英語の要約は何で決まるか——日本語の要約力は移らず、言い換えは「ほぼ丸写し」になりやすい

英語の要約は、何の力で決まるのか

英検では近年、一部の級のライティングに英文を読んで英語で要約する課題が加わりました。対象の級・語数・採点観点は必ず英検協会の最新の公式情報でご確認ください。この記事は形式の解説ではなく、第二言語で要約する力そのものを研究から考えます。

要約の対策として、「重要な文を選んで短くつなぐ」「本文の語を言い換える」と教わることが多いと思います。では、英語の要約の出来を左右しているのは、読解力なのか、語彙なのか、日本語での要約力なのか。要約は教えて伸びるのか。そして、言い換え(パラフレーズ)はなぜ難しいのか

既存記事要約と選択肢では要約を全科目の基礎技術として扱いました。ここでは外国語で要約し、外国語で言い換えることに絞ります。

一言でいうと(この記事の結論)
要約の規則を明示的に教えると、要約の質は上がりました [1] [2]しかし小学生対象のメタ分析では、効果は遅延テストで消えていました [3]
日本人学習者では、英語の要約の出来を決めていたのは日本語の要約力より英語の読解力と語彙で [6] [7] [8]第二言語の書き手は、原文の「ほぼ丸写し」を母語話者より有意に多く使っていました [12]
——要約の練習だけでは足りず、読める力と、原文を見ずに言い直す練習が土台になります。

  1. 要約の規則の直接指導は、規則の使用と要約の質を高めました [1]
  2. 外国語での要約指導の効果は、3週間後も保たれていました [2]
  3. 【反証】小学生の文章構造指導の要約への効果は g = 0.57でしたが、遅延テストでは対照群を上回らなくなりました [3]
  4. 日本人大学生68人で、英語の要約の出来をよく説明したのは、語彙力全体より読解力と要約の長さでした [8]
  5. 第二言語の書き手は、母語話者より「ほぼ丸写し」の言い換えが有意に多かった [12]
  6. 原文を見ずに要約すると、日本人大学生の要約は簡潔になり、言い換えが大幅に増えました [15]
  7. 【反証】要約の出来は、書き手の語学力より原文の性質に大きく左右されました [11]
マインドマップ図解:英語の要約は何で決まるか——日本語の要約力は移らず、言い換えは「ほぼ丸写し」になりやすい
図:この記事の構造(Mapifyで作成したマインドマップ)

1. 要約は教えられるか

要約には、削除(重要でない情報を落とす)、一般化(具体例を上位の言葉でまとめる)、統合(複数の文を1つの主旨にまとめる)といった処理が含まれます。日本人大学生414人の読解テストの研究でも、この3つの処理の型ごとに、習熟度によって引っかかる誤答選択肢が違いました。たとえば一般化の問題では、具体例を含む選択肢と、不適切な上位語の選択肢が、低・中位の学生に選ばれやすかったのです [18]

こうした規則を教える研究は古くからあります。1984年の研究は、丁寧に区切って教えた要約の指導が、要約規則の使用と要約の質を高めたと結論しました [1]。外国語学習者を対象にした研究でも、要約のメタ認知的な方略訓練が、説明文の理解と要約の力を高め、その要約の向上は指導終了3週間後も保たれていました [2]

書くことと読むことの関係を統合したメタ分析は、読んだ内容について書くことが理解を高め、書き方の指導が読解を高めることを示しています [4]

一言でいうと
削除・一般化・統合という規則は、明示的に教えると使えるようになります [1] [2]そして、要約は読解の練習にもなります [4]

2. 日本人学習者の英語の要約は、何で決まるか

「日本語で要約できる子は、英語でも要約できる」と考えたくなります。日本人学習者の研究は、この見方を支持しませんでした。

研究 対象 結果(要旨の記載)
[6] 英語が初中級の日本人大学生47人 日本語の要約力が英語の要約に与えた影響は小さかった
[7] 習熟度の混ざった日本人大学生40人 日本語の要約力は、英語力の低い層でわずかに影響し、高い層では影響しなかった。語彙サイズは英語の要約と正の相関
[8] 日本人大学生68人 語彙力全体の影響は、読解力と要約の長さの影響に比べて目立たなかった。ただし「語の定義を書く力」は独自の寄与をした

