算数の具体物には学習を支える結果がありますが、装飾の多さとは分けて考えます。大学生の研究では、地味な具体物が文章題の解決に有利でした。家では教材の見栄えより、数や操作を説明できるかを確かめます。
動物のおもちゃを並べたら、子どもは喜んで触り始めました。でも、何を数えているのかを聞くと、話はおもちゃの名前へ戻ってしまいます。保護者は「楽しければ覚える」と「算数の内容を理解する」の間で迷います。
今回は、具体物の使用と、その見た目や指導の条件を扱います。物の見た目の豊かさ、指導の条件、何を成果として測ったかを区別します。具体物の有効性をまとめたレビュー、装飾性と課題の成績を扱う研究、大人の教材選択を調べた研究を並べます。
1. 論文を役割で並べる
Kira J. Carbonneauほか(2013)は、具体物を使う数学指導と、抽象的な数学記号だけを使う指導を比べた研究のメタ分析で、具体物を使う側に有利な結果があったと報告しています。ただし、指導や研究方法の特徴が結果に関わり、内容の保持への効果と、問題解決、転移、理由づけへの効果の大きさも違いました。具体物の有益さを、すべての成果に同じ強さで広げないための根拠です [1]。
Kira J. Carbonneauほか(2020)は、大学生を対象に、具体物の有無、地味な具体物、見た目の豊かな具体物や指導の条件を比べ、地味な具体物の使用が文章題の解決に有利だったと報告しています。別の研究では、見た目の豊かさの不利な結果が再び見られる一方、協働が粘り強さを支えました。装飾性の結果と、他者との活動の結果を分けて読みます [2]。
Megan Foulkesほか(2023)は、研究者、教師、保護者に教材の画像を比較して選んでもらい、均質な立体の具体物が、ほかの余分な特徴にかかわらず好まれたと報告しています。具体物の魅力を小さくするという研究上の勧めと、実際に選ばれやすい特徴の間に違いがあります。この研究が測っているのは、大人がどの教材を選ぶかです [3]。
2. 具体物はリアルなほど有効なのか?
具体物を使う指導が数学記号だけの指導より有利だったことと、リアルな見た目が有利なことは別です。メタ分析の比較は、具体物の使用と記号だけの使用を中心にしています。ここからおもちゃの装飾を増やすべきだと結論づけると、比較していない要因を付け足してしまいます [1]。
装飾性を扱った大学生の研究では、地味な具体物が文章題の解決に有利でした。この結果は、教材が具体的なら見た目を豊かにするほどよい、という発想への反証になります。対象は大学生です。対象と課題の条件を添えて、外見と成績との関係を読みます [2]。
家庭では、教材が数や操作の説明に使われているかを確認します。触って楽しかったかに加えて、「今、この物は何を表している?」と尋ねます。家庭で具体物の役割を聞く問いとして使います。具体物の使用と、その外見と、学習成果を分けるための実務上の確認です。
具体物と記号だけの指導を比較したメタ分析は55研究を集め、全体の対象はN = 7,237でした。幼児から大学生までを含む研究群です。具体物が有利という総合的な結果は、この幅広い集団と指導をまとめたものです。装飾の多さを比べる大学生の研究とは、比較している条件の範囲が違います。物があることと、物の特徴を別々の問いとして読む必要があります [1]。
3. 覚えられることと問題を解けることは同じか?
具体物のメタ分析では、内容の保持に対する効果は、問題解決や転移、理由づけに対する効果と違っていました。具体物を使って覚えた内容が残るという成果を、そのまま新しい問題にも使えるという成果へ広げないことが必要です。何ができたかを、課題の形式と一緒に見ます [1]。
たとえば物を並べた手順は再現できても、数の関係を説明できるかは別に確かめます。また、同じ物を使わない紙の問題を扱えるかも、別の問いです。家庭では、手順の再現、数の関係の説明、紙の問題への取り組みをそれぞれ見ます [1]。
大学生の研究でも、問題解決の成績と粘り強さが扱われています。協働によって粘り強さが支えられたことを、見た目の豊かな教材の問題解決への不利な結果がすべて消えたと読み替えません。続けて取り組めたかと、正しく解けたかは、同じ返答では測れません [2]。
大学生の研究では、協働が粘り強さを支える結果がありました。見た目の豊かな具体物を使って協働した人は、地味な具体物を使って協働した人や、地味な具体物で個別に取り組んだ人と同程度の粘り強さを示しました。教材の見た目に加えて、他者と取り組む条件も読んでおきます [2]。
4. 大人が選びたい教材を子どもに渡せばよいか?
