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小論文の書き出し—最初の2文で問題提起と立場を示す書き方と、避けたい3つの始め方|武蔵野個別指導塾

試験開始から10分、答案の1行目が白いままなら、立場の一語と疑う前提の1行を先に決めると書き出せます。市の図書館の夜の開館を例に、課題文型とテーマ型で1文目に置く物を選べます。
小論文の書き出しは、最初の2文で「問いをどう受け取ったか」と「自分はどちらの立場か」を示せば、役目を果たせます。課題文がある問いなら、1文目に筆者の言い分を自分の言葉で一文に縮めて置き、一行の題しか無い問いなら、1文目で題の語の意味や二択の分け方を問い直します。どちらの型でも、2文目で立場を言い切ります。避けたいのは、「〜について考えたい」と宣言して終わる始め方、背景の一般論で何行も使う始め方、辞書の意味を写す始め方の3つです。そして書き出しは、最初に仕上げようとせず、本論まで書いてから読み直して直すものです。
よくあるのは、試験が始まって10分たっても、答案用紙の1行目が白いままの机、という場面です。問題用紙には「市の図書館を夜10時まで開けるべきか、あなたの考えを論じなさい」とあり、「夜10時」に線が引いてあります。下書き用紙には「図書館」「夜」「勉強」と単語が3つ並んでいます。けれども、賛成とも反対とも、まだどこにも書かれていません。鉛筆を持った手は答案用紙の上で止まり、頭の中では1文目の言い回しだけが何度も組み替えられています。
小論文の最初の2文に、問いの受け取り方と立場を置く理由
小論文の最初の2文は、読み手がその答案の行き先を知る場所です。1文目で「この問いを、こういう問いとして受け取った」と示し、2文目で「だから私はこちらに立つ」と示すと、その先に並ぶ理由や反論への応答は、どれも2文目の立場を支える材料として読まれます。反対に、立場が3段落目まで出てこない答案は、読み手には、いま読んでいる理由が賛成のための物なのか反対のための物なのかを探しながら読む答案に見えます。同じ理由が書いてあっても、先に立場がある答案の方が、理由の一つ一つが効いて読めます。
教室で下書きを見ていると、1行目が白いままの答案には共通点があります。言葉が足りないのではなく、立場が決まっていないのです。「どう書き始めればいいか」という悩みの多くは、「何を言う答案にするか」が決まっていない悩みが、書き出しの形をとって表に出た物です。だから、書き出しの直し方は文の飾り方からではなく、2文に何を置くかの決め方から入ります。
1文目に置く「問いの受け取り方」は、小論文でいう問題提起にあたります。ここでは、問いをそのまま言い直すより、問いの前提を1つ問い直す方が答案が深くなります。「夜10時まで開けるべきか」という問いは、開けるか開けないかの二択に見えますが、「開ける」が貸し出しの窓口のことか閲覧席まで含むのか、「夜」が誰にとっての夜なのかで、答えの中身が変わります。その分かれ目を1文目で言葉にすると、2文目の立場は「賛成」の一語ではなく、何に賛成するのかがはっきりした立場になります。そして2文目では、賛成か反対か、どちらかに明確に立ちます。小論文には道徳的な正解の立場は無く、理由と反論への応答の筋が通っていれば、どちらの側に立っても答案として成り立ちます。
文部科学省の令和9年度の実施要項は、小論文などを、自分の考えを筋道立てて組み立てる力や、考えた道筋を言葉で的確に表す力を見るために使うことが望ましい、としています。書き出しの2文は、その組み立ての入り口が答案の上で最初に見える所です。
図1のように、1文目の問題提起と2文目の立場が序論の芯になり、本論の理由・反論・再反論は2文目の立場へ向かって並びます。最後の段は、2文目と同じ立場で閉じます。

なぜ1文ではなく2文なのか。問いの受け取り方と立場を1文に詰めると、「〜という問いは〜であるから、私は〜に賛成である」と、主語と述語の遠い長い文になり、途中でねじれやすくなります。逆に3文目まで書き出しを延ばすと、3文目はたいてい理由の説明に入り、本論で言うことの先取りになります。2文という区切りは、役目の違う2つの文を分けて置くための目安です。もっとも、これは手段としての型で、目的は論の筋が通ることにあります。問題の注意書きに「結論を最初に書くこと」といった指示があるなら、その指示に合わせて2文の順を組み替えます。
