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法学部の小論文と志望理由書—「〜である」と「〜べきだ」を分けて書く、きまりをめぐる問い|武蔵野個別指導塾

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夜の公園での花火を禁じるべきかを例に、下書き用紙を3列に折って事実と「べき」の間に守る利益を置けば、法学部の小論文も志望理由書の問いも混ぜずに分けて書けます。

法学部の小論文の書き方で最初に変えるのは、法律の知識の量ではなく、文の種類です。「〜である」で終わる文には確かめられる事実を、「〜べきだ」で終わる文にはあるべき姿を書き、その2つの間に「何を守るためか」という理由を1行はさみます。きまりをめぐる問いで事実からいきなり「べき」へ飛ぶと、町の思い出が結論を押し出しているように読めてしまいます。志望理由書なら、憲法や民法といった分野の名前を並べる前に、きまりについて自分が持った問いを1つ書いてください。問いが1つ立てば、なぜ法学部なのかには、その問いが答えてくれます。

よくあるのは、「夜の公園での花火を禁じるべきか」という練習の問いを前に、自分の町の話だけで3行書いた下書きが机に残っている場面です。1行目は近所の公園の夏の夜、2行目は小学生のころの線香花火、3行目でいきなり「だから禁じるべきではない」。書いた本人も、ここから何を足せば800字に届くのかわからず、鉛筆の先で3行目をなぞっています。3行には嘘がひとつもありません。足りないのは、3行の間をつなぐ文です。

花火の答案が町の話で止まるのは、事実と「べき」が段差なしにつながっているから

「〜である」の文と「〜べきだ」の文は、読み手に求めるものが違います。「夏の夜の公園には、花火をする家族連れが多い」は、見に行けば確かめられる文です。読み手はそれを、合っているか誤っているかで読みます。「夜の公園での花火を禁じるべきではない」は、何度見に行っても確かめられません。読み手はそれを、理由が通っているかどうかで読みます。同じ「。」で終わる文でも、片方は観察の報告で、もう片方は提案です。

困るのは、確かめられる文をいくら積み上げても、そこから「べき」の文が自動では出てこないことです。家族連れが多いという事実から「だから許すべきだ」と書くと、間に「多くの人が楽しんでいることは守られるべきだ」という前提が隠れています。隠れた前提は、反論の的になります。楽しむ人が多くても、眠れない1人の苦しみの方が重いのではないか、と返されたとき、前提を書いていない答案には返す言葉が残っていません。前提を書かずに飛ぶと、読み手には反論を避けて通ったように見えます。

事実の文とあるべき姿の文の間には、つなぐ理由を置きます。つなぐ理由とは、何を守るかを言う文です。「夜に眠る静けさは、近くに住む人の暮らしに欠かせない」「庭のない家族にとって、火を使って遊べる場所は限られている」。この1行が入ると、事実は理由の土台になり、「べき」の文は理由の行き先になります。図1のように、冒頭の3行の下書きは、事実の文から結論へ、この1行を飛ばして進んでいました。

図1 事実の文と「べき」の文の間に、何を守るかを言う文を置く流れ

法学部の問いは、この段差が特に目立つ問いです。きまりをめぐる問いには、たいてい守られる人と削られる人がいます。花火を許せば静けさが削られ、禁じれば遊ぶ場所が削られます。どちらの利益にも名前を付けてから立場を出すと、立場の文にようやく重さが乗ります。教室で答案を並べてみると、赤字が集まるのは事実の誤りより、利益の名前が抜けた行の方です。

法学部の小論文で出会いやすい3つの問いの型

法学部の小論文で出会いやすい問いは、おおまかに次の3つの型に分けられます。どの型でも、混ざりやすいのは事実と「べき」です。

型 問いの形の例 答案が崩れやすい所
きまりや制度の賛否 夜の公園での花火を禁じるべきか 「禁止の看板がある」という事実を、そのまま禁じる理由にする
権利と権利のぶつかり 花火を楽しむ人と静かに眠りたい人の、どちらの利益を優先すべきか 片方の利益しか書かず、もう片方を「わがまま」と片づける
課題文型 公園の使い方のきまりを論じた文章を読み、筆者の考えに意見を述べよ 筆者の「べき」と自分の「べき」の境目が消える

課題文型では、筆者の文も、事実の文とあるべき姿の文に分けて読みます。筆者が示した事実には賛成しながら、そこから引き出した「べき」には反対する、という立場の取り方ができるようになり、どこに賛成しどこに反対するのかを1行で言えるようになります。

