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【地学基礎】大気中の水と雲を図解で総まとめ—飽和水蒸気量・潜熱・断熱変化・フェーン|武蔵野個別指導塾

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風上で20℃だった空気は、山を越えるとなぜ25℃になるのか。断面図と区間ごとの表で追い、相対湿度と露点の読み取りも例題で手を動かして固めましょう。

よくあるのは、体育館の隅に貼られた持久走のタイム表の前で、休憩のあいだにフェーン現象の計算を確かめていて、手が止まる場面です。タイム表なら 1 周ごとのラップが並び、どの区間で落ちたかがひと目で見えるのに、山を越える空気の計算になると、どこまでが 1℃ でどこからが 0.5℃ なのかが急にぼやけます。じつは読み方は同じで、空気の旅も区間ごとのペースを足していくだけです。この単元を通れば、水蒸気の量から相対湿度と露点を出し、雲ができる高さを見積もり、山の向こうの気温まで自分の手で計算できるようになります。夏の積雲の底がなぜ一直線にそろうのかも、数字で説明できるようになります。雲の下では 1℃、雲の中では 0.5℃。この切り替えの理由を潜熱から言えれば、計算はもう暗記ではありません。

この単元で押さえること

前の単元で見た「上空ほど気圧が低い」が断熱膨張の理由になり、ここで学ぶ潜熱は、次の単元の放射と熱の収支で、地表から大気へ熱を運ぶ経路としてもう一度現れます。

基本の考え方

水は姿を変えるたびに熱を出し入れします

地表付近の水は、固体の氷、液体の水、気体の水蒸気という 3 つの姿をとります。姿が変わるあいだ、水自身の温度は変わらないのに、熱だけが出入りします。これが潜熱です。図1のように、氷から水、水から水蒸気へと分子がばらけていく向きでは周囲から熱を吸収し、逆に分子が集まっていく向きでは周囲へ熱を放出します。

図1 水の三態の間で潜熱が吸収・放出される向き

走ったあとに体育館の風に当たると涼しいのは、汗が蒸発するときに肌から熱を奪うからです。この熱は意外に大きく、水 1 g が蒸発するときに奪う熱は約 2500 J で、同じ 1 g の水を 1℃ 温める熱(約 4.2 J)のおよそ 600 倍にあたります。海面で蒸発した水蒸気は、この熱を抱えたまま空へ運ばれ、雲になるときに上空で手放します。水蒸気は、熱を運ぶ見えない荷物だと考えてください。なお、固体と気体の間の変化はどちらの向きも昇華と呼びます(気体から固体への変化を凝華と呼ぶこともあります)。霜は、水蒸気が水を経ずに氷になる例です。

空気が含むことのできる水蒸気には上限があります

空気 1 m³ が含むことのできる水蒸気の上限を飽和水蒸気量といい、気温で決まります。目安は次の表のとおりで、10℃ 上がるごとに 2 倍近くに増えていきます。例題では、この表を曲線にした図を使います。

気温(℃) 0 5 10 15 20 25 30 35
飽和水蒸気量(g/m³・いずれも約) 4.8 6.8 9.4 12.8 17.3 23.0 30.4 39.6

いまの水蒸気量が上限の何%にあたるかを表すのが相対湿度で、次の式で求めます。水蒸気の圧力で考える場合も形は同じで、水蒸気圧を飽和水蒸気圧で割ります。

相対湿度(%)= 空気中の水蒸気量 ÷ その気温の飽和水蒸気量 × 100

大事なのは、空気を冷やしても水蒸気の量そのものは変わらず、上限だけが下がることです。上限が下がれば相対湿度は上がり、やがて 100% に届きます。このときの温度が露点で、さらに冷えると入りきらない分が水滴になります。冷たいコップの外側がぬれるのは、コップのそばの空気が露点より下まで冷やされたからです。逆に、冬の暖房で部屋が乾くのは、水蒸気が減ったのではなく上限が上がったせいです。10℃ で相対湿度 100% の空気を、水蒸気を足さずに 20℃ まで暖めると、9.4 ÷ 17.3 × 100 で約 54% まで下がります。

上がる空気は冷え、雲になり、雨になります

空気が上昇するきっかけには、地表が暖められる、山の斜面に沿って押し上げられる、前線で暖かい空気が冷たい空気に乗り上げる、低気圧の中心に風が集まる、といったものがあります。上空ほど気圧が低いので、上昇した空気は膨張します。空気は熱を伝えにくく、周囲と熱をやりとりする間もなく膨張するので、周囲を押しのける分だけ自分のエネルギーを使って冷えます。これが断熱膨張です。下降するときは反対に断熱圧縮で暖まります。自転車の空気入れの根元が熱くなるのも、圧縮の例です。

