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総合型選抜で見られているもの—非認知の力は書類からどこまで読めるか|武蔵野個別指導塾
主体性や協調性を伝えるには、性格の言い切りより行動の裏づけが必要です。経験を事実・判断・修正に分け、書類で伝わる範囲を自分で点検する視点が身につきます。

総合型選抜で見られているもの—非認知の力は書類からどこまで読めるか
「主体性があります」の先で手が止まるとき
よくあるのは、塾の面談の席で、志望理由書の「私には主体性があります」という一文を指さしながら、その続きをどう書けばよいか迷うという場面です。活動には参加したし、自分なりに考えて動いた覚えもあります。それでも、何を取り出せば自分の力として伝わるのかが定まりません。隣で見守る保護者も、お子さまの頑張りを知っているだけに、もっと立派に書けるはずだと感じます。
ここで必要なのは、性格を表す言葉を増やすことではありません。読み手が知らない出来事を、判断できる形で渡すことです。「積極的」「粘り強い」「協調性がある」という言葉には、そのように考えた理由が添えられて初めて具体的な意味が生まれます。
ただし、文章に書けたことと、その人の力を余さず測れたことは別です。書類に表れた行動、その行動から考えられる特徴、これから学びたいことを分けると、誇張をせずに伝える道筋が見えてきます。総合型選抜の準備では、この区別を出発点にしてください。

書類に表れた行動と、その人の力は同じではありません
非認知の力という言葉は、ここでは、目標に向かって取り組む姿勢、他者との関わり方、自分の行動を調整する働きなどを考えるために使います。点数に表しやすい知識だけでは捉えきれない側面です。勉強と無関係な能力という意味ではありません。理解が進まないときに方法を変えることも、他者の説明を受けて考え直すことも、学ぶ過程に含まれます。
こうした力を文章から読むとき、読み手が直接見ているのは本人の毎日の姿ではなく、選ばれた出来事と言葉です。「最後まで続けました」という文だけでは、何を続けたのか、難しさはどこにあったのか、自分で決めた部分は何かが残ります。出来事が具体的になるほど、読み手はその場での行動を理解しやすくなりますが、それでも文章は本人の一部分を示すものです。
書類の読み取りと、その後の学業との関係を扱った研究では、非認知の力を読む採点表を作ることはできても、入学後の成績との相関は強くありませんでした(Weaver・2019)。米国の志望理由書320通を対象とした研究であり、この結果だけで日本の総合型選抜の評価方法や個々の受験生の将来を決めることはできません。この知見から準備の際に考えたいのは、「書類で特徴を読み取れること」と「その特徴から将来の成績を言い当てられること」を混同しない姿勢です。
採点表があるというのは、文章のどこを手がかりとして読むかを整理できるということです。それは、その人の内面をそのまま取り出せるという意味ではありません。また、入学後の成績との関係が強くないからといって、書類を書く意味がなくなるわけでもありません。経験を説明し、学びたい内容とのつながりを示す役割と、将来の成績を予測する役割は分けて考えられます。
そのため、「総合型選抜では主体性が何より評価される」「協調性を示せばよい」と一律に決めるのは避けましょう。実際に求められる内容は、志望大学の最新の募集要項で確かめることが出発点です。そのうえで、自分が書く言葉にどのような事実が伴っているかを確かめます。ここで紹介する点検は、自分の説明を明確にするためのものであり、大学共通の採点表ではありません。
たとえば「仲間をまとめました」と書いたとき、本人がしたのは意見を集めることだったのか、意見の違いを整理することだったのか、決まった仕事を確認することだったのかで、伝わる行動は変わります。活動全体の成果と本人の働きも同じではありません。全体がうまく進んだとしても、自分の担当がどこだったかを示す必要があります。反対に、成果が予定どおりでなくても、自分が問題に気づいて対応を変えた過程は説明できます。
ここで「力がある人に見せる」ことを目標にすると、文章に合う出来事を後から探し、都合の悪い部分を消したくなります。まず出来事を確かめ、そこから言える範囲の言葉を選ぶ順番にすると、説明に無理が生じにくくなります。立派な名称を使う前に、何を見て、何を考え、どう動いたかを残す。この順番が、本人の経験と読み手の理解をつなぎます。
経験を事実・判断・修正に分けて確かめる
