硬貨の樹形図、2つのさいころの表、カードの組み合わせを使い、確率の分母と分子の数え方を確かめます。「少なくとも」の問題も、起こらない場合から整理できます。
よくあるのは、雨の日の放課後、学校の昇降口で友達と答えを比べ、「硬貨2枚なら、表2枚・表と裏・裏2枚の3通りだから、表と裏になる確率は1/3」と説明してしまう場面です。結果の名前は3種類でも、それぞれが同じ起こりやすさとは限りません。「表と裏」の中には、1枚目が表の場合と、1枚目が裏の場合が隠れています。
確率で難しいのは、最後のわり算より、その前に何を1通りと数えるかを決めるところです。結果を細かく分け、抜けや重なりがないように並べると、分母と分子の意味が見えてきます。樹形図と表は、そのための道具です。
多くの教科書では中2で、場合の数から確率を求める方法を学びます。硬貨やさいころの問題から始め、順序を区別しない選び方や、「少なくとも1回」という条件まで、数え方の理由を追っていきましょう。
この単元で身につけること
- 「同様に確からしい」を確かめます。並べた各結果が同じ程度に起こると考えられるかが、計算の出発点です。
- 確率を分数で表します。起こりうるすべての場合の数を分母、求める条件に合う場合の数を分子にします。
- 樹形図を使います。1回目から順に枝を分けることで、途中の選択と最後の結果を結びつけます。
- 表で2つの結果を整理します。行と列を別々のさいころに対応させれば、同じ和になる結果も区別できます。
- 順序の有無を判断します。並べる問題なのか、まとめて選ぶ問題なのかを読み、二重に数えることを防ぎます。
- 起こらない確率を利用します。求める側が複雑なら、残りの場合を数えて1から引く方法を選べます。
これまでに学んだ割合や分数の約分、相対度数が土台になります。計算だけ先に始めず、「全部で何通りのうち、何通りか」を言葉で説明できることを目標にしましょう。
基本の考え方
同様に確からしい場合をつくる
あることがらの起こりやすさを数で表したものが確率です。たとえば、どの目も同じ程度に出るさいころを1回投げるとき、1から6までの目は同様に確からしいと考えます。特定の目が出やすいさいころなら、6つの目をただ数えただけでは確率を求められません。
同様に確からしい場合に分けられたとき、次の式が使えます。
確率 = 条件に合う場合の数 ÷ 起こりうるすべての場合の数
さいころで偶数が出る場合は2、4、6の3通り、すべての場合は6通りです。偶数が出る確率は3/6 = 1/2です。「偶数か奇数かの2種類だから1/2」とするだけでは、起こりやすさの根拠が抜けています。目を1つずつ並べれば、偶数側と奇数側がそれぞれ3通りあることを確かめられます。
確率をpとすると、0 ≦ p ≦ 1です。決して起こらない場合は0、必ず起こる場合は1になります。分子は分母で数えた結果の一部なので、分子が分母より大きければ数え方を見直します。答えに「通り」は付けず、分数は約分して表しましょう。
また、1/2は「2回試せば必ず1回起こる」という約束ではありません。硬貨を少ない回数だけ投げれば、表ばかり続くこともあります。実験で得た相対度数と、同様に確からしい場合を数えて求める確率は、区別して考えます。
樹形図は最後までの道筋を数える
ここからは、硬貨の表と裏は同様に確からしく、繰り返すときも前の結果が次の結果に影響しないとします。さいころも各目が同様に確からしく、2つを投げるときは互いの結果に影響しないものとします。この条件があるので、細かく分けた結果を同じ重みで数えられます。
硬貨を2回投げるなら、最初に1回目の表・裏へ枝を分け、その先をそれぞれ2回目の表・裏へ分けます。図1のように枝の先までたどると、表表、表裏、裏表、裏裏の4通りが現れます。

図1の赤い2本の道筋は、表がちょうど1回出る結果です。表裏と裏表は表の回数こそ同じですが、1回目の結果が違います。この2通りを1つにまとめ、ほかの結果と同じ重みで数えてはいけません。
樹形図で数えるのは枝の総本数ではなく、出発点から最後の先端までの道筋です。枝を一定の順番で描くと、抜けを見つけやすくなります。途中まで描いて感覚で答えを出さず、最後の結果に印を付けて数えましょう。
