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志望理由書は「書く過程」で決まる—下書き・書き直し・読み合わせの型|武蔵野個別指導塾
書き出しで止まったら、材料を集める作業と文章を整える作業を分けてみましょう。下書きの残し方、直す順番、読み合わせで尋ねることを整理し、自分の言葉で志望理由を育てる手順を示します。

志望理由書は「書く過程」で決まる—下書き・書き直し・読み合わせの型
帰宅の途中でも書き出しが決まらない
よくあるのは、通学電車の座席でスマートフォンのメモを開き、志望理由書の最初の文を入力しては消しているという場面です。「私は将来」と書くと、まだ決まっていないことまで言い切る気がします。「私は以前から」と書くと、最近関心を持った自分に合いません。帰宅後にその話を聞いた保護者も、何を尋ねれば先に進むのか迷ってしまいます。
書けないとき、足りないのは熱意だと思ってしまうかもしれません。しかし、経験を選ぶこと、経験の意味を考えること、読み手に伝わる順番に並べることは、それぞれ別の作業です。最初の文に全部を背負わせると、手が止まる理由が増えてしまいます。
志望理由書の準備では、完成した文章だけでなく、そこへ至る過程を扱います。材料を短く残し、粗い下書きを作り、内容のつながりを確かめてから表現を整える。その順番を決めれば、今日することを小さくできます。総合型選抜に向けて、自分の経験と学びたいことを、自分で説明できる文章へ育てていきましょう。

下書きと推敲を分けると考えが見える
志望理由書を書き始めるときには、まだ自分の中でも志望の理由が十分に整理されていないことがあります。関心を持った出来事は思い浮かんでも、その出来事のどこが気になったのか、なぜ今も調べたいのかは、書いてみて初めて言葉になることがあります。文章にする作業は、考えた結果を写すだけでなく、考えのつながりを確かめる機会にもなります。
そこで、書きかけの段階で「この言い方は立派か」「印象が弱くないか」と一文ずつ評価すると、材料を出す作業が中断されます。出来事を思い出していたはずなのに、敬語の形を直し、その間に書こうとした具体的な行動を忘れることもあります。まず材料を置く時間と、置いた材料を読み直す時間を分けると、何に取り組んでいるのかがはっきりします。
作文指導について、Grahamらは複数の研究をまとめた最良証拠メタ分析を行い、書く過程を重視した指導に作文の改善を報告しています(Grahamら・2024)。6〜12年生の22,838名、148比較をまとめた分析ですが、扱われた作文指導の結果を、日本の総合型選抜の志望理由書や合否へそのまま当てはめることはできません。この知見は、完成文を見せるだけでなく、書く途中の活動を教える意義を考える手掛かりになります。
「過程を重視する」と聞いて、何度も清書することだと捉える必要はありません。文章の見た目を整えても、経験と志望の関係が抜けていれば、読み手にはその間が伝わりません。逆に、まだ言い回しがぎこちなくても、「この経験から、この疑問が生まれた」と筋道が見えれば、次に確かめる箇所が定まります。直す対象を選ぶことが、書き直しの出発点です。
たとえば、探究活動で同じ主題を扱う2つの文献を読み、説明の食い違いに気づいたことを志望理由書の材料にするとします。「調べるうちに関心を持った」だけでは、どの記述が食い違い、なぜ立ち止まったのかが見えません。文献ごとの主張と根拠をメモに戻って確かめ、自分に残った疑問を続けると、学びたいことへ進む道筋を検討できます。集めた材料の多さを示すより、比較から何を考えたのかを具体的にする作業です。
読み合わせにも、途中の考えを見えるようにする役割があります。書き手は、その日の状況や登場人物を知っています。一方、初めて読む人は紙面にある情報だけを頼りにします。「その疑問はどの出来事から生まれましたか」と尋ねられたとき、口頭ではすぐ答えられるのに本文には書いていなかった、と気づくことがあります。その答えが、次の下書きに加える候補になります。
一度に完璧な文章を求める代わりに、下書きには材料が出ているか、書き直しでは関係が伝わるか、読み合わせでは読み手の理解とずれていないかを確かめます。段階ごとに問いを変えると、修正の理由も説明できます。「何となく良くなった」で終わらず、自分の判断で文章を扱えるようにすることが、この進め方の狙いです。
材料集めから読み合わせまでを小さく区切る
最初に、志望大学の最新の募集要項で確かめることを出発点にしてください。そのうえで、実際に書く問いを手元に置きます。問いの言葉を囲み、「経験を尋ねているのか」「学びたいことを尋ねているのか」「両者の関係を説明するのか」を自分の言葉でメモします。書きたい話を先に決めると、問われたことから離れてしまうためです。