課題文型とテーマ型では、1文目に置く物が変わります。課題文型の答案は、読み手が課題文を知っている前提で読まれるので、1文目に筆者の言い分を自分の言葉で縮めて置くと、どの主張に応じる答案かがすぐ伝わります。テーマ型は一行の題しか無いので、1文目で題の語のどこに論点があるかを示します。
| 問いの型 | 問題用紙にある物 | 1文目に置く物 | 2文目に置く物 | 1文目で崩れやすい所 |
|---|---|---|---|---|
| 課題文型 | 筆者の文章と設問 | 筆者の言い分を自分の言葉で縮めた一文 | 筆者の言い分への賛否(一部に賛成も含む) | 課題文の文をそのまま写して長くなる |
| テーマ型 | 一行の題と設問 | 題の語の意味や二択の分け方を問い直す一文 | 題への賛否 | 題と関係の薄い世の中の話から入る |
白い1行目から書き出しの2文を作る5つの手順
試験の始まりから書き出しの2文が決まるまでを、5つの手順に分けます。手順1から4までは、たとえば合わせて8分ほどを、塾で練習に使う目安にしています。手順5は答案を書き終えた後に、2分ほど使います。図2のように、立場を決める手順2が前の方にあるのが、この並べ方の要です。8分ほどで手順4まで進めば、10分たつ前に、少なくとも下書き用紙の上には書き出しの2文がそろいます。

- 設問の文末と問いの語に線を引く(問題用紙・2分ほど)。「論じなさい」「あなたの考えを述べなさい」のような文末に線を引き、次に問いの中で答えを左右する語に線を引きます。図書館の問いなら、「市の図書館」「夜10時まで」「開けるべきか」の3か所です。線を引くのは、1文目に使う語をここで先に拾っておくためです。
- 立場を一語で書く(下書き用紙・2分ほど)。「賛成」か「反対」かを、下書き用紙の左上に一語で書きます。決めきれないときは、賛成の理由と反対の理由を1つずつ書き、出てきそうな反論に筋の通った応答を返しやすい側を選びます。世間で正しそうに見える側を選ぶ必要はありません。この一語が無いまま答案用紙に向かうと、1行目はなかなか埋まりません。
- 問いの前提を1つ疑う(下書き用紙・2分ほど)。手順1で線を引いた語を見直し、意味が二通りに取れる語か、二択の外にある道を1つ見つけて、下書き用紙に1行で書きます。図書館の問いなら、「「開ける」は貸し出しの窓口か、閲覧席までか」と書けば足ります。気をつけたいのは、疑った結果、問いを別の問いに取り替えないことです。「図書館より本屋を増やすべきだ」と書き始めると、夜の開館の是非に答えない答案になります。疑うのは、元の問いに答えるための前提です。
- 仮の2文を書く(下書き用紙・2分ほど)。1文目は手順1で拾った語と手順3の1行から、2文目は手順2の一語から作ります。2文目には、問いの語を使って立場を書きます(「夜10時まで開けることに賛成する」)。長さは、たとえば800字の答案なら、2文で100字前後、1文は長くても80字ほどまでを練習の目安にしています。問いの受け取り方を言う1文目は長くなりやすく、立場を言う2文目は短く済みます。1文が80字を超えるなら、理由が混ざっていないかを見ます。この2文が下書き用紙にそろったら、本論の構成メモに進みます。メモは語と矢印で足ります。
- 答案を書き終えた後、最初の2文を読み直す(答案用紙・2分ほど)。最後の段まで書いたら、もう一度1行目に戻り、最初の2文と最後の段を並べて読みます。書いているうちに理由の重みが変わり、2文目の立場と最後の段の立場がずれてくることがあるからです。本番で書き直すのは、同じ行の中で語を入れ替えられる範囲までと決めておくと、時間を失いません。鉛筆で書くのか、消して直してよいのかは、その試験の注意書きで確かめておきます。
手順5で読み直す所は、次の4つです。
| 読み直す所 | 照らす相手 | ずれていたときの直し方 |