冷え方のペースは 2 つだけです。飽和していない空気(雲の外)は約 1℃/100 m で変化し、これを乾燥断熱減率といいます。「乾燥」は水蒸気がないという意味ではなく、飽和していないという意味です。飽和した空気(雲の中)は約 0.5℃/100 m で変化し、これを湿潤断熱減率といいます。ペースが半分ほどになるのは、凝結で放出された潜熱が冷え方を弱めるからです。実際の値は気温などで変わりますが、問題ではこの値を使います。なお、対流圏の気温減率 約 0.65℃/100 m は周囲の大気を平均した値で、持ち上げられた空気の話とは別のものです。

上昇する空気の温度が露点まで下がった高さで、凝結が始まります。晴れた日の積雲の底が一直線にそろって見えるのは、その高さが空気の気温と露点で決まるからです。問題で「露点は高度で変わらない」とされていれば、雲底の高度は(気温 − 露点)÷ 1 × 100 m で出ます。実際には膨張とともに露点もわずかに下がるので、雲底はこの計算より少し高くなります。

凝結は、海塩の粒や土ぼこり、煙などの凝結核を芯にして起こり、直径約 0.01 mm の雲粒ができます。雲粒は小さすぎてほとんど落ちず、上昇気流に支えられて浮かんでいます。雨粒の直径を約 1 mm とすると直径は 100 倍、体積は 100 × 100 × 100 で 100 万倍なので、雲粒 100 万個分を集めてやっと雨粒 1 個です。育ち方は 2 通りあります。雲粒どうしがぶつかって合体し、氷を経ずに落ちるのが暖かい雨です。0℃ 以下の雲の中では、凍らないままの過冷却の水滴と氷晶が混じります。同じ温度なら氷のほうが飽和水蒸気量が小さいので、水滴から蒸発した水蒸気が氷晶につき、氷晶だけが育ちます。これが雪となって落ち、途中でとければ冷たい雨です。日本付近の雨の多くは冷たい雨です。上昇気流が強いと積雲や積乱雲のように縦に伸び、ゆるやかに広い範囲で上がると層雲や乱層雲のように広がります。

例題で解き方を確かめる

例題1 用語の見分け

次のア〜エのうち、周囲へ熱を放出している変化をすべて選んでください。

  1. それぞれを「前の姿→後の姿」に書き直します。現象の名前のままでは熱の向きが見えないからです。ア 水→水蒸気、イ 水蒸気→水、ウ 氷→水、エ 水蒸気→氷となります。
  2. 図1の矢印と照らします。判断を「分子が集まるか、ばらけるか」の 1 つの基準にそろえるためです。集まる向きのイとエが放出、ばらける向きのアとウが吸収です。

答え: イ、エ

例題2 図と表の読み取り

気温 30℃、水蒸気量 17.3 g/m³ の空気があります。図2の点 A です。(1) 相対湿度、(2) 露点、(3) 体積を変えずに 10℃ まで冷やしたときに空気 1 m³ あたりに出る水滴の量を求めてください。

図2 飽和水蒸気量の曲線と点Aから読む露点
  1. 図2で点 A の真上をたどって曲線に当て、30℃ の飽和水蒸気量 約 30.4 g/m³ を読みます。分母は「いまの気温」の上限と決まっているからです。
  2. 相対湿度を計算します。17.3 ÷ 30.4 × 100 = 56.9 なので約 57% です。割り算の前に分子と分母を指さしておくと、上下の取り違えを防げます。
  3. 点 A から水平に左へ進み、曲線に当たる温度 20℃ を読みます。冷やしても水蒸気量は変わらないので、図の上では水平に動くからです。
  4. 10℃ の上限は表から約 9.4 g/m³ なので、17.3 − 9.4 = 7.9 g が入りきらずに水滴になります。上限を超えた分だけが出てくるので、引き算で足ります。

答え: (1) 約 57% (2) 20℃ (3) 約 7.9 g

例題3 フェーン現象の計算

図3のように、風が高さ 2000 m の山を越えます。風上のふもと(高度 0 m)の空気は気温 20℃、露点 10℃ です。露点は高度で変わらないものとし、雲ができたら山頂まで雲の中を上昇して、雲の水は山頂までに雨として落ち切り、風下では雲ができないものとします。乾燥断熱減率を 1℃/100 m、湿潤断熱減率を 0.5℃/100 m として、(1) 雲底の高度、(2) 山頂の気温、(3) 風下のふもと(高度 0 m)の気温を求めてください。

