電流は回路のどこでも同じ量で流れ減らない|武蔵野個別指導塾が薦める学習の仕方

連載「単元別のつまずき研究——その単元で、生徒は実際に何をどう誤るか」全50回の第22回です。学習の仕方の目次を見る

「豆電球を2つ直列につなぐと、1つのときより暗くなる。それは、手前の豆電球が電流を先に使ってしまうからだ」。こう説明する生徒は少なくありません。回路を流れる電流を、電池から出て部品で消費される何かのように捉えているのです。

この考え方は、一見すると日常生活の感覚に合っています。電池は「使い切る」ものだし、電気製品は「電気を食う」と表現します。ところが回路の学習では、この感覚がそのまま誤答につながります。電流は豆電球を通る前と後で同じなのに、生徒は「減る」と予想してしまうのです。

今回は、電気回路の単元でよく見られる「電流が使われて減る」という考え方を取り上げます。研究が明らかにしてきた誤概念の特徴を確認し、実際の誤答例と、机の前でできる確かめ方を示します。あわせて、この研究結果が教育現場で誤って使われがちな点にも触れます。

記事の最後には、今週すぐにできる実践と、この記事では言えない限界、当塾の立場をまとめました。電流の単元で「わかっているようで、実は感覚で答えている」生徒に気づく手がかりとしてお読みください。

要点(結論から)

  • 「電流が豆電球で使われて減る」という考えは、回路学習で最も根強い誤概念の一つです。
  • 直列回路では、電池の直後でも豆電球の後でも電流の大きさは同じです。豆電球が電流を消費することはありません。
  • 豆電球が暗くなるのは、電流が減るからではなく、回路全体の抵抗が変わるからです。

結論——電流は回路のどこでも同じ量で流れる

  • 「電流が豆電球で使われて減る」という考えは、回路学習で最も根強い誤概念の一つです。
  • 直列回路では、電池の直後でも豆電球の後でも電流の大きさは同じです。豆電球が電流を消費することはありません。
  • 豆電球が暗くなるのは、電流が減るからではなく、回路全体の抵抗が変わるからです。
  • この誤概念は、電流を「電池から出る燃料のようなもの」と捉える日常的なイメージから生まれます。
  • 指導では「電流は減らない」と教える前に、生徒自身に予想させ、回路の前後で測って確かめる手順が有効です。

理由——なぜ「電流が減る」と考えてしまうのか

電流を「消費される物質」として捉えている

生徒の多くは、電流を目に見えない「何か」としてイメージしています。電池から送り出され、豆電球やモーターなどの部品を通るときに、その何かが使われて少なくなると考えるのです。このイメージは、電池が「なくなる」、電気製品が「電気を消費する」という日常の言葉と結びついています。

Shipstoneは、単純な直流回路についての子どもの理解を調べ、電流の流れに関する複数の異なるモデルがあることを報告しました。その中には、電流が回路の一部で消費されるとする考え方も含まれています。

Shipstone D. A study of children’s understanding of electricity in simple DC circuits. European Journal of Science Education. 1984;6(2):185-198.

この研究が示すのは、生徒が回路図を前にして「何も知らない」のではなく、自分なりの一貫した説明を持っているということです。電流が減るという考えも、生徒の中では筋が通っています。電池から出た電流が豆電球に届き、豆電球が光るために電流を使う。だから2つ目の豆電球には残りが届く。こうした説明は、日常の経験からすれば自然です。

指導する側が「電流は減らない」と最初に言ってしまっても、生徒の内側にあるモデルは簡単には変わりません。むしろ、自分の考えを言葉にさせてから、測定という証拠と突き合わせる必要があります。

電流とエネルギーの区別がついていない

「電流が使われて減る」という誤概念の背景には、電流とエネルギーの混同があります。電池が持つエネルギーは、回路を一周する間に豆電球で光や熱に変わり、電池に戻るころには減っています。しかし、電流そのものは回路のどこでも同じ量で流れ続けます。

生徒は「電池が消耗する」という観察を、そのまま「電流が消耗する」と結びつけます。電池が長く使うと弱るのは、中の化学変化が進んで起電力が下がるからであって、回路を流れる電流が途中で消えるからではありません。この区別は、電流の単元を学ぶ段階ではまだ明確になっていないことが多いのです。

Clossetは、電気回路と水流回路の類推を用いた学習について検討し、電気の理解における指導上の帰結を論じています。水の流れにたとえると、水車の前後で水量は変わりません。水車が回ることで水の持つエネルギーが使われるだけで、水そのものは同じ量だけ流れ続けます。

Closset J. Reasoning about Electricity and Water Circuits: Teaching Consequences in Electricity. Learning Electricity and Electronics with Advanced Educational Technology. 1993:97-108.

