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不登校の子が勉強の遅れに焦るとき—一日中やろうとする日と、焦りを口にした夜の返し方|武蔵野個別指導塾

夜に「みんなはもう次の単元」と言い出した不登校の子に、量を約束せず、抜けた単元を教科書の目次の印で見える形にする返し方と、一日中やる日の区切り方を言葉の例で追います。
不登校の子が勉強の遅れに焦り出したら、その焦りを打ち消そうとせず、「何が、どれだけ抜けているか」を一緒に紙の上へ出してください。焦りを大きくしているのは遅れの量そのものより、遅れがどこまで続いているのか見えないことです。返すときは「明日から毎日何時間」と量を約束せず、教科書の目次に鉛筆で印をつけ、次の日に手をつける単元を1つだけ決めます。今夜の最初の一手は、広げた教科書を閉じさせずに目次の頁を開き、「授業で受けた所に、印をつけてみようか」と声をかけることです。
よくあるのは、夜11時、居間の明かりを消そうとしたところへ、中3の子が自分の部屋から教科書を抱えて出てきて、テーブルに数学と英語を広げ始める場面です。少し前に友だちから届いたメッセージに、授業がもう次の単元に入ったと書いてあったらしい。「みんなはもう次の単元に入ってる」と言ったきり、子供は頁をめくる手を止めません。昼のあいだ部屋から出てこなかった子が、急に一日分を取り返そうとしている。止めるべきか、喜ぶべきか、親の口からはとっさに言葉が出てきません。
焦りが出るとき、子供の側で起きていること
学校を休んでいる子供の焦りは、決まった場面で強くなります。家の中から見ると突然に見えても、たいていは外から何かが届いたあとです。よくある入り口を三つと、それが夜に出やすい理由を分けて書きます。お子さまがどれに当てはまるかを決めつける必要はありません。近いものを一つ思い浮かべながら読んでください。
一つ目は友だちの話です。スマホに届くメッセージや、たまに会った友だちの口から、授業の進み具合が聞こえてきます。「もう平方根に入った」「小テストがあった」という一言は、話した側にとってはただの近況です。けれども休んでいる子には、自分が置いていかれた距離を測る物差しに聞こえます。距離の中身がわからないまま、差の大きさだけがはっきりする。焦りはここで生まれやすくなります。
二つ目はテストの時期です。学校から届く手紙や行事予定の紙に、定期テストの日付が載っています。受けるかどうかとは関係なく、その日が近づくと、同じ学年の子が一斉に机に向かっている様子が頭に浮かびます。自分だけ何もしていない、という感覚は、実際の勉強の量とは別のところで膨らみます。
三つ目は進路の話です。中3なら、学校からの進路の面談の知らせ、高校の説明会のチラシ、親戚の「高校はどこにするの」という一言がそれにあたります。進路の話は、遅れを「いつまでに取り返さなければならないか」という期限の話に変えます。期限が見えたとたん、残りの日数に対して遅れが大きすぎるように感じ、かえって動けなくなる子もいれば、一気にやろうとする子もいます。
そのうえで、焦りは夜に出やすくなります。昼に何もできなかった一日の終わりは、取り返したい気持ちがいちばん強くなる時刻です。家が静かになり、昼に届いたメッセージを思い出す時間もできる。夜11時に教科書を広げるのは、その一日の重さが最後に形になった姿だと見てください。
図1のように、焦った夜や翌日に「一日中やる」が始まると、輪ができやすくなります。朝から晩まで机に向かった日のあと、次の日は疲れと「昨日ほどはできない」という気持ちで手が止まる。止まった日の夜には遅れがさらに増えた気がして、また焦る。一日中やった日そのものが悪いのではありません。量で取り返そうとすると、翌日の少ない量が負けに見えてしまう、その形のほうに目を向けてください。

焦りは、ただの心配性でも、ただの甘えでもありません。令和元年に文部科学省が出した不登校の支援についての通知は、休んでいる時期が「休養や自分を見つめ直す等の積極的な意味を持つことがある」と書いています。同じ段で、学業の遅れや進路の不利益には気を配るようにとも求めています。遅れは現にあり、子供はそれを正しく感じ取っています。ですから親の返し方は、焦りを打ち消すことではなく、焦りを手で持てる大きさに変えることへ向けます。
焦りを口にした夜からの手順
