対応する辺を結ぶ図から、平行線を使った相似の証明、中点連結定理、面積比と体積比まで順に学べます。例題と練習問題で、比の順序と長さ・面積・体積の区別を確かめましょう。
よくあるのは、文化祭の看板を描く放課後の美術室で、小さな下絵を大きく写そうとして「横を2倍にしたら、斜めの線も2倍でよいのかな」と手が止まる場面です。縦と横を別々の倍率で伸ばすと、絵は細長くなったり平たくなったりします。形を変えずに大きさだけを変えるには、どの長さにも共通する倍率が必要です。
この「同じ形」を数学で扱うのが相似です。相似がわかると、直接測れない辺の長さを計算したり、平行線で分かれた線分の比を説明したりできます。一方、長さが2倍でも面積は2倍ではありません。何を比べているかによって、倍率の使い方が変わります。
最初に身につけたいのは、見た目で式を決める前に、対応する頂点を順に確かめる習慣です。図の向きが変わっても、対応を保って辺を選べれば、長さの計算と証明を同じ考え方で進められます。
この単元で身につけること
- 相似と相似比を説明します。形を変えずに拡大・縮小した関係を相似といい、対応する辺の長さの比を相似比といいます。
- 三角形の相似条件を選びます。わかっている辺や角から、どの条件が使えるかを判断します。
- 相似を証明して長さを求めます。等しい角の根拠を示し、対応する辺の比例式につなげます。
- 平行線と線分の比、中点連結定理を使います。辺全体と分けられた部分を区別して読み取ります。
- 面積比・体積比を求めます。相似比をそのまま使わず、面積なら2乗、体積なら3乗にします。
前に学んだ比例式、平行線の同位角・錯角、三角形の合同の証明が土台になります。合同では対応する辺の長さが等しくなりますが、相似では長さが違っても比がそろえばよい点が新しく加わります。多くの教科書では中3で学ぶ内容で、角を使う説明と比を使う計算を結びつける単元です。
基本の考え方
相似比は対応する順序とセットで読む
一方を拡大または縮小して他方と合同にできるとき、2つの図形は相似であるといいます。移動・回転・裏返しで重なる向きにそろえて考えてかまいません。対応する角の大きさはそれぞれ等しく、対応する辺の長さの比はすべて等しくなります。
図1のように、△ABCの辺が3 cm、4 cm、5 cmで、△DEFの対応する辺が4.5 cm、6 cm、7.5 cmなら、どの辺も1.5倍です。相似の記号∽を使って△ABC∽△DEFと書きます。この順序には、AとD、BとE、CとFが対応するという意味があります。

小さい三角形と大きい三角形の相似比は、3:4.5=4:6=5:7.5=2:3です。2:3は実際の長さが2 cmと3 cmという意味ではなく、同じ単位で測った長さの関係です。小から大への倍率は3/2、大から小への倍率は2/3となります。周の長さも対応する辺をすべて足したものなので、同じ2:3になります。
角は長さではないため、1.5倍にはなりません。また、すべての長方形が相似というわけでもありません。角がすべて直角でも、縦と横の比が違えば形は違います。「角が等しいから相似」と判断できる条件は、次の三角形の条件と区別しましょう。
三角形の相似条件は3つ
三角形では、次のいずれか1つを示せば相似であるといえます。すべての辺と角を調べる必要がないため、証明では与えられた情報に合う条件を選びます。
- 3組の辺の比がすべて等しい。
- 2組の辺の比とその間の角がそれぞれ等しい。
- 2組の角がそれぞれ等しい。
2つ目の「その間の角」は省けません。ABとACの比を使うなら、その2辺にはさまれる∠BACを調べます。別の角が等しいだけでは、この条件は使えません。3つ目は、三角形の内角の和が180°なので、2組が等しければ残りの1組も等しくなることとつながっています。
図1では3組の辺の比を使えます。平行線を含む図なら、同位角や錯角から2組の角を探すのが有力です。証明は「わかっている事実」「その根拠」「使った相似条件」「対応順をそろえた結論」の順に書くと、読み手が理由を追えます。
平行線が比をつくる
△ABCの辺AB、AC上にそれぞれD、Eがあり、DE∥BCとします。∥は平行を表す記号です。平行線の同位角から△ADE∽△ABCとなるので、AD:AB=AE:AC=DE:BCです。ここでは、小さい三角形の辺と大きい三角形の辺を比べています。
