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【化学】カルボン酸とエステルを図解で総まとめ—酢酸 酢酸エステル・油脂 せっけん・加水分解|武蔵野個別指導塾

酢酸の性質からエステルの構造、油脂のけん化、せっけんと合成洗剤の違いまでを図で整理します。生成量や水酸化ナトリウムの必要量を求める例題で、構造と反応の係数を結びつけて学べます。
よくあるのは、塾の自習室の白板の前で酢酸エチルの構造式を書いたあと、「加水分解すると酢酸と何ができるのか」で手が止まるという場面です。名称には酢酸が見えていますが、構造式のどこまでが酢酸に由来し、どこからがアルコールに由来するのかが曖昧だと、生成物も反応式の係数も決まりません。さらに油脂が出てくると、急に別の暗記が始まったように感じることもあります。
この単元をつなぐのは、酸素を含む部分の結びつきです。カルボン酸、エステル、油脂、せっけんを構造から追うと、同じ部分が形を変えて受け渡されていることが見えてきます。まず官能基を見つけ、次に反応条件を確かめ、最後に物質量を対応させましょう。この順序が整うと、名称から構造を組み立てる問題も、油脂からできるせっけんの量を求める問題も、理由を添えて解けるようになります。
この単元で身につけること
- カルボキシ基を見つけて酸としての性質を説明します。水への溶けやすさと酸の強さは、別の性質として整理します。
- エステルを酸に由来する部分とアルコールに由来する部分に分けます。分子式だけでなく、原子のつながりから生成物を決めます。
- エステル化と加水分解を反応式で表します。酸を触媒とする場合と、水酸化ナトリウムを使う場合で、酸側の生成物が変わることを確かめます。
- 油脂がグリセリンと高級脂肪酸からできたエステルであることを説明します。エステル結合の数から、けん化に必要な物質量を求めます。
- せっけんの親水基と疎水基を図で対応させます。硬水や酸性の水で洗浄力が下がる理由を、合成洗剤との違いにつなげます。
化学基礎で学んだ酸と塩基の中和、反応式の係数と物質量の関係が土台です。また、アルコールやアルデヒドの酸化でカルボン酸が生じることを思い出すと、前の単元とのつながりも見つけられます。構造を読む段階と計算する段階を分けることが、取り違えを防ぐ助けになります。
基本の考え方
カルボキシ基が酸としてはたらく
有機化合物の性質を特徴づける原子の集まりを官能基といいます。カルボン酸はカルボキシ基 -COOH をもつ化合物です。この表記は、1 個の炭素原子に酸素原子が二重結合し、さらに -OH が結合した -C(=O)-OH をまとめたものです。酸素原子が 2 個あることと、-OH がその炭素に直接ついていることを押さえましょう。
代表例はギ酸 H-COOH と酢酸 CH₃-COOH です。ギ酸はカルボキシ基の炭素に H が結合し、酢酸では CH₃ が結合しています。カルボキシ基の炭素も分子の炭素数に数えるため、ギ酸の炭素数は 1、酢酸の炭素数は 2 です。酢酸は食酢に含まれる酸ですが、食品としての食酢と試薬の濃い酢酸を同じように扱うことはできません。ここでは身近な名称と構造の対応を確かめます。
酢酸は水中で一部が電離して、水素イオン H⁺ と酢酸イオン CH₃COO⁻ を生じます。電離とは、物質が水中などで陽イオンと陰イオンに分かれることです。酢酸は弱酸なので、溶けた分子のすべてが電離するわけではありません。
CH₃COOH ⇄ CH₃COO⁻ + H⁺
酢酸イオンでは、カルボキシ基の -OH の H が H⁺ として外れています。CH₃ の H が外れたものではありません。水酸化ナトリウムとは中和して酢酸ナトリウムと水を生じ、炭酸水素ナトリウムとは反応して二酸化炭素も生じます。反応式はそれぞれ次のとおりです。
CH₃COOH + NaOH → CH₃COONa + H₂O
CH₃COOH + NaHCO₃ → CH₃COONa + CO₂ + H₂O
炭酸水素ナトリウムとの反応は、カルボン酸の酸性を考える手がかりになります。ただし、発生した気体やにおいを自分で調べる実験を家庭で行う必要はありません。反応式の左辺と右辺で原子数がそろい、酸の H が塩や水の生成につながることを紙上で確かめれば十分です。
カルボン酸の性質はカルボキシ基だけで決まるわけでもありません。ギ酸や酢酸は水によく溶けますが、炭化水素の長い鎖をもつ高級脂肪酸は水に溶けにくくなります。酸素を含む部分は水と水素結合をつくれますが、長い炭化水素部分は水となじみにくいからです。同程度の分子量の炭化水素と比べて沸点が高くなることにも、カルボキシ基による水素結合が関係します。
