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展開の公式一覧—乗法公式を中3の形から3次式まで|武蔵野個別指導塾

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x² + 9 と書いて赤ペンが止まった夜に。消えた 6x の出どころを長方形の 2 枚で確かめれば、乗法公式 4 つも 3 次の展開も分配法則から自分で作れます。

範囲 呼び名 展開の公式
中3 和の形 (x + a)(x + b) = x² + (a + b)x + ab
中3 和の平方 (a + b)² = a² + 2ab + b²
中3 差の平方 (a − b)² = a² − 2ab + b²
中3 和と差の積 (a + b)(a − b) = a² − b²
数学Ⅰ たすき掛けの形 (ax + b)(cx + d) = acx² + (ad + bc)x + bd
数学Ⅰ 3 項の平方 (a + b + c)² = a² + b² + c² + 2ab + 2bc + 2ca
数学Ⅱ 和の立方 (a + b)³ = a³ + 3a²b + 3ab² + b³
数学Ⅱ 差の立方 (a − b)³ = a³ − 3a²b + 3ab² − b³
数学Ⅱ 3 乗の和を作る積 (a + b)(a² − ab + b²) = a³ + b³
数学Ⅱ 3 乗の差を作る積 (a − b)(a² + ab + b²) = a³ − b³

a、b、c、d、x は数でも式でもかまいません。a に 3x を入れても、b に -2y を入れても、等号はそのまま成り立ちます。すべての出発点は分配法則 (a + b)(c + d) = ac + ad + bc + bd の 1 本です。

よくあるのは、学校のワークの丸つけをしている夜の場面です。解答の冊子には (x + 3)² = x² + 6x + 9 とあり、自分のノートには x² + 9 と書いてある。赤ペンで 6x を書き足しても、その 6x がどこから来たのかは説明できません。次の問題でも同じところで止まりそうで、ペンを置いて「展開 公式」と検索します。いま要るのは正しい式をもう一度見ることではなく、6x の出どころです。

公式の一覧

上の表の呼び名は、ここで区別するためのものです。教科書によって順番も呼び方も違うので、名前を暗記する必要はありません。身につけたいのは、左辺を見た瞬間に型を言い当てる目です。次の表は、見た目の手がかりと、数を入れた実例を並べたものです。

左辺の見た目 使う型 実例
x の係数が 1 で、後ろの数が違う 2 つのかっこ 和の形 (x + 2)(x + 3) = x² + 5x + 6
同じ 2 項を足して 2 乗 和の平方 (x + 4)² = x² + 8x + 16
同じ 2 項を引いて 2 乗 差の平方 (x − 4)² = x² − 8x + 16
同じ 2 項で符号だけが違う 2 つのかっこ 和と差の積 (x + 6)(x − 6) = x² − 36
x の係数が 1 でない 2 つのかっこ たすき掛けの形 (2x + 1)(3x + 4) = 6x² + 11x + 4
3 項を丸ごと 2 乗 3 項の平方 (a + b + 1)² = a² + b² + 1 + 2ab + 2b + 2a
2 項を丸ごと 3 乗 和や差の立方 (x + 2)³ = x³ + 6x² + 12x + 8
2 項のかっこと 3 項のかっこの積 3 乗の和や差を作る積 (x − 1)(x² + x + 1) = x³ − 1

文字には項をまるごと入れます。(2x + 5y)² なら a が 2x で b が 5y、(x − 7)(x + 2) なら和の形の a が -7 で b が 2 です。引き算の項は「負の数を足している」と読むと、型の数を増やさずに済みます。

学年でいえば、この表の上の 4 行が中3、次の 2 行が数学Ⅰ、残りの 2 行が数学Ⅱです。ただ、難しさが 3 段階あるわけではありません。どの行も、図1の切り分けをくり返しているだけです。

図1 縦 a + b、横 c + d の長方形を切り分けた 4 枚の面積

図1のように、縦 a + b、横 c + d の長方形を切ると 4 枚に分かれます。全体を一度に数えれば (a + b)(c + d)、4 枚を別々に数えて足せば ac + ad + bc + bd です。同じ面積を 2 通りに数えただけなので、等号が成り立ちます。

