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教育費の話し合い—夫婦で、親子で、いつ何を話すか|武蔵野個別指導塾

公立中・私立高・国立大で約759万円という計算例を置き、夫婦で揃える数字とお子さまに枠を示す時期を、中3の秋から高3の春まで順に書いています。
教育費の話し合いは、夫婦で「総額の見積もり」を先に揃え、そのあとでお子さまに「枠」を示す、という順番がいちばん揉めません。話す時期の目安は下の表のとおりです。
| いつ | 誰と | 話すこと |
|---|---|---|
| 小学生のうち | 夫婦 | 高校から大学までの総額の見積もりと、月々いくら貯めるか |
| 中3の秋まで | 夫婦、次に親子 | 高校の授業料を国の就学支援金がどこまで持つか、施設費など自己負担の項目 |
| 高1から高2 | 親子 | 大学の学費の枠(上限の金額)と、自宅通学か下宿か |
| 高3の春 | 親子 | 奨学金の予約採用の申込、借りる名義と返す人 |
| 祖父母の援助 | 夫婦が先 | 金額と時期を先に決め、税の扱いは税務署の窓口で確かめる |
金額の根拠は文部科学省の調査と、2026年度時点の就学支援金・修学支援新制度の上限額です。制度は年度で変わるので、最新の数字は学校か都道府県の窓口で確かめてから使ってください。
よくあるのは、お子さまが寝た後のリビングで、片方が「大学って結局いくらかかるの」と切り出し、もう片方が「まだ先の話でしょう」と返して、テレビの音だけが残るという場面です。切り出した側は数字が欲しくて、返した側は数字を見るのが怖い。どちらも間違っていません。ただ、この会話が3年おきに同じ形で繰り返されると、高3の春に奨学金の申込書を前にして、初めて夫婦の見積もりが2倍違っていたことに気づきます。先に数字を机に出すだけで、この場面は変わります。
話す時期と順番を先に決める
教育費の話がこじれる原因は、金額そのものより「誰が、いつ、何を決めるか」が決まっていないことにあります。夫婦の間で決まっていない数字をお子さまに聞かれると、片方が答えた数字をもう片方が否定する形になり、お子さまは「お金の話は親を困らせる」と覚えてしまいます。だから順番は、夫婦が先、親子が後です。
図1のように、話す時期は進路の節目の半年前に置きます。中3の秋には高校の学費、高1の終わりには大学の学費の枠、高3の春には奨学金の申込、という並びです。節目の当日に話すのでは遅く、半年前なら、志望校を変える余地も、貯め方を変える余地も残っています。

小学生のうちに夫婦で話すのは、具体的な学校名ではなく、総額の見積もりと、月々の積み立ての額だけで足ります。たとえば月1万円を10年続ければ120万円、月2万円を6年続ければ144万円です。この段階で志望校の話をすると、まだ見えていないお子さまの性格や成績で話が空転します。数字だけを決めて、あとは年に1回、年度の初めに見直す。これで十分です。
中3の秋は、高校の学費を親子で初めて話す時期です。ここで夫婦が先に揃えておくのは、公立と私立のどちらでも受け入れられる家計かどうか、です。2026年度から高等学校等就学支援金の所得制限がなくなり、私立全日制なら年457,200円、公立なら年118,800円を上限に授業料が支援されます。ただし施設費、修学旅行の積立、制服や教材は対象の外です。「授業料は国が持つから私立でも同じ」という言い方は、この自己負担を見落とします。
高1から高2にかけて親子で話すのは、大学の学費の「枠」です。学部や大学名を決める前に、家計として出せる上限の金額を一つ示します。枠を先に示されたお子さまは、その中で選ぶか、枠を越える分をどう埋めるかを自分で考え始めます。枠を示さずに「好きなところへ行きなさい」と言われたお子さまは、高3の秋に初めて金額を知り、志望を下げることになります。
夫婦で揃える数字は三つ
夫婦で揃える数字は、総額の見積もり、今ある貯蓄のうち教育費に回せる額、そして足りない分をどう埋めるかの三つです。三つ目は「収入から払う」「貯めてある分を取り崩す」「借りる」のどれで埋めるかの話で、ここが夫婦で一致していないと、高3の春に奨学金を借りるかどうかで初めて意見が割れます。
総額の見積もりには、文部科学省の子供の学習費調査の数字を使います。令和5年度の調査では、学習費の総額は年額で公立中学校が542,450円、公立高校(全日制)が596,954円、私立高校(全日制)が1,179,261円です。この総額は、学校に払う費用と給食費、塾や習い事などの学校の外の費用を合わせた額で、家庭によって塾の費用の幅が大きいことは割り引いて読みます。