エステル化と加水分解を構造で読む
カルボン酸とアルコールが反応し、水が取れてエステルを生じる反応をエステル化といいます。酢酸とエタノールから酢酸エチルができる反応が代表例です。式の ⇄ は、右向きと左向きの両方の反応が起こりうることを表しています。
CH₃COOH + C₂H₅OH ⇄ CH₃COOC₂H₅ + H₂O
教科書では、酸を触媒として反応を進める条件を扱います。触媒は反応を速くする物質であり、反応式の係数比に従って消費される原料とは区別します。濃硫酸が用いられる場合には、その酸としての触媒作用と脱水作用を区別して捉えます。具体的な薬品の量や加熱操作を覚えるより、エステル化が可逆反応であり、常に原料のすべてが生成物になるわけではないことが重要です。
図1のように、カルボン酸では -C(=O)-OH だった部分が、エステルでは -C(=O)-O-R′ になります。R と R′ は炭化水素基を表す記号で、ここでは特定の長さの鎖に限定しません。ただしギ酸の場合には、酸側の R に相当する位置が H です。図の線は結合の種類を示す模式図で、実際の結合角を表すものではありません。

酢酸エチルの「酢酸」は酸側の CH₃COO- に、「エチル」はアルコール側の -C₂H₅ に対応します。たとえば酢酸とメタノール CH₃OH からは酢酸メチル CH₃COOCH₃ が生じます。分子中に -O- があるだけではエステルといえません。エーテルにも -O- はありますが、その隣に C=O を含むエステル結合 -COO- があるかどうかで区別します。
水と反応して結合が切れる反応を加水分解といいます。酸を触媒とするエステルの加水分解では、カルボン酸とアルコールが生じます。一方、水酸化ナトリウム水溶液などでエステルを加水分解すると、カルボン酸の塩とアルコールが生じます。この反応をけん化といいます。酢酸エチルなら次の式です。
CH₃COOC₂H₅ + NaOH → CH₃COONa + C₂H₅OH
けん化では NaOH が反応物として消費されます。生成した酸側の物質が塩になるため、酸を触媒とする場合と異なり、反応は通常ほぼ一方向に進むものとして扱います。酢酸そのものを取り出すという問題なら、その後に酸を加えて酢酸イオンを酢酸へ戻す操作まで区別して考えます。
油脂もエステルである
脂肪酸は脂肪族のカルボン酸で、炭素数の多いものを高級脂肪酸と呼びます。代表例としてパルミチン酸 C₁₅H₃₁COOH、ステアリン酸 C₁₇H₃₅COOH、オレイン酸 C₁₇H₃₃COOH があります。前の 2 つは炭素どうしの二重結合をもたない飽和脂肪酸で、オレイン酸は二重結合を 1 個もつ不飽和脂肪酸です。「高級」は炭素数に関する呼び名で、品質や値段の評価ではありません。
油脂は、高級脂肪酸とグリセリンからできたエステルです。グリセリンは HO-CH₂-CH(OH)-CH₂-OH という構造をもち、1 分子に -OH が 3 個あるアルコールです。油脂では、この 3 個の -OH に対応して 3 か所にエステル結合ができています。そのため、油脂 1 mol の完全なけん化には NaOH が 3 mol 必要です。
構造を省略して書くなら、同じ脂肪酸だけからなる油脂の反応は次のように表せます。C₃H₅(OH)₃ はグリセリンを表し、R は各脂肪酸の炭化水素基です。
C₃H₅(OCO-R)₃ + 3NaOH → C₃H₅(OH)₃ + 3RCOONa
天然の油脂には、異なる脂肪酸に由来する部分を同じ分子にもつものもあります。それでもエステル結合は 3 か所なので、完全なけん化に必要な NaOH の比は変わりません。常温で液体のものを脂肪油、固体のものを脂肪と呼びます。一般に不飽和脂肪酸に由来する部分が多い油脂は融点が低い傾向がありますが、油脂の状態は分子の組成にも左右されます。
油脂中の炭素どうしの二重結合に水素が付加すると、飽和度が高まり、融点が上がることがあります。このようにして得られるものが硬化油です。二重結合への付加とエステル結合の加水分解は、反応する場所が異なります。どちらも油脂の反応だからと一括りにせず、構造式で変化した結合を指して説明しましょう。
例題で解き方を確かめる
例題1 名称から加水分解の生成物を決める
酢酸メチル CH₃COOCH₃ を、酸を触媒として加水分解したときの生成物を構造式で答えましょう。また、水酸化ナトリウムによるけん化の場合の反応式も書きましょう。酸側とアルコール側を区別することが目標です。
