第二言語での算数は、数の課題と言語の理解を分けて見ます。研究は数学を学んだ言語や習熟度の関わりを示し、二言語を使うこと自体が一律に不利だとはしていません。家では文章の意味を説明できるかと、計算できるかを別々に確認します。
計算だけなら解けるのに、文章題になると黙ってしまいます。別の言語で説明を受けている子どもなら、保護者は「算数が苦手になったのか、それとも言葉なのか」と迷います。答案の空欄だけでは、その境目は見えません。
今回読むのは、二言語を使う子どもや大人の算術、言語習熟度と文章題、数学の成績を整理した研究です。英語で算数を学べば得か損かという一括した評価ではなく、学習した言語、出題された言語、理解の程度を分けて考えます。
1. 論文を役割で並べる
Vanessa R. Cerdaほか(2023)は、算術のレビューで、数学を学んだ言語での計算は好まれ、成績も高いことが多いと報告しています。子どもと大人の両方についての整理です。一方、算術の記憶がその言語だけに限定されるという解釈では説明しきれず、言語経験も関わると整理しています。学習した言語の役割を認めつつ、固定的な言語の壁と見なさないための根拠です [1]。
Sarah G. Kingほか(2023)は、数学に困難のある、英語を学びつつある児童の文章題を調べ、根拠に基づく文章題の介入を受けた子は受けなかった子より高い成績だったと報告しています。また、学習に使う英語の読み書きの習熟度は、文章題の成績と正の関係がありました。計算の困難と、問題文の言語の複雑さを分けて考える研究です [2]。
A. González-Martínほか(2024)は、実験研究の系統的レビューで、言語習熟度の高い二言語使用者では、二言語使用そのものによる数学成績への影響は見られないと報告しています。二言語使用者と一言語使用者の数学の成績を比べた研究を整理しています。一方、低い言語習熟度は成績に不利に関わると整理しています。二言語を使うという属性だけで、算数の得手不得手を決めないためのレビューです [3]。
2. 数学を覚えた言語に戻せば必ず解けるか?
算術のレビューでは、数学を学んだ言語が好まれ、成績も高いことが多いとされています。しかし、それを「計算の記憶はその言語にしかない」と説明することには、別の研究結果から疑問が示されています。言語経験も関わるため、学習した言語だけを唯一の原因として扱いません [1]。
家庭では、どの言語でどの内容を習ったかをまず聞きます。計算のやり方を説明しやすい言語と、問題文を読んでいる言語が同じかを確認します。説明しやすい言語で考え方を聞き、問題文を読んでいる言語での理解も見ます。子どもの学習経験を、算数の相談に含めるための問いです [1]。
同じレビューは、子どもと大人では算術の処理が基本的に違うという研究も挙げています。大人が第二言語で計算したときの経験を、そのまま子どもの頭の中の説明にしてはいけません。家では保護者の得意な言語より、子どもがどの内容をどの言語で扱えるかを聞きます [1]。
算術の記憶に関するレビューは、脳における二言語使用、算術の処理、発達という領域の交点を扱っています。数学を習った言語での優位性は、記憶にその言語だけが使われるという説明と区別されています。家庭で子どもの解き方を聞くときも、答えるのに使った言語だけで頭の中の記憶を断定せず、説明した手順や問題文の理解を確認する材料にします [1]。
3. 文章題の空欄は計算力の不足を示すか?
文章題を調べた研究は、言語の複雑さが問題を解く障壁になるという論点から出発しています。読み書きの習熟度と文章題成績に正の関係があった結果は、計算の練習量だけを見てはいけない理由になります。読み書きの習熟度との相関と、文章題の介入による成績の違いを分けて読みます [2]。
家庭では、問題文の場面を自分の言葉で説明してもらい、その後で計算の道筋を聞きます。場面の意味を話せないのか、意味は話せても計算ができないのかを区別します。場面の説明と式の説明を聞き、言語と数学のどちらで止まったかを確かめます。
同じ研究で、文章題の介入を受けた子が有利だったことも重要です。言語の壁が関わると考えるだけで、数学の課題への支援を止める必要はありません。家庭で困っている箇所は、問題文と子どもの返答をそろえて講師に伝えます。効果のあった介入の存在と、具体的な親子の教え方を区別して扱います [2]。
文章題の分析に用いられたのは、小学校段階の児童241人のデータです。数学に困難があり、英語を学びつつある集団を扱っています。英語の読み書きの習熟度と文章題得点との正の関係と、文章題の介入群の成績の高さが報告されています。言語習熟度を変えた実験として読むより、介入の比較と、習熟度との関連を別の所見として理解する必要があります [2]。
4. 二言語で学ぶこと自体を避けるべきか?