さらに、AD:DB=AE:ECも成り立ちます。たとえば頂点Aから測った割合がどちらも2/5なら、残りはどちらも3/5です。そのため、分けられた部分どうしの比は2:3となります。2/5と2/3は比べる相手が違うので、同じ式の中で入れ替えてはいけません。
一般に、3本の平行線が2本の直線を切ると、平行線の間にできる線分の比は等しくなります。一方の直線で上の区間:下の区間が2:3なら、もう一方でも2:3です。また、D、Eが辺の内部にあり、AD:DB=AE:ECならDE∥BCという逆の関係も使えます。どの線分を比べたかを図に書き込んで確かめましょう。
例題で解き方を確かめる
例題1 相似比から辺の長さを求める
△ABC∽△DEFで、AとD、BとE、CとFが対応しています。AB=6 cm、DE=9 cm、BC=8 cmのとき、EFを求めましょう。
- 相似の記号の順序から、ABとDE、BCとEFが対応すると読み取ります。図の左右だけで辺を選ぶと、向きが変わった問題で取り違えるためです。
- 相似比はAB:DE=6:9=2:3です。EF=x cmとおくと、同じ順序で8:x=2:3と書けます。
- 比例式の外側の積と内側の積を等しくして、2x=8×3=24、x=12です。大きい方の辺なので8 cmより長いことも確かめます。
答え:EF=12 cmです。
倍率で計算するなら8×3/2=12です。比例式と倍率は別の規則ではなく、同じ対応関係を異なる形で表しています。
例題2 平行線から相似を証明する
図2でDは辺AB上、Eは辺AC上にあり、DE∥BCです。AD=4 cm、AB=10 cm、BC=20 cmのとき、△ADE∽△ABCを証明してDEを求めましょう。

- △ADEと△ABCに注目します。D、EがそれぞれAB、AC上にあるため、∠DAE=∠BACです。これは頂点Aの同じ角を表しています。
- DE∥BCより、同位角が等しいので∠ADE=∠ABCです。これで「2組の角がそれぞれ等しい」という相似条件を満たします。
- したがって△ADE∽△ABCです。A、D、Eに対応する頂点がA、B、Cとなる順序で結論を書きます。
- 対応する辺の比より、AD:AB=DE:BCです。DE=x cmとおくと4:10=x:20なので、10x=4×20=80、x=8となります。
答え:2組の角がそれぞれ等しいので△ADE∽△ABC、DE=8 cmです。
図2では短い赤い線分がDE、長い底辺がBCです。相似比が2:5なので、DEはBCの半分より短くなります。DB=10-4=6 cmも求まりますが、4:6はAD:DBであって、DE:BCではありません。
例題3 中点を結ぶ線分を求める
△ABCで、Mは辺ABの中点、Nは辺ACの中点です。BC=14 cmのとき、MNの長さとBCとの位置関係を答えましょう。
- 中点は辺を等しい長さに分ける点なので、AM:AB=AN:AC=1:2です。「辺の半分」を、頂点Aから辺全体までの割合で表します。
- ∠MAN=∠BACは共通の角です。2組の辺の比とその間の角がそれぞれ等しいので、△AMN∽△ABCといえます。
- 対応する辺の比からMN:BC=1:2となり、MN=14×1/2=7 cmです。また相似より∠AMN=∠ABCで、同位角が等しいためMN∥BCです。
答え:MN=7 cm、MN∥BCです。
この結果が中点連結定理です。「三角形の2辺の中点を結ぶ線分は、残りの辺に平行で、その長さの半分になる」と覚えます。片方の中点だけが与えられていても、そこを通り残りの辺に平行な直線を引けば、相似比が1:2となり、もう一方の辺も中点で分けられます。
例題4 面積と体積の倍率を分ける
相似比が小:大=2:3の2つの三角形があります。小さい方の面積が20 cm²のとき、大きい方の面積を求めましょう。また、相似比が同じ2:3の2つの立体で、小さい方の体積が40 cm³なら、大きい方の体積はいくらでしょうか。
- 面積比は2²:3²=4:9です。三角形の底辺と高さはどちらも3/2倍になり、面積の倍率が3/2×3/2=9/4になるためです。
- 大きい三角形の面積は20×9/4=45 cm²です。20×3/2としないよう、先に面積比を書いておきます。
- 相似な立体の体積比は2³:3³=8:27です。大きい方の体積は40×27/8=135 cm³となります。
答え:大きい三角形の面積は45 cm²、大きい立体の体積は135 cm³です。
一般に、相似比がa:bなら面積比はa²:b²、相似な立体の体積比はa³:b³です。立体の表面積も面積なのでa²:b²になります。体積の公式にある1/3などの共通の数は比では打ち消されますが、長さにかかる倍率は残ります。