図2は、公立中3年、私立高3年、国立大4年と進んだ場合の計算例です。公立中は542,450円かける3年で1,627,350円、私立高は1,179,261円かける3年で3,537,783円、国立大は文部科学省の省令で定める標準額の授業料535,800円かける4年に入学料282,000円を足して2,425,200円。合計は7,590,333円です。高校を公立にすると、596,954円かける3年で1,790,862円となり、合計は5,843,412円。高校の公私の差が3年で1,746,921円になります。

この計算例には二つの注意があります。一つは、学習費調査が令和5年度のもので、2026年度の就学支援金の拡充より前の数字だということです。私立高校の授業料のうち年457,200円までは所得にかかわらず支援されるので、授業料の自己負担がいくらになるかは、志望校の授業料と上限額の差で別に計算します。もう一つは、国立大学の授業料は標準額と違う額を定めている大学があることで、志望校の公表している額で確かめます。
見積もりができたら、今ある貯蓄のうち教育費に回せる額を夫婦で決めます。全部を教育費に回すと、親の病気や転職のときに戻す場所がなくなります。残す額を先に決めてから、回せる額を決める。この順番にすると、夫婦のどちらかが「使いすぎ」と感じる場面が減ります。
足りない分の埋め方は、収入から払う分、取り崩す分、借りる分に分けて、それぞれの上限を決めます。借りる分については、日本学生支援機構の貸与型の奨学金は学生本人の名義で借りて卒業後に本人が返すこと、国の教育ローンは親の名義で借りて親が返すことを、ここで夫婦が確かめておきます。誰が返すかを決めないまま借りると、お子さまが社会人になってから家の中で揉めます。
お子さまにどこまで話すか
お子さまに教育費の話をするとき、家計の全部を見せる必要はありません。見せるのは「枠」と「仕組み」です。年収や貯蓄の総額を見せると、お子さまは数字の大きさに驚くか、逆に「うちは余裕がある」と誤解します。枠は、「大学の学費として出せる上限はこの額」という一つの数字で足ります。
中学生のうちは、高校の授業料は国の支援金がかなりの部分を持つこと、ただし施設費や制服、修学旅行の積立は家で払うこと、この二つを話します。「私立は高いから無理」ではなく、「授業料は国が持つけれど、それ以外に年にこれくらいかかる」と項目で話すと、お子さまは自分で学校案内の費用の欄を読むようになります。
高校生になったら、大学の学費の枠と、奨学金の仕組みを話します。奨学金については、給付型は返さなくてよく、貸与型は本人が借りて本人が返すこと、日本学生支援機構の第二種は大学の場合に月2万円から12万円の範囲で1万円単位で額を選べることを伝えます。月5万円を4年間(48か月)借りると240万円、月3万円なら144万円です。この数字を高1のうちに見ておくと、「借りれば何とかなる」と「借りたら返すのは自分」の両方が、お子さまの中でつながります。
高3の春には、奨学金の予約採用の申込が高校経由で始まります。ここで話すのは、申し込むかどうか、申し込むなら給付と貸与のどちらを申し込むか、月額はいくらにするかの三つです。申込書の名義はお子さま本人で、親は家計の情報を出す側です。この構図を本人が理解していると、大学に入ってから月額を減らす、増やすといった判断を自分でできるようになります。
話し方で一つだけ避けたいのは、「お前のためにこれだけ払っている」という言い方です。これは枠の説明ではなく、負債の通告として届きます。枠を示す言い方は、「ここまでは家で出す、ここから先は一緒に考える」です。
進路の希望と予算の折り合いをつける
志望校の話が出たとき、予算と希望が合わないことは珍しくありません。私立と国公立、自宅と下宿、文系と理系で、4年間の総額は大きく変わります。折り合いのつけ方は、希望を削ることではなく、差額をどう埋めるかを一緒に数えることです。
まず、枠の中に収まる進路と、枠を越える進路に分けます。越える分について、制度で埋まる部分を先に確かめます。たとえば高等教育の修学支援新制度では、扶養するお子さまが3人以上の世帯は所得にかかわらず授業料等が減免され、上限は年額で国公立大学が授業料54万円と入学金28万円、私立大学が授業料70万円と入学金26万円です。3人きょうだいの家庭では、この制度で枠の見え方が変わります。対象かどうかは、在学している学校と日本学生支援機構の案内で確かめます。
制度で埋まらない分は、本人が借りる分、親が借りる分、取り崩す分に分けて、どこまでなら受け入れられるかを夫婦と本人の三者で決めます。本人が借りる分は、卒業後の返還が月いくらになるかを先に見せます。月の返還額を見ずに総額だけで決めると、就職した年に家計が回らなくなります。
ここで大切なのは、折り合いを一度で決めないことです。高1で示した枠は、高3までに家計が変わることもあれば、お子さまの志望が変わることもあります。年に1回、年度の初めに同じ表を開き、数字を書き直す。この作業を繰り返す家庭では、高3の秋に慌てて志望を下げる場面がほとんどありません。
祖父母からの援助の受け方