数学の成績を広く整理したレビューでは、二言語を使うこと自体が一律に不利だとはされていません。言語習熟度の高い人と、低い人では結果の整理が違います。「二言語だから算数が苦手」という分類は、研究が重視する習熟度の条件を落としています [3]。
一方、「二言語なら認知面で有利だから数学も大丈夫」という言い方も、このレビューの結果を単純化します。著者らは言語に関係しない課題での処理の有利さも述べますが、それはすべての文章題での優位性を意味しません。課題で必要な言語の理解を、本人の返答で確かめる必要があります [3]。
日本の家庭学習に置くなら、出題言語を選ぶ前に、何を確かめる課題かを決めます。計算の理解を見る課題と、別の言語の文章から数の関係を取り出す課題を分けます。目的を分けることで、空欄の答案から能力全体を決めつけず、講師に相談する内容を具体的にできます [1][2][3]。
二言語使用と数学成績の系統的レビューは71件の論文を検討しています。言語習熟度の高い人では二言語使用が数学成績に影響しないように見える一方、出題言語による反応時間の違いが論点となっています。正答できたかと、答えるまでの時間は同じ成果ではありません。家庭で解けるかを確認する際も、説明の正確さと答えを出す速さを混ぜずに聞きます [3]。
【反証】この回が言えないこと
文章題の研究は、数学の困難がある、英語を学びつつある児童を対象にしています。その結果を日本の中高生全員や、第二言語に十分習熟した子どもへ同じように広げられません。読み書きと成績の関係も、言語を変えるだけで解決することを検証した結果ではありません [2]。
レビューに含まれる研究は、対象、課題、言語習熟度が異なります。今回の研究から、日本の家庭で使うべき言語の割合や、切り替える学年は決まりません。結論は、二言語という属性より、学習した言語、現在の理解、測っている数学の課題を分けて見ることです [1][3]。
実務——家でできる 3 つの確認
まず、問題文の場面を話してもらいます。どんな数量があり、何を求めるのかを本人の説明で確認します。言葉がわからない所を、計算の誤りとして処理しないための問いです。保護者が先に式を渡す前に、内容の理解を見ます。
次に、計算の道筋を手本なしで説明してもらいます。武蔵野個別指導塾のアクティブリコールを、学んだ内容を取り出す確認に置きます。問題文の理解と、計算の知識を別々に扱い、どの言語なら説明しやすかったかも聞きます。
日を改めて文章題へ戻り、場面の説明と計算の道筋を再び聞きます。塾の間隔反復では、読み取った数の関係も取り出してもらいます。完全一対一の講師へ、内容を習った言語と出題言語、つまずいた語や式を示し、言語の理解と計算の課題を相談します。
出題言語の理解と計算の課題を整理する相談には、武蔵境の定期テスト対策で問題文と答案を見ながら対応します。
よくある質問
Q. 第二言語で算数を学ぶと成績が下がりますか?
言語習熟度が高い二言語使用者では、数学成績への影響がないように見えるとレビューは整理しています。レビューは言語習熟度による違いを重視しています。二言語という属性だけで判断しません [3]。
Q. 計算だけできれば文章題もできますか?
文章題では、計算力に加えて問題文の言語を理解することが必要です。問題文の理解と計算を別に確認します [2]。
Q. 数学を学んだ言語でだけ練習すべきですか?
算術の記憶を数学を学んだ言語だけに限定する説明には、レビューが異なる所見を挙げています。言語経験と課題の目的を見ます [1]。
出典
- Arithmetic in the Bilingual Brain: Language of Learning and Language Experience Effects on Simple Arithmetic in Children and Adults(Vanessa R. Cerdaほか、2023、Mind, brain and education : the official journal of the International Mind, Brain, and Education Society)
- Language Proficiency and the Relation to Word–Problem Performance in Emergent Bilingual Students with Mathematics Difficulties(Sarah G. Kingほか、2023、Learning Disabilities Research & Practice)
- On the Relationship Between Bilingualism and Mathematical Performance: A Systematic Review(A. González-Martínほか、2024、Education Sciences)



