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【高校現代文】評論の頻出語を図解で総まとめ—近代・主体・客体・相対・絶対・普遍・個別・アイデンティティ|武蔵野個別指導塾

主体と客体、相対と絶対など評論の抽象語60語を整理します。対比の図と4つの例題を使い、文脈に合う意味の選び方や語彙ノートの作り方を練習できます。
よくあるのは、塾の自習室の白板の前で「主体・客体」「相対・絶対」と並んだ語を見て、意味は覚えたつもりなのに、本文の何を指すのか説明できずに止まるという場面です。「主体は自分、客体は物」と覚えていると、他人が主体になった文で迷います。「相対的は人それぞれ」とだけ覚えていると、何と比べているのかを読み落とします。
評論の語彙は、難しい漢字をやさしい言葉に置き換えるだけでは十分ではありません。語の基本的な意味を持ったうえで、誰について、どの範囲で、何と対比して使われているかを確かめる必要があります。語と語の関係がわかると、長い文の中でも、筆者がどちらを取り上げ、何を問題にしているかを追いやすくなります。
まず頻出の抽象語60語を整理し、次に短い文章で意味を絞ります。最後は、自分の言い換えが本文に合っているかを確かめる練習です。単語帳の意味と読解の答えを結ぶ道筋を、一段ずつたどりましょう。
この単元で身につけること
- 語の中心的な意味を説明します。「主体」なら認識や行為をする側、というように、別の文章でも使える意味を押さえます。目の前の具体例だけを定義にしないことが出発点です。
- 対になる語と関連する語を区別します。「主観・客観」は視点の違い、「目的・手段」は目指すものと方法の関係です。2語が並んでいるという理由だけで反対語と判断しないようにします。
- 文中の指示対象を補います。「個別の事情」とあれば、誰のどんな事情かを近くの文から拾います。語の意味を覚える作業と、本文の情報を探す作業をつなぎます。
- 二項対立の軸を言葉にします。2つの立場が何について違うのかを説明し、対立が最後まで続くのか、途中で結び直されるのかを確かめます。
- 語彙ノートに根拠を残します。意味だけでなく、短い用例、対比される語、その文での言い換えを記録し、次に読むときに自分で意味を判断できる形にします。
中学校で学ぶ指示語・接続語・具体例の読み取りは、抽象語が何をまとめ、何と区別しているかを確かめる土台になります。
基本の考え方
意味の中心を持ち、文脈で範囲を決める
抽象語とは、個々の物や出来事から共通する性質や関係を取り出して表す語です。たとえば「貸した本を返す」「約束の時刻を守る」という行動は、それぞれ具体的です。それらをまとめて「責任ある行動」と呼ぶと、個々の場面を越えた性質に目を向けています。ただし「責任」の内容は、友人同士の約束を論じる文と、制度を論じる文とでは同じではありません。
語を読むときは、最初に基本義を思い出し、次に前後の説明を探し、最後にその文章に合う表現へ絞ります。図1のように、辞書的な意味から文中の言い換えへ進む間に、必ず本文を挟みます。見慣れた語ほど、普段の使い方だけで読み切らないことが必要です。

図1の「対比・例・限定」は、意味を絞るための手がかりです。「つまり」の後には言い換えが、「たとえば」の後には具体例が現れやすくなります。また「この場面では」「必ずしも」「だけではない」は、主張の範囲を調整します。「自由」を説明する文でも、「選択肢があること」と定義するのか、「自分の判断で選べること」と定義するのかで、答えに含める内容が変わります。
頻出60語を対比と関連で整理する
次の表は、評論で出会いやすい60語を30組にしたものです。番号は組の番号で、各行に2語ずつあります。「対比」はその観点で区別される組、「関連」は一緒に論じられやすい組です。関連の組を反対語として暗記する必要はありません。また対比の組でも、現実のすべてを2つに分けられるとは限らず、一方が善で他方が悪だという意味もありません。
| 組 | 2語と基本的な意味 | 関係・短い用例 |
|---|---|---|
| 01 | 近代:一般に、個人の自立や理性、科学、近代的な制度などが重視される歴史的な時代や社会のあり方。前近代:近代以前の時代や社会のあり方。 | 対比。ただし地域や論点で区切りは異なります。「近代的な個人像」を論じるときは、単に新しい人物という意味ではありません。 |
