割合でもとにする量を見失う場面の読み取りの崩れ|武蔵野個別指導塾が薦める学習の仕方

連載「単元別のつまずき研究——その単元で、生徒は実際に何をどう誤るか」全50回の第7回です。学習の仕方の目次を見る

「定価の30%引きだから、定価に0.3をかければいいんだよね」と、生徒が自信ありげに言う。隣で「ちがう、0.7をかけるんだよ」と友達が訂正する。どちらも計算の仕方の話をしているのに、なぜか「もとにする量」の話はどこにも出てこない。こうした場面は、割合の学習で何度も繰り返される。

割合のつまずきは、多くの場合「公式を忘れた」という形では現れません。むしろ、公式は覚えているのに、問題文の中のどの数が「もとにする量」で、どの数が「比べられる量」なのかを見失うところに現れます。そして、その見失い方は、学年が上がるにつれて形を変えながら続いていきます。

今回は、割合の中でも特に「もとにする量」の見失いに焦点を当てます。研究が示すのは、割合の誤りは単なる計算ミスではなく、問題場面の構造をどう読むかという、より根深いところから生まれるという事実です。この記事では、その誤りの具体的な形と、机の前でできる確かめ方を整理します。

要点(結論から)

  • 割合のつまずきの中心は、公式の忘却ではなく、問題文の中の「もとにする量」を正しく選べないことにある。
  • 「もとにする量」を見失うと、かけ算とわり算の向きが逆になり、出てきた答えが現実とかけ離れていても気づかない。
  • この見失いは、割合を習いたての小学生だけでなく、比例の学習を経た中学生や高校生にも、形を変えて残る。

結論——「もとにする量」の見失いは、公式の暗記不足ではなく、場面の読み取りの崩れとして現れる

  • 割合のつまずきの中心は、公式の忘却ではなく、問題文の中の「もとにする量」を正しく選べないことにある。
  • 「もとにする量」を見失うと、かけ算とわり算の向きが逆になり、出てきた答えが現実とかけ離れていても気づかない。
  • この見失いは、割合を習いたての小学生だけでなく、比例の学習を経た中学生や高校生にも、形を変えて残る。
  • 「割合=比べられる量÷もとにする量」という公式を唱えられても、問題場面から「何が基準か」を選べなければ、その公式は使えない。
  • 指導では、公式の反復よりも、問題文の中で「何を基準にしているか」を言葉で言い直す作業を先に置くことが有効である。

理由——なぜ「もとにする量」は見失われるのか

割合の学習は、数値の操作が先に立ってしまう

割合の授業では、まず「比べられる量÷もとにする量=割合」という公式が提示され、そのあとで数値を当てはめる練習が続きます。この順序自体が悪いわけではありません。しかし、練習を重ねるうちに、生徒の注意は「どの数がどれか」ではなく「どちらの数をどちらで割ればいいか」という操作の側面に移りがちです。

たとえば「25人は50人の何%か」という問題では、25÷50という式を立てられれば正解にたどり着きます。ところが、この式を立てるときに「50人が基準で、25人はその一部」という場面の理解が伴っていない生徒が少なくありません。彼らは、問題に出てきた二つの数を、順番や大きさの手がかりだけで組み合わせているにすぎないのです。

このような操作優先の学習は、数値が単純なうちは表面化しません。しかし、問題文が複雑になり、基準となる量が明示されなくなると、とたんに誤りが増えます。割合の研究では、生徒が比例の考え方を過度に適用してしまう傾向が、学年とともに変化することが指摘されています。

Van Dooren W, De Bock D, Hessels A, et al. Not Everything Is Proportional: Effects of Age and Problem Type on Propensities for Overgeneralization. Cognition and Instruction. 2005;23(1):57-86.

この研究は、比例の学習が進むにつれて、比例が使えない場面でも比例の方法を当てはめてしまう誤りが増えることを示しています。割合の学習でも同じことが起こります。公式の操作に慣れるほど、場面の構造を確かめずに「とりあえず割り算」という手順に頼るようになるのです。

「もとにする量」は、問題文の中に明示されないことが多い

割合の問題では、基準となる量が「〜の」「〜に対して」「〜を1とすると」といった言葉で示されることがあります。しかし、日常の言葉では、基準が省略されることのほうが普通です。「先月より20%増えた」と言われたとき、基準は先月の量ですが、その「先月」が問題文の主語になっていないこともあります。

生徒は、文中で目立つ数値や、最後に出てきた数値を基準にしてしまいがちです。たとえば「今年の生徒数は昨年より15%増えて460人でした。昨年の生徒数は何人ですか」という問題では、460人を基準にして0.85をかける、あるいは460人を1.15で割るといった誤りが起きます。ここで問われているのは、460人が「昨年を1としたときの1.15にあたる」という関係の読み取りです。

この読み取りは、単に「もとにする量はどれか」と問いかけるだけでは回復しません。生徒は「もとにする量」という用語を、公式の中のラベルとして覚えているだけで、問題場面の中の基準と結びつけていないからです。割合の推論に関する古典的なレビューでは、割合の問題を解く力は、問題の文脈や提示の仕方によって大きく左右されることが確認されています。

Tourniaire F, Pulos S. Proportional reasoning: A review of the literature. Educational Studies in Mathematics. 1985;16(2):181-204.