この水流との類推は、電流とエネルギーの区別を助ける一方で、使い方を誤ると別の混乱を生むこともあります。水が漏れる、水が蒸発するといったイメージが入り込むと、「電流も途中でなくなる」という考えが補強されかねません。類推はあくまで補助であり、電流計で測るという直接的な証拠に置き換えていくことが大切です。

直列回路と並列回路の観察を誤って結びつけている

豆電球を直列に増やすと暗くなるという観察は正しいものです。しかし生徒は、その原因を「電流が手前の豆電球で使われるから」と説明します。並列回路で豆電球を増やしても明るさが変わらないという観察と、直列回路の観察を比べると、この説明ではうまくいきません。

直列回路で豆電球が暗くなるのは、回路全体の抵抗が大きくなり、流れる電流が全体として小さくなるからです。電流はどこかで消費されるのではなく、回路全体を流れる量が最初から小さくなります。この「全体として小さくなる」と「途中で減る」の違いが、生徒にはなかなか見えません。

指導では、電流計を回路の複数の場所に入れて測る活動が有効です。電池の直後、豆電球と豆電球の間、電池に戻る手前。どこで測っても同じ値を示すことを、生徒自身が記録して確かめます。このとき、予想を先に書かせることが重要です。「豆電球の後では減るはず」と予想した生徒は、測定結果とのずれに直面して初めて、自分のモデルを問い直します。

また、豆電球を1つにしたときと2つ直列にしたときで、回路全体の電流の値を比べる活動も有効です。2つ直列のときは全体の電流が小さくなることを確認すれば、「途中で減る」のではなく「全体の量が変わる」のだと理解しやすくなります。

誤答の例——実際にどんな答え方をして、どう確かめるか

よくある誤答 その子が考えていること 確かめる問いかけ
「豆電球の前では電流が大きくて、後ろでは小さくなる」 豆電球が光るために電流を消費している 「電池の直後と豆電球の後ろ、両方に電流計をつないで比べてみよう」
「直列に2つつなぐと、1つ目の豆電球のほうが明るい」 1つ目が電流を先に使うので、2つ目に残りが少なく届く 「2つの豆電球の明るさをよく見比べて、同じか違うか確かめよう」
「電池から出た電流は、豆電球で全部使われてなくなる」 電流は電池から出る一方通行の燃料のようなもの 「電池に戻る導線にも電流が流れているか、電流計で調べよう」
「並列回路でも、豆電球の数だけ電流が分かれて減っていく」 電流は分岐のたびに消費され、全体量が目減りする 「分かれる前と合流した後で、電流の大きさを測って比べよう」
「電池が古くなると、回路の途中で電流が消える」 電池の消耗と電流の減少を同じ現象として捉えている 「電池が新しいときと古いときで、電池の直後の電流を測って比べよう」

机の前で1対1で確かめる手順は、次のように進めます。

  1. まず回路図を見せて、「電流の大きさはどこで測っても同じだと思う? それとも場所によって違うと思う?」と予想を書かせます。理由も一言添えさせます。
  2. 電池と豆電球1つの回路を組み、電流計を電池の直後、豆電球の前、豆電球の後ろの3か所につなぎ替えて測ります。測定値をその場で記録させます。
  3. 豆電球を2つ直列にして、同じ3か所で測ります。1つのときと比べて全体の電流がどう変わったかも確認します。
  4. 「豆電球の後ろで電流が減っていないね。では、豆電球が2つになると暗くなるのは、何が変わったからだろう」と問いかけ、回路全体の電流が小さくなったことに目を向けさせます。
  5. 最後に、並列回路でも分岐の前後で測り、電流が途中で消えないことを確かめます。

小学生では、電流計の読み取りよりも、豆電球の明るさの比較と簡易的な検流計を使った確認が中心になります。「電流が減る」という言葉そのものより、「電池から出たものが豆電球でなくなる」というイメージを持っている段階です。まずは豆電球の前後で明るさに違いがないことを観察させ、電流が一方通行で消えるものではないという感覚を育てます。

中学生では、電流計の使い方を学んだ直後が勝負です。測定の技能と同時に、「測る前に予想する」習慣をつけます。予想が外れたときこそ、自分の考えを修正するチャンスです。直列回路と並列回路の両方で、電流の値を記録して比較する活動を必ず入れます。

高校生では、電流の定義やオームの法則と結びつけて説明できる段階を目指します。電流が回路の各点で等しいことは、電荷の保存という考え方で説明できます。豆電球で電流が消費されない理由を、自分の言葉で論理的に述べられるかどうかを確認します。