- 構造式を CH₃-C(=O)-O-CH₃ と書き直します。まとめられた COO を開くと、炭素と酸素の結びつきを確かめやすくなるためです。
- C=O を含む側を酸側として読みます。酸を触媒とする加水分解では CH₃COOH となり、残りの CH₃ は -OH と結びついた CH₃OH となります。
- 塩基性の条件では、酸側を CH₃COONa に変えます。NaOH が消費されて塩ができるので、酢酸がそのまま残る式にはしません。
酸を触媒とする場合の式は CH₃COOCH₃ + H₂O ⇄ CH₃COOH + CH₃OH です。けん化の式は CH₃COOCH₃ + NaOH → CH₃COONa + CH₃OH です。酢酸メチルには CH₃ が 2 つありますが、C=O に直接ついたものと O についたものでは役割が違います。
答え:酸を触媒とすると酢酸 CH₃COOH とメタノール CH₃OH、けん化では CH₃COONa と CH₃OH が生じます。
例題2 エステルの理論生成量を求める
酢酸 6.0 g とエタノール 9.2 g から酢酸エチルをつくるとします。反応式から求めた酢酸エチルの理論生成量と、その理論生成量に対して収率が 75% の場合の生成量を求めましょう。原子量は H=1.0、C=12、O=16 とします。収率とは、理論生成量に対する実際の生成量の割合です。以下の計算は高校の教科書で用いる原子量の値に基づきます。
- モル質量を計算します。酢酸 C₂H₄O₂ は 60 g/mol、エタノール C₂H₆O は 46 g/mol、酢酸エチル C₄H₈O₂ は 88 g/mol です。質量を直接比べず、反応式の係数と対応する mol に直すためです。
- 原料の物質量を求めます。酢酸は 6.0÷60=0.10 mol、エタノールは 9.2÷46=0.20 mol です。係数比は 1:1 なので、酢酸をすべて使うと仮定した量が生成量の上限を決めます。
- 酢酸エチルの理論生成量を求めます。0.10 mol×88 g/mol=8.8 g です。エタノールが多くあっても、酢酸がないところからエステルは増えません。
- 収率を掛けます。8.8 g×0.75=6.6 g です。理論生成量と実際の生成量を区別することで、可逆反応を無条件に完全反応として扱う誤りを防げます。
図2のように、原料の物質量を同じ尺度の棒で比べると、係数がどちらも 1 の場合には短い棒の原料が上限を決めます。右端の棒はあくまで理論上の上限であり、収率を考慮する前の量です。なお、係数が異なる反応では、物質量だけの大小では決まらず、それぞれを係数で割って比べる必要があります。

答え:酢酸エチルの理論生成量は 8.8 g、収率が 75% の場合の生成量は 6.6 g です。
例題3 油脂のけん化に必要な量を求める
ステアリン酸だけに由来する油脂であるトリステアリン C₅₇H₁₁₀O₆ を 8.90 g 完全にけん化します。必要な NaOH の質量と、生成するステアリン酸ナトリウム C₁₇H₃₅COONa の質量を求めましょう。原子量は H=1.0、C=12、O=16、Na=23 とし、この問題では答えを有効数字 3 桁で示します。
- 油脂のモル質量を求めます。57×12+110×1.0+6×16=890 g/mol なので、8.90÷890=0.0100 mol です。脂肪酸 3 分子とグリセリン 1 分子から水 3 分子が取れた組成にも対応します。
- エステル結合の数を数えます。1 分子に 3 か所あるので、NaOH は 0.0100 mol×3=0.0300 mol 必要です。分子の大きさではなく、反応する結合の数が係数を決めます。
- NaOH のモル質量 40 g/mol を使います。必要な質量は 0.0300 mol×40 g/mol=1.20 g です。係数の 3 は mol に対して掛けてから、求めたい物質のモル質量を使います。
- せっけんの生成量を求めます。ステアリン酸ナトリウムは 0.0300 mol 生じ、モル質量は 18×12+35×1.0+2×16+23=306 g/mol です。よって質量は 0.0300×306=9.18 g になります。
生成するせっけんの質量がもとの油脂より大きいことは、計算ミスとは限りません。反応には NaOH も加わっています。また、せっけん以外にグリセリンも生じるので、質量保存は油脂とせっけんだけを比べるのではなく、反応物全体と生成物全体で確かめます。
