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自由研究が思いつかない—興味から問いを作る5つの質問|武蔵野個別指導塾

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扇風機の前から動けない午後でも、好きな物に「なぜ」「変えたら」「測れるか」の順で5つ聞けば、テーマは1時間で問いの形に変わります。雑談から拾う手順と、記録の表の書き方まで一緒にたどれます。

思いつかないのは、興味が無いからではありません。興味が、まだ問いの形になっていないだけです。次の5つの質問に、上から順に答えてください。

番号 質問 答えの例
1 この1週間、いちばん長く時間を使った物は何ですか 扇風機の前で寝ていた
2 その中で「なぜ」「いつも同じだ」と思った瞬間はありますか 少し離れると急に風が来なくなる
3 何かを1つ変えたら、結果は変わりそうですか 強さのつまみを弱・中・強に変える
4 その結果は、数で測れますか 風が届くいちばん遠い距離を cm で測る
5 残りの日数で、何回測れますか 1日あれば、3回ずつ測れる

5つ目まで答えが埋まれば、それがテーマです。途中の質問で止まったら、1つ目に戻って別の物を選びます。質問は紙に書いて、答えは声に出して言います。頭の中だけで回すと、2つ目で止まります。

よくあるのは、8月のなかばを過ぎた午後、カーテンを閉めた部屋で扇風機の首振りだけが動いていて、宿題の表の「自由研究」の欄が白いまま、という場面です。何もしたくないので、床に寝転んで風が来るのを待っています。風が来て、首が振れて、風が消えます。また来ます。それを20分くらい見ていると、「なぜ首が向こうを向いたときは全然来ないのだろう」と思います。その「なぜ」が、もう研究の半分です。何もしたくない午後は、実はテーマを拾うのにいちばん向いている時間です。

テーマの選び方

テーマが決まらない人の多くは、「立派なテーマを思いつこう」として止まっています。火山の模型、星の観察、プログラミング。どれも自分の生活から遠いので、手が動きません。順番が逆です。先に「好きな物」「毎日している物」を置いて、そこに質問を5つ当てると、テーマは向こうから出てきます。図1のように、興味は5つの段を通って問いになります。

図1 興味が5つの質問を通って問いになるまでの流れ

1つ目の質問は「時間を使った物」です。「好きな物」と聞くと、答えが見つからない人がいます。好きかどうかは考えなくてよくて、この1週間で長く時間を使った物を、正直に答えます。ゲーム、動画、昼寝、アイス、部活の素振り、麦茶、お風呂、犬の散歩。どれでもテーマになります。ここで「ゲームは研究にならない」と自分で消さないでください。消すのは4つ目の質問の役目です。

2つ目の質問は「なぜ」か「いつも同じ」です。その物の中で、少しでも引っかかった瞬間を探します。「麦茶は氷を入れてもすぐぬるくなる」「ゲームの反応は夜のほうが遅い気がする」「犬は同じ電柱でいつも止まる」。引っかかりが無ければ、その物を1日だけ観察して、気づいたことを3つ書き出します。3つ書けば、1つは「なぜ」の形になっています。

3つ目は「変えられる物」です。研究は、何かを変えて、変わったかどうかを見る作業です。変える物は1つに絞ります。扇風機なら、風の強さか、距離か、首振りの有無のどれか1つです。2つ同時に変えると、どちらのせいかわからなくなり、考察が書けません。「変える物を1つ、そろえる物をその他全部」が、小学生でも中学生でも同じ決まりです。

4つ目は「数で測れるか」です。「楽しいか」「おいしいか」は数になりません。長さ、時間、回数、重さ、温度、個数のどれかに置き換えます。「おいしい」は「何人中何人が選んだか」の回数に、「速い」は秒に、「よく育つ」は cm に変えます。ここで数にならない物は、観察の記録にはなっても、比べる研究にはなりにくいので、1つ目に戻って別の物を選ぶか、測り方を考え直します。

5つ目は「残りの日数で何回測れるか」です。発芽や天気のように毎日見る必要がある物は、残りが3日なら間に合いません。1日で3回ずつ測れる物は、残りが1日でも終わります。日数が足りない物は、来年の候補として書いておいて、今年は別の問いにします。

雑談は、この5つの質問を自然に進める道具です。1人で紙に向かうと2つ目で止まりますが、家族や友達に「最近いちばん時間使ってる物って何」と聞かれると、答えは口から出ます。「それのどこが気になるの」「それ変えたらどうなるの」と続けてもらうだけで、5つ目まで進みます。質問する側は、答えを言わないことが決まりです。「じゃあ氷の研究にしたら」と先に言われると、本人の問いではなくなります。

進め方

5つの質問が埋まったら、進め方は6つの手順です。時間の目安は、雑談で材料を集めるのに15分、質問を紙に書いて1文にするのに15分、測る計画と表を作るのに30分で、合わせて60分です。1時間で測る直前まで行きます。