つまずきやすいところと直し方
対応する辺の順序を途中で逆にする
誤った書き方は、例題1で「6:9=x:8」とすることです。左は小:大なのに、右は大:小になっています。比の数だけを並べるとこの逆転が起こりやすいため、数を入れる前に辺の名前を書きます。
正しい書き方は「AB:DE=BC:EF、したがって6:9=8:x」です。迷ったらA↔︎D、B↔︎E、C↔︎Fの対応を書き、両端の頂点が対応する辺を選びます。斜めの辺どうし、左側の辺どうし、といった見た目の選び方は使いません。
部分と全体を同じものとして扱う
誤った書き方は、図2で「AD:DB=DE:BCだから4:6=x:20」とすることです。DBは大きい三角形の辺ABの一部分で、△ABCの対応する辺ではありません。小さい三角形と大きい三角形を比べる式に、残りの部分を混ぜています。
正しい書き方は「AD:AB=DE:BCだから4:10=x:20」です。一方、AD:DBを使いたいなら、相手はAE:ECです。AB=AD+DB、AC=AE+ECを書いておくと、全体と部分を分けられます。図の中で頂点から頂点まで指を動かし、式に使った範囲を確認しましょう。
長さの比を面積や体積にそのまま使う
誤った書き方は「相似比が2:3だから面積比も2:3」です。面積では縦方向と横方向の長さが両方変わることを落としています。図3のように、1辺が2 cmと3 cmの正方形を同じ1 cm角に分けると、面積は4個分と9個分になります。

正しい書き方は「長さの比2:3、面積比4:9、体積比8:27」です。逆に面積比が4:9なら、相似比は√4:√9=2:3です。長さは正なので、負の値は使いません。体積比が8:27なら2³=8、3³=27から2:3に戻せます。ただし、面積が4:9という情報だけでは図形が相似とはいえません。相似とわかっている図形に使う規則です。
練習問題
練習1
△ABC∽△DEFです。AB=5 cm、DE=8 cm、AC=7.5 cmのとき、DFを求めましょう。
練習2
△ABCの辺AB、AC上にD、Eがあり、DE∥BCです。AD=3 cm、DB=5 cm、AE=4.5 cmのとき、ECを求めましょう。
練習3
△ABCでM、Nはそれぞれ辺AB、ACの中点です。MN=6 cmのとき、BCとMNの位置関係、BCの長さを答えましょう。
練習4
相似な2つの立体の表面積比が小:大=9:25です。小さい方の体積が54 cm³のとき、大きい方の体積を求めましょう。
答えと解説
練習1:DF=12 cmです。ACとDFが対応するので、5:8=7.5:DFよりDF=7.5×8/5=12です。
練習2:EC=7.5 cmです。部分どうしの比を使い、3:5=4.5:ECよりEC=4.5×5/3=7.5です。全体で確かめるとAB=8 cm、AC=12 cmで、3:8=4.5:12も成り立ちます。
練習3:BC∥MN、BC=12 cmです。中点連結定理よりMNはBCの半分なので、BC=6×2=12です。
練習4:250 cm³です。表面積比から相似比は3:5、体積比は27:125です。54×125/27=250と計算します。
次の単元へのつながりと家庭での確かめ方
相似は、円の中で等しい角を見つけて辺の長さを求める問題や、図形の面積を比べる問題につながります。新しい図形でも、角の等しさから相似を示し、辺の比に進む道筋は共通です。
家庭では5分で、まず方眼紙に縦2マス・横3マスの長方形と、縦4マス・横6マスの長方形を描いてみましょう。対応する辺、周の長さ、面積の比を順に確かめられます。もう1つは、三角形を描いて2辺の中点を取り、中点を結ぶ線と底辺を定規で比べる方法です。測った結果は予想の確認で、定理の証明とは区別します。
個別指導で比の式が作れないときは、比例式の計算だけでなく、対応する頂点の読み取りや、同位角を見つける段階まで戻って確かめます。お子さまと確認するときも、答えの前に「どの辺とどの辺を比べたのか」を聞くと、止まった場所を探せます。
まとめ
図に同じ形の三角形が見えても、見た目だけでは相似の証明になりません。等しい角や辺の比に理由を添え、対応を決めてから式に移すことで、求めた長さを説明できるようになります。
計算が合わないときは、式を最初から解き直す前に、辺の両端の文字と比の順序を図に戻して確かめましょう。面積や体積なら、何方向の長さが変わるかも点検します。相似の式の確かさは、対応する頂点の順序に表れます。