ここからは、夜11時に教科書が広がったその場から、次の日の夕方までの順番です。図2のように、目次に印をつける、抜けた単元を紙に出す、明日の1つを選ぶ、という3段が芯になります。その外側で、量を約束しないことと、一日中やろうとする日の区切り方を足します。
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その夜は教科書を閉じさせず、終わりの時刻だけを決めます。夜11時に広げた教科書を「もう遅いから」と片づけさせると、子供には、追いつこうとした気持ちごと止められたように伝わります。止めずに、「日付が変わる前に一度終わろうか」と終わりだけを一緒に決めてください。時刻を決めるのはその夜の勉強を守るためで、量を減らすためではありません。親はお茶を入れて同じテーブルに座り、口は出さずにそばにいてください。
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焦りの言葉を、言い直して受け取ります。「次の単元って聞いたら、焦るよね」と、子供が言ったことを短く返すだけにします。「でも」「だったら」で続けないこと。受け取ったと伝わる前に案を出すと、案のほうが聞こえません。子供が黙ったら、こちらも黙って待ってかまいません。
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目次を開いて、授業で受けた単元に印をつけます。子供が今広げている教科書の目次の頁を開き、鉛筆で、授業を受けた単元に丸、受けていない単元に小さな点をつけます。今夜は開いている1教科だけで十分です。細かい時間の見積もりや、全教科の洗い出しまでは今夜はしません。印をつけるのは子供の手で、親は「ここは受けたっけ」と聞かれたら一緒に思い出す役に回ります。
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抜けた単元を、1枚の紙に書き出します。点のついた単元の名前を、教科名と並べて紙1枚に書きます。書き出すと、頭の中で「全部遅れている」だった物が、「この単元とこの単元」という数えられる物に変わります。紙は子供の机の上に置き、冷蔵庫や居間の壁には貼りません。家族の誰からも見える場所にあると、見張られている気持ちのほうが勝ってしまいます。
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明日の1つを選びます。紙の中から、次の日に手をつける単元を1つだけ選び、紙のいちばん上に書きます。選ぶのは子供です。親が言うなら「どれなら、明日その頁を開けそう?」まで。選べないときは「今いちばん気になっているのはどれ?」と聞き方を変えます。気になっている単元と、明日開ける単元が違ってもかまいません。
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量を約束しません。子供が「明日から毎日5時間やる」と言っても、うなずかず、打ち消さず、「明日の1つが終わったら、また紙を見よう」で返します。親のほうから「毎日2時間なら」と別の量を出すのもやめます。焦っている夜に決めた量は、たいてい翌日の自分を責める材料になります。
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一日中やろうとする日は、区切りを先に置きます。翌朝、「今日は全部やる」と言い出した日は、止めずに区切りだけを入れます。昼食の時刻にいったん手を止めて机を離れる、夕方に紙の上の終わった単元へ線を引く、続きは紙に一行だけ書いて終える。この3つです。続きを紙に残して終わる日は、次の日の入り口が残ります。やり切って何も残っていない日のほうが、翌日は始めにくくなります。
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次の夜は、前の夜の話を蒸し返しません。「昨日はあんなに言っていたのに」は言わずにおきます。紙を見て線が引けた単元があれば、「線が1本増えたね」と事実を言うだけにします。線が1本も増えていなくても、紙が机の上に残っていれば、それで次の日の話はできます。