順序と「残りの場合」に注目する
カードA、B、Cから2枚を順に取り出す場合、Aの後にBを引くことと、Bの後にAを引くことは別の結果です。一方、2枚を組として選ぶなら、どちらもAとBの組です。同じ材料でも、何を求めるかによって1通りの意味が変わります。
また、あることがらが起こる確率がpなら、起こらない確率は1-pです。すべての結果は、条件に合う側と合わない側に分けられ、両方を合わせた確率が1になるからです。「少なくとも1回表が出る」の反対は「1回も表が出ない」です。「すべて表が出る」ではない点に気をつけましょう。
例題で解き方を確かめる
例題1 さいころ1個で条件に合う目を選ぶ
さいころを1回投げるとき、4以上の目が出る確率を求めます。「以上」は境目の数を含むので、4を入れるところから始めます。
- すべての目を1、2、3、4、5、6と書きます。分母に使う結果をそろえるためです。全部で6通りで、各目は同様に確からしいです。
- 条件に合う4、5、6に印を付けます。求めたいのは4だけが出る場合ではないので、3通りを数えます。
- 3/6を約分して1/2にします。条件に合う3通りは、全体の6通りの半分です。
答え:1/2
条件を「4より大きい」に変えると4は含まれません。計算が合っていても、言葉の境目を読み違えると分子が変わります。
例題2 2つのさいころの和を表で調べる
赤と青のさいころを1回ずつ投げるとき、出た目の和が7になる確率を求めます。同時に投げても、赤の目と青の目を区別して記録できます。
- 赤の目を行、青の目を列に置きます。図2の1マスが「赤の目、青の目」という1つの結果を表すようにするためです。6行と6列なので、全部で6 × 6 = 36通りです。
- 和が7になるマスを選びます。(1,6)、(2,5)、(3,4)、(4,3)、(5,2)、(6,1)の6通りです。和だけを並べず、その和をつくる目の組を数えます。
- 6/36を約分します。36通りが同様に確からしいので、確率は1/6です。
答え:1/6

図2では、赤い6マスが求める結果です。たとえば(1,6)は右上、(6,1)は左下のマスになり、別々の位置を占めます。表の見出しを逆にしても数は変わりませんが、途中で赤と青を入れ替えないことが大切です。
例題3 4枚から2枚を組として選ぶ
1、2、3、4が書かれたカードが1枚ずつあります。よく混ぜて同時に2枚を取り出すとき、数の和が奇数になる確率を求めます。どの2枚の組も同様に確からしく選ばれるとします。
- 小さい数を先に書く決まりで組を並べます。順序を区別しないので、同じ組を逆順でも書くことを防ぐためです。(1,2)、(1,3)、(1,4)、(2,3)、(2,4)、(3,4)の6通りになります。
- 和が奇数になる組に印を付けます。奇数と偶数を1枚ずつ選んだときに和が奇数になるので、(1,2)、(1,4)、(2,3)、(3,4)の4通りです。
- 4/6を約分して2/3にします。分母も分子も「順序を区別しない組」でそろえたので、この比を使えます。
答え:2/3
1を含む組が3通り、1を含まず2を含む組が2通り、残りが1通りと分けると、抜けを点検できます。カードを戻さないので、(1,1)のように同じカードを2回使う結果は入りません。
例題4 少なくとも1回を反対側から数える
硬貨を3回投げるとき、少なくとも1回は表が出る確率を求めます。「少なくとも1回」は、表が1回、2回、3回の場合をすべて含みます。
- 各回に表・裏の2通りがあるので、すべての場合を2 × 2 × 2 = 8通りと数えます。3段の樹形図を描けば、最後の先端が8つになります。
- 条件に合わない結果を探します。表が1回も出ないのは裏裏裏の1通りだけなので、こちらを数えると短く整理できます。
- 1-1/8 = 7/8とします。全体の確率1から、表が出ない確率を引くためです。
答え:7/8
直接数えるなら、表が1回の結果が3通り、2回が3通り、3回が1通りです。合計7通りになり、反対側から求めた分子とも一致します。
つまずきやすいところと直し方
誤り1 結果の名前の数をそのまま分母にする
誤った書き方は「硬貨2回は表表・表裏・裏裏の3通りだから、表が1回の確率は1/3」です。違うのは、表裏と裏表をまとめた一方で、ほかの結果はそのまま残した点です。3つにまとめた結果は、同様に確からしくありません。
