教科をまたぐ言葉は日常の意味と教科の意味を分けて教える|武蔵野個別指導塾が薦める学習の仕方

連載「単元別のつまずき研究——その単元で、生徒は実際に何をどう誤るか」全50回の第48回です。学習の仕方の目次を見る

数学の授業で「関数」と聞いた瞬間、顔を上げる生徒と、そっと下を向く生徒がいます。理科の授業で「反応」という言葉が出ると、実験のイメージが浮かぶ生徒と、何を問われているのか分からなくなる生徒がいます。どちらも、言葉そのものが教科の壁をまたいでいることに気づいていないケースです。

「関数」は数学では数の対応の仕組みを指しますが、日常では「体調が気温の関数になっている」のように、ゆるやかな関係を表す比喩として使われることもあります。「反応」は理科では物質の変化を指しますが、国語や日常では「あの子は反応が薄い」のように人の態度を表します。「比例」も、算数・数学では厳密な関係を指すのに、日常では「努力に比例して伸びる」のように、なんとなくの相関関係として使われがちです。

この記事では、教科をまたぐ言葉が生徒の中でどう混線し、どのような誤答や誤読につながるのかを整理します。そのうえで、机の前で1対1の対話を通じて、言葉の意味を教科ごとに切り分ける手順を示します。対象は、小学生から高校生まで幅広く想定しています。

要点(結論から)

  • 「関数」「反応」「比例」は、日常語としての意味と教科用語としての意味が重なっており、生徒はその区別がつかないまま読み進めてしまうことがあります。
  • 教科をまたぐ言葉のつまずきは、計算力や知識量の問題ではなく、言葉の意味を文脈に応じて切り替える力の問題です。
  • 理科や数学の文章は、簡潔で正確で権威的に書かれるため、言葉の意味を取り違えるとその先の理解がまとめて崩れます。

結論——教科をまたぐ言葉は、日常の意味と教科の意味を分けて教える

  • 「関数」「反応」「比例」は、日常語としての意味と教科用語としての意味が重なっており、生徒はその区別がつかないまま読み進めてしまうことがあります。
  • 教科をまたぐ言葉のつまずきは、計算力や知識量の問題ではなく、言葉の意味を文脈に応じて切り替える力の問題です。
  • 理科や数学の文章は、簡潔で正確で権威的に書かれるため、言葉の意味を取り違えるとその先の理解がまとめて崩れます。
  • 生徒が誤答したときは、解き直しをさせる前に、その言葉をどう解釈したかを尋ねることが有効です。
  • 教科ごとの言葉の使い方を明示的に教えることは、生徒が自力で教科書を読めるようになるための土台になります。

理由——教科の言葉は、日常の言葉と同じ形をしていて、中身が違う

学術言語は簡潔・正確・権威的であるがゆえに、読み手を迷わせる

理科や数学の教科書に使われる言葉は、日常会話と同じ単語であっても、その働きが大きく異なります。学術言語は、短く、正確に、そして断定的に書くことを目指します。そのために、日常では使わない語彙や、複雑な文の構造が現れます。生徒は、その言葉の形を知っていても、教科の文脈で求められる意味を取れないことがあります。

Snow C. Academic Language and the Challenge of Reading for Learning About Science. Science. 2010;328(5977):450-452.

たとえば「反応」という言葉は、日常では「返事」や「表情の変化」を指すことが多いですが、理科では「物質が別の物質に変わること」を指します。同じ「反応」でも、国語の物語文で「主人公の反応を読み取ろう」と言われたときと、理科の実験で「反応の前後で質量を比べよう」と言われたときでは、求められる読み方がまったく違います。この切り替えができないと、教科書の一文を読んでも、何を説明されているのかがぼやけます。

学術言語の難しさは、単語の難しさだけではありません。文の構造が複雑になり、情報が圧縮されることも、読み取りを妨げます。生徒は「知らない単語があるから読めない」のではなく、「知っている単語なのに意味が通らない」という状態に陥ります。この状態を放置すると、教科書を読むこと自体を避けるようになります。

教科ごとに言葉の使い方は異なり、同じ語でも意味の輪郭がずれる

中学・高校と進むにつれて、学ぶ内容は専門的になり、複雑になります。それに伴って、知識を組み立てる言葉も、より専門的で、密度が高く、抽象的で、複雑になります。教科ごとに言葉の使い方の癖があり、専門家はその癖の中で思考しています。

Fang Z, Schleppegrell M. Disciplinary Literacies Across Content Areas: Supporting Secondary Reading Through Functional Language Analysis. Journal of Adolescent & Adult Literacy. 2010;53(7):587-597.