今日の作業では、経験をたくさん並べるより、覚えている出来事を1つ選んで掘り下げます。手元には、当時のノートや予定の記録、自分が作った資料、書き込みのできる紙を用意してください。使うのは、事実をたどるための材料です。記録が見つからない部分は、思い出した内容と確かめた内容を混ぜずに扱います。
最初の10分は、出来事の範囲を決める時間にします。「部活動を頑張った」という長い期間を一度に扱わず、「相談して進め方を変えたとき」のように、始まりと終わりのある出来事を選びます。何が起きていたか、自分は何を担当していたか、困ったのはどこかを、短い文で書いてください。この段階では主体性などの評価語を使わず、誰かがその場にいたら見聞きできたことを中心にします。
このときの教材は、当時の予定やメモです。予定の記録は出来事の順番を確かめるために、メモは自分が気にしていた点を取り出すために使います。記録を見て初めて思い出したことも、文章の材料になります。ただし、日付がわかっただけで行動の理由まで確定するわけではありません。記録にある事実と、今振り返って考えた理由は別々の欄に置きましょう。
次の10分では、「事実」「そのときの判断」「行動の修正」の欄を作ります。事実の欄には、課題や自分の行動を書きます。判断の欄には、なぜその方法を選んだかを書きます。修正の欄には、やってみて何が起き、どこを変えたかを書きます。修正していなければ、無理に成長の物語を足さず、そのまま記します。変えなかった理由や、今なら確かめたい点が残る場合もあります。
たとえば、共同作業で資料の提出がそろわなかった経験なら、「全員に声をかけた」で止めずに、その先をたどります。作業が進まない理由を聞いたのか、担当の分け方を見直したのか、提出された内容を整理したのか。それぞれ違う行動です。「相手が困っていると思った」と「相手から困っていると聞いた」も分けてください。自分の推測を他者の発言として書かないことが、説明の正確さを支えます。
続く15分は、自分の行動と周囲の行動を分ける時間です。自分が作った資料を開き、どこを自分で作成し、どこで助言を受け、誰と相談して決めたかを書き添えます。完成した資料だけで過程が見えない場合は、残っている下書きを比べます。資料は活動の華やかさを示す飾りではなく、自分が担当したことを確かめる教材として使います。他者の名前など、説明に不要な個人情報は書き込まずに進めてください。
助けを受けた部分があると、自分の力が弱く見えるのではないかと感じるかもしれません。しかし、「相談して教えてもらったこと」と「その後に自分で選んで実行したこと」は並べて書けます。助言を受けた経緯を消すより、どのように理解して使ったかを説明するほうが、自分の判断の位置がはっきりします。すべてを自力で成し遂げた形に整える必要はありません。
ここで5分休み、次の10分で短い説明にまとめます。並べる順番は、置かれていた状況、自分が気づいた課題、選んだ行動、その後の変化です。最後に、今も残る疑問を添えてください。「何をしても成功する人」という結論を目指さず、その出来事について何を考えるようになったかを表します。完成した文章を先に用意して空欄を埋めるのではなく、記録から選んだ材料のつながりを確かめる作業です。
書けたら、最初の点検として、動作を表す言葉に線を引きます。「頑張った」「努力した」ばかりなら、実際に何をしたかへ戻ります。「意見を聞いた」「違いを書き出した」「役割を相談した」なら、読み手が行動を思い描けます。ただし、動詞を具体的に変えるために、していない行動を足してはいけません。記憶が曖昧なら、表現を狭めるか、確かめる作業を先に置きます。
次の点検は、理由のつながりです。「そこで」「そのため」の前後を読み、前の出来事から後の行動を選んだ理由が伝わるかを確かめます。「話し合いが進まなかった。そこで資料を作った」という文では、資料が必要だと考えた理由が抜けているかもしれません。比較する情報がそろっていないと考えたのなら、その判断を足します。理由が思い出せない場合は、今の解釈として区別して記してください。
さらに、主語の点検をします。「私たちは」と書いた箇所を探し、自分がしたことまで伝わっているかを見ます。全体の成果を説明する文は残してかまいませんが、その中に自分の担当が位置づいている必要があります。反対に、自分の行動だけが続いて周囲の働きが消えているなら、相談や分担の経緯を補います。本人の貢献を明確にすることと、他者の貢献を小さく書くことは別です。