枚数はかっこの中の項の数で決まります。2 項と 2 項なら 2 × 2 = 4 枚、2 項と 3 項なら 6 枚、3 項と 3 項なら 9 枚です。答えの項がそれより少ないときは、同じ種類がまとまったか、打ち消し合って消えたかのどちらかです。(x + 6)(x − 6) の答えが 2 項しかないのは、6x と -6x の 2 枚が消えたからです。枚数を数える癖がつくと、項の足りない答えを書いた瞬間に手が止まります。

なぜこの形になるのか

乗法公式は新しい規則ではありません。分配法則を毎回書く手間を畳んだ省略形です。畳む前の姿に開いてみれば、どの係数にも理由が見えます。

和の形は 4 枚をそのまま書きます。(x + a)(x + b) = x × x + x × b + a × x + a × b です。真ん中の 2 枚はどちらも x を持つのでまとまり、x の係数が a + b になります。残りの 1 枚が定数項の ab です。「足して x の係数、かけて定数項」という手順の理由はこれだけです。たすき掛けの形も同じで、(ax + b)(cx + d) の 4 枚のうち ax × d と b × cx がまとまって (ad + bc)x になります。

和の平方は、2 つのかっこを同じにしたものです。(a + b)² = (a + b)(a + b) = a × a + a × b + b × a + b × b = a² + ab + ab + b² となり、ab の長方形が 2 枚できます。2ab の 2 は「同じ長方形が 2 枚ある」という意味です。丸つけで消えていた 6x の正体もここにあります。(x + 3)² なら x × 3 の長方形が 2 枚で、合わせて 6x です。

差の平方は計算し直す必要がありません。a − b を a + (-b) と読み、和の平方の b に -b を入れます。2ab は 2 × a × (-b) で -2ab に、b² は (-b)² で正の b² になります。マイナスになるのは真ん中の項だけ、という形はここから来ています。

和と差の積では 4 枚のうち 2 枚が消えます。(a + b)(a − b) = a² − ab + ab − b² で、-ab と ab が打ち消し合うからです。図2は a が b より大きい正の数の場合を面積で見たものです。1 辺 a の正方形の角から 1 辺 b の正方形を切り取ると、残りの面積は a² − b² です。オレンジ色の部分を切り離して 90 度回し、右へ移すと、縦 a − b、横 a + b の長方形に変わります。動かしただけなので面積は同じです。a や b が負の数でも、文字の計算のほうはそのまま成り立ちます。

図2 正方形の角を切り取り、残りを移して長方形に直す

3 項の平方は 3 × 3 = 9 枚です。a²、b²、c² が 1 枚ずつ、ab、bc、ca が 2 枚ずつで、1 + 1 + 1 + 2 + 2 + 2 = 9 と枚数がそろいます。

3 次の形は、2 次の答えにもう 1 つかっこをかけて作ります。(a + b)³ = (a² + 2ab + b²)(a + b) = a³ + a²b + 2a²b + 2ab² + ab² + b³ = a³ + 3a²b + 3ab² + b³ です。係数の 1、3、3、1 は図3の立方体で数えられます。1 辺 a + b の立方体を縦、横、高さの 3 方向に切ると 8 個に分かれ、a³ が 1 個、a²b が 3 個、ab² が 3 個、b³ が 1 個です。a³ は組み上げた立方体の奥に隠れています。1 + 3 + 3 + 1 = 8 で個数も合います。(a − b)³ は b を -b に置き換えるだけで、b が奇数回入る項にマイナスがつき、符号が交互に並びます。

図3 1 辺 a + b の立方体を切った 8 個の塊の種類と個数

最後の 2 つは、消えることが目的の公式です。(a + b)(a² − ab + b²) を分配すると a³ − a²b + ab² + a²b − ab² + b³ となり、途中の 4 項が 2 組ずつ消えて a³ + b³ だけが残ります。2 つ目のかっこの真ん中にある -ab は、この消え方を起こすための符号です。差のほうも (a − b)(a² + ab + b²) = a³ + a²b + ab² − a²b − ab² − b³ で、同じように途中が消えます。

同じ等式を右から左へ読むと因数分解になります。(x + 2)(x + 3) = x² + 5x + 6 は、展開としては左から右へ、因数分解としては右から左へ使う 1 本の式です。ただ、2 つの作業の性格は違います。展開は手順どおり進めれば必ず終わりますが、因数分解は足して 5、かけて 6 の組を探さなければなりません。だから因数分解の答えを確かめるときは、展開して元の式に戻るかを見ます。