答え:必要な NaOH は 1.20 g、生成するステアリン酸ナトリウムは 9.18 g です。
つまずきやすいところと直し方
誤り1 弱酸だから少しの塩基で中和できる
誤った書き方は「酢酸は一部しか電離しないので、0.10 mol の酢酸を中和する NaOH は 0.10 mol より少ない」です。これは、その瞬間に電離している割合と、中和で反応できる酸全体の量を混同しています。H⁺ が中和されると、残っている酢酸も続いて電離し、全体として酢酸 1 mol に対して NaOH 1 mol が反応します。
正しい書き方は「酢酸は弱酸だが、カルボキシ基が 1 個なので、0.10 mol の酢酸の完全な中和には NaOH が 0.10 mol 必要」です。酸の強弱は電離のしやすさに関する性質であり、1 分子から中和に使われる H⁺ の数とは別です。カルボキシ基を 2 個もつ酸なら、完全な中和に必要な塩基の量も変わります。
誤り2 エステルなら NaOH はいつも 1 mol ずつ反応する
誤った書き方は「油脂 1 mol と NaOH 1 mol が反応する」です。酢酸エチルの反応式をそのまま油脂に当てはめており、1 分子あたりのエステル結合の数を見落としています。油脂の分子の中には、グリセリン側と脂肪酸側を結ぶエステル結合が 3 か所あります。
正しい書き方は「油脂 1 mol と NaOH 3 mol が反応し、グリセリン 1 mol と脂肪酸のナトリウム塩 3 mol ができる」です。式が長いときは、まず 3 か所の -O-C(=O)- を見つけ、それぞれに NaOH が 1 つ対応すると読みます。二重結合 C=C があっても、その数をけん化の NaOH の係数に足すことはありません。
誤り3 水になじむ部分があれば、どんな水でも同じように洗える
誤った書き方は「せっけんも合成洗剤も水に溶けるので、硬水でも酸性の水でも性質は同じ」です。水とのなじみやすさだけを見て、親水基が別の物質に変わる反応を考えていない点が違います。せっけんは高級脂肪酸のナトリウム塩やカリウム塩であり、酢酸ナトリウムのような短い炭化水素部分しかない塩を、同じ意味でせっけんとは呼びません。
図3のように、せっけんの長い炭化水素部分は水となじみにくく油となじみやすい疎水基で、-COO⁻ の部分は水となじみやすい親水基です。水中では疎水基を内側に向けて集まったミセルという粒子をつくり、油汚れを内部に取り込んで水中に分散させます。図はその断面の模式図で、分子の本数や寸法を実物に合わせたものではありません。

水と油の境界などの性質を変える物質を界面活性剤といい、せっけんもその一種です。親水基が外側に並ぶため、油だけのかたまりより水中に分散しやすくなります。油を化学反応で消しているのではなく、水とともに運び去りやすい状態にしていると考えましょう。
硬水は Ca²⁺ や Mg²⁺ を比較的多く含む水です。せっけんはこれらのイオンと水に溶けにくい塩をつくるため、洗浄にはたらく成分が減ります。カルシウムイオンとの反応を一般式で表すと、次のようになります。R は長い炭化水素基です。
2RCOO⁻ + Ca²⁺ → (RCOO)₂Ca
酸性の水では、RCOO⁻ + H⁺ → RCOOH のように水に溶けにくい高級脂肪酸が生じます。したがって、正しい書き方は「せっけんは硬水や酸性の水では洗浄力が下がりやすい」です。せっけん水が弱い塩基性を示すことも、弱酸である高級脂肪酸の塩としての性質につながっています。
代表的な合成洗剤には、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムやアルキル硫酸エステルナトリウムがあります。前者は -SO₃⁻、後者は -O-SO₃⁻ という部分を親水基にもち、せっけんとは親水基の構造が異なります。こうした陰イオン性の合成洗剤は、硬水中でもカルシウム塩などが沈殿しにくく、酸性でも洗浄力を保ちやすい性質があります。
ただし、合成洗剤には陰イオン性以外の種類もあり、すべてを 1 つの構造式で代表させることはできません。高校化学ではまず代表例について、長い疎水基をもつ点は共通し、親水基の種類が違うため水中での反応が変わる、と整理します。構造を示さずに「人工だから強い」と説明するのは避けましょう。
練習問題
練習1 エステルの名前と構造