最後の点検では、その経験と学びたい内容を結ぶ文を読みます。活動の名称と志望分野の名称が似ているだけでつながったことにせず、経験から生まれた問いを言葉にしてください。たとえば、情報を伝える難しさを感じたなら、相手によって受け取り方が違ったのはなぜか、と問いを置けます。その問いについて今知っていることと、これから学びたいことを分ければ、経験を語るだけで終わらない説明になります。
もう1つ、強みを表す言葉だけを隠して読む点検もできます。「主体性」「協調性」といった言葉を紙で覆い、残りの文章だけで自分の行動が伝わるかを見てください。何も残らないと感じるなら、性格の説明が先に立っています。場面や行動が伝わるなら、評価語を何度も重ねなくても、経験を説明する土台はできています。強みの名前を使うかどうかは、その後に判断できます。
また、同じ出来事を別の書類でも扱う場合には、役割や経緯の説明を照らし合わせます。短く書くために一部を省くことはあっても、担当した範囲や行動の順番が変わっていないかを確かめてください。「提案した」と「決定した」は同じ意味ではありません。表現を言い換えるときほど、元の記録に戻ることが役立ちます。読みやすさを整える途中で、事実まで広げてしまわないための点検です。
翌日は10分だけ、記録を閉じて文章を声に出して読みます。「これはどういうことですか」と自分に問い、別の言葉で説明してみてください。説明が続かない箇所は、本人の理解より表現が先に進んでいる可能性があります。元の記録を開き直し、言える範囲に戻します。この点検で残った疑問を紙の端に書けば、次に調べることや相談することが具体的になります。

個別指導では「どこまで言えるか」を一緒に整理します
書類を読む立場から質問すると、本人にとって当たり前すぎて省かれていた過程が見つかります。塾の面談の席では、「そのとき何が難しかったですか」「ほかにどのような方法を考えましたか」「実際に変えたのはどこですか」と順に確かめます。答えを誘導して望ましい人物像へ近づけるのではなく、本人が経験したことと、そこから考えたことの境目を明らかにするための問いです。
塾が担うのは、本人の話を読み手に伝わる形へ整理し、足りない説明を具体的に返すことです。「もっと主体性を出しましょう」だけでは、生徒はどこを直せばよいかわかりません。「自分から提案した部分と、相談して決まった部分を分けてください」「方法を変える前に気づいたことを書き足してください」と、手を動かせる単位で伝えます。文章の響きより先に、材料と説明のつながりを確認します。
また、本人が挙げた特徴に対して、出来事がどこまで支えているかを見ます。「粘り強い」と書いていても、記されているのが参加した事実だけなら、続けるうえで何が難しく、どう対応したかを尋ねます。逆に、方法を試し直した過程が十分にあるのに、本人が「特別なことはしていない」と切り捨てている場合もあります。そのときは、行動を小さく分けて戻し、どの説明なら本人が納得できるかを確かめます。
書類に記す行動の裏づけをたどる総合型選抜の指導は、武蔵野個別指導塾の代表・宮川が専任で受け持ちます。経験を聞く段階から書き直しの確認まで、前に話した内容とのつながりを追います。完成した一文だけを見るのではなく、何を確かめてその表現を選んだかも指導の材料にします。本人が読み返したときに、自分がしたことと自分が考えたことを説明できる文章へ整えていきます。
一方で、家庭にお願いしたいのは、お子さまの文章の完成役になることではありません。以前使っていたノートを探す、話した内容を本人の了解のもとで思い出す、作業する時間を確保する、といった支え方です。保護者の見ていた姿は振り返りの手がかりになりますが、本人が覚えていることと一致するとは限りません。「あのときはこう見えた」と観察として伝え、本人の気持ちまで決めないことが役立ちます。
たとえば、保護者には「責任感で続けた」と見えていても、本人は「途中でやめると言い出せなかった」と感じていたかもしれません。その違いを消して整った美談にすると、本人が説明しにくい文章になります。まず両方の見方を置き、本人がどこで考え方を変えたのか、何を引き受けたのかを確かめます。家族の評価は参考にしながら、提出する文章の意味は本人が引き受けられる形にします。
進み具合は、文章が長くなったかどうかだけでは捉えません。指導では、取り上げる経験、確かめられた事実、説明が足りない点、次に本人がすることを並べて記録します。「資料の作成担当は整理できた」「方法を変えた理由は次回確認する」のように、できた部分と残る部分を具体的に残します。性格に点数をつけるのではなく、文章を支える説明がどこまでそろったかを見るためです。
