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テーマ型の小論文の準備—ニュースを材料に変えるノートの作り方と、一般論の抜け出し方|武蔵野個別指導塾

ニュースを1本読むたびに、できごと・意見が分かれる所・自分の立場・反対の立場の言い分を4行で書いておけば、一行の題を前にしても使える材料がノートにたまっていきます。
テーマ型の小論文で書けなくなる原因は、たいてい書き方の型ではなく、題を見た瞬間に取り出せる材料が手元に無いことです。ニュースを読んでいるのに書けないなら、足りないのは記事の数ではなく、読んだ後の書き込みです。1本読むたびに、ノートへ「できごと」「意見が分かれる所」「自分の立場」「反対の立場の言い分」の4行を書いてください。まだ何も集めていないなら、今週読む1本から始めれば足ります。それでも答案が一般論で止まるときは、「どんな場面か」「誰が困るか」「どの数字を確かめるか」の3つを自分に聞き直すと、その題でしか書けない文に変わります。
よくあるのは、新聞の切り抜きが10枚、使い道がないままクリアファイルに挟まっている場面です。どの記事にも蛍光ペンの線が引いてあり、読んだ日の関心は本物でした。ところが練習で「地域の暮らしについて、あなたの考えを述べなさい」という一行の題を出されると、10枚のどれを使えばよいのかが浮かびません。1行目に「地域の暮らしは大切である」と書いたところで、鉛筆が止まります。材料は持っているのに、答案へ移せる形になっていないのです。
一行の題で手が止まるのは、切り抜きに自分の言葉が残っていないから
テーマ型とは、課題文もグラフも付かず、「〜について論じなさい」という一行の題が出る型を指します。課題文型なら、文章の中に筆者の主張と論点が書いてあり、それに賛成するか反対するかから組み立てを始められます。テーマ型には、その足場がありません。何を問題にするか、どちらに立つか、反対の側は何を言うかを、書く人が自分の頭の中から持ち込むことになります。テーマ型の小論文の書き方で迷うのは、文章が苦手だからというより、持ち込む物が見つからないからです。
では、クリアファイルの切り抜きには何が書いてあるのでしょうか。書いてあるのは、記者の言葉でまとめたできごとと、ときどき専門家や関係者の一言です。読んだ人がどちらに立ったのか、反対の側なら何と言い返すのかは、紙のどこにも書いてありません。試験の最中に思い出せるのは、見出しと、線を引いた一文くらいです。そうなると、答案の1行目には、どの記事を読まなくても書ける文が来ます。「〜は大切である」「一人ひとりが考えていくべきだ」という文です。
この種の文は、題の言葉を入れ替えても、そのまま通ってしまいます。「地域の暮らし」を「環境」に変えても、「高齢化」に変えても、意味が崩れません。読み手には、題を読む前から用意してあった文のように受け取られやすく、書く人がその題について何を考えたのかが見えません。教室で下書きを直していると、こうした答案の余白には「誰が?」「どこで?」「どのくらい?」という赤字が縦に並びます。赤字が求めているのは、うまい言い回しではなく、その題でなければ書けない中身です。
文部科学省の令和9年度の実施要項は、小論文などを、自分で考えを筋道立てて組み立てる力や、考えた道筋を的確に言葉にする力をみるために使うことが望ましいとしています。一行の題は、その組み立ての部品まで書く人に用意させる出し方だと読めます。部品が無いまま書き始めると、組み立てがうまいかどうかを見せる前に、手が止まってしまいます。
そこで、ニュースを読んだ直後に、答案の部品になる4行をノートに残します。図1のように、切り抜きからそのまま取れるのは「できごと」の1行です。残りの「意見が分かれる所」「自分の立場」「反対の立場の言い分」は自分で書き足します。そうしておくと、4行が答案の問題提起・主張・反論と再反論にそのまま当てはまる形になります。