| 02 | 主体:認識・判断・行為をする側。客体:その認識や行為の対象となる側。 | 対比。「観察者が木を調べる」では、観察者が認識の主体、木が客体です。客体は物に限りません。 |
| 03 | 主観:その人の意識や立場に基づく見方。客観:特定の人だけの感じ方から離れ、対象や共有可能な根拠に即して捉える見方。 | 対比。「私は寒いと感じる」と「室温を測って記録する」では、判断を支えるものが異なります。 |
| 04 | 相対:他のものとの関係や、ある条件のもとで成り立つこと。絶対:他との比較や条件への依存を離れて成り立つこと。 | 対比。「この集団では背が高い」は相対的な評価です。「絶対に行く」という日常の強調と、評論の概念を区別します。 |
| 05 | 普遍:ある範囲のすべてに広く妥当すること。個別:一つ一つの事物や場合に即していること。 | 対比。「すべての人の尊厳」と「一人の生活事情」は扱う範囲が違います。普遍的な原則と個別の配慮は両立し得ます。 |
| 06 | 抽象:個々のものから共通する性質を取り出して捉えること。具体:個々の姿や内容が明確に示されていること。 | 対比。「移動手段」は「自転車」「船」をまとめる抽象的な表現です。抽象的であることと、不正確であることは別です。 |
| 07 | 一般:多くの場合に共通すること、または広い範囲に当てはまること。特殊:一定の限られた範囲や条件に特有であること。 | 対比。「一般的な傾向」に対して「この地域に特殊な事情」を挙げます。一般的な傾向には例外があり得ます。 |
| 08 | 同一:同じものであること、またはある点で等しいこと。差異:ものとものの間にある違い。 | 対比。「形は同一でも用途には差異がある」のように、何について同じか、違うかを補って読みます。 |
| 09 | 自律:自分で立てた規範や判断に従って自分を律すること。他律:自分以外から与えられる命令や規範などに従うこと。 | 対比。「自律して学ぶ」は好き勝手に行うことではありません。「他者の助言を聞く」ことだけで他律とは決められません。 |
| 10 | 理性:筋道を立てて考え、判断する能力。感性:物事に触れて感じ取り、印象や価値などを受け止める能力。 | 対比して扱われる組です。「理性で検討し、感性で美しさを受け止める」のように、働きが補い合う場合もあります。 |
| 11 | 合理性:理由や目的に照らして筋が通り、理にかなっている性質。非合理性:そのような筋道や合理的な説明に収まりきらない性質。 | 対比。「効率を優先する合理性」を批判する文もあります。合理的であれば、道徳的にも正しいとは限りません。 |
| 12 | 科学:現象を証拠や筋道に基づいて調べ、体系的に説明しようとする営み。技術:目的を実現するための方法や技能、その体系。 | 関連。「性質を科学で調べ、技術によって道具に生かす」とつながります。技術は機械だけを意味する語ではありません。 |
| 13 | 自然:人為との対比では、人の手によらない物事やその成り立ち。文化:人々が社会の中で作り、学び、伝える生活様式や意味の体系。 | 対比して論じられます。「食べる必要」と「食事の作法」では着目点が違います。「自然」という語の範囲は本文で確かめます。 |
| 14 | 伝統:受け継がれてきた考え方や習慣、技法など。革新:従来の仕組みや方法を改め、新しいものにすること。 | 対比。「伝統の技法を生かして表現を革新する」なら、受け継ぐことと変えることが結びついています。 |
| 15 | 個人:集団を構成する一人一人の人間。社会:人々の関係や共同生活、その制度などによって成り立つまとまり。 | 関連し、ときに対比されます。「個人が社会の規範を変える」では、一人と集団の単純な優劣を述べてはいません。 |
| 16 | 共同体:生活や関心、慣習などを共有し、結びついている人々のまとまり。公共性:特定の個人や集団だけに閉じず、人々に共通して関わる性質。 | 関連。「共同体の利益を公共性の観点から見直す」なら、身内の利益と広い範囲への配慮が問題になります。 |
| 17 | 自由:一定の拘束から離れ、自ら選び行うことができること。必然:条件や成り行きから、そうなるほかないこと。 | 対比して扱われます。「自由な選択か、条件による必然か」では、選択の余地が軸になります。必然と単なる高確率は別です。 |
| 18 | 権利:ある行為や利益を正当に認められ、求めることのできる資格。義務:規範や役割などに基づいて果たすべきこと。 | 関連。「権利の保障と義務の履行」は同じ意味ではありません。また、あらゆる権利が義務の履行と引き換えになるわけではありません。 |