手順の中でいちばん効くのは、3と4の、遅れを目に見える物にする所です。焦りは形のない物ほど大きく感じます。目次の丸と点、1枚の紙という形を持たせると、子供は焦りを「片づける物」として扱い始めます。逆に、ここを飛ばして5や6の話から入ると、子供には「量を減らされた」としか聞こえません。
言葉と場面の例
夜の焦りに返す言葉は、親が言いやすい言葉ほどずれやすくなります。言いがちな言葉、言い換え、変える理由を4組並べます。
一組目。「今は休む時期なんだから、勉強のことは考えなくていいの」と言いたくなったら、「休みたいのも、追いつきたいのも、どっちも本当だよね」に変えます。前の言い方は、休むことを守ろうとして、追いつきたいという子供の気持ちのほうを脇へ置いてしまいます。休む時期であることと遅れが気になることは、同じ子の中で同時に起きています。両方をそのまま認めると、子供は焦りを隠さずに話せます。
二組目。「明日から毎日やれば、すぐ追いつくよ」は、「何が抜けているか、まず紙に出してみようか」に変えます。すぐ追いつく、は親の願いであって、子供が確かめられる事実ではありません。根拠のない見通しは、外れたときに子供の側の失敗として残ります。
三組目。「そんなに遅くまでやったら、明日起きられないよ」は、「日付が変わる前に、今日やった所に印をつけて終わろう」に変えます。前の言い方は明日の心配で今夜の勉強を止めています。後の言い方は、今夜の勉強を印という形で残したまま終わらせます。
四組目。「みんなはみんな、あなたはあなた」は、「その友だちの話、どの教科のこと?」に変えます。比べるのをやめなさいと言っても、比べる気持ちは消えません。どの教科の、どの単元の話かを具体にすると、友だちの一言が、目次の上の一か所に置き換わります。
場面の例も一つ書いておきます。焦った夜の翌日、子供が「全部の教科の問題集を買ってきて」と頼んできたとします。ここで5教科分をまとめて買ってくると、手をつけていない問題集の山が、机の横で新しい遅れの印になります。「紙のいちばん上の単元から、まず教科書の練習問題で始めてみよう。足りなくなったら、その教科の分を一緒に本屋へ見に行こう」と返すと、焦りを買い物の量に変えずにすみます。買うのを断るのではなく、買う時を一つ後ろへずらすだけです。
親の焦りと、子供の焦りを分ける
親も焦ります。高校受験までの月日、同じ学年の子の話、自分の仕事との兼ね合い。親の焦りは期限と周りとの比較に引っぱられやすく、子供の焦りの中身とは重なりつつも同じではありません。二つが混ざると、子供は親の心配まで自分の荷物として背負い、夜の焦りはさらに重くなります。
分けるための言葉を、二つ持っておいてください。一つは「私が心配しているのは、私の側の気持ち。あなたが焦っていることは、あなたの言葉で聞かせて」。もう一つは「進路のことは、先に私が担任の先生に聞いておくね」。前の言葉は、気持ちの持ち主を分けます。後の言葉は、期限の話を親が預かり、子供の手元には単元の話だけを残します。
親の側の焦りは、子供以外の誰かに話して軽くしてください。家族の中のもう一人の大人でも、学校のスクールカウンセラーでもかまいません。武蔵野市は、学校に行きづらい子の気持ちを考える保護者の集いを開いています。日程は市の頁で確かめてください。親が自分の焦りを外で言葉にしておくと、夜11時のテーブルで、子供の焦りだけを聞く余白が残ります。
やりがちな三つのずれ
図3のように、焦っている子を前にした親がやりがちなずれは、三つにまとまります。どれも、子供を思うからこそ出てくる動きです。

一つ目は、子供のやる気に乗って、一日の計画を親が作り込むことです。「やる気になった今のうちに」と、朝から夜までの時間割を紙に書いて渡したくなります。ずれるのは、その時間割が、翌日に止まったときの責める材料になる所です。直し方は、計画を明日の1つまでにとどめることです。その次の単元は、明日の単元に線が引けてから、紙を見ながら子供が選びます。
二つ目は、焦りを消そうとして「大丈夫」を繰り返すことです。大丈夫、が重なるほど、子供は、本当のことを話しても聞いてもらえないと感じます。遅れがあることを親が認めないと、子供は焦りを一人で抱えて夜を過ごします。直し方は、遅れを紙に出すことです。遅れがあると認めたうえで、その大きさを一緒に確かめるほうが、子供は落ち着きます。