つまり、同じ数値関係でも、問題文の書き方や、どの量が先に示されるかによって、生徒の正答率は変わるのです。これは、生徒が数値の関係そのものを理解していないのではなく、場面から基準を再構成する力がまだ育っていないことを示しています。

割合の誤りは、学年が上がっても消えない

割合は小学校で学びますが、そのつまずきは小学校のうちに解消されるとは限りません。中学生になっても、濃度や速さ、割引、確率といった場面で、同じ「基準の見失い」が繰り返されます。高校生になっても、化学の濃度計算や地理の人口密度などで、分母と分子を取り違える誤りは珍しくありません。

この背景には、割合の学習が「公式の適用」として定着してしまい、場面ごとに基準を立て直す習慣が育っていないことがあります。割合の推論に関する研究では、割合の考え方は単一の技能ではなく、複数の下位能力から成り立つことが示唆されています。

Lamon S. Rational Numbers and Proportional Reasoning. Second Handbook of Research on Mathematics Teaching and Learning. 2007:629-667.

この指摘は、割合の指導を「公式を覚えて数値を当てはめる」だけのものにしてはいけないことを示しています。基準を言葉で言い直す力、二つの量の関係を図や表に表す力、出てきた答えが現実的かどうかを判断する力。これらを別々に育てなければ、学年が上がるたびに同じ誤りが再発します。

誤答の例——「もとにする量」を見失ったとき、生徒は何を考えているか

よくある誤答 その子が考えていること 確かめる問いかけ
「定価2000円の3割引きは600円」と答える 「3割=0.3をかければいい」という操作だけが浮かんでいる。基準が定価であることや、600円が値引き額であって売値ではないことが抜けている。 「600円は、何の3割? 定価の3割? それとも売値の3割?」
「昨年より20%増えて480人。昨年は480×0.8=384人」と答える 「増えたから、1から0.2を引いた0.8をかける」という手順を、基準の確認なしに使っている。480人が「増えた後の量」であることを見失っている。 「480人は、昨年の何倍にあたるの? 昨年を1とすると、今年はいくつ?」
「25人は50人の何%か」で「50÷25=2、200%」と答える 「大きい数を小さい数で割る」という、割合以外の場面でよく使う手がかりに頼っている。どちらが基準かという問いが起きていない。 「50人のうちの25人なら、半分より多い? 少ない? 200%って、基準の何倍?」
「食塩水300gに食塩が60g。濃度は300÷60=5%」と答える 「食塩水全体÷食塩」という式を、過去に似た問題で見た記憶から引っ張り出している。濃度が「全体を基準にした食塩の割合」であることを言葉にできない。 「5%って、100gあたり何gの食塩が入っていること? 300gなら何gになる?」
「定員50人のバスに45人乗っている。乗車率は50÷45=1.11…」と答える 「定員」と「乗っている人」のどちらが基準かを確かめず、出てきた数値の意味も考えずに式を立てている。 「乗車率が100%を超えるって、どういうこと? 定員より多く乗っているの?」

机の前で1対1で確かめるときは、次の手順が有効です。

  1. まず、生徒に問題文を音読してもらい、「この問題で、何と何を比べている?」と尋ねます。公式や数値の話はまださせません。
  2. 次に、「どちらが基準? 基準を1とすると、もう一方はいくつ?」と、基準を言葉で言い直させます。このとき、数値ではなく「定価を1とすると、売値は0.7」のように、関係を口に出させます。
  3. そのうえで、「じゃあ、式はどうなる?」と式を立てさせます。式が先に出てきた場合は、その式が「何を1としているか」を逆に説明させます。
  4. 出てきた答えについて、「その数、ありえる?」と現実との照合を促します。たとえば「3割引きなのに600円って、定価2000円の品物としてありえる?」と問います。
  5. 最後に、同じ構造で数値を変えた問題を1問だけ出し、基準の言い直しから式の説明までを一人で通せるか確かめます。

小学生では、まず「〜の何%」という表現の「〜の」が基準を指すことを、日常の言葉で確認することが大切です。「お母さんの身長の80%」と言われたら、基準はお母さんの身長です。この「の」の感覚が育っていないと、公式の「もとにする量」という言葉が空回りします。

中学生では、文字式や方程式を使う場面で、どの量をxと置くかという判断と「もとにする量」の判断が重なります。「昨年の生徒数をx人とする」と決められれば、今年は1.15x人と表せます。この「基準をxにする」という習慣が、割合の見失いを防ぐ土台になります。