ここからの時間の区切りは、机に向かうときの目安として使ってください。途中で足りなくなったら、続きに何を書くかを残して次へ回します。長く座ることより、作業をどこで区切ったかがわかることを優先します。紙でも端末でも構いませんが、下書きを消して上書きするだけの状態は避け、作成した日を付けて保存します。
最初の10分は経験を短く置く
まず10分、文章の形にせず、関心に関わる出来事を箇条書きにします。「いつ・どこで」「自分がしたこと」「そのとき気になったこと」を並べます。活動名だけで止まったら、そこで自分が実際に動いた場面まで小さくしてください。部の活動なら、練習の計画を変えたこと、説明が伝わらず聞き直したことなども材料になります。
教材として使うのは、自分の活動メモや探究のノートです。記録を開き、当時書いた言葉と、今振り返って考えた言葉を分けて写します。今の考えを当時から持っていたように書かないためです。記憶が曖昧な箇所には印を付け、確かめられる記録を探す欄を作ります。空欄が残っても、想像で埋めずに先へ進めます。
自分で確かめる問いは「他の人の行動と、自分の行動が分かれているか」です。仲間全体の成果を書いたなら、自分の役割を隣に添えます。また、「印象に残った」だけのメモには、何を見て、何を尋ねたのかを付け足します。活動の数を増やすより、説明に使える場面を見つける時間にします。
もうひとつ、自分が見たことと、そこから考えたことを別々に読んでみます。「参加者が質問した」は観察した事実ですが、「全員が困っていた」は自分の受け止めかもしれません。誰について、何を根拠に言えるのかを確かめ、広すぎる表現を小さくします。自分の経験を狭く正確に書くと、その経験から生まれた疑問も説明しやすくなります。記録にない発言を会話の形で再現せず、覚えている範囲の内容として整理することも大事です。
次の15分は経験と疑問をつなぐ
次の15分では、材料から説明しやすい場面を選びます。「出来事」「そこから生まれた疑問」「今後学びたいこと」を別々の欄に書き、矢印でつないでみてください。矢印の間を口頭で説明できなければ、その部分には材料が足りない可能性があります。きれいな接続語を探す前に、何を補うかを考えます。
たとえば、「案内を工夫した」と「人の行動を学びたい」の間には、案内を変えたときにどのような反応を見たのか、その反応の何が疑問だったのかが入ります。ここで使える教材は、自分が読んだ分野の入門的な本や授業の資料です。知っている用語を並べるためではなく、経験から生まれた疑問を説明する言葉を探すために開きます。
本で読んだ説明と、自分が経験した事実は別の欄に残します。「この考え方を知って、自分の疑問はここにあると気づいた」と言えるか、確かめてください。本の表現を使わずに説明してみると、わかったつもりの言葉も見つけられます。説明できない用語は急いで本文に入れず、読む箇所を決めて戻ります。
学ぶ場とのつながりを考えるときは、志望先が公表している学びの内容を読み、関心に関係する箇所を手元のメモに残します。その説明を志望理由へ丸ごと移す前に、「自分のどの疑問を考えるために、この学びが必要なのか」と問い返してください。資料に書かれた内容と、自分が期待していることも分けます。名前の魅力や印象だけで結び付けず、学びたい中身を説明できるようにします。読んだ資料の名前と該当箇所は、後で確かめるための控えとして保存します。
20分で粗い下書きを作る
続く20分は、材料を文章として並べる時間です。書き出しが決まらなければ、説明しやすい経験の段落から始めて構いません。学びたいことを先に書いても構いません。下書きの段階では、書く順番と完成文の順番を分けて考えます。出てこない言葉には印を置き、そこで全体を止めないようにします。
この段階で使う教材は、問いを書き出した紙と、経験を整理したメモです。問いを机の見える位置に置き、段落ごとに何へ答えているかを余白に書きます。「経験の説明」「疑問の説明」「学ぶ目的」のような短い言葉で十分です。同じ役割の段落が続いたらまとめる候補にし、役割が付けられない段落は残す理由を考えます。
書き終わったら、本文から「自分は何を学びたいのか」が伝わる箇所を探してください。見つからなければ、冒頭を飾る前にその内容を足します。経験の紹介だけで終わっていないか、将来の希望だけが並んでいないかも確認します。初稿の日付を付けて保存したら、次に直したい点を短く残し、その日の区切りにできます。
翌日は15分、内容を先に直す