下書き用紙を3列に分けて、事実と「べき」を振り分ける手順

下の手順は、「夜の公園での花火を禁じるべきか」を、たとえば800字・60分の練習問題として解くときの流れです。分の数は教室で練習に使っている目安で、本番の試験時間や何字で書くかは、その問題に付いた注意書きのとおりにします。

  1. 問いの文の「禁じるべきか」に線を引き、二択の外の答えを1行書きます(問題用紙の余白・2分)。禁じる、禁じない、のほかに「禁じないが、時間と場所で線を引く」という答えがないかを探します。問いの分け方そのものを疑うのは、答えから逃げるためではありません。どちらかの立場に立つ前に、立てる場所を広げておくためです。
  2. 下書き用紙を縦に折って3列に分け、左の列の上に「〜である」、真ん中に「何を守るか」、右に「〜べきだ」と書きます(1分)。メモを書いてよい場所が試験の注意書きで決まっていれば、それに合わせます。
  3. 思いついたことを、言い切ったときの文の終わりの形で左右に振り分けます(6分)。メモは語で足ります。「夏の夜の花火」「音と煙」「燃えかすが朝まで残る」は「〜である」で言い切れるので左、「禁じるべきではない」「少しは我慢すべきだ」は右です。左には少なくとも3つ、右には1つか2つ並べます。右が左より多くなったら、事実を集める前に結論を急いでいる印です。
  4. 真ん中の列に、ぶつかる2つの利益を書きます(4分)。この問いなら「眠る静けさ」と「遊べる場所」です。それぞれに、誰の利益か(近くに住む人/庭のない家族)と、いつの利益か(夜遅く/夏の夕方)を矢印で添えます。片方しか浮かばないときは、反対の立場の人がこの問いを読んで最初に口にしそうな一言を書き、そこから利益の名前を取り出します。
  5. 立場を決め、右の列に「線を引く」と書きます(3分)。「禁じるべきではなく、時間と場所で線を引くべきだ」のように、二択のどちらに立つかと、どこに線を引くかを1文で言えるまで直します。「どちらとも言える」は、まだ立場になっていません。
  6. 反論を、相手の利益の言葉で1つ書き、それへの答え(再反論)を1つ書きます(3分)。反論は「うるさいと言う人もいる」ではなく、「翌朝早く働く人にとって、夜の音は眠りを削る」のように、真ん中の列の利益をそのまま使って書きます。
  7. 条文や判例を使うかどうかを決めます(1分)。番号と文言を正確に書けるものが手元の記憶になければ、使わないと決めて先へ進みます。
  8. 清書します(36分)。800字なら、たとえば問題提起150字、主張と理由300字、反論と再反論250字、結論100字を目安にすると、手順1から6のメモがほぼそのまま段落の芯になります。
  9. 見直します(4分)。文の終わりに鉛筆で小さな印を付けていき、「である」の文には出どころがあるか、「べきだ」の文の直前に何を守るかの文があるかを確かめます。

1から9の分を足すと60分、清書の目安の4つを足すと800字になります。どちらも練習の一例なので、45分の問いなら手順3と清書を縮め、手順1と5は削らずに残します。立場の芯は、この2つの手順で決まるからです。

手順3と9で使う見分け方を、表にまとめます。

文の種類 文の終わりの例 書く前に確かめること 答案での置き場所
事実の文 〜である・〜が起きている 自分で見たか、どこで読んだか 問題提起と理由の土台
つなぐ文(何を守るか) 〜は欠かせない・〜が削られる 誰の利益か、いつの利益か 理由の中心
あるべき姿の文 〜べきだ・〜してはならない 直前につなぐ文があるか 主張と結論
きまりを伝える文 〜と定められている 番号と文言を正確に書けるか 書けるときに限り、理由の補い

表の4行目は、法学部の問いに特有の落とし穴です。「〜と定められている」は、きまりの中身を伝える事実の文で、そのきまりが良いかどうかまでは言っていません。きまりがあることを「べき」の理由に使うなら、そのきまりが守ろうとしている利益を、つなぐ文として別に1行書く必要があります。

図2は、手順2から5を終えたときの下書き用紙です。左の「夏の夜の花火」「音と煙」から、それぞれ真ん中の「遊べる場所」「眠る静けさ」を通って、右の「線を引く」へ矢印が進みます。右の列の言葉に、左の列から矢印がたどれないときは、真ん中の列に書き足す物が残っています。