よくある誤読——研究結果をどう使わないか

「誤概念はすべて教え直せば消える」と読む誤り

Shipstoneの研究は、生徒が電流について複数の異なるモデルを持っていることを示しました。しかし、これは「誤概念を正しい知識に置き換えれば解決する」という単純な話ではありません。生徒の考えは、一度の説明や一度の実験で完全に置き換わるものではないからです。

むしろ、この研究が示唆するのは、生徒の考え方には一貫性があり、簡単には変わらないということです。指導者は、誤答を「直すべき欠陥」として扱うのではなく、生徒がどのようなモデルで回路を見ているのかを理解する手がかりとして扱う必要があります。測定結果を見せても、生徒は自分のモデルを守るために「電流計のつなぎ方が悪い」などと解釈することもあります。

正しい読み方は、誤概念を段階的に揺さぶる指導を設計することです。予想と結果のずれを何度も経験させ、生徒自身が自分の説明を修正していく過程を支えます。「電流は減らない」と教えるだけでは、テストの答えは書けても、日常生活の場面では元の考えに戻ってしまうことがあります。

「水流の類推は万能である」と読む誤り

Clossetの研究は、水流回路との類推が電気回路の理解に役立つ可能性を示しました。しかし、これを「水にたとえればすべてうまくいく」と読むのは誤りです。水流の類推は、電流の保存という点では有効ですが、電気回路のすべてを説明できるわけではありません。

たとえば、水は高いところから低いところへ流れますが、電気回路では電池が起電力を与えて回路を一周させます。水が途中で漏れるイメージは、電流が途中で減るという誤概念をむしろ強化します。また、水車が水を消費しないことは理解できても、電池の内部で何が起きているかは水流では説明できません。

正しい読み方は、類推はあくまで導入の補助であり、最終的には電流計による測定や回路の規則そのもので理解を固めるということです。類推に頼りすぎず、類推が成り立たない場面を生徒と一緒に確認することで、電気回路の本質に近づけます。

今週やること——机の前でできる3つの実践

  1. 回路の学習に入る前に、「電池から出た電流は豆電球を通ったあと、どうなると思う?」と自由記述で答えさせます。その答えを、消費モデル・減衰モデル・保存モデルなどに分類して、生徒の考えを把握します。
  2. 直列回路で、電流計を電池の直後と豆電球の後ろにつなぎ替えて測る活動を行います。測る前に必ず予想を書かせ、予想と結果が違った場合は、その違いを言葉で説明させます。
  3. 豆電球1つと2つ直列の場合で、回路全体の電流の値を比べます。「豆電球が暗くなるのは、電流が途中で減るからではなく、全体の電流が小さくなるから」という説明を、生徒自身の言葉でまとめさせます。

この記事で言えないこと

この記事で紹介した研究は、特定の時期・特定の学習段階にある生徒を対象にしたものです。ここで述べた誤概念の現れ方は、すべての生徒に同じように見られるとは限りません。回路の学習経験や日常生活での電気製品との関わり方によって、生徒の考え方は大きく異なります。

また、この記事では「電流が使われて減る」という誤概念に焦点を当てましたが、電気回路の学習には電圧や抵抗、電力など、他のつまずきも多く存在します。電流の保存だけを理解しても、回路全体の理解が十分になるわけではありません。直列回路と並列回路の違い、電圧の概念、オームの法則の適用など、関連する単元との接続も考慮する必要があります。

さらに、誤概念の修正には個人差があります。一度の実験で考えが変わる生徒もいれば、何度も予想と結果を突き合わせる必要がある生徒もいます。この記事で示した手順は、あくまで一つの出発点です。生徒の反応を見ながら、問いかけや活動を調整していくことが欠かせません。

当塾の立場

「電流が減る」という誤概念の確認と、電流計を使った測定活動は、ご家庭でも十分に取り組めます。回路の教材は手に入りやすく、予想を書かせて測るという手順も、保護者の方が一緒に行えば成立します。まずは家庭で、豆電球と電池を使った簡単な回路から試してみてください。

そのうえで、当塾が担える部分があるとすれば、生徒の予想の言葉を丁寧に聞き取り、その子がどのようなモデルで回路を捉えているかを整理することです。たとえば「豆電球の後ろでは電流が減る」と予想した生徒に、測定結果を見せたあと「では、豆電球が2つ直列だと暗くなるのはなぜ?」と問いかけ、生徒自身の説明がどう変わるかを記録していきます。この対話の積み重ねが、単なる知識の暗記ではなく、考え方の更新につながると考えています。

出典

  1. Shipstone D. A study of children’s understanding of electricity in simple DC circuits. European Journal of Science Education. 1984;6(2):185-198.
  2. Closset J. Reasoning about Electricity and Water Circuits: Teaching Consequences in Electricity. Learning Electricity and Electronics with Advanced Educational Technology. 1993:97-108.

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