翌日に読み直すときは、前日の修正メモから始めます。最初の15分は表記を脇に置き、経験から疑問へ、疑問から学びたいことへ進めるかを見ます。文の順番を替える、説明を加える、重複を削る作業を先に行います。長い段落を短くしたいときも、必要な関係まで削っていないかを確かめます。
ここでは、段落の内容を余白に一文で要約する方法を使えます。要約だけを続けて読み、話が飛ぶ箇所を探します。また、「そのため」「この経験から」の前後を取り出し、前の内容が本当に後の理由になっているかを見ます。さらに、本文を伏せて志望の理由を声に出し、口頭では説明したのに本文にない内容をメモしてください。
修正前後を比べるときは、変えた段落だけを並べて読みます。追加した文が疑問の説明に役立っているか、削った文に必要な事実が含まれていなかったかを確認してください。「読みやすくなった」という感想だけで終えず、「自分の行動がわかるようになった」のように、変化を言葉にします。文を短くした結果、誰の考えなのか曖昧になったなら、主語を戻します。短さだけを目標にせず、読み手がたどれる関係を残すことを基準にします。
読み合わせは質問を決めて10分
誰かに読んでもらえるときは、10分を目安に、聞きたいことを先に伝えます。「どんなことを学びたい人だと読めましたか」「そう読んだのはどの箇所ですか」「途中で説明が欲しくなったのはどこですか」という問いなら、感想を修正へつなげられます。頼める人がいない日は、音読しながら指で文を追い、主語や指示語が指すものを書き込んでみます。
読み手の答えは、そのまま残します。すぐに弁明したくなっても、まず紙面からどう伝わったかを受け止めてください。その後、必要なら事情を説明し、その説明のどこを本文に足すかを選びます。すべての意見を採用する必要はありません。直した箇所の横に理由を書き、最後に表記と文の長さを点検した版を保存します。

個別指導では修正の判断を共有する
志望理由書の個別指導で扱うのは、赤字を入れた完成文だけではありません。何を書こうとして止まったのか、どの材料を選び、どの意見を採用したのかも確認します。文章だけを見ると、経験が乏しいように見えても、話してみると具体的な行動が出てくることがあります。逆に、整った表現を口頭で説明し直せず、その言葉が本人の考えに合っていないと気づくこともあります。
塾が持つのは、次に確かめる問いと、修正する順番です。初稿では材料と問いの対応を見て、次の版では経験と学びたいことの関係を見ます。最後に一文の長さや表記を整えます。毎回すべての箇所へ指摘を付けるのではなく、今回の修正で何を変えるかを絞ります。本人が作業を終えたときに、どこを見れば達成したと判断できるかも、先に共有します。
たとえば、「志望理由を深めましょう」という指示だけでは、自宅で何をすればよいか定まりません。「この経験で疑問に思った場面を書き足す」「学びたいことと関係しない活動紹介を整理する」と具体的にします。足りないのが経験の説明なのか、分野についての理解なのかで、次に使う時間も資料も違います。書く量を増やすことだけを宿題にはしません。
読み合わせでは、指導する側が読み取った内容を本人へ返します。「この段落からは、工夫した結果に関心があると読みました」と伝え、本人の意図と照らします。本人が「結果より、伝わらなかった理由を知りたい」と答えれば、その違いが修正点になります。指導する側の解釈に合わせるのではなく、意図が紙面に届くよう、言葉と順序を検討します。
表現の候補を出す場合にも、意味の違いを確かめます。「支えたい」と「仕組みを調べたい」では、文章の焦点が変わります。どちらが立派に見えるかで選ばず、今の本人が説明できる内容を選びます。知らない言葉を足して文章を難しくするより、その言葉が指す行動や疑問まで戻ります。採用した表現を本人が言い換えられるかも、確認の手掛かりです。
家庭にお願いしたいのは、お子さまの文章を完成させることではなく、取り組める時間と、経験を思い出せる会話を支えることです。「あのとき何をしたの」と尋ねるときも、保護者が覚えている出来事を答えとして押し込まず、本人の記憶を先に聞きます。保護者の記憶と違ったところは、どちらかを急いで正しいとせず、記録に戻って確かめる候補にします。
文章を見せたくない日には、無理に全文の提出を求めず、「今日は材料集めまで」「次は順番を直す」と作業の段階だけ共有する方法もあります。保護者が完成度を毎晩判断する形になると、家庭での会話が添削の続きになりがちです。読んでほしいのか、時間を確保してほしいのか、お子さまが頼みたい支えを選べるようにしておきます。
進み具合は、修正履歴を短く残すことで共有できます。日付に続けて、「今回扱った箇所」「変えた理由」「次に確かめること」を記入します。「第2段落に自分の行動を追加した。疑問が生まれた経緯を伝えるため。次は学びたい内容とのつながりを確認する」と書けば、本人も家庭も、何が進んだのかを具体的に捉えられます。