最初の研究の著者は、この結果を「第二言語がある水準に達するまで、母語の力は移りにくい」という言語閾値仮説を支持するものと位置づけています [6]。3つ目の研究は、語と語の意味のつながりの構造と、語を言語的に操作する力が、第二言語での要約を構成する要素かもしれないと述べています [8]

他国の研究も同じ方向です。UAEの大学生46人では、要約の得点はIELTSの読解・作文・総合のいずれとも正の相関があった一方、原文の重要な考えをいくつ含めたか(内容の得点)と相関したのは読解の得点だけでした。著者らは、読解だけでは効果的な要約には不十分と述べています [9]。73人の研究では、語彙サイズと要約の質に強い正の相関がありましたが、語彙の豊かさの指標の多くは相関しませんでした [10]

一言でいうと
英語の要約は、日本語の要約力の延長ではありませんでした [6] [7]内容を拾えるかは読解力、それを書けるかは語彙と作文の力——と分けて考えるのが研究に近い見方です [8] [9]難しい語を使うことは、質の高さとは結びつきませんでした [10]

3. 言い換えはなぜ難しいか——「ほぼ丸写し」の研究

要約の採点で問題になるのが、原文の表現をそのまま使うことです。

母語話者79人と第二言語の書き手74人の要約を比べた研究は、言い換えをほぼ丸写し、最小限の修正、中程度の修正、大幅な修正の4つに分類しました [12]どちらの群も要約1本あたり約5つの言い換えを使っていましたが、第二言語の書き手は「ほぼ丸写し」が有意に多く、母語話者は中程度・大幅な修正が有意に多かったのです。

台湾の大学生・大学院生95人の研究では、学生は盗用を否定し、言い換えの重要性を理解していると答えたにもかかわらず、実際の言い換え課題では受け入れられる文章を書けていませんでした。理由として、言い換えを明示的に学んでいないこと、経験と練習の不足、母語での引用慣行の影響が挙げられています [14]

では、どうすれば言い換えが増えるのか。日本人大学生に物語を要約させた研究は、原文を見ながら書くと、細部を含む長く複雑な要約になり、原文を見ずに書くと、主要な考えに絞った簡潔な要約になり、言い換えが大幅に増えたと報告しています [15]。著者は、原文を見ない要約は日本の授業ではほとんど行われていないと指摘しています。

日本の工学部の学生64人を対象に、主要な考えの表し方と言い換えについて、自動で細かいフィードバックを返すオンライン教材を使った研究では、書き直しで内容の得点が有意に上がり、その水準は別の要約課題でも保たれ別の課題では言語使用の得点も有意に上がりました。学習者は語数の条件を守りながら、主要な考えの網羅と原文の丸写しについて、実質的な修正をしていました [16]

一言でいうと
第二言語では、言い換えのつもりが「ほぼ丸写し」になりやすい [12]本人は分かっているつもりでも、できていない [14]原文を伏せて書く練習と、具体的なフィードバックで改善しました [15] [16]

4. 反証——要約指導の効果と、要約の測定の限界

【反証1】効果が残りません。小学4〜6年生の文章構造指導44研究のメタ分析では、要約への直後の効果は g = 0.57と比較的大きかったものの、遅延テストでは対照群を上回らなくなっていました [3]。規則に基づく要約技法の指導などが効果を調整しましたが、その影響も測定によって異なりました。

【反証2】要約が他の書く活動より優れているとは言えません。小中高の19研究のメタ分析では、要約とメモ取り、要約と質問への解答などの比較で、介入に固有でない読解測定を平均すると、どの比較にも有意差がありませんでした。要約が質問解答より優れていたのは、自由再生で測った場合だけでした [5]

【反証3】要約の出来は、書き手より原文で決まる部分が大きい。157人が長さと読みやすさの近い3つの英文のうち1つを要約した研究では、原文の違いが、書き手の語学力より有意かつ相対的に大きな影響を与えました。影響した要因として、全体の構成、なじみのない語の頻度、話題への親しみ、原文の長さが挙げられています [11]過去問1回分の要約の出来で、力を判断するのは危ういということです。

【反証4】採点が揃いません。日本人大学生51人の英語の要約を、同じ全体評価のルーブリックで教員6人が採点した研究では、評価者間の信頼性が、英語母語話者の評価者で α = 0.77、非母語話者の評価者で α = 0.39でした。非母語話者は語彙と言い換えに、母語話者は内容と言語に注目していました [17]家庭や学校で採点した結果が、試験の採点と一致するとは限りません。