手順 すること 目安
1 家族か友達と雑談して、時間を使った物を3つ挙げる 15分
2 3つの物に5つの質問を当て、5つ目まで埋まる物を1つ残す 15分
3 問いを1文に書く(「〜を変えると〜はどう変わるか」) 5分
4 変える物・そろえる物・測る物を決める 10分
5 記録の表を作る(変える条件 × 回数) 15分
6 測る。1つの条件につき3回 当日

手順1では、雑談の相手に「最近いちばん時間使った物、3つ教えて」と聞いてもらいます。相手がいないときは、スマホの写真を1週間分さかのぼると、自分が何に時間を使ったかが写っています。写真は雑談の代わりになります。

手順2では、3つの物それぞれに5つの質問を当てます。扇風機、麦茶、ゲームの3つなら、扇風機は「強さを変えると風が届く距離はどう変わるか」で5つ目まで埋まります。麦茶は「氷の数を変えると温度の下がり方はどう変わるか」で埋まりますが、温度計が家に無ければ4つ目で止まります。ゲームは「時間帯を変えると反応の速さはどう変わるか」で、反応の速さを測る道具を考えないと4つ目で止まります。ここで止まった物を無理に通さず、埋まった物を残します。

手順3の問いの文は、「〜を変えると、〜はどう変わるか」の1文です。「扇風機について調べる」はテーマであって問いではありません。「扇風機の風の強さを変えると、風が届く距離はどう変わるか」まで書けば、変える物(強さ)と測る物(距離)が文の中に入っています。この1文が、模造紙の題にも、レポートの1行目にもそのまま使えます。

手順4では、変える物・そろえる物・測る物を紙に分けて書きます。扇風機の例では、変える物は強さの3段階、そろえる物は扇風機の高さ、首振りを止めること、窓を閉めること、紙テープの長さと幅、測る物は風が届くいちばん遠い距離です。「そろえる物」は多いほど結果が信じられます。図2のように、扇風機から床にメジャーを伸ばし、紙テープを持って少しずつ遠ざかり、テープが揺れなくなった所の手前で距離を読みます。

図2 扇風機とメジャーと紙テープで風の届く距離を測る配置

手順5の記録の表は、横に回数、縦に変える条件です。1つの条件につき3回測るのは、1回だけだと偶然の値を信じてしまうからです。3回の平均を右の列に書きます。表の形は次のとおりで、数字は記入の例です。

風の強さ 1回目(cm) 2回目(cm) 3回目(cm) 平均(cm)
弱 180 170 190 180
中 250 240 260 250
強 320 300 310 310

平均は3回の合計を3で割ります。強の行なら、320と300と310を足して930、3で割って310です。割り切れないときは小数第1位まで書きます。表には、測った日付と時刻、部屋の温度、扇風機の高さも欄外に書いておきます。考察で「そろえた条件」として使えます。

手順6は測る日です。朝のうちに1回目、昼に2回目、夕方に3回目と分けてもよく、同じ時間に続けて3回でもかまいません。分けて測ると「時間帯で変わるか」も一緒に見られますが、変える物が2つになるので、今回は同じ時間に続けて3回のほうが筋が通ります。測るたびに表へ直接書きます。頭で覚えて後から書くと、2回目と3回目が入れ替わります。

反応の速さのように道具が無さそうな物も、測り方を考えると数になります。友達に30cmの定規を上から持ってもらい、自分は親指と人差し指を定規の0の位置で開いて待ちます。合図なしで落とされた定規をつかみ、つかんだ位置の目盛りを読みます。落ちた距離が10cmなら約0.14秒、20cmなら約0.20秒です。距離が長いほど、つかむまでの時間が長かったことになります。秒に直さなくても、cm のままで朝と夜を比べれば研究になります。

まとめ方

まとめは、5つの質問の答えをそのまま並べる形がいちばん楽です。1つ目と2つ目の答えが「動機」、3つ目と4つ目が「方法」、測った表が「結果」、5つ目の先に出てきた新しい「なぜ」が「考察と次の課題」になります。思いつかないところから始めた人ほど、動機が正直で読みやすくなります。「扇風機の前で寝ていたら、首が向こうを向くと風が全然来ないのが気になった」と、そのまま書いてください。「日常生活の中で疑問に思ったので」と書くより、読む人の目が止まります。

模造紙なら、いちばん上に問いの1文を題として大きく書き、左上に動機、左下に方法と「変えた物・そろえた物・測った物」の3行、右上に結果の表とグラフ、右下に考察と次の課題を置きます。レポートなら、同じ順で見出しを付けます。

結果のグラフは、変える条件が「弱・中・強」のように段階なら棒グラフ、距離や時間のように連続した数なら折れ線グラフです。図3のように、横に風の強さ、縦に届いた距離の平均を取り、縦の目盛りは0から始めて、いちばん大きい値が収まる所までにします。目盛りを途中から始めると差が大きく見えてしまい、考察が実際より強い言い方になります。