家庭への連絡も、この記録を基にします。「順調です」だけで済ませず、本人が説明できるようになった点、まだ調べる点、家庭にお願いしたい支えを分けて伝えます。たとえば「経験の説明は整理できたので、次は読んだ資料を見直します。家庭では作業時間の確保をお願いします」という形です。本文の表現を家族それぞれが別々に直す状態を避け、次の作業を共有します。
修正が進まないときには、同じ課題をそのまま持ち帰らせず、止まっている場所を確認します。記録が見つからないなら材料を探す作業へ、疑問を説明できないなら対話とメモへ、文の順番で迷うなら段落の要約へ戻ります。完成までの道筋を一方向に固定せず、必要な作業へ戻れるようにします。その際も、本人がすでに説明できている部分を示してから、次の課題を決めます。戻る作業をしたことで何が明確になったかも、修正履歴に残します。
下書きから推敲へ進む判断も含め、総合型選抜を専任で指導するのは武蔵野個別指導塾の代表・宮川です。指導の過程では、前の下書きも残し、何を尋ねたときに考えが具体的になったのかをたどります。完成文だけを見て評価するのでは捉えにくい迷いや判断も、次の問いを考える材料になります。本人が修正の理由を話せるかどうかを確かめながら、文章を整えていきます。
志望理由書の書き直しで迷いやすいこと
Q1 下書きが幼い文章でも進めてよいですか
進めて構いません。下書きでは、経験や疑問が読み取れることを先に確かめます。「すごいと思った」と書いたなら、その言葉を難しく言い換える前に、何を見て、どうして驚いたのかを足してください。具体的な内容が入れば、後で表現を選ぶ手掛かりになります。
ただし、粗いまま提出するという意味ではありません。内容を確かめる段階を終えたら、読み手が迷う言葉や長すぎる文を整えます。初めから完成形を求める必要はなく、段階を飛ばさずに進めます。「今日は材料が出た」と判断できれば、次に取り組むことも見えてきます。
Q2 書き直すうちに最初と違う志望理由になってもよいですか
書いて考えるうちに、関心の中心が変わることはあります。まず前の下書きと並べ、どこが、なぜ変わったのかを言葉にしてください。経験を見直して疑問が明確になったのか、調べて学びたいことが具体的になったのかを確認します。その理由を説明できれば、修正の経緯も残せます。
一方、読み手に好まれそうだからという理由だけで、本人が説明できない志望へ移っていないかは点検します。書き直した文章を伏せて話してみて、言葉が借り物に感じられたら、経験のメモへ戻ります。初稿を守ることより、今の自分の考えと文章が合っているかを確かめてください。
Q3 読み手によって違う意見が出たら、誰に合わせますか
意見を人数で決める前に、指摘の種類を分けます。「主語がわからない」は伝わり方の問題です。「こちらの言葉が好き」は好みかもしれません。「別の分野を志望したほうがよい」は、文章の修正とは別に考える内容です。同じ欄に並べず、何を確かめる意見なのかを整理します。
そのうえで、問われていること、経験の事実、本人が伝えたい内容に照らして判断します。採用しない意見も消さず、「この経験との関係が薄くなるため今回は変えない」と理由を残せます。迷いが続く箇所は、読み手がどう受け取ったのかを改めて尋ね、直す必要と直し方を分けて考えます。
次の下書きで変える箇所を決める
今、書き出しで止まっているなら、完成文を目指して画面を見つめる時間を、経験を短く残す時間に替えてみてください。すでに下書きがあるなら、全部を書き換える前に、読み手へ伝わってほしいことを一文で書き、その内容が本文のどこにあるかを探します。次に直す箇所が決まれば、作業を再開できます。
下書きは、迷った跡も含めて保存してください。前の版と比べると、言葉が整っただけでなく、疑問が具体的になったことや、経験の意味を説明できるようになったことにも気づけます。読み合わせで受け取った問いを使い、最後の判断は自分の考えに戻して行います。話し合って残した修正の理由が、次の下書きを動かす確かな手応えになります。
参考文献
Graham et al.(2024)Reading and Writing.6〜12年生の作文指導に関する最良証拠メタ分析。 https://consensus.app/papers/details/f4a17e5ae2125e9ab40d01421e1dff05/
本気になった日が、入塾の日。
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