【反証5】「丸写し」は、思われているほど広くないかもしれません。読解と作文を統合したテストの答案63本の分析では、原文から大量に借用していたのは少数の学生だけで、話題・学生群・習熟度による借用パターンの差も小さかったと報告されています [13]。丸写しを過度に警戒して、原文の正確な語を不自然に避けることにも注意が要ります。

一言でいうと(反証のまとめ)
要約指導の効果は時間とともに薄れ [3]他の書く活動と比べた優位もはっきりしません [5]そして要約の点は、原文と採点者によって揺れます [11] [17]

5. 実務——要約の練習を1回30分で組む

  1. 読む(8分):段落ごとに1行の日本語メモを書く。内容を拾えるかは読解力でした [9]。まず何が書いてあるかを確実に取ることから始めます。
  2. 整理する(3分):メモに「削除・一般化・統合」の印をつける。具体例には「一般化」と書き、上位の言葉を1語考えます。一般化は誤答が出やすい処理でした [18]
  3. 原文を伏せる(ここが最重要)。メモだけを見て英語で書きます。原文を見ずに書くと、言い換えが大幅に増えました [15]
  4. 書く(本番の時間)。知っている語で正確に書きます。難しい語の多さは質と結びつきませんでした [10]
  5. 照合する(5分):原文と並べ、3語以上連続して同じ部分に線を引く。第二言語ではほぼ丸写しが起きやすいため [12]自分では気づけない部分を目で確認します [14]
  6. フィードバックを受けて書き直す(5分)。「主要な考えが入っているか」「丸写しがないか」の2点に絞って大人が確認し、書き直します [16]
  7. 週に2回、違う原文で行う。出来は原文によって大きく変わるため [11]1回の結果で判断しないことが大切です。

並行して、語彙と読解の練習を減らさないでください。英語の要約を支えていたのは、日本語の要約力より英語の読解と語彙でした [6] [8]

この記事で言えないこと

  • 英検の要約問題の得点を結果指標にした研究は、今回の範囲では見つかりませんでした。
  • 日本人学習者の研究は大学生が中心で、中高生の研究は含まれていません [6] [7] [8]
  • 要約指導のメタ分析 [3] [5] は母語での読み書きが対象で、外国語の要約とは条件が異なります。
  • 古い研究 [1] [2] は要旨が短く、効果の大きさは確認できていません。

当塾の立場

塾に来なくても、家庭でできること

5節の手順——段落ごとの日本語メモ、削除・一般化・統合の印、原文を伏せて書く、3語以上の一致に線を引く、2点に絞った書き直し、週2回違う原文で——は、過去問や教科書の英文で始められます。

それでも個別指導を使う理由

塾に通いたい、通わせたいという方には、武蔵野個別指導塾を勧めます。この記事の研究に即して、理由を3つ書きます。

  1. 「読めていない」のか「書けていない」のかを切り分けられること。内容の得点は読解と、要約全体の得点は作文や総合的な英語力とも結びついていました [9]。講師が日本語メモの段階と英語の段階を分けて確認します。
  2. 本人が気づけない丸写しを指摘できること。学生は言い換えを理解していると答えながら、実際にはできていませんでした [14]
  3. 具体的なフィードバックで、書き直しまで見届けること。細かいフィードバックによる書き直しで内容の得点が上がり、別の課題でも保たれました [16]

塾を検討する際は、次のように聞いてみてください。

  • 要約の練習で、原文を見ながら書かせますか、伏せて書かせますか
  • 要約の採点で、何を基準にしていますか
  • 要約が苦手な原因を、読解と作文のどちらにあるか、どう見分けますか

まとめ

  1. 要約の規則は明示的に教えると使えるようになり、外国語でも効果は3週間後に残りました [1] [2]
  2. 日本人学習者の英語の要約は、日本語の要約力より英語の読解と語彙に支えられていました [6] [7] [8]
  3. 第二言語の書き手は、ほぼ丸写しの言い換えが有意に多かった [12]
  4. 原文を伏せて書くと言い換えが増え、細かいフィードバックで内容が改善しました [15] [16]
  5. 【反証】要約指導の効果は遅延テストで消え、他の書く活動との差もはっきりしません [3] [5]
  6. 【反証】要約の点は、原文の性質と採点者によって大きく揺れます [11] [17]
  7. ——要約の力は、読める力・原文を伏せて言い直す練習・具体的な書き直しの3つで支えるものです。