例題で使い方を確かめる

型を決める、項をかたまりで読む、符号を最後に確かめる。4 問とも、この順に進めます。各問の終わりの検算は x = 2 を入れて両辺を比べるもので、理由は後の節で触れます。

例題 1 (x + 5)(x − 3) を展開してください

  1. 型を見分けます。x の係数がどちらも 1 で後ろの数が違うので、和の形です。先に型を決めると、4 枚を全部書かずに済みます。
  2. 後ろの数を符号ごと読み取ります。a = 5、b = -3 です。マイナスを数の一部として持てば、引き算を別扱いしなくて済みます。
  3. 和と積を出します。a + b = 2、ab = -15 です。x の係数が和、定数項が積というのが公式の中身だからです。
  4. 並べて x² + 2x − 15 とし、x = 2 で確かめます。左辺は 7 × (-1) = -7、右辺は 4 + 4 − 15 = -7 で一致します。

答え: x² + 2x − 15

例題 2 (3x − 2y)² を展開してください

  1. 型を見分けます。同じ 2 項を引いて 2 乗しているので、差の平方です。
  2. a = 3x、b = 2y と読みます。係数と文字を切り離すと、3 を 2 乗し忘れるからです。
  3. 3 つの項を別々に計算します。a² = 9x²、2ab = 2 × 3x × 2y = 12xy、b² = 4y² です。符号を後回しにすると、数の計算に集中できます。
  4. 符号をつけて並べます。差の平方でマイナスになるのは真ん中の項だけなので、9x² − 12xy + 4y² です。
  5. x = 2、y = 1 で確かめます。左辺は (6 − 2)² = 16、右辺は 36 − 24 + 4 = 16 で一致します。

答え: 9x² − 12xy + 4y²

例題 3 (x + 1)(x + 2)(x + 3)(x + 4) を展開してください

  1. 左から順に開かず、組を選びます。かけ算は順番を入れ替えても結果が変わらないので、計算が楽になる順に進めてかまいません。
  2. 後ろの数の和が等しい組を作ります。1 と 4、2 と 3 はどちらも和が 5 です。組ごとに開くと同じ x² + 5x が現れるからです。
  3. 組ごとに和の形で展開します。(x + 1)(x + 4) = x² + 5x + 4、(x + 2)(x + 3) = x² + 5x + 6 です。
  4. x² + 5x を t と置きます。長い式を 1 文字にすれば、(t + 4)(t + 6) = t² + 10t + 24 と和の形がもう一度使えます。
  5. t を戻します。t² = (x² + 5x)² = x⁴ + 10x³ + 25x²、10t = 10x² + 50x です。置いた文字は答えに残せないので、ここで和の平方を使って開きます。
  6. x² の項をまとめます。25x² + 10x² = 35x² です。
  7. x = 2 で確かめます。左辺は 3 × 4 × 5 × 6 = 360、右辺は 16 + 80 + 140 + 100 + 24 = 360 で一致します。

答え: x⁴ + 10x³ + 35x² + 50x + 24

例題 4 (2x − 1)³ を展開してください

  1. 型を見分けます。2 項を引いて 3 乗しているので、差の立方です。a = 2x、b = 1 と読みます。
  2. 4 つの項の大きさを先に出します。a³ = 8x³、3a²b = 3 × 4x² × 1 = 12x²、3ab² = 3 × 2x × 1 = 6x、b³ = 1 です。ここで 2x の 2 乗と 3 乗を間違えると、後は全部ずれます。
  3. 符号を交互につけます。b が奇数回入る 2 番目と 4 番目の項がマイナスです。-1 を奇数回かけると負のままだからです。
  4. 並べると 8x³ − 12x² + 6x − 1 です。
  5. x = 2 で確かめます。左辺は 3³ = 27、右辺は 64 − 48 + 12 − 1 = 27 で一致します。

答え: 8x³ − 12x² + 6x − 1

まちがえやすいところ

2 乗をそれぞれの項に配ってしまう

数で試せば一目でわかります。図4は (2 + 3)² を 5 × 5 のマスにしたものです。全部で 25 個あるのに、2² + 3² では赤の 4 個と緑の 9 個で 13 個にしかなりません。足りない 12 個がオレンジ色の 2 枚で、2 × 2 × 3 = 12 です。これが 2ab の 12 です。