「比例」を例に取ると、算数では「片方が2倍、3倍になると、もう片方も2倍、3倍になる関係」と定義されます。しかし、社会科の資料で「人口と交通量は比例する」と書かれている場合、それは厳密な比例関係ではなく、おおまかな傾向を指していることがあります。生徒は、算数で習った厳密な定義をそのまま社会科に持ち込んで、「本当に2倍になっているのか」と混乱したり、逆に日常のゆるい意味を算数に持ち込んで「だいたい増えているから比例」と誤答したりします。

「関数」も同様です。数学では、入力に対して出力が一つに決まる対応の規則を指します。しかし、日常では「学力は努力の関数だ」のように、複数の要因が絡む関係を指すことがあります。この日常的な用法が頭に残っていると、数学の問題で「yはxの関数である」と言われても、規則性を探す前に「何となく関係がありそう」という印象で判断してしまいます。

言葉の意味を教えることは、教科の読み方を教えることにつながる

教科をまたぐ言葉の指導は、単なる語彙指導ではありません。その教科が何をどのように表現するのか、つまり教科ごとの読み方・考え方を教えることにつながります。理科では、変化の前後を比べる視点が重要です。数学では、対応の規則を明確にすることが重要です。国語や社会では、文脈の中で言葉がどのような意味合いを持つかを考えることが重要です。

生徒が「反応」を理科の文脈で正しく使えるようになるためには、「何が何に変わったのか」を問う練習が有効です。生徒が「比例」を数学の文脈で正しく使えるようになるためには、「片方を2倍にしたら、もう片方も2倍になるか」を具体的な数で確かめる練習が有効です。このように、言葉の意味を教科の問い方とセットで教えると、生徒は言葉を手がかりに教科の考え方へ入っていけます。

逆に、言葉の意味を日常の感覚のままにしておくと、生徒は教科書の説明を自分の知っている意味に引き寄せて読み、結果として教科の内容を誤って理解します。この誤解は、テストの誤答として現れるまで表面化しにくいものです。

誤答の例——「関数」「反応」「比例」で実際に起きること

よくある誤答 その子が考えていること 確かめる問いかけ
「yはxの関数」と言われても、xとyの関係を式で表せない 関数は「何か関係があること」だと思っていて、対応の規則を探す必要があるとは考えていない 「xが1増えたらyはどう変わる? その変わり方に決まりはある?」
理科で「反応が進む」を「反応が速くなる」と読み替える 日常の「反応が早い」という言い方から、速さの話だと思い込んでいる 「ここで言う反応は、何が何に変わること? 速さの話とどこが違う?」
「比例」の問題で、グラフが直線ならすべて比例と答える 「比例=まっすぐな線」という見た目だけの理解で、原点を通るかどうかを確認していない 「この直線は原点を通る? 原点を通らない直線は比例と言える?」
社会科の資料で「比例関係にある」を、数学の厳密な比例として計算しようとする 算数で習った定義をそのまま他教科に当てはめれば正しいと思っている 「ここでの比例は、数学の定義と同じ? それとも傾向を表す言葉?」
「関数の式を求めなさい」で、表の数値を一つだけ使って式を作る 関数は点をつなぐものではなく、一つの例から決まるものだと思っている 「その式に、表の別のxを入れたら、対応するyになる?」

机の前で1対1で確かめる手順は、次のとおりです。

  1. まず、誤答した問題の「関数」「反応」「比例」という言葉を指さし、「この言葉、普段どういうときに使う?」と尋ねます。日常の用法を先に引き出します。
  2. 次に、「この教科では、この言葉をどういう意味で使っていると思う?」と尋ね、教科の定義を思い出させます。定義が言えなければ、教科書の該当箇所を一緒に開きます。
  3. 日常の意味と教科の意味を、短い文で並べて書かせます。たとえば「反応:日常では返事、理科では物質が別の物質に変わること」のようにです。
  4. 誤答した問題に戻り、「この問題では、どっちの意味で使われている?」と選ばせます。選べたら、その意味で解き直させます。
  5. 最後に、「他の教科でこの言葉が出てきたら、どうする?」と尋ね、教科ごとに意味を確認する癖をつけさせます。

小学生では、「比例」は算数で初めて厳密な定義に出会う言葉です。日常生活では「増えれば増えるほど」くらいの感覚で使っているため、算数の問題で「片方を2倍にしたら、もう片方も2倍になる」という条件を確認せずに答えることがあります。まずは、具体的な数で2倍、3倍と確かめる作業を丁寧に繰り返すことが大切です。

中学生では、「関数」が数学の中心的な概念になりますが、日常の「関係がある」という意味と混ざりやすい時期です。また、理科で「反応」を学ぶと、国語の「反応」との違いに戸惑う生徒も出てきます。教科ごとに言葉の意味を書き分けるノートを作らせると、混乱が減ります。

高校生では、同じ教科の中でも言葉の意味が段階的に変わることがあります。たとえば「関数」は、中学では式で表せる対応が中心ですが、高校ではより抽象的な対応の規則として扱われます。また、他教科の資料を読む機会が増えるため、数学の厳密な定義をそのまま持ち込むと、かえって読み誤る場面も出てきます。文脈に応じて意味を調整する力が求められます。