教材選択の研究は、研究者、教師、保護者がどんな画像の教材を選ぶかを扱っています。立体で均質な具体物が好まれたという結果は、大人の教材選択を示しています。大人の好みを、学習の効果へ変換しないことが重要です [3]。
この研究は、具体物の特徴をまとめて「リアルさ」と呼ぶことにも注意を促します。どの特徴を変え、何を選択の対象にしたかを確認して、比較の内容を具体的に読みます。家庭では商品の印象より、子どもが操作の意味を説明する場面に注目します [3]。
家庭では、使っている物をいったんそのまま残し、何を表しているかを聞きます。見た目だけで買い換えを決める前に、数、まとまり、計算の操作を子どもがどう扱っているかを見ます。子どもの説明に応じて、操作が数や式とどう結び付いているかを確かめます。
教材の画像を比較した課題では、研究者、教師、保護者という異なる立場の大人が選択しています。どの集団も均質で立体的な具体物を好んだという結果は、余分な情報を減らす研究上の推奨と食い違いました。この食い違いを読むには、大人が選びやすい特徴と、学習成果を確かめる比較を分ける必要があります。商品を選ぶ場面の判断を、子どもの学習結果へ置き換えずに読みます [3]。
【反証】この回が言えないこと
見た目の豊かな具体物が不利だった研究は大学生の課題です。これを日本の小学生へそのまま広げ、動物のおもちゃを使うと算数が伸びないと断定できません。具体物のメタ分析には幅広い教育段階が含まれ、指導や研究方法による違いもあります [1][2]。
教材選択の研究も、学習の効果を比較したものではありません。大人が好む物と、子どもが学びやすい物の関係は、今回の研究だけから決まりません。この回の結論は、具体物の有無、装飾性、学習成果を別々に確かめることです [3]。
実務——家でできる 3 つの確認
まず、子どもに「この物は何を表している?」と聞きます。名前や色の説明で止まったら、いまの算数の課題で数やまとまりをどう示すかを確認します。物を減らすことだけを目標にせず、操作の役割を明らかにします。
次に、教材を脇へ置き、扱った数の関係を自分の言葉で説明してもらいます。武蔵野個別指導塾のアクティブリコールを、見た操作を取り出す確認に置きます。物があるとできることと、物を見ずに説明できることを分けて見ます。
後の学習では、物を使った操作を紙の式でどう説明するかを聞きます。塾の間隔反復も、数の関係を取り出して説明する時間に使います。完全一対一の授業には、教材の種類と子どもが話した操作の意味を持ち込み、物から式へつなぐ箇所を相談します。
具体物の操作と式の説明をつなぐ学習については、武蔵境の定期テスト対策へ使っている教材の様子をお知らせください。
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よくある質問
Q. 具体物は使わないほうがよいですか?
具体物の指導に有利な結果を示すメタ分析があります。具体物の有無と見た目の豊かさは別の問いです。成果の種類も分けて読みます [1]。
Q. リアルなおもちゃは禁止すべきですか?
子どもへの一律の禁止を検証した研究ではありません。家庭では子どもの操作と説明を観察します。物が何を表すかを説明できるか確認します [2]。
Q. 教師や保護者に人気の教材なら安心ですか?
人気だけでは学習効果の根拠になりません。選びやすさと効果を同じ扱いにしません [3]。
出典
- A meta-analysis of the efficacy of teaching mathematics with concrete manipulatives(Kira J. Carbonneauほか、2013、Journal of Educational Psychology)
- The influence of perceptually rich manipulatives and collaboration on mathematic problem-solving and perseverance(Kira J. Carbonneauほか、2020、Contemporary Educational Psychology)
- The Effects of Concreteness on Mathematical Manipulative Choice(Megan Foulkesほか、2023、Mind, Brain, and Education)