| 19 | 平等:人々を等しく扱うこと、等しい地位や機会などを認めること。公平:偏りを避け、事情や基準に照らして公正に扱うこと。 | 関連し、区別される組です。「同じ量を配るか、必要に応じて配るか」は違いを考える例ですが、これだけが唯一の定義ではありません。 |
| 20 | 目的:実現しようと目指すこと。手段:目的を実現するための方法。 | 関連。「理解するために暗記する」なら理解が目的、暗記が手段です。何を何のために行うかで、位置づけは変わります。 |
| 21 | 原因:ある出来事や状態を生じさせるもとになるもの。結果:その原因によって生じた出来事や状態。 | 関連。「水を与えなかったため苗が枯れた」は因果を述べます。前後して起きたという事実だけでは、原因と結果は確定しません。 |
| 22 | 本質:それをそれとして成り立たせる根本的な性質。現象:観察や経験に現れる出来事や姿。 | 対比。「現象の背後にある本質を考える」と使います。現象がすべて偽物で、本質だけが本物だという意味ではありません。 |
| 23 | 実体:それ自体で存在するものとして捉えられる存在や中身。関係:複数のものの間に成り立つ結びつき。 | 対比して扱われます。「人を孤立した実体として見るか、関係の中で見るか」は、対象の捉え方の違いです。 |
| 24 | 構造:要素どうしの関係によって成り立つ全体の組み立て。機能:あるものが全体の中で果たす働き。 | 関連。「組織の構造」と「各部署の機能」では、配置やつながりを見るか、働きを見るかが異なります。 |
| 25 | 記号:何かを指し示し、意味を伝えるもの。意味:言葉や記号などによって示され、理解される内容。 | 関連。「赤い印を停止の記号として使う」なら、印と、それが示す内容を区別します。同じ印でも文脈で意味が変わり得ます。 |
| 26 | 言語:音声や文字などを用いて意味を表し、伝える体系。思考:物事を捉え、関係づけ、考える働き。 | 関連。「言語が思考に影響する」と「言語だけが思考を決定する」では主張の強さが異なります。関係の述べ方を確かめます。 |
| 27 | 自己:自分自身、または自分についての意識。他者:自分とは別の存在、とりわけ自分と異なる視点や経験を持つ相手。 | 対比。「他者との対話で自己を見直す」では、他者は単なる敵ではありません。違いが自己理解に関わっています。 |
| 28 | アイデンティティ:自分が自分であるという同一性や、自分は何者かという理解。多様性:異なる性質やあり方がさまざまに存在すること。 | 関連。「多様性のある社会でアイデンティティを考える」と使います。両者は反対語ではなく、所属集団の同一性を論じる場合もあります。 |
| 29 | 事実:実際に起きたり存在したりすること。価値:よい、望ましい、大切だと認められる性質や意義。 | 区別する組です。「利用者が増えた」は事実についての記述、「その変化は望ましい」は価値判断です。両者を支える根拠を分けます。 |
| 30 | 内在:あるものの内部に含まれ、そこにとどまること。超越:ある範囲や限界を越えること。 | 対比。「制度に内在する問題」と「制度を超越した観点」では、問題や視点の位置が異なります。超越は単なる高性能という意味ではありません。 |
この表の説明は、本文を読むための出発点です。たとえば「普遍」と「一般」は意味が重なりますが、日常的に多く見られる傾向を述べるのか、すべてに妥当する原則を主張するのかという違いが問題になります。「多くの人がそうしている」から「すべての人がそうすべきだ」へ進むには、別の根拠が必要です。似ている語を、いつでも交換できる語として扱わないようにしましょう。
二項対立は共通の問いから見つける
二項対立とは、2つの項を対照的に置き、その違いによって考えを組み立てることです。見つけるときには、まず両方が答えようとしている共通の問いを探します。「自律・他律」なら「判断や行動の基準はどこにあるか」、「主体・客体」なら「認識や行為をする側か、対象になる側か」が軸になります。別々の基準で2語を説明すると、比較が成り立ちません。
「一方」「これに対して」「しかし」があれば、その前後を候補として見ます。ただし、接続語があるだけで対になる語が確定するわけではありません。片方に「自分で決める」、もう片方に「命令を待つ」と書かれていれば、抽象語の自律と他律が直接出ていなくても、行動を決める基準の対比が読み取れます。