よくある誤読——研究結果をどう使うか、どう使わないか

「学術言語は難しいから、やさしい言葉に置き換えればよい」という誤用

学術言語が読み取りを妨げるという研究結果を、「難しい言葉を避けて、やさしい言葉で教えればよい」と解釈するのは誤用です。学術言語は、簡潔で正確で権威的であるために、日常語とは異なる働きをします。やさしい言葉に置き換えると、正確さや簡潔さが失われ、かえって教科の考え方から遠ざかることがあります。

正しい読み方は、学術言語を避けるのではなく、学術言語の使い方を明示的に教えることです。たとえば「反応」を「変化」に置き換えるのではなく、「反応」という言葉が理科で何を指すのかを、具体例とともに確認します。生徒が学術言語を扱えるようになることが、自立した学習者への道です。

「教科ごとに言葉の使い方が違うから、共通の教え方は無理」という誤用

教科ごとに言葉の使い方が異なるという研究結果を、「教科ごとに別々の指導が必要で、共通の方法はない」と解釈するのも誤用です。確かに、理科・歴史・数学では言葉の使われ方が異なります。しかし、言葉そのものに注目して、文脈の中で意味を考えるという姿勢は、どの教科でも共通して有効です。

正しい読み方は、教科の違いを前提にしつつ、言葉の意味を文脈から考えるという共通の手順を教えることです。生徒が「この言葉は、この教科ではどういう意味か」と自問できるようになれば、教科が変わっても対応できます。教科をまたぐ言葉は、その練習に適した教材です。

今週やること——教科をまたぐ言葉を3つ、家庭で確かめる

  1. 「関数」「反応」「比例」の3語について、日常で使う意味と、数学・理科で使う意味を、短い文で書き出させます。書けない場合は、一緒に辞書と教科書を開いて比べます。
  2. 今週の授業や宿題で、この3語のどれかが出てきたら、その場で「この教科ではどういう意味?」と尋ねます。答えられなければ、教科書の定義を確認させます。
  3. 他教科の教科書や新聞・資料で、この3語が使われている例を一つ探させます。見つけたら、それが日常の意味か、教科の意味か、それとも別の比喩かを話し合わせます。

この記事で言えないこと

この記事で示したのは、教科をまたぐ言葉のつまずきが、学術言語の性質や教科ごとの言葉の使い方の違いから生じるという一般的な枠組みです。個々の生徒がどの言葉で、どのように誤るかは、これまでの学習経験や読書量、日常での言葉の使い方によって異なります。同じ「比例」の誤答でも、定義を知らないのか、定義は知っているが他教科の用法と混ざっているのかでは、必要な手立てが違います。

また、ここで扱った「関数」「反応」「比例」は、教科をまたぐ言葉の一部にすぎません。他にも「力」「エネルギー」「文化」「構造」など、多くの言葉が教科ごとに異なる意味を持ちます。この記事の手順はそれらの言葉にも応用できますが、言葉ごとに生徒のつまずき方は変わるため、一つひとつ丁寧に観察する必要があります。

さらに、この記事で引用した研究は、学術言語の難しさと教科ごとの言葉の使い方の違いを指摘したものであり、特定の指導法の効果を数値で示したものではありません。したがって、ここで提案した手順がすべての生徒に同じように有効とは言えません。生徒の反応を見ながら、問いかけの順序や言葉を調整することが前提になります。

当塾の立場

教科をまたぐ言葉の意味を整理する作業は、家庭でも十分にできます。教科書と辞書を並べて、日常の意味と教科の意味を書き分けるだけなら、特別な教材は要りません。むしろ、家庭での会話の中で「今の『反応』って、理科の意味? それとも普段の意味?」と尋ねるほうが、生徒の言葉への注意を育てます。まずは、この記事の「今週やること」を家庭で試してみてください。

そのうえで、塾が担える部分があるとすれば、教科をまたぐ言葉の誤答を、その場で対話によって掘り下げることです。当塾では、生徒が「比例」と答えたとき、正誤を伝える前に「その言葉、この教科ではどういう意味?」と尋ねます。生徒が自分の言葉で説明できなければ、教科書の定義に戻り、日常の意味と並べて書かせます。この手順を繰り返すことで、生徒は言葉の意味を文脈から確かめる癖を身につけていきます。

出典

  1. Snow C. Academic Language and the Challenge of Reading for Learning About Science. Science. 2010;328(5977):450-452.
  2. Fang Z, Schleppegrell M. Disciplinary Literacies Across Content Areas: Supporting Secondary Reading Through Functional Language Analysis. Journal of Adolescent & Adult Literacy. 2010;53(7):587-597.

Warning: Attempt to read property "show_author" on false in /home/c1531448/public_html/musasinokobetu.com/wp-content/themes/heal_tcd077/single.php on line 165

関連記事

PAGE TOP
お電話