家庭への連絡も、この記録に沿って簡潔にします。「今回は共同作業の中での本人の担当を整理しました。次回までに、当時のメモで変更の順番を確かめます。ご家庭では、資料の保管場所を探すお手伝いをお願いします」という形です。本人が取り組む作業と家庭に頼むことが分かれていれば、保護者が心配から文章を書き足す状況を減らせます。本人にも同じ内容を伝え、次回までの作業を自分の言葉で確かめてもらいます。
生徒が質問に答えられないときは、その場で答えを作らせず、確かめる先を決めます。記録を探す必要があるのか、出来事の範囲が広すぎるのか、そもそも自分で判断した場面ではなかったのかで、次の作業は変わります。材料が足りないまま言葉だけを整えることを避け、別の経験を選び直す余地も残します。選ばなかった経験も、本人が自分の取り組みを捉える手がかりとして、手元に保管できます。
書き直す際には、前の文と直した文を残し、変更の理由を短く添えます。「自分だけの成果に読めたので分担を補った」「気持ちを断定していたので実際に聞いた内容に戻した」といった記録です。直した理由がわかれば、次の段落を自分で点検するときにも使えます。塾が修正文を渡して終えるのではなく、本人が表現を選び直せるところまで、確認する範囲を具体化します。
書類の準備で迷いやすい3つの疑問
Q. 目立つ活動がないと、書く材料はありませんか
目立つかどうかを先に判定すると、手元の経験を見落としやすくなります。まずは、何かがうまく進まず、自分で方法を考えた出来事を探してください。活動の名称だけで判断せず、そこで自分が何を見て、何を選び、その後どうなったかをたどります。日常の経験でも、説明する材料が見つかる場合があります。
ただし、小さな出来事を無理に大きな社会的成果へ広げる必要はありません。自分が関わった範囲を具体的に示し、そこから生まれた疑問を確かめます。その経験を提出する書類にどう位置づけるかは、志望大学の最新の募集要項で確かめたうえで考えましょう。出来事を選ぶ前の振り返りと、実際に書く材料の選択は分けて進められます。
Q. 失敗を書くと、力が足りないと思われませんか
失敗という言葉だけで、書くかどうかを決めなくてかまいません。その経験を取り上げることで、何を説明できるかを考えます。うまくいかなかった理由を他者だけに置く文章と、自分が気づいた点や次に変えた行動まで示す文章では、読み手が受け取れる情報が違います。反省の言葉だけを増やさず、実際の対応を確かめてください。
まだ対応できていないことを、解決した形で書く必要もありません。「今はここが課題だと考えている」と整理できる場合もあります。どの経験も成功談へ直すのではなく、その出来事を通じて伝えたいことが明確か、自分の行動を正確に説明できるかを基準に、材料として扱います。
Q. 文章が上手なら、非認知の力も高いと考えてよいですか
読みやすさと、書かれている行動の中身は分けて見ます。整った文章でも、自分が何をしたかが曖昧なことはあります。反対に、表現がぎこちなくても、判断や修正の過程が詳しく残っていることもあります。最初から完成度だけで自分を評価せず、材料を整理する作業と伝え方を直す作業を順に進めてください。
読みやすく直す際には、本人が意味を説明できる言葉を選びます。「この表現は何を指していますか」と聞かれて、自分の経験に戻れるかが点検の目安です。家族や塾から助言を受けた後ほど、書かれた内容を声に出して確かめ、自分の言葉と経験が離れていないかを見直しましょう。
性格の名前より、確かめられる経験を残す
総合型選抜の準備で、最初から自分の力を立派な言葉にまとめる必要はありません。まず出来事を選び、自分が担当したこと、判断したこと、変えたことを分けてください。記録で確かめられる部分と今の解釈を区別すると、読み手に渡せる説明の輪郭がはっきりします。
保護者の方も、お子さまの文章に強みの名称が少ないからといって、急いで足さなくて大丈夫です。「それを選んだのはどうして」と尋ねた先に、書くべき過程が残っているかもしれません。今日取り出した経験を、本人が納得して説明できる形まで確かめてみてください。添削後にも「なぜこう書いたか」が本人の口から語られること。そこに、経験と表現が結びついた証しがあります。
参考文献
Weaver(2019). 米国の志望理由書320通を対象とした、非認知の力の書類評価と入学後の成績に関する研究。 https://consensus.app/papers/details/f12357e3eddc5afc99514f60ed1756db/
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