反対に、対になる語が出ていても、結論が二者択一とは限りません。「伝統を捨てるのではなく、その技法を新しい表現に生かす」という文なら、伝統と革新を結び直しています。「ではなく」の後だけを残して伝統を否定したと読むと、筆者の方向を取り違えます。対比を見つけた後には、最後の文で両者がどう位置づけられているかまで確かめます。
例題で解き方を確かめる
例題1 主体と客体を文の役割から判断する
次の文で、観察の主体と客体をそれぞれ答えましょう。
「係の生徒は、来場者が展示の前で立ち止まる様子を観察した。」
- まず「何をしているか」を探します。この文では「観察した」が中心です。主体と客体は、認識や行為との関係で決まるため、先に動作を固定します。
- 次に「誰が観察したか」を確かめます。「係の生徒は」が対応するので、観察の主体は係の生徒です。文章の読み手である自分を主体にする必要はありません。
- 最後に「何を観察したか」を確かめます。対象は単に展示ではなく、来場者が展示の前で立ち止まる様子です。「様子を」まで含めることで、この文が観察対象としている範囲を保てます。
ここで来場者は、「立ち止まる」という行為の主体ではあります。しかし設問が問うのは観察の主体です。1つの文の中に複数の行為があるときは、どの行為について答えるかを区別します。主語という文法上の呼び名と、主体という概念も、いつでも同じ範囲を指すわけではありません。
答え:観察の主体は係の生徒、客体は来場者が展示の前で立ち止まる様子です。
例題2 相対的な評価の基準を読む
次の文の「相対的な評価」の説明として最も適切なものを選びましょう。
「この箱は棚の上の箱より大きいが、床の箱より小さい。ここでの大小は比較する相手によって決まる相対的な評価である。」
ア 箱の大小は実際には存在せず、測ることができないという評価。
イ 箱の大小が、比較する相手との関係で決まるという評価。
ウ どの箱と比べても、大小が同じになるという評価。
- 「相対的」の基本義を呼び出します。他のものとの関係や条件のもとで成り立つことなので、まず比較対象に注目します。気分によって変わるという意味だけに狭めないためです。
- 「棚の上の箱」「床の箱」という2つの比較対象を拾います。同じ箱が、一方より大きく他方より小さいと述べられています。対象の寸法そのものが途中で変わったとは書かれていません。
- 選択肢を本文と照合します。アの「測ることができない」は本文にない追加、ウの「どの箱と比べても」は本文と逆です。関係によって評価が決まることを残したイが合います。
図2のように、「比較の基準が何か」を先に置くと、相対と絶対を別の語へ取り違えにくくなります。ここでは相対と絶対の概念上の違いを示しており、具体的な箱が絶対的な大小を持つと主張している図ではありません。

図2の下段にある普遍と個別は、適用する範囲を見る別の軸です。「どの相手との関係か」と「どこまで当てはまるか」を分ければ、相対的の反対を個別と答えるような混同を防げます。
答え:イです。
例題3 普遍的な原則と個別の事情の関係を説明する
次の文で、筆者は普遍的な原則と個別の事情をどのように関係づけていますか。両方に触れて説明しましょう。
「すべての利用者に学ぶ機会を保障するという普遍的な原則は、全員に同じ方法を課すことではない。読むことが難しい人には音声を用意するなど、個別の事情に応じた方法が、その原則を支える。」
- 普遍的な原則の中身を取り出します。「すべての利用者に学ぶ機会を保障する」が該当します。「何でも同じにする」と置き換えると、機会と方法の区別が消えるので注意します。
- 否定の範囲を確かめます。「ではない」が否定するのは、全員に同じ方法を課すことです。普遍的な原則そのものを否定しているわけではありません。
- 具体例が何を説明しているかを探します。音声の用意は個別の事情に合わせる方法の例です。答えでは例をそのまま並べるだけでなく、「事情に応じて方法を変える」とまとめます。
- 最後の「支える」を答えに反映します。普遍と個別を対立させて終わらず、個別への対応によって普遍的な原則が実現されるという関係まで述べるためです。
この文章での「同じ」は、すべての箇所で同じ役割を持つわけではありません。学ぶ機会を保障する点は共通でも、用いる方法まで同一にする必要はないと述べています。抽象語の意味がわかっていても、その語が何にかかっているかを見失うと答えが逆になります。