三つ目は、焦りを登校のきっかけに使うことです。「そんなに焦るなら、学校に行けばいいのに」という一言は、親にとっては筋の通った提案です。ところが子供には、勉強の話をすると学校の話にされる、という学びとして残り、次から焦りを口にしなくなります。直し方は、話す時を分けることです。勉強の焦りを聞く夜には勉強の話だけをし、学校のことは別の日に、担任との話の結果として持ち出します。
よくある質問
不登校で勉強の不安が強く、夜も眠れていないようです。どうすればいいですか
眠れない夜が何日も続く、食事の量がはっきり減っている、朝になると頭やお腹の痛みを訴える日が続く、「自分はもうだめだ」という言葉が繰り返し出る。こうした様子があるときは、勉強の手順より先に、かかりつけの医療機関に相談してください。親が様子を日付と一緒にメモしておくと、伝えやすくなります。自分を傷つけるような言葉や様子が見えたときは、その日のうちに医療機関に相談してください。学校のことはスクールカウンセラーに、家での接し方は下の相談先に話せます。
焦っているのに、親が手伝おうとすると怒ります
まず、手伝う中身が広すぎないかを見直してください。単元の解き方を教えようとすると、子供は、できない所を親に見られることになります。親の手伝いは、目次に印をつける場に一緒にいることと、紙を机に置くことまでに絞ってください。単元の中身は、子供が一人で教科書を読むか、学校の先生か、個別指導の先生に回します。怒ったときは、その夜はそれ以上言わずに、紙だけを机に残しておきます。
家でやった勉強は、学校の成績や受験で見てもらえますか
家での勉強をどう評価に入れるか、出席としてどう扱うかを決めるのは在籍している学校で、家も塾も約束できません。中3なら、評定や調査書の扱いも担任に聞くことになります。聞くときは、目次に印をつけた教科書と、線の引かれた紙を持っていくと、何をどこまでやったかが具体に伝わります。
学校と相談先で確かめること
担任やスクールカウンセラーと話す日には、次の質問をメモにして持っていってください。答えが「まだわからない」でも、誰にいつ聞けばよいかがわかれば十分です。
- 今、授業は教科ごとに、どの単元まで進んでいますか。
- 抜けた単元のプリントやワークを、家でもらうことはできますか。
- 家でした勉強を先生に見てもらうには、どんな形で出せばよいですか。
- 定期テストを受けるかどうかは、いつまでに誰と相談すればよいですか。
- 評定や進路の書類の扱いについて、話を聞ける日はありますか。
- スクールカウンセラーと子供が話せる日、親が話せる日はいつですか。
同じ令和元年の通知には、学習の遅れを心配する保護者から進級の時期の補充の指導を望む声があれば、学校が柔軟に応じるという段もあります。プリントや補充を頼むことは、遠慮しなくてよいことです。
学校の外にも話せる場所があります。夜の焦りの話を親子だけで抱えきれないと感じたら、武蔵野市にお住まいなら市の教育支援センターで子供の様子を相談できます。市のスクールソーシャルワーカーは家庭を訪ねて話を聞き、市の窓口や関係機関へつないでくれます。市の学びの場を使うかどうかの相談も、ここで受けています。三鷹市や小金井市から通っている家庭なら、まず自分の市の教育委員会に、教育相談を受けている所はどこかを尋ねてください。東京都教育相談センターも、不登校や学校生活のことで保護者からの相談を受けています。
個別指導で確かめること
1対1の授業では、まず目次の印と紙を一緒に見て、今の学校の単元に入るのに要る前の単元を一つだけ選びます。中3の数学で二次方程式に進みたいなら、その前に要る因数分解の例題が、教科書のとおりに解けるかを1問ずつ確かめます。焦っている子ほど先へ進みたがるので、最初の数回は、解けた例題に線を引いて紙の上に残すところまでを授業の終わりにします。量を決めるのは、線が何本か引けて、子供が自分の進み方をつかんでからです。
まとめ
夜11時の「みんなはもう次の単元に入ってる」に、励ましの言葉を何度重ねても、焦りの重さは変わりません。動かせるのは、焦りが置かれている場所です。目次に並んだ鉛筆の丸と点、机の上の1枚の紙、そのいちばん上に書いた明日の一行。頭の中から紙の上へ焦りが移ったその夜から、子供は遅れを、自分の手で一本ずつ線を引いて減らせる物として扱い始めます。
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