図3 山を越える空気の区間ごとの気温とフェーン現象の断面
  1. 最初に雲底を出します。ペースが切り替わる境目だからです。気温と露点の差は 10℃ なので、10 ÷ 1 × 100 = 1000 m です。
  2. タイム表と同じように、区間に分けて表にします。区間を分ければ、使う減率を取り違えにくくなるからです。
区間 高度の変化 ペース 気温の変化 区間の終わりの気温
風上・雲の下 0 m → 1000 m 1℃/100 m -10℃ 10℃
風上・雲の中 1000 m → 2000 m 0.5℃/100 m -5℃ 5℃
風下・下り 2000 m → 0 m 1℃/100 m +20℃ 25℃
  1. 最後に別の道で検算します。上りと下りで差が生まれるのは雲の中の区間だけなので、1000 ÷ 100 × (1 − 0.5) = 5℃ だけ風下が高くなるはずで、20℃ と 25℃ の差に一致します。

答え: (1) 1000 m (2) 5℃ (3) 25℃

例題4 理由を説明する

例題3で、風下の空気が風上より高温で乾いている理由を、相対湿度の変化を示して説明してください。空気の膨張や圧縮による体積の変化は考えないものとします。

  1. 気温の差の原因を 1 つに絞ります。上りと下りの高度差は同じなので、差を生むのは雲の中で放出された潜熱だけだからです。
  2. 水蒸気量を追います。風上のふもとは露点 10℃ なので約 9.4 g/m³、上限は 20℃ の約 17.3 g/m³ で、相対湿度は約 54% です。出発点の値がないと、乾いたことを示せないからです。
  3. 山頂で飽和した空気の水蒸気量は、5℃ の上限 約 6.8 g/m³ まで減っています。差の約 2.6 g/m³ は雨として落ちた分で、風下へは戻りません。山頂を通った時点の水蒸気量が、風下へ持ち込まれる量を決めるからです。
  4. 風下のふもとでは上限が 25℃ の約 23.0 g/m³ なので、6.8 ÷ 23.0 × 100 で相対湿度は約 30% です。原因と結果を組にして書きます。論述で問われているのはこの対応だからです。

答え: 風上で水蒸気が凝結したときの潜熱が空気に残り、その水が雨として落ちたため、風下では気温が 20℃ から 25℃ に上がり、相対湿度は約 54% から約 30% に下がる。

ここで見落とされやすいのが、雨の役割です。雲の水が落ちずに空気といっしょに山を越えると、下りの途中で雲粒が蒸発して同じだけの熱を奪うので、空気は元の気温に戻り、風下は暖かくなりません。熱くなるのは、水が雨として抜け、熱だけが残るからです。なお、上空の暖かい空気が山を越えて吹き下りるだけで起こるフェーンもありますが、地学基礎の計算で扱うのは、ここで追った雨を落とす形です。日本では、春に発達した低気圧が日本海を進むと南寄りの風が山を越え、日本海側で気温が大きく上がることがあります。

まちがえやすいところと直し方

3 つとも、公式を忘れたのではなく、式の意味を読み違えたときに起きる誤りです。答案の字面だけを直しても次の問題でまた同じところで止まるので、どこで読み違えたのかまで確かめてください。

温度の比で相対湿度を出してしまう

区間を分けずにペースを決めつけてしまう

「雲の中は湿っているからよく冷える」と考えてしまう

用語のまとめ

用語 意味
潜熱 水の状態変化にともなって出入りする熱。蒸発・融解では吸収、凝結・凝固では放出
昇華 固体と気体の間の変化。霜は気体から固体への例
飽和水蒸気量 空気 1 m³ が含むことのできる水蒸気の上限。気温が高いほど大きい
相対湿度 水蒸気量 ÷ その気温の飽和水蒸気量 × 100 で求める割合(%)
露点 空気を冷やしたときに水蒸気が飽和する温度
断熱膨張・断熱圧縮 周囲と熱をやりとりせずに、膨張して冷える変化と、圧縮されて暖まる変化
乾燥断熱減率 飽和していない空気の気温の変化の割合。約 1℃/100 m
湿潤断熱減率 飽和している空気の気温の変化の割合。約 0.5℃/100 m
雲底 上昇する空気の温度が露点に達し、凝結が始まる高さ
凝結核 水蒸気が凝結するときの芯になる微粒子。海塩の粒、土ぼこり、煙など
雲粒 雲をつくる直径約 0.01 mm の水滴や氷の粒。ほとんど落ちない
過冷却 0℃ 以下でも水が凍らずに液体のままである状態
氷晶 雲の中にできる小さな氷の結晶
暖かい雨 雲粒どうしが合体して育ち、氷を経ずに降る雨
冷たい雨 氷晶が雪に育ち、落ちる途中でとけて降る雨
フェーン現象 山を越えた風が、風下で高温で乾いた風になる現象。計算では風上で雨を落とす場合を扱う