答え:すべての利用者の学ぶ機会を保障する原則を、個別の事情に応じて方法を変えることで支えると捉えています。
例題4 アイデンティティを文脈に即して言い換える
次の文で「アイデンティティ」が意味する内容を、本文の考え方に沿って説明しましょう。
「アイデンティティは、一度決めた自己紹介を守り続けることではない。他者との対話によって大切にするものが変わっても、その変化を自分の歩みとして受け止めるところに、自分が自分であるという理解は成り立つ。」
- 基本義から「自分が自分であるという同一性や自己理解」を押さえます。これが意味の中心なので、「他人と違う目立った特徴」だけに置き換えないようにします。
- 「ではない」の前後を読みます。固定された自己紹介を守ることを退けているため、「一生変化しない性格」という答えは本文に合いません。
- 肯定される内容を結びます。「他者との対話」「大切にするものの変化」「自分の歩みとして受け止める」をつなぐと、変化を含んだ自己理解だとわかります。
- 語の説明として文を整えます。「大切なものが変わること」だけでは変化の説明で終わるので、その変化を自分の連続した歩みとして捉えるという点まで残します。
アイデンティティをいつも「変化するもの」と定義するわけではありません。この文が変化と同一性をどう関係づけているかを読んだ結果として、答えに変化を含めます。基本義を捨てず、本文の説明によって内容を具体化するところが、この問題の要点です。
答え:他者との対話で生じた変化も自分の歩みとして受け止め、自分が自分であると理解することです。
つまずきやすいところと直し方
誤り1 対になる語をすべて善悪で分ける
誤った書き方は「近代は進歩したよい社会で、前近代は遅れた悪い社会」です。近代と前近代は、歴史的な時代や社会のあり方を捉える概念であり、語の意味そのものに一律の善悪が入っているわけではありません。近代的な制度の利点を述べる文章もあれば、その制度が抱える問題を述べる文章もあります。
正しい書き方は「近代と前近代の違いのうち、本文が何を取り上げ、どう評価しているかを分けて読む」です。たとえば「近代的な個人の自立は、孤立の問題も生んだ」という文なら、自立という特徴と、孤立という問題が結びついています。「近代だからすべて肯定される」と先に決めると、後半を取り落とします。
理性と感性、自然と文化などでも同じです。対比の線を引くことと、優劣を決めることは別の作業です。筆者の評価を答える問題では、抽象語自体ではなく、「支える」「妨げる」「必要だ」などの評価や関係を示す表現を根拠にします。
誤り2 相対を「何でも正しい」と言い換える
誤った書き方は「価値観は相対的だから、どんな判断にも根拠はいらない」です。相対的とは関係や条件に依存することであり、根拠が不要だという意味ではありません。同じ条件のもとで比べる、評価の基準を明らかにするなど、判断を確かめる余地は残ります。
正しい書き方は「価値判断が何に依存するのかを示し、その条件の中で根拠を確かめる」です。「この地域では雨を避けられる場所が重視される」とあれば、生活環境という条件を拾います。そこから「他の地域には何の価値もない」「すべての判断は同じ程度に正しい」と広げることはできません。
また「普遍的な価値を疑う」という文があっても、価値そのものをすべて否定するとは限りません。疑っている対象が、価値なのか、あらゆる場面に当てはめる態度なのかを区別します。否定や限定のかかる範囲を示せると、語彙の説明が本文の説明になります。
誤り3 語彙ノートを意味の写しだけで終える
誤った書き方は「自律=自分で決める。他律=他人に決められる」だけを残すことです。入口としては役立ちますが、規範に従って自分を律するという意味が抜けています。また、助言を聞きながら自分で判断する場合を、他律と誤認するおそれがあります。
正しい書き方は、基本義と本文の使い方を分けて記録することです。図3のように、1語について4つの欄を用意します。長い説明を写すよりも、どの表現を根拠に意味を絞ったかが見えるように整えます。

図3の欄に「自律」を記入するなら、基本義は「自分の規範や判断に従って自分を律すること」、短い用例は「助言を聞いたうえで、自分で計画を選び、守る」とします。対比の欄には「他律。基準が自分の外から与えられる場合との違い」、言い換えの欄には「助言を参考にしつつ、自分の判断で計画に従うこと」と書けます。
