職業を知ることには、名前を挙げることと仕事の中身を説明することがあります。子どもの職業知識は希望や予想する進路と関連しており、名前の知識と仕事の理解を分けて読むことが大切です。家では知らない職業名を集める前に、知っている仕事を本人の言葉で説明してもらいます。
「将来は何になりたい」と聞くと、いつも同じ職業名が返ってきます。親は選択肢が少ないと感じ、もっと仕事を知ってほしいと思います。ただ、名前を増やしても、本人が仕事の中身を思い浮かべているかは別の問題です。知っている職業の一覧と、理解している仕事の一覧を分けて開いてみてください。
この回は、進学制度ではなく職業知識を扱います。子どもの希望を広げる前に、研究が知識をどう測ったかを確認します。名札を並べるだけで終わらせず、その仕事では何をするのかまで話すことを、家庭での確認の中心に置きます。
1. 論文を役割で並べる
Sowaほか(2023)は、子どもと青少年の職業希望を支える介入の45研究をまとめました。扱う集団や分野を絞った研究が多く、学習内容は主に科学・技術などの分野に集中していました。職業や雇用市場の変化を扱う内容は限られていたと報告しています。職業について学ぶ機会でも、どの仕事を見せたかを問うための論文です [1]。
Cinamonほか(2020)は、子どもの職業知識を測る枠組みを示しました。絵から職業を見分けること、職業名を挙げて説明すること、仕事の本質を説明することを区別しています。年齢の異なる子どもを比べると、年長の子どものほうが各側面の知識が多い結果でした。名前を知っているだけで理解済みと扱わず、知識の内訳を確認する役割を持ちます [2]。
Schmitt-Wilsonほか(2012)は、農村部の学校に通う132人の子どもの職業知識と、希望する進路や予想する進路との関係を調べました。職業知識は、それらの希望と予想を予測する際に追加の説明力を持ちました。一方、学年、性別、社会経済的地位による知識の差は見つからず、学業成績は職業知識の有意な予測因子でした。知識と進路の関連を扱いながら、属性から知識量を決めつけないための論文です [3]。
2. 職業名が出てくれば、仕事を理解したことになりますか?
職業名を知っていること、絵から見分けること、何をする仕事かを説明することは、研究の枠組みでも区別されています。職業名だけを尋ねると、子どもがどの側面を知っているかが見えにくくなります。本人が答えた名前に続けて、仕事の作業や役割を説明してもらいます。そこで言葉が止まったら、調べる問いが見つかったと受け取ってください [2]。
たとえば「建築の仕事」と答えたら、どんな作業を思い浮かべたのかを聞きます。親は職業の説明を先に完成させず、本人が描いた場面を聞いてから、知りたい部分を選びます。名称を細かく覚えさせるより先に、仕事についての説明を本人の言葉で書いてもらう家庭での手順です。本人の説明と、これから確かめる内容を別の欄にします。
この確認では、本人が挙げた仕事の説明に目を向けます。研究の尺度は名前だけでなく、説明や仕事の理解も扱っています。名前は多く挙げられても説明が短い子、名前は少なくても具体的に話せる子を、家庭ではそれぞれの言葉から見ます。仕事の一覧に丸を付けるだけで、理解の評価を終えないでください [2]。
3. 知識が多いほど、希望は必ず広がりますか?
この研究では、職業知識が希望や予想する進路を説明するうえで、追加の説明力を持ったと報告されています。家庭で読むときも、「知っている仕事」と「なりたい仕事」と「なれそうだと考える仕事」を分けます [3]。
本人がなりたいと話す仕事と、現実に選ぶと思っている仕事が違うなら、それぞれの理由を聞いてください。知っているのに候補に入れていない仕事も、候補に入れたものの説明ができない仕事も、親子で調べる対象になります。知らない名前を足すことだけを目的にせず、本人がどんな仕事をどう理解して候補から外したかにも目を向けます。
また、この研究では学年、性別、社会経済的地位による職業知識の差は見つかりませんでした。年長の子どものほうが多く知っていた別の研究と並べると、対象や測り方を確認する必要が見えてきます。学年が上がればどの家庭でも同じように知識が広がると読まず、本人が説明できる内容をその場で確かめます [2][3]。
4. 職業を紹介する教材は、何を見せていますか?
