調整変数です。別稿の層を、ここに厚くやり直すことはしません。リスニングの話速も、試験対策も、軸にしません。睡眠や運動を、冊数の代わりに置くこともしません。置く軸は、メタ分析があることと、級の手順にはしないことです [1] [2]

9. 【反証】この回が言えないこと

第一に、一次証拠は二篇です。Nakanishi の2015年と、Jeon と Day の2016年です [1] [2]。英検の級・合格点を、一次資料として測った研究ではありません。合否も、級の得点差も、この二つの報告は述べていません。英検そのものの研究ではない、ということを、ここで再度言います。英検にそのまま当てはまる、とは書きません。

第二に、2015年は 34 研究、43 の効果量、参加者 3,942 名です。英検の受験者全体ではありません。群間対比と前後対比の 2 種です。種を分けた報告を、一つの効果だ、と短くすることはできません [1]

第三に、d = 0.46 と d = 0.71 を、英検の級や合格点に換算することはできません。3,942 を、「何冊で何級」の公式にすることもできません。換算表は、この報告からは出てきません。出ない表を、合格点の動きとして足すことはしません [1]

第四に、多読が読解力を改善し、言語学習カリキュラムの一部であるべきだと示唆する、を、多読すれば必ず級が上がる、という断定にはできません。示唆する、です。必須だ、ではありません。前後対比がより大きい、を、統制群の不要、と読むこともしません [1]

第五に、2016年は 1980年から2014年の 49 の一次研究、71 の独立サンプル、参加者 5,919 名です。英検の級の名簿ではありません。現行の級の設計そのものでもありません。5,919 名を、公開会場に一般化することはできません [2]

第六に、両デザインで小〜中程度、です。大きい、ではありません。無い、でもありません。過去 30 年で関心が高まっている、は、効果が大きくなった、という意味ではありません。関心と、効果量は、別です [2]

第七に、成人で高い、外国語としての英語で高い、ウェブベースの物語で高い、カリキュラムの一部が最高、を、英検受験者全体の正解にはできません。中高生には効かない、でも、紙は誤りだ、でも、アプリが正解だ、でもありません。設定の名前を、英検の会場の名前に読み替える対応表も、ありません [2]

第八に、二つのメタ分析を合成して、新しい効果量を作ることはできません。d = 0.46 と小〜中程度を平均した方針も、この回からは出てきません。当日を冊数の勝負として書くことも、していません。

第九に、語彙カバー率、リスニングの話速、試験対策、過去問の再テスト効果、級別のロードマップは、この回では再説明していません。すでに書いた話だからです。必要でも、参照に留めます。睡眠、運動、食事、教室環境を、この回の軸にもしていません。

第十に、この回は、受験者の冊数を間違っていると決めつけていません。準備が足りない、という責めの文にもしていません。学習者の多読の量を、欠点だとも書いていません。著者らが述べたのは、多読研究の二つのメタ分析です。研究があることと、受験生を責めることは、別です [1] [2]

10. 実務——試験場と出願で使える3つの確認

  1. d = 0.46 や d = 0.71 を、英検の級や合格点に換算していませんか。「何冊で何級」の公式にしていませんか。多読すれば必ず級が上がる、と断定していませんか。Nakanishi によれば、群間対比では中程度の効果量(d = 0.46)、前後対比ではより大きい(d = 0.71)です。多読は読解力を改善し、言語学習カリキュラムの一部であるべきだと示唆します [1]。示唆、です。デザイン別の数字、です。級の保証ではありません。換算表は出てきません。面談の前に、断定に上げていないか、を一度だけ言い直す、という確認です。
  2. 34 研究と 3,942 名、49 研究と 5,919 名を、英検の級の名簿に読み替えていませんか。二つのメタ分析を一つの効果量に平均していませんか。2015年は群間と前後を分け、2016年も 2 デザインで別に算出しました。束ねが違います [1] [2]。無い平均を、当日の手順にしない。語彙カバー率の話は、別稿です。この回の層は、多読の効果量です。層を混ぜない、という確認です。
  3. 成人で高い、ウェブベースの物語で高い、を、英検受験者全体の正解にしていませんか。紙の本を誤りだとしていませんか。Jeon と Day は、両デザインで小〜中程度の効果を見ました。成人、外国語としての英語、ウェブベースの物語、カリキュラムの一部としての多読で、より高い向きを報告しています [2]。向き、です。受験者全体の正解ではありません。換算表は、この報告からは出てきません。出ない、を、確認の答えにします。

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まとめ

  1. Nakanishi は、多読研究の全体的効果、学習者年齢、多読期間とテスト得点を検討した。34 研究(博士論文 2・研究論文 32)。43 の効果量。参加者 3,942 名。英検の級・合格点そのものではない [1]
  2. 群間対比では中程度の効果量(d = 0.46)、前後対比ではより大きい(d = 0.71)。多読は読解力を改善し、言語学習カリキュラムの一部であるべきだと示唆する。必ず級が上がる、という断定にはしない。級や得点への換算もしない [1]
  3. Jeon と Day は、多読が読解力に与える影響のメタ分析を行った。1980年から2014年の 49 の一次研究。71 の独立サンプル。参加者 5,919 名。英検の級の名簿へはそのまま当てはめない [2]
  4. 両デザインで小〜中程度の効果。過去 30 年で関心が高まっている。関心は、効果の大きさそのものではない。無意味だ、とも読まない [2]
  5. 成人、外国語としての英語、ウェブベースの物語、カリキュラムの一部で、より高い向き。英検受験者全体の正解にはしない。紙は誤りだ、とも、アプリが正解だ、とも書かない [2]
  6. 二つの研究を並べると、多読のメタ分析には効果量と調整変数がある。英検の級への読み替えも、何冊で何級の手順も、この研究からは出てこない。語彙カバー率と試験対策は再説明しない。当日を冊数の勝負にはしない。受験者の多読の量を準備不足と決めつけない。

出典

本文中の番号に対応します。書誌を確認し、抄録に直接あたったものだけを挙げています。結論に反する記述も、同じ基準で載せています。

  1. 【多読研究のメタ分析と効果量】Nakanishi, Takayuki (2015). A Meta-Analysis of Extensive Reading Research. TESOL Quarterly, 49(1), 6–37. DOI: 10.1002/tesq.157
  2. 【多読と読解力のメタ分析・調整変数】Jeon, Eun-Young; Day, Richard R. (2016). The effectiveness of ER on reading proficiency: A meta-analysis. Reading in a Foreign Language, 28(2), 246–265. DOI: 10.64152/10125/66901
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宮川 涼 Founder
早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。

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