図3 風の強さごとに届いた距離の平均を比べた棒グラフの例

考察は、結果の表を見て「何が言えるか」と「なぜそうなったと思うか」を分けて書きます。記入の例では、弱が180cm、中が250cm、強が310cmなので、「強さを上げるほど届く距離は長くなった」が、表から言えることです。弱から中は70cm、中から強は60cm伸びているので、「伸び方は一定ではなく、強にしても弱から中ほどは伸びなかった」まで書けると、表を読んだ跡が残ります。そのあとに「羽の回る速さが上がると、押し出される空気の量が増えて遠くまで届いたのだと思う」のように、理由の予想を「思う」の形で書きます。断定しないのは、測ったのが自分の部屋の1台だけだからです。

次の課題は、測っている間に出てきた新しい「なぜ」をそのまま書きます。「首振りにすると距離は変わるのか」「床の高さと机の高さでは違うのか」。この行があるだけで、問いが1つで終わらず、次につながる研究として読まれます。思いつかなかった人が、最後に「次はこれを調べたい」と書けるのは、5つの質問が問いを作る方法そのものだからです。

うまくいかないとき

1つ目の質問に「何も無い」と答える人がいます。本当に何も無いのではなく、「研究にふさわしい物」を探しているので何も無く見えます。「時間を使った物」は、寝ること、食べること、スマホを見ることも含みます。「寝る」なら「寝る時間を変えると朝の起きやすさはどう変わるか」で、起きやすさは「目覚ましから起きるまでの分」で数になります。

4つ目で「数にならない」と止まる人は、はい・いいえを数える形に変えます。「おいしい」は数になりませんが、「家族4人に2種類を出して、どちらを選んだか」は回数になります。4人全員に聞いて、1人でも選ばなかったら、その理由を書くと考察になります。

結果が3回とも同じで差が出ないときは、それも結果です。「強さを変えても距離は変わらなかった」と書いて、「変える幅が小さかったのかもしれない」「紙テープが重くて弱い風には反応しなかったのかもしれない」と、差が出なかった理由を2つ書きます。失敗を隠して数字を直すより、差が出なかった理由を書くほうが評価は高くなります。

5つ目で日数が足りないと出た問いは、捨てずに「来年のテーマ」として模造紙の端に書きます。今年の問いの「次の課題」に入れてもかまいません。親が先に「これにしたら」と決めてしまったときは、その物に5つの質問を当て直して、2つ目の「なぜ」だけは自分の言葉で言い直します。動機の段落が自分の言葉になっていれば、それは自分の研究です。

よくある質問

好きな物がゲームと動画だけで、研究になりそうにありません

ゲームも動画も、5つの質問を通せば問いになります。ゲームなら「プレイする時間帯を変えると反応の速さはどう変わるか」、動画なら「再生速度を変えると内容を覚えている量はどう変わるか」で、どちらも回数や秒で測れます。測る物が自分の体の反応や記憶なので、家族にも同じ条件で試してもらうと、人数が増えて結果が読みやすくなります。

去年と同じテーマでもよいですか

変える物が去年と違えば、同じ物を使っても別の研究です。去年が「風の強さ」なら、今年は「首振りの有無」や「羽の前に置く物」を変えます。去年の結果を「前に調べたこと」として動機に書けば、続きの研究として筋が通ります。

問いが2つできてしまい、どちらにするか決められません

5つ目の質問に戻ります。残りの日数で3回ずつ測り切れるほうを選びます。同じなら、測る道具が家にあるほうです。選ばなかった問いは、次の課題の欄に書いておけば、消えません。

親の関わり方と個別指導で確かめること

保護者の方にお願いしたいのは、雑談の相手になることです。「最近いちばん時間使った物は何」と聞いて、答えが返ってきたら「どこが気になるの」「変えたらどうなりそう」と続けてください。答えを代わりに言わないこと、「それは研究にならない」と先に消さないことの2つだけ守れば、お子さまは5つ目まで自分で進みます。材料の用意と、メジャーを押さえる手は貸してかまいません。

塾の授業で確かめるのは、問いが「〜を変えると〜はどう変わるか」の1文になっているか、変える物が1つだけか、測る物が数になっているかの3点です。この3点がそろっていれば、理科でも社会でも、研究として最後まで書けます。

まとめ

思いつかない午後は、何も無い時間ではなく、問いが床に転がっている時間です。時間を使った物に「なぜ」「変えたら」「測れるか」「何回できるか」と順に聞けば、扇風機の前の昼寝が、強さと距離を測る研究に変わります。テーマは外から探してくる物ではなく、今日の午後にもう手元にある物を、5つの質問で問いの形に拾い上げた物です。

読んで終わりにするか、ここから変えるか。

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