正しい書き方は「4通りのうち表裏と裏表の2通りなので、2/4 = 1/2」です。図1へ戻って、1回目からの道筋を読みます。同じように、さいころの和を2から12までの11種類に分けても、各和の起こりやすさは同じになりません。和が2になるのは(1,1)だけですが、和が7になる組は6通りあります。
誤り2 分母と分子で順序の扱いが違う
誤った書き方は、例題3で「全部は4 × 3 = 12通り、和が奇数の組は4通りだから4/12」です。分母は取り出す順序を区別し、分子は区別していません。数えているものの単位が違います。

図3のように、12、21はどちらも1と2の組です。各枠が1組を表し、枠内の2つは取り出す順序の違いを表します。図の赤い4枠が和の奇数になる組で、順序を区別すれば赤い結果は8通りになります。
正しい書き方は「順序を区別して8/12 = 2/3」、または「組で数えて4/6 = 2/3」です。全部の組がちょうど2回ずつ数えられているから、両方を2で割っても確率は変わりません。何でも最後に2で割るのではなく、重なり方を調べます。
誤り3 「少なくとも」の反対を取り違える
誤った書き方は、例題4で「少なくとも1回表が出る確率は、1から全部表になる確率を引く」です。全部表の結果は、求める側に含まれます。それを引くと、表が出るべき結果を除いてしまいます。
正しい書き方は「1から全部裏になる確率を引く」です。この硬貨では全部表も全部裏も1/8なので、誤った考えでも数値だけは7/8になります。答えが合っただけで済ませず、「引いたのはどんな結果か」を必ず言葉で添えましょう。
練習問題
硬貨とさいころの条件は例題と同じです。答えの分数に加えて、分母と分子で何を数えたかも書きましょう。
練習1
さいころを1回投げるとき、3の倍数の目が出る確率を求めてください。
練習2
赤と青のさいころを1回ずつ投げるとき、和が5になる確率を求めてください。
練習3
1、2、3、4のカードから同時に2枚を取り出すとき、和が偶数になる確率を求めてください。各組は同様に確からしく選ばれます。
練習4
硬貨を3回投げるとき、少なくとも1回は裏が出る確率を求めてください。
答えと解説
練習1:1/3です。3の倍数は3と6の2通りなので、2/6 = 1/3です。1や2は3より小さく、3の倍数ではありません。
練習2:1/9です。(1,4)、(2,3)、(3,2)、(4,1)の4通りなので、4/36 = 1/9です。赤と青を入れ替えた組も別々に数えます。
練習3:1/3です。6組のうち、奇数どうしの(1,3)と偶数どうしの(2,4)の2組なので、2/6 = 1/3です。例題3の条件に合わない側として、1-2/3でも求められます。
練習4:7/8です。裏が1回も出ない結果は表表表だけなので、1-1/8 = 7/8です。引く対象を「全部表」と説明できたか確かめましょう。
次の単元へのつながりと家庭での確かめ方
確率で身につけた、全体を決めてから一部分の割合を考える方法は、標本調査で集団の特徴を考える学習にもつながります。また、条件を満たす場合を抜けなく調べる力は、図形や数の規則を探す問題でも役立ちます。
家庭では、まず5分で、硬貨2回の樹形図を見ずに描き、表が1回の道筋に印を付けてみましょう。もう1つは、5分でさいころ2個の表を描き、和が7になるマスと和が2になるマスの数を比べる方法です。お子さまの答えを確かめるときも、分数だけでなく、何を1通りとしたかを聞くと理解の位置が見えてきます。
個別指導で数え方が合わないときは、いきなり公式へ進まず、1回の結果を並べるところまで戻って確かめます。約分の誤りと、結果の分け方の誤りも分けて扱います。
まとめ
確率の答案では、分数の前に書いた表や道筋が、答えの理由になります。見た目が似ている問題でも、カードを戻すか、順序を区別するかで、並べる結果は変わります。迷ったときは小さな例を実際に書き出し、すべての結果に同じ基準を当ててみましょう。
「なぜその分母なのか」を説明できれば、新しい条件にも数え方を合わせられます。確率の分母は、数える世界を決めた証拠です。