出典

要旨に直接あたって確認したものだけを挙げています。

  1. 【要約の直接指導】Hare, V. C., Borchardt, K. M. (1984). Direct Instruction of Summarization Skills. Reading Research Quarterly. DOI: 10.2307/747652
  2. 【外国語での要約指導】Cordero-Ponce, W. L. (2000). Summarization instruction: Effects on foreign language comprehension and summarization of expository texts. Reading Research and Instruction. DOI: 10.1080/19388070009558329
  3. 【反証・44研究メタ分析】Bogaerds-Hazenberg, S. T. M. et al. (2020). A Meta-Analysis on the Effects of Text Structure Instruction on Reading Comprehension in the Upper Elementary Grades. Reading Research Quarterly. DOI: 10.1002/rrq.311
  4. 【書くことと読解・メタ分析】Graham, S., Hebert, M. (2011). Writing to Read: A Meta-Analysis of the Impact of Writing and Writing Instruction on Reading. Harvard Educational Review. DOI: 10.17763/haer.81.4.t2k0m13756113566
  5. 【反証・書く活動の比較】Hebert, M., Simpson, A., Graham, S. (2012). Comparing effects of different writing activities on reading comprehension: A meta-analysis. Reading and Writing. DOI: 10.1007/s11145-012-9386-3
  6. 【日本人47人・閾値】Kato, M. (2018). Exploring the Transfer Relationship of Summarizing Skills in L1 and L2. English Language Teaching. DOI: 10.5539/elt.v11n10p75
  7. 【日本人40人・語彙】Kato, M. (2021). Summarization in English as a Foreign Language: A Study Comparing L2 Summary Performances to Summarizer’s L2 Vocabulary Size and L1 Summarizing Skill. English Language Teaching. DOI: 10.5539/elt.v14n5p77
  8. 【日本人68人・読解と語彙】Baba, K. (2009). Aspects of lexical proficiency in writing summaries in a foreign language. Journal of Second Language Writing. DOI: 10.1016/j.jslw.2009.05.003
  9. 【読解・作文とIELTS】Qin, J., Groombridge, T. (2023). Deconstructing Summary Writing: Further Exploration of L2 Reading and Writing. SAGE Open. DOI: 10.1177/21582440231200935
  10. 【語彙サイズと豊かさ】Allagui, B., Al Naqbi, S. (2024). The Contribution of Vocabulary Knowledge to Summary Writing Quality. TESL-EJ. DOI: 10.55593/ej.28109a5
  11. 【反証・原文の影響】Yu, G. (2009). The shifting sands in the effects of source text summarizability on summary writing. Assessing Writing. DOI: 10.1016/j.asw.2009.04.002
  12. 【ほぼ丸写し】Keck, C. (2006). The use of paraphrase in summary writing: A comparison of L1 and L2 writers. Journal of Second Language Writing. DOI: 10.1016/j.jslw.2006.09.006
  13. 【反証・借用は少数】Weigle, S. C., Parker, K. (2012). Source text borrowing in an integrated reading/writing assessment. Journal of Second Language Writing. DOI: 10.1016/j.jslw.2012.03.004
  14. 【認識と行動のずれ】Liao, M.-T., Tseng, C.-Y. (2010). Students’ Behaviors and Views of Paraphrasing and Inappropriate Textual Borrowing in an EFL Academic Setting. Journal of Pan-Pacific Association of Applied Linguistics. ERIC: EJ920542
  15. 【原文を伏せる】Kamimura, T. (2019). Comparing Summaries of a Narrative Story Produced under Different Conditions. Journal of Pan-Pacific Association of Applied Linguistics. DOI: 10.25256/paal.23.1.5
  16. 【日本人64人・自動フィードバック】Sawaki, Y. et al. (2024). Developing and validating an online module for formative assessment of summary writing with automated content feedback. Language Testing in Asia. DOI: 10.1186/s40468-024-00325-w
  17. 【反証・採点の揺れ】Hijikata-Someya, Y., Ono, M., Yamanishi, H. (2015). Evaluation by Native and Non-Native English Teacher-Raters of Japanese Students’ Summaries. English Language Teaching. DOI: 10.5539/elt.v8n7p1
  18. 【日本人414人・要約の処理】Terao, T., Ishii, H. (2020). A Comparison of Distractor Selection Among Proficiency Levels in Reading Tests: A Focus on Summarization Processes in Japanese EFL Learners. SAGE Open. DOI: 10.1177/2158244020902087

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