練習問題

練習1 次の文の空欄に語を入れてください。上昇する空気は周囲の気圧が(ア)くなるので(イ)し、気温が下がります。気温が(ウ)に達すると水蒸気が(エ)して雲粒ができ、このとき(オ)が放出されます。

練習2 気温 25℃、水蒸気量 9.4 g/m³ の空気について、基本の考え方の表を使って (1) 相対湿度、(2) 露点、(3) 体積を変えずに 5℃ まで冷やしたときに空気 1 m³ あたりに出る水滴の量を求めてください。

練習3 風上のふもと(高度 0 m)の気温が 24℃、雲底の高度が 600 m、山頂の高度が 1800 m です。雲の水は山頂までに雨として落ち切り、風下では雲ができないものとします。乾燥断熱減率を 1℃/100 m、湿潤断熱減率を 0.5℃/100 m として、(1) 山頂の気温、(2) 風下のふもと(高度 0 m)の気温を求めてください。

練習4 風上のふもと(高度 0 m)の気温が 20℃、露点が 5℃ の空気が、高さ 1000 m の山を越えます。露点は高度で変わらないものとして、山頂までに雲はできるか、風下のふもと(高度 0 m)の気温は何℃になるかを、理由とともに答えてください。

答えと解説

練習1 ア 低 イ 膨張 ウ 露点 エ 凝結 オ 潜熱。上昇から凝結までの流れを 1 本の文で言えれば、断熱変化と潜熱の問題の入口は通れています。

練習2 (1) 約 41% (2) 10℃ (3) 約 2.6 g。相対湿度は 9.4 ÷ 23.0 × 100 = 40.9 です。水蒸気量 9.4 g/m³ が上限になる温度を表で探すと 10℃ で、これが露点です。5℃ の上限は約 6.8 g/m³ なので、9.4 − 6.8 = 2.6 g が水滴になります。

練習3 (1) 12℃ (2) 30℃。雲の下の 600 m で 6℃ 下がって 18℃、雲の中の 1200 m で 6℃ 下がって 12℃ です。下りは 1800 m で 18℃ 上がるので 30℃ になります。検算すると、雲の中の区間から 1200 ÷ 100 × (1 − 0.5) = 6℃ だけ風下が高くなるはずで、24℃ と 30℃ の差に合います。

練習4 雲はできず、風下のふもとは 20℃。山頂で気温は 20 − 10 = 10℃ ですが、露点の 5℃ には届きません。雲の中の区間がないので上りも下りも 1℃/100 m で、気温の差は生まれません。雲も雨もないこの条件では、持ち上げられて山を越えた空気は元の気温に戻ることを確かめる問題です。

次の単元へのつながりと確かめ方

ここで身につけた潜熱は、このあと何度も顔を出します。次の単元の放射と熱の収支では地表から大気へ熱を運ぶ経路の 1 つとして、その先の大気の大循環では低緯度から高緯度へ運ばれる熱として、日本の天気では台風のエネルギー源として働きます。冬の日本海側の雪と太平洋側の乾いた晴天も、山で水を落とすという同じ筋書きで読めます。

台所にある物で 5 分あればできる確かめを 2 つ挙げます。1 つ目は、冷蔵庫から出したコップを置いて水滴がつくかを見ることです。ついたら、コップのそばの空気が露点より下まで冷えた証拠で、お子さまに「この水はどこから来たの」と聞いてみると、理解の深さが見えます。2 つ目は、白い紙に山の線を 1 本引き、20℃、露点 10℃、2000 m だけを書いて、区間の表を何も見ずに埋めることです。25℃ にたどり着けたら、計算の骨組みは身についています。

個別指導では、止まっているのが割合の計算なのか減率の選び方なのかを切り分け、割合なら中学の湿度の計算まで、減率なら潜熱の向きまで戻って確かめます。

まとめ

雲は空に浮かぶ綿ではなく、水蒸気が上限からこぼれた跡です。相対湿度も断熱変化も、雲の下と雲の中を区間に分けるだけで一本の線につながり、図3の風上と風下の 5℃ の差は、雲の中で手放された潜熱が気温に変わった分として読めます。窓の結露も、湿度計の数字も、夏の積雲の底も、同じ 1 本の曲線から読めます。タイム表の区間を数えられる人は、山を越える風も数えられます。

雨を置いてきた分だけ、風は山の向こうで熱くなります。

読んで終わりにするか、ここから変えるか。

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