復習では基本義の欄だけを眺めず、用例を読んで言い換えの欄を隠します。その文のどこが自律に当たるかを説明し、書いてある答えと比べます。うまく説明できないときは、語全体を覚え直す前に、「自分の判断」「計画を守る」のどちらを落としたかを確かめると、直す場所が具体的になります。
練習問題
練習1
「生徒が、校庭に集まる鳥の動きを記録した。」という文で、記録する行為の主体と客体を答えましょう。客体は「何を」に当たるまとまりで答えます。
練習2
「この道は川沿いの道より短いが、橋を渡る道より長い。」という評価について、相対・絶対のどちらの考え方に当たるか答え、基準になっているものを説明しましょう。道の長さが変化したとは書かれていない点に注意します。
練習3
次の文で筆者が述べていることとして、最も適切なものを選びましょう。
「参加する権利をすべての人に認めるためには、参加の方法を一律にするだけでは足りない。会場へ来られない人に別の方法を用意することが、共通の権利を支える。」
ア 共通の権利を守るには、すべての人に同じ方法だけを認めるべきである。
イ 個別の事情への対応によって、すべての人に共通する権利を支えられる。
ウ 個別の事情が違う以上、すべての人に共通する権利は認められない。
練習4
「家では聞き役だった人が、集まりでは司会を引き受ける。役割が変わっても、それぞれを自分の経験として結びつけることで、アイデンティティは保たれる。」という文で、アイデンティティが保たれるとはどういうことですか。「役割」と「経験」の両方を用いて説明しましょう。
答えと解説
練習1の答え:主体は生徒、客体は校庭に集まる鳥の動きです。「記録した」の主語と対象を対応させます。校庭だけでは場所を答えたことになり、鳥だけでは記録した内容の「動き」が抜けます。
練習2の答え:相対の考え方で、川沿いの道や橋を渡る道との比較が基準になっています。同じ道について、相手に応じて短いとも長いとも評価しているためです。「気分で決める」という説明は本文にないので加えません。
練習3の答え:イです。別の参加方法を用意することが、共通する権利の保障を支えています。アは方法を一律にするだけでは足りないという説明と矛盾し、ウは共通の権利を支えるという結論を逆にしています。
練習4の答え:異なる役割で得た経験を自分のものとして結びつけ、自分が自分であるという理解を保つことです。聞き役と司会の両方を同じ行動にそろえるのではなく、異なる経験のつながりを読み取ります。「いつも同じ役割を続けること」とは答えられません。
次の単元へのつながりと家庭での確かめ方
語の意味を本文に即して絞る力は、評論の要約や記述問題で使います。「相対的な評価」とだけ書くより、「比較相手によって決まる評価」と説明できれば、意味の理解が読み手に伝わります。小論文でも、自由や公平などの語をどんな意味で用いるかを明らかにすると、具体例と主張の食い違いを点検できます。
家で5分でできる確かめ方の1つ目は、表から1組を選び、同じ題材で2語の違いを説明することです。主体と客体なら「誰が何を観察するか」を1文作り、立場を入れ替えた別の文も作ります。対象がいつも物になるとは限らないことまで確かめられます。
2つ目は、例題の1文から抽象語を隠し、前後の説明だけを手がかりに言い換えることです。元の語を当てるだけで終えず、その言い換えを支える箇所も示します。保護者の方がお子さまと確かめる場合も、難しい定義を先に伝えるより、「どこにそう書いてあるか」を聞く形にすると、読み方を確認できます。
個別指導で確かめる際は、抽象語の暗記に戻るべきなのか、主語と対象の対応、否定の範囲、接続語の働きに戻るべきなのかを、実際の言い換えから見分けます。意味を知っているのに答えがずれる場合には、根拠にした文と答えを並べ、抜けた条件を探します。
まとめ
白板に並ぶ語を一つずつ説明できるようになったら、次は、その語を使わずに本文の一文を説明してみましょう。「近代」を「新しい時代」、「主体」を「自分」と置き換えただけでは、まだ文が述べている関係を捉えきれない場合があります。誰の判断なのか、何と比べるのか、どの範囲に当てはまるのかを補うことで、暗記した意味が読解の根拠に変わります。
評論の語彙を身につけた証拠は、難しい語を言えることではなく、その語が本文で引いている境界を説明できることです。
本気になった日が、入塾の日。
お子様の教育、迷ったら「丸投げ」してください。必ず、期待以上の結果で返します。武蔵野で育む、武蔵境で学ぶ。
電話は年中無休。365日、24時間、お電話可能。