図4 5 × 5 のマスで見る 2 乗の中身と足りない 12 個

係数を 2 乗し忘れる

3 次の符号をすべてマイナスにする

覚え方と忘れたときの戻り方

忘れたら、公式を探すより先に長方形を描きます。かっこの項の数だけ縦と横に切り、1 枚ずつ積を書き、同じ種類をまとめる。これで 2 次の形は全部戻せます。よく使われる唱え方に「前の 2 乗、前と後ろの積の 2 倍、後ろの 2 乗」がありますが、唱え方だけを覚えると、和と差の積で同じ調子のまま 2 倍の項を書いてしまいます。

3 次は (a + b)² に (a + b) をかけ直せば戻れます。係数だけなら、1、2、1 の隣どうしを足すと 3 と 3 が出て、両端の 1 をつけて 1、3、3、1 です。3 乗の和と差を作る積は、2 つ目のかっこの真ん中の符号が 1 つ目のかっこと逆で、b² はいつもプラスです。途中が消える形を思い出せば、この符号は自分で決められます。

検算には x = 2 を使います。x = 1 だと x² も x も 1 になり、見分けがつかないからです。(x + 1)(x + 2) の和と積を入れ替えて x² + 2x + 3 と書いた答えは、x = 1 なら両辺とも 6 で通ってしまいます。x = 2 なら左辺は 12、右辺は 11 で見抜けます。数が一致しても正解の保証にはなりませんが、一致しなければ必ずどこかが誤りです。

お子さまの丸つけを横で見ているなら、x² + 9 を指して「5 × 5 のマスはいくつ」と聞いてみてください。公式を言い直すより、自分で足りない個数に気づくほうが手に残ります。

練習問題

次の式を展開してください。練習 2 は、符号が同じ項をまず 1 つのかたまりと見て考えます。

  1. (4x + 3y)(4x − 3y)
  2. (x + y + 3)(x − y + 3)
  3. (x + 2)(x² − 2x + 4)

答えと解説

練習 1 の答えは 16x² − 9y² です。同じ 2 項で符号だけが違うので和と差の積で、a = 4x、b = 3y と読みます。a² = 16x²、b² = 9y² で、真ん中の 12xy と -12xy は消えます。x = 2、y = 1 では左辺が 11 × 5 = 55、右辺が 64 − 9 = 55 で一致します。

練習 2 の答えは x² + 6x + 9 − y² です。どちらのかっこにも x と +3 があり、y だけ符号が違います。x + 3 を 1 つのかたまりと見て並べ直すと (x + 3 + y)(x + 3 − y) で、和と差の積が使えます。よって (x + 3)² − y² となり、(x + 3)² を和の平方で開きます。x = 2、y = 1 では左辺が 6 × 4 = 24、右辺が 4 + 12 + 9 − 1 = 24 で一致します。

練習 3 の答えは x³ + 8 です。2 項のかっこと 3 項のかっこの積で、a = x、b = 2 と読むと a² − ab + b² が x² − 2x + 4 に当たります。つまり 3 乗の和を作る積で、a³ + b³ = x³ + 2³ です。公式が浮かばなくても 6 枚を書けば x³ − 2x² + 4x + 2x² − 4x + 8 となり、途中が消えて同じ答えに着きます。x = 2 では左辺が 4 × 4 = 16、右辺が 8 + 8 = 16 で一致します。

次に確かめる公式

個別指導では、(3x − 2)² で手が止まる生徒に公式を見せ直すのではなく、(a + b)(c + d) の 4 枚を白紙に描けるところまで戻ります。そこから自分で 2ab を作れるかを確かめて、次の問題へ進みます。

まとめ

公式の表は閉じてかまいません。かっこの項の数だけ切り、同じ種類をまとめ、消えるものを消す。展開でしていることはこれだけで、3 次でも 3 項でも手順は変わりません。ワークの赤字の 6x は、後から書き足すものではなく、(x + 3)² の中に初めからあったものです。x² + 9 の答案に足りなかったのは暗記ではなく、長方形 2 枚です。

読んで終わりにするか、ここから変えるか。

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