子どもの職業希望を支える介入のレビューでは、分野を絞った研究が多くありました。職業を紹介する教材や催しを選ぶ際も、扱っている分野を確認します。多くの職業名が載っていても、似た領域に集まっていたら、その偏りを親子で読みます。研究の介入内容の特徴を、家庭で教材を見る視点へ置き直します [1]。
本人には、気になる仕事だけでなく、教材に載っているのに内容が想像できない仕事も選んでもらいます。その仕事の名前を覚える前に、誰に何を届けるのか、どんな作業をするのかを質問にしてください。仕事について尋ねる文を本人がつくるところまでを、家庭での作業にします。正解の職業を選ぶ課題ではなく、知らない部分を見つける課題として進めます。
日本の家庭で進路を考えるときには、職業名と学校名を急いで結び付ける前に、本人が魅力を感じた作業を聞きます。同じ仕事の説明でも、親が注目した部分と本人が気になった部分を分けてください。ここで示すのは、本人の理解を確かめる会話の順序です。家庭では、説明ができた部分と、これから調べたい部分を紙に残します。
【反証】この回が言えないこと
職業名を知らないことが原因で進路の幅が狭まると、今回の研究だけから断定はできません。職業知識と希望・予想する進路との関連は、名前を追加する介入の効果と同じではありません。年齢差を調べた研究と農村部の研究では対象も問いも異なり、日本の中高生に同じ差が出るとは言えません [2][3]。
また、職業希望を支える介入のレビューは、職業名を知る効果だけを切り出した研究ではありません。分野が偏っていたという所見から、特定の教材が子どもの将来を狭めるとも判定できません。家庭での質問の仕方は、今回の研究で効果が検証された介入とは区別します。名札を増やせば希望が増えるという結論や、知識の少なさが家庭の責任だという結論は置きません [1]。
実務——家でできる 3 つの確認
はじめに、子どもが知っている仕事を紙に書き、各名前の横に「何をする仕事か」の説明を付けます。武蔵野個別指導塾が採用するアクティブリコールのように、見本を閉じた状態で本人の言葉を取り出します。親が答えを足す前に、どこまで説明したかを読みます。
続いて、職業紹介の本や動画から、説明が埋まらなかった部分を調べます。親が増やしたい職業名を押し付けず、本人がつくった質問に答える内容を探してください。名前だけで埋めた一覧を、仕事の中身を語る紙に変える作業です。
締めくくりに、別の日にその紙を開き、見ないで説明した内容と照合します。当塾では間隔反復を学習に取り入れています。完全1対1の対話でも、答えだけでなく考えを説明する過程を見ます。学習と進路の話をつなぐ相談は武蔵境の大学受験対策をご覧ください。知らない名前を数える前に、知っている仕事の説明を聞いてください。
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よくある質問
Q. 職業名をたくさん覚える課題にしますか?
名前の列に、作業や役割の説明を添える課題にします。職業知識の研究は、名前と説明、仕事の理解を区別しています。本人が何を思い浮かべたかを聞くところまで進めてください [2]。
Q. 高学年なら仕事をよく知っていますか?
年長の子どもの知識が多かった研究がある一方、農村部の研究では学年による差が見つかりませんでした。学年の印象より、本人が説明した内容を読んで確認します [2][3]。
Q. 希望する仕事が少ないときはどう話しますか?
なりたい仕事、選ぶと思う仕事、名前だけ知っている仕事を分けて尋ねます。職業知識と希望・予想する進路には関連がありました。候補の数を急いで増やす前に、選んだ理由と外した理由を本人から聞いてください [3]。
出典
- Supporting children’s career aspirations under changing career conditions: a systematic review of intervention approaches(S. Sowaほか、2023、International Journal for Educational and Vocational Guidance)
- Children’s occupational knowledge: a conceptual framework and measure(R. G. Cinamonほか、2020、International Journal for Educational and Vocational Guidance)
- Vocational Knowledge in Rural Children: A Study of Individual Differences and Predictors of Occupational Aspirations and Expectations.(Sarah Schmitt-Wilsonほか、2012、Learning and Individual Differences)