高校生では、割合の誤りは、化学や生物、地理、公民などの科目で、単位や指数の形をとって現れます。濃度や密度、増加率、構成比など、分母と分子の関係を言葉で説明できない場合は、小学校の割合に立ち返って「何を1としているか」を確認し直すことが近道です。

よくある誤読——研究結果をどう使ってはいけないか

「比例の誤用が増える」を「割合を教えるな」と読む誤り

先に紹介した研究は、比例の学習が進むにつれて、比例が使えない場面でも比例の方法を当てはめてしまう誤りが増えることを示しています。この結果を「割合や比例を教えると誤りが増えるから、教えないほうがよい」と読むのは誤りです。

Van Dooren W, De Bock D, Hessels A, et al. Not Everything Is Proportional: Effects of Age and Problem Type on Propensities for Overgeneralization. Cognition and Instruction. 2005;23(1):57-86.

この研究が示しているのは、比例の技能が育つこと自体が問題なのではなく、その技能が「使える場面かどうか」の判断と結びつかないまま育つことの危うさです。指導をやめるのではなく、比例が使える場面と使えない場面を、意図的に並べて比べる指導が必要だということです。

「文脈によって正答率が変わる」を「問題文のせい」と読む誤り

割合の推論に関するレビューは、問題の文脈や提示の仕方によって正答率が変わることを示しています。これを「生徒が解けないのは問題文が悪いからだ」と読むのは、指導の責任を手放す読み方です。

Tourniaire F, Pulos S. Proportional reasoning: A review of the literature. Educational Studies in Mathematics. 1985;16(2):181-204.

むしろ、この知見は、指導の中で「同じ数値関係を、異なる文脈で提示する」ことの価値を示しています。文脈が変わると解けなくなるのは、生徒の理解が数値の操作に偏っている証拠です。文脈を変えて練習することで、基準の読み取りそのものを鍛えることができます。

今週やること——「基準を言い直す」を日課にする

  1. 割合の問題を解く前に、必ず「何を1としているか」を口で言わせる。式を書く前に、基準の宣言をさせるだけで、誤りの多くは防げる。
  2. 「3割引き」「20%増」「濃度15%」といった表現を、それぞれ「定価を1とすると0.7」「昨年を1とすると1.2」「全体を1とすると0.15」と言い換える練習を、1日3問だけ行う。
  3. 出てきた答えが現実的かどうかを、必ず一言で確かめる。「3割引きなのに定価より高くなっていないか」「100%を超えていないか」を、生徒自身に問わせる。

この記事で言えないこと

第一に、この記事で述べた「もとにする量の見失い」は、すべての生徒に同じ形で現れるわけではありません。割合の誤りには、基準の読み取り以外にも、小数や分数の計算そのものにつまずく場合、文章の読解に時間がかかる場合、注意の持続が難しい場合など、さまざまな要因が重なります。ここで述べた手順が、すべての生徒にそのまま当てはまるとは限りません。

第二に、紹介した研究は、特定の時期・特定の問題形式で得られた知見です。割合のつまずきが学年とともにどう変化するかについては、研究によって示される傾向はあるものの、個々の生徒の学習歴や指導の受け方によって、現れ方は大きく異なります。この記事の内容を、すべての学年・すべての学校種にそのまま一般化することはできません。

第三に、この記事で提案した「基準を言い直す」という手順は、あくまで指導の入り口です。これだけで割合の理解が完成するわけではなく、その後の反復練習や、異なる文脈での適用、時間を置いた再確認などが必要です。また、生徒によっては、言葉での言い直しよりも、図や数直線を使った表現のほうが理解しやすい場合もあります。指導の際は、生徒の反応を見ながら手順を調整することが欠かせません。

当塾の立場

「基準を言い直す」という作業は、特別な教材がなくても、家庭で十分に取り組めます。問題集の割合の問題を1問解くたびに「何を1としているか」を口に出すだけで、誤りの多くは減らせます。この点は、正直に「塾は要らない」と言える部分です。

そのうえで、塾が担えることがあるとすれば、生徒が「言い直し」を面倒がって省略したとき、その省略をその場で止めて、言葉にさせる役割です。家庭では、つい「答えが合っていればいい」と流してしまいがちな場面でも、1対1の指導では、式を書く前に基準の宣言を求め、省略したら戻って言い直させる、という手順を徹底できます。当塾では、割合の指導の際、最初の数回は「基準は何?」という問いかけを、生徒が自分から言うようになるまで繰り返すことを、指導の型として用いています。

出典

  1. Lamon S. Rational Numbers and Proportional Reasoning. Second Handbook of Research on Mathematics Teaching and Learning. 2007:629-667.
  2. Tourniaire F, Pulos S. Proportional reasoning: A review of the literature. Educational Studies in Mathematics. 1985;16(2):181-204.
  3. Van Dooren W, De Bock D, Hessels A, et al. Not Everything Is Proportional: Effects of Age and Problem Type on Propensities for Overgeneralization. Cognition and Instruction. 2005;23(1):57-86.

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