図2 下書き用紙を3列に分け、事実から守る利益を通って結論へ進むメモ

法学部の志望理由書は、分野の名前より、きまりをめぐる問いを1つ

大学の志望理由書の書き方を法学部向けに変えるとすれば、手を入れるのは1か所です。学びたい分野の名前を並べる代わりに、きまりをめぐって自分が持った問いを1つ書きます。憲法、民法、刑法と並べた文は、どの法学部に出しても通用してしまう文で、読み手には、この人が何を確かめたいのかが見えません。分野の名前は、問いの後ろに1つ添えれば足ります。

問いは、小論文の手順で使った3列のメモから作れます。きまりに触れた場面を1つ選び、真ん中の列の利益を見ながら、次の3つのどれかに当てはめます。

  1. そのきまりは、誰が、どんな手続きで決めたのか。
  2. そのきまりで守られた利益は誰の物で、削られた利益は誰の物か。
  3. 決め方や中身は、削られた側から見ても納得できる物だったか。

公園に花火を禁じる看板が立った場面なら、2つ目に当てはめます。守られたのは近くに住む人の静けさで、削られたのは遊ぶ家族の場所だ、と書き出します。そこから「その分け方は誰の声で決まったのか」へ進めば、1つ目の問いと重なり、法学部で確かめる問いの形になります。問いが1行になったら、いまの時点での自分の見込み(仮説)を1文添えます。まだ確かめていない形のまま書いてかまいません。

問いを書いたら、2つのことを確かめます。1つは、その問いがもう答えの出た問いではないかです。法の入門書を1冊読んでおくと、同じ問いを扱った章に出会うことがあり、その章を読んだうえで、残っている所を自分の問いにします。もう1つは、その問いを確かめられる授業やゼミが志望する学部にあるかで、授業の名前は大学が公表している授業の計画から1字ずつ書き写します。名前を誤ると、調べたこと全体が疑われやすくなります。

花火の答案と法学部の志望理由書を、直す前と直した後で比べる

小論文の3行を直す

直す前の例です。

私の町の公園では、夏の夜に家族で花火をする人が多い。私も小学生のころ、そこで父と線香花火をした。花火は夏の大切な思い出である。だから、夜の公園での花火を禁じるべきではない。うるさいと言う人もいるが、少しくらいは我慢すべきだ。

1文目から3文目は事実の文で、4文目でいきなり「べき」へ飛んでいます。思い出が大切なのは書いた本人の事実で、ほかの人の静けさを削ってよい理由にはまだなっていません。5文目の「我慢すべきだ」は2つ目の「べき」ですが、理由がなく、相手の利益が「うるさい」の一語に縮んでいます。

直した後の例です。

夜の公園での花火をめぐっては、二つの利益がぶつかっている。一つは、公園の近くに住む人が夜に静かに眠る利益であり、もう一つは、庭のない家族が火を使って遊べる場所を持つ利益である。禁じるか許すかの二択で考えると、どちらかの利益を丸ごと捨てることになる。私は、夜の公園での花火を禁じるべきではなく、時間と場所で線を引くべきだと考える。住宅の側では火を使わず、奥の広場でも遅い時間には使わないと決めれば、眠る静けさを守りながら、遊べる場所も残せる。

直した後では、立場は同じ「禁じない」のまま、間に2つの利益の文が入りました。線香花火の思い出は消したのではなく、本論で「遊べる場所を持つ利益」を具体にする場面へ回せます。

志望理由書の分野の並びを直す

直す前の例です。

私は法学部で、憲法、民法、刑法、行政法を幅広く学びたい。高校2年の夏、町の公園で花火が禁止になり、法律やきまりが暮らしに深くかかわっていると感じたからである。法を学ぶことで社会に貢献したい。将来は法律の知識を生かせる仕事に就きたい。

看板の体験はあるのに、そこから出てきたのが「深くかかわっていると感じた」という感想で、問いになっていません。分野の名前が4つ並んでいるので、何を確かめたい人なのかも絞れません。後ろの2文は、法学部に限らずどの学部の書類にも入ってしまう言い方です。

直した後の例です。

高校2年の夏、町の公園に花火を禁じる看板が立った。近くに住む人からの苦情がきっかけだと聞き、公園の使い方を決めるきまりが、使う人と近くに住む人のどちらの声で作られているのかを知りたくなった。いまの私は、苦情を出しやすい側の声ほど、きまりに入りやすいのではないかと考えている。法学部では、公共の場所の使い方をめぐるきまりがどんな手続きで作られ、誰の利益をどう調整しているのかを、行政にかかわる法の授業とゼミで確かめたい。