|---|---|---|
| 1文目の問いの語 | 手順1で設問に引いた線 | 設問の語に戻して書き直す |
| 1文目で疑った前提 | 本論の理由 | 本論で一度も使わなかった前提なら、1文目から外す |
| 2文目の立場 | 最後の段の立場 | 本論の向きに合わせて、立場の語をそろえる |
| 2文の長さ | 1文80字ほどまで(目安) | 理由の部分を本論へ移す |
練習のときは、手順5をもう一段深くします。本論まで書き終えた答案を前に、最初の2文だけを別の紙に3通り書き直し、本論といちばんよくかみ合う物を選びます。書き出しは答案の最初にありますが、何を書く答案だったのかがはっきりするのは、書き終えた後だからです。3通りのうち1つは、1文目で別の語の前提を疑う形にしてみると、自分がどの語に目を留める癖を持っているかが見えてきます。これを何本か続けておくと、本番の手順3で、どの語を疑うかの見当がつけやすくなります。
図書館の書き出しを直す前と直した後
市の図書館を夜10時まで開けるべきか、という問いで、賛成の立場から書いた書き出しを2組直します。どちらも、直す前の書き出しには立場の語がまだ出てきません。
直す前(1)
近年、私たちの暮らしは大きく変わり、働き方や学び方も多様になっている。そうした変化の中で、公共の施設のあり方も見直しを迫られている。図書館もその一つである。そこで私は、市の図書館を夜10時まで開けるべきかについて考えてみたい。
どこが弱いか。4文を使って、立場がまだ出ていません。最初の3文は、「図書館」を「公民館」や「市民プール」に入れ替えても、そのまま通じます。入れ替えても通じる文は、この問いに固有の受け取り方を何も言っていません。最後の文も「考えてみたい」という宣言で、賛成か反対かは読み手に預けたままです。
直した後(1)
この問いは開館時間の長さを問う形をしているが、問われているのは、昼のあいだ図書館に来られない人にとって、市の図書館が使える場所であり続けるかどうかである。私は、市の図書館を夜10時まで開けることに賛成する。
直した後は2文です。1文目で、問いを「時間の長さ」から「誰が使えるか」へと受け取り直し、2文目で問いの語をそのまま使って立場を言い切っています。本論は、昼に来られない人とは誰か、その人にとって夜の図書館が何の代わりになるのか、という理由から書き始められます。「近年」で始まる一般論は消えましたが、暮らしの変化という中身は、本論で具体的な人の姿として書けば生きてきます。
直す前(2)
図書館とは、本や雑誌などの資料を集めて保存し、人々が読んだり借りたりできるようにする施設である。市の図書館は、その役目を地域で担っている。本稿では、この図書館を夜10時まで開けることの是非について述べる。
どこが弱いか。意味を書いた語が「図書館」です。図書館が何をする所かは、この問いで誰も争っていません。争いになるのは「開ける」が何を開けることなのかの方で、そこには触れていません。3文目も宣言で、立場がありません。
直した後(2)
夜10時まで「開ける」といっても、貸し出しの窓口を開けるのか、閲覧席や学習の机まで使えるようにするのかで、必要な人手も、来る人の顔ぶれも変わる。私は、貸し出しの窓口と閲覧席を夜10時まで開けることに賛成する。
直した後は、意味を問い直す語を「開ける」に移しました。言葉の意味から入る点は直す前と同じですが、選んだ語が答えを左右する語なので、1文目がそのまま問題提起になっています。2文目の立場も「何を開けることに賛成か」まで決まり、本論で反論(夜の人手が足りない、帰り道が暗い)に答える場所がはっきりします。
避けたい3つの始め方と、問いの前提を疑う始め方の違い
図3のように、避けたい始め方は3つあり、それぞれに直す向きがあります。どれも、書いている本人には「書き出しらしく」見えるので、手癖になりやすい始め方です。

1つ目は、「私は〜について考える」と宣言だけで1行目を埋めてしまう始め方です。立場が決まらないまま書き始めると、とりあえず宣言の文を置きたくなります。こう変えます。宣言の文を消して、2文目に「賛成する」「反対する」と立場の語を書きます。消しても答案の中身が何も減らない文は、書き出しの役目をしていません。