祖父母から教育費の援助の申し出があることは、よくあります。ありがたい話ですが、受け方を決めずに受けると、夫婦の間と、きょうだいの間と、祖父母との間の三か所で後から揉めます。
まず夫婦で、受けるかどうか、受けるなら何に使うかを決めます。「入学金に充てる」「下宿の初期費用に充てる」のように使い道を一つに決めると、祖父母にも説明しやすく、あとで「あのお金はどこへ行った」という話になりません。きょうだいがいる場合は、下のお子さまのときにも同じ形で受けられるかを、この段階で祖父母に確かめます。
金額と時期も先に決めます。一度にまとまった額を受けるのと、毎年少しずつ受けるのとでは、税の扱いが変わることがあります。贈与税の仕組みと、教育資金をまとめて贈与するときの特例については、金額や条件が年度で変わるので、税務署か税理士の窓口で確かめてから受け取ります。ここで数字を思い込みで決めると、あとから税の手続きが要ることに気づきます。
受けたあとは、金額と日付と使い道を一枚に書き残します。口約束のままにすると、祖父母の記憶と親の記憶が食い違ったときに確かめる手段がありません。書き残すのは疑っているからではなく、感謝を形にして残すためだと、祖父母には伝えます。
よくある質問
夫婦で教育費の考え方が違うときは、どちらに合わせるべきですか
どちらかに合わせるのではなく、数字で合わせます。考え方の違いの多くは、片方が高校までを想定し、もう片方が大学の下宿まで想定しているといった、見積もりの範囲の違いから来ています。文部科学省の調査の数字と志望校の公表額で、同じ範囲の同じ表を作ると、違いは「考え方」ではなく「どの進路まで備えるか」の選択に変わります。選択なら、夫婦で決められます。
子どもにお金の話をすると、進路を遠慮してしまいませんか
枠の示し方によります。「うちはお金がないから」と言えば遠慮しますが、「ここまでは家で出す、越える分は制度と奨学金で一緒に埋める」と言えば、お子さまは越える分の埋め方を考え始めます。遠慮させるのは金額ではなく、相談の余地がない言い方です。
高3になってから話し始めても間に合いますか
奨学金の予約採用の申込は高3の春から始まるので、申込には間に合います。ただし、志望校を変える余地と、積み立てを増やす余地は、高3の春にはほとんど残っていません。高3で話し始める家庭は、枠を示す段階を飛ばして、制度と奨学金で埋める段階から入ることになります。それでも、話さないまま出願するよりずっとよい結果になります。
祖父母の援助を断りたいときは、どう伝えればよいですか
使い道と時期を決めてから、「今回は家で払えるので、下宿のときにお願いするかもしれない」のように、受ける可能性を残した断り方にします。全部を断ると、祖父母は次に申し出る機会を失います。
確かめる順番
今週、家庭で確かめることを順番に並べます。図3のとおり、夫婦で揃える段階が先で、お子さまに示す段階が後です。

- 夫婦で、高校から大学までの総額の見積もりを一枚の表にする。文部科学省の学習費調査の年額に年数をかけ、志望校の公表額で置き換えられる所は置き換える。
- 今ある貯蓄のうち、教育費に回せる額と、家計のために残す額を分ける。回せる額を先に決めない。
- 足りない分を、収入から払う分、取り崩す分、借りる分に分け、借りる分は誰の名義で誰が返すかまで決める。
- お子さまに、大学の学費の枠を一つの数字で示す。年収や貯蓄の総額は見せない。
- 高校の就学支援金と、高等教育の修学支援新制度の対象かどうかを、学校と都道府県の案内で確かめる。
- 祖父母の援助があるなら、使い道と金額と時期を夫婦で決めてから、税の扱いを税務署の窓口で確かめる。
- 年度の初めに同じ表を開く日を決め、暦に書く。
この順番を一度通した家庭は、次の年からは7番目の見直しだけで足ります。最初の一回が、いちばん時間がかかります。
進路の話とつなげる
お金の心配は、進路の相談の入口に置かれるべきもので、出口に置かれると志望を下げる理由にしかなりません。入口に置かれた枠は、「この枠の中でいちばん行きたい所はどこか」「枠を越えてでも行きたい所なら、何で埋めるか」という、前向きな問いに変わります。
個別指導の面談では、志望校の公表している学費と、就学支援金や修学支援新制度の対象かどうかの確かめ方、奨学金の申込の時期を、進路の希望と並べて整理します。家計の数字そのものは家庭で決めるもので、面談ではその数字を前提に進路の選択肢を並べる所までを引き受けます。
まとめ
高3の春に申込書の前で初めて揃える数字は、小学生のうちにリビングの机に出せば、3年ごとに一枚の表を書き直すだけで済みます。お子さまが寝た後のリビングで最初に数字を出した人が、この話し合いを始めた人です。
読んで終わりにするか、ここから変えるか。
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