分野の名前は「行政にかかわる法」の1つに減り、問いの後ろへ移りました。看板の体験は、感想ではなく問いと見込みを生む場面に変わっています。卒業後にどこでその問いを使うかは、別の段で、仕事の名前と働く場所まで具体に書きます。

法学部の答案でつまずきやすい3つの所

1つ目は、「きまりがあるから、そうすべきだ」と書いてしまうことです。公園に花火禁止の看板がある、という事実の文は、その看板が正しいかどうかを言っていません。こう変えます。きまりを理由に使うときは、そのきまりが守っている利益を「眠る静けさを守るために、このきまりはある」とつなぐ文で書き、そのうえで、守り方が釣り合っているかを論じます。問いが「禁じるべきか」なら、いまのきまりそのものが論じる相手です。

2つ目は、二択のまま書いてしまうことです。禁じるか許すかの2つしか置かないと、どちらを選んでも、もう片方の利益を丸ごと捨てる答案になります。こう変えます。図3のように、時間を早い時間と遅い時間に、場所を住宅の側と奥の広場に分けます。すると4つの升のうち「使える」のは奥の広場の早い時間の1つになり、ほかの3つは「使わない」と決められます。線を引く答えは、どっちつかずではありません。「禁じない」に立ったうえで、どこまでなら許すかを言い切る立場です。

図3 時間と場所の2つの軸で、禁じるか許すかの外に線を引く図

3つ目は、相手の利益を一語に縮めてしまうことです。「うるさいと言う人もいる」と書くと、反論は弱く見え、それに勝っても答案は強くなりません。こう変えます。反論には、相手の立場でいちばん重い言い分を選び、「夏は窓を開けて眠る家もあり、夜の音や煙は寝室まで届く」のように、場面ごと書きます。いちばん強い反論に答えた再反論が、立場を支える柱になります。

よくある質問

法律の知識がほとんど無くても、法学部の小論文は書けますか

書けます。いまの高3が受ける入試について、文部科学省の令和9年度の実施要項は、小論文などがもっぱら教科の知識を問う場にならないよう、大学に気を配ることを求めています。法学部の小論文で答案の芯になるのは、知識の量ではなく、ぶつかる利益を両方書いてから立場を出す筋道です。法の言葉を使うなら、「権利」と書いた所に、誰の、何をする権利かを書き添えます。

答案に条文の番号や判例を書くと、強い答案に見えますか

番号と文言を正確に書けるときに限り、理由の補いになります。試験の途中で「公園で花火を禁じる法律があったはず」と思い出しても、番号も文言も確かめられないなら書きません。あいまいな記憶のまま書いた条文が実在しなかったり中身が違ったりすると、答案のほかの事実の文まで疑われやすくなります。条文の代わりに、そのきまりが守ろうとしている利益を自分の言葉で書けば、筋道は十分に伝わります。

法学部の志望理由書に「弁護士になりたい」と書けば、志望の理由になりますか

職業の名前は、志望の理由の代わりにはなりません。公園の花火のきまりで問いを持った人なら、まずその問いを書きます。弁護士を目指すなら、どんな相談をどこで受けたいのかまで書き足します。たとえば「公共の場所の使い方をめぐって、近くに住む人と使う人の間に立つ相談を地域で受けたい」のように、問いと仕事が1本の線でつながる形にします。職業の名前は、問いの後ろに置いてこそ、理由の一部として読まれます。

個別指導で確かめること

武蔵境の駅前の教室で講師と並んで座る1対1の席では、答案の文の終わりに印を付け、「べきだ」の文の前に何を守るかの文があるかを1行ずつ見ていきます。抜けていれば、清書を直す前に3列のメモまで戻り、真ん中の列に利益の名前を書き足すところからやり直します。条文を引いた答案は、その番号と文言を一緒に確かめ、確かめられなければその行を消します。

志望理由書では、問いが1つに絞れているか、見込みの1文があるか、名前を挙げた授業やゼミが志望する学部の授業の計画に本当に載っているかを、画面を開いて一緒に照らし合わせます。

まとめ

法学部の問いで答案の形を決めるのは、覚えた条文の数ではなく、事実の文と「べき」の文の間に何を守るかを書けるかどうかです。小論文でも志望理由書でも、手を入れる場所は同じ1行です。夜の公園の花火を前に、「である」と「べきだ」の間へ守るものを1行置ける人は、法の言葉をまだ1つも知らなくても、法学部の問いの入口にもう立っています。

読んで終わりにするか、ここから変えるか。

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