ギ酸 HCOOH とエタノール C₂H₅OH からできるエステルの名称と構造式を答えましょう。また、そのエステルを NaOH でけん化する反応式を書きましょう。カルボキシ基に含まれる炭素を落とさず、反応前後で炭素の総数を確かめてください。
練習2 けん化と溶液の体積
酢酸エチル 4.4 g を完全にけん化するのに必要な、濃度 0.50 mol/L の NaOH 水溶液の体積を mL で求めましょう。原子量は H=1.0、C=12、O=16 とします。答えは有効数字 2 桁で示し、必要な NaOH の物質量を途中に書いてください。
練習3 油脂の物質量の対応
ある油脂 0.020 mol を完全にけん化します。必要な NaOH と、生成するグリセリンおよび高級脂肪酸のナトリウム塩の合計の物質量をそれぞれ求めましょう。油脂に含まれる脂肪酸の種類は 1 種類とは限りませんが、すべてのエステル結合が反応するものとします。
練習4 構造から洗浄の違いを説明する
せっけんのミセルでは、親水基と疎水基のどちらが水に面していますか。また、硬水中でせっけんの洗浄力が下がる理由と、代表的なスルホン酸塩型の合成洗剤が硬水中でも使いやすい理由を、それぞれ短く説明しましょう。
答えと解説
練習1の答えは、ギ酸エチル HCOOC₂H₅ です。けん化の式は HCOOC₂H₅ + NaOH → HCOONa + C₂H₅OH となります。酸側の炭素は 1 個、アルコール側の炭素は 2 個なので、エステル全体の炭素数は 3 です。ギ酸の H を炭化水素基に置き換えてしまわないようにします。
練習2の答えは 1.0×10² mL です。酢酸エチルのモル質量は 88 g/mol なので、その物質量は 4.4÷88=0.050 mol です。NaOH も 0.050 mol 必要で、体積は 0.050 mol÷0.50 mol/L=0.10 L となります。L を mL に直すときは 10³ 倍し、有効数字が見える形で答えます。
練習3の答えは、NaOH が 0.060 mol、グリセリンが 0.020 mol、高級脂肪酸のナトリウム塩が合計 0.060 mol です。脂肪酸の種類が混じっていても、油脂 1 分子に含まれるエステル結合は 3 か所で、グリセリンに由来する骨格は 1 つです。塩の合計の物質量は求められますが、各塩の質量を求めるには脂肪酸の種類と割合の情報が必要です。
練習4では、親水基が水に面しています。せっけんは硬水中の Ca²⁺ や Mg²⁺ と水に溶けにくい塩をつくり、洗浄にはたらく成分が減るため洗浄力が下がります。代表的なスルホン酸塩型の合成洗剤は、これらのイオンとの塩が沈殿しにくいので、硬水中でも洗浄にはたらきやすいと説明できます。
次の単元へのつながりと家庭での確かめ方
エステル結合を見つける力は、ポリエステルのような高分子を学ぶときにも使います。カルボキシ基と -OH が繰り返し反応して長い分子ができる場合にも、水が取れる反応と、水によって結合が切れる反応の対応は共通です。また、芳香族化合物でもカルボキシ基やエステル結合が現れるので、分子全体の形が変わっても官能基を探す読み方が役立ちます。
家庭で 5 分確かめるなら、最初の 2 分で酢酸メチルとギ酸エチルを紙に書き、酸に由来する側を丸で囲みます。続く 3 分では、それぞれのけん化の生成物を書き、油脂なら NaOH の係数がなぜ 3 になるかを声に出して説明します。薬品を用意する必要はなく、原子数と結合の位置を確かめるだけで理解を点検できます。
個別指導では、生成物を取り違えるときは官能基と炭素の数え方まで戻り、量の計算だけが合わないときは mol と係数の対応まで戻って確かめます。お子さまの学習を見守る際にも、物質名をいくつ覚えたかだけでなく、「どの部分からその生成物ができるのか」を説明できるかが手がかりになります。
まとめ
長い構造式に出会ったとき、最初から分子全体を覚えようとする必要はありません。C=O の隣の O が何につながっているかを見つけ、反応条件から酸になるのか塩になるのかを決めれば、計算に進む足場ができます。油脂も、その読み方を 3 か所に広げた分子として扱えます。
酢酸エチルのけん化で NaOH の係数が 1、油脂で 3 になる理由は、暗記した物質名ではなく、構造式の中のエステル結合の数にあります。
本気になった日が、入塾の日。
お子様の教育、迷ったら「丸投げ」してください。必ず、期待以上の結果で返します。武蔵野で育む、武蔵境で学ぶ。
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