2つ目は、背景の一般論で何行も使ってしまう始め方です。「現代社会では」で始まる文は、どの問いにも使える安心感があり、行も埋まります。こう変えます。1文目を、手順1で線を引いた問いの語から書き始めます。施設の名前や話題を入れ替えても通じる文が続いたら、それは問いの外の文だと見て削ります。
3つ目は、辞書の意味を丸写ししてしまう始め方です。言葉の定義から入ると論文らしく見えますが、誰も争っていない語の意味を書いても、問いへの答えは一歩も進みません。こう変えます。問いの語のうち、意味の取り方で賛否が動く語を選び、その意味を問い直します。
辞書の丸写しと、問いの前提を疑う問題提起は、どちらも言葉の意味に触れるので混ざりやすいところです。丸写しは意味を1つに決めて終わり、前提を疑う問題提起は、意味が二通り以上に分かれることを示して、そのどちらで答えるかを決めます。見分けるための問いは「その意味の違いで、賛成か反対かが変わるか」です。図書館の問いでいえば、「図書館」の意味をどう書いても賛否は動きませんが、「開ける」が窓口のことか閲覧席までかで、要る人手の重さも、出てくる反論の中身も変わります。賛否が動く語を選んだとき、1文目は飾りではなく問題提起として働きます。
よくある質問
小論文の書き始めを「私は賛成である」の一文にしてもよいですか
してもかまいません。立場を1文目に置く書き方もあり、その場合は2文目で、誰の側から見た賛成なのか、どの意味での賛成なのかを示します。図書館の問いなら、立場の次に「ここで考えたいのは、家で机に向かえない高校生にとっての夜の図書館である」と受け取り方を置けば、2文の役目は入れ替わっただけで、そろっています。立場が先か受け取り方が先かより、2文の中に両方があるかを見てください。
高校生の小論文の書き出しで、問いの文をそのまま写してもよいですか
問いの語を使うのはよいのですが、問いを1文まるごと写すだけでは、どう受け取ったかが伝わりません。よく見るのは、問いを写した1文と「この問いについて考える」という1文で、2文を使い切ってしまう形です。写すなら、写した語のうち自分が目を留めた語を1つ選び、その前提を問い直す文に作り替えます。問いの文を写した分だけ、立場を言う場所が後ろへずれると考えておくと、写しすぎを防げます。
小論文のはじめの段落は、最初の2文のあとに何を書けばよいですか
2文で終えて、すぐ本論に入ってもかまいません。指定の長い問いで序論に余裕があるなら、本論で何をどの順に述べるかを1文で予告する書き方もあります(「以下、夜に図書館を使う人の側と、運営する側の両方から理由を述べる」)。ただし、予告の文で理由の中身まで言い始めたら、その部分は本論へ移します。はじめの段落をどれだけの長さにするかは、指定の長さと設問の数によって変わります。
個別指導で確かめること
教室で一緒に下書きを見るときは、答案の1行目より先に、下書き用紙の左上を見ます。立場の一語があるか、疑った前提の1行があるか。そこが空いていれば、文の言い回しの直しには入らず、手順2まで戻って立場を決めるところから始めます。
書き終えた答案では、最初の2文と最後の段を声に出して並べて読んでもらい、立場の語がずれていないかを本人の口で確かめてもらいます。ずれていたら、どちらの立場がその答案の本論に合っているかを決め直し、1文目の問いの語までさかのぼって組み立て直します。
まとめ
冒頭の、1行目が白いままの机に戻ります。あの下書き用紙には「図書館」「夜」「勉強」の3語が並んでいましたが、どの語も、問いのどこに論点があるのかも、どちらに立つのかも語っていませんでした。単語をいくつ書き足しても、最初の2文はそこからは生まれません。
市の図書館の問いで白い1行目を埋めるのは、下書き用紙の左上に書いた立場の一語と、「開ける」の意味を疑った1行です。
読んで終わりにするか、ここから変えるか。
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