なかでも効くのは、4行目の反対の立場の言い分です。主張を言い切るだけの答案は、理由の集まりにならず、言いっぱなしに読めます。反対の側が何を言うかを先に書いておけば、試験ではそれに答える文、つまり再反論を書き足すことで論が厚くなります。ただし4行は暗記用の型ではありません。型は道具で、目的は理由の筋が通ることです。4行がそろっていても、3行目の理由と4行目への答えがかみ合っていなければ、答案は途中で崩れます。
ニュース1本を4行の小論文ノートにする手順と、1週間の回し方
用意するのは、罫線のノート1冊と、のりかテープです。手順は次の7つで、1本にかける時間は、塾で練習に使う目安で15分ほどです。
- 記事を1本選ぶ(2分)。選ぶのは、賛成と反対に分かれそうな話題です。事件や事故の速報、試合の結果のように意見の分かれようがない記事は、材料になりにくいので飛ばします。
- 見開きの左の頁に記事を貼り、右の頁を4行の場所にする(1分)。1本に1見開きを使い、2本を同じ頁に詰めません。後で読み返すとき、話題ごとにめくれるようにするためです。
- 1行目に、できごとを自分の言葉で書く(3分)。見出しを写さず、40字ほどで「何が起きて、誰が何をしようとしているか」をまとめます。行の終わりに、どこが発表したことかを括弧で書いておきます。市の発表なのか、省庁の審議会の報告なのか、記者が取材した話なのかで、後から確かめに行く先が変わるからです。
- 2行目に、意見が分かれる所を書く(3分)。まず「AかBか」の形で書き、次に「そもそもAとBの2つしかないのか」と1回疑って、気づいたことを書き添えます。問いの前提を疑う問題提起は、この行から生まれます。
- 3行目に、自分の立場を、立場の1文と理由の1文の2文で書く(3分)。「〜すべきだ。なぜなら〜からだ。」の形で、どちらか一方に立ちます。どちらに立つかに正しい答えは無く、理由が通っていれば、多くの人と逆の側でもかまいません。「両方大事」「バランスが必要」は、立場の行には書きません。
- 4行目に、反対の立場の言い分を1文で書く(2分)。反対の側の人が本気で言いそうな、いちばん強い言い分を書きます。言い負かしやすい弱い言い分を書いても、試験で使える反論になりません。
- 頁の下の余白に、確かめたい数字と、それが載っていそうな出どころを書く(1分)。数字そのものがわからなくても、「どの数字があれば立場が強くなるか」を書いておけば十分です。
4行と余白に何を書き、何を書かないかを表にまとめます。迷ったときは、右の欄に書いた物が入り込んでいないかを先に見てください。
| 行 | 書く物 | 長さの目安 | 書かない物 |
|---|---|---|---|
| 1行目 できごと | 何が起き、誰が何をしようとしているかと、その出どころ | 40字ほど | 見出しの写し、感想 |
| 2行目 意見が分かれる所 | 「AかBか」の形と、その前提への疑い | 1〜2文 | 自分の意見 |
| 3行目 自分の立場 | どちらに立つかと、その理由 | 2文 | 「両方大事」のような立場の無い文 |
| 4行目 反対の立場の言い分 | 反対の側のいちばん強い言い分 | 1文 | わざと弱くした言い分 |
| 余白 | 確かめたい数字と、載っていそうな出どころ | 1行 | 覚えていない数字の当て推量 |
クリアファイルにすでに切り抜きが10枚あるなら、新しい記事を探す前に、その10枚から始めてください。下の表の平日の欄を1日2本に読み替えれば、5日で10枚が10見開きのノートに変わります。かかる時間は1日30分ほどです。古い記事でも、4行に直す練習には十分使えます。
1週間の回し方は、たとえば次のように組みます。平日は1本を4行にするところまでにとどめ、週末は読み返しと、一行の題を立てての練習に回します。
| 曜日 | すること | 時間の目安 |
|---|---|---|
| 月〜金 | 1日1本、4行のノートを書く | 15分 |
| 土 | その週の5本を読み返し、似た話題をつなぐ | 20分 |
| 日 | 1本の話題から一行の題を立て、構成メモを作る | 30分 |
図2は、この表の流れを1枚にしたものです。日曜の練習が終わったら、翌週の月曜にまた1本目から始めます。

土曜の「つなぐ」は、5本の見開きを並べて、話題が違っても意見の分かれ方が似ている物を見つける作業です。たとえば「限られた場所を誰が先に使うか」「いまの便利さと、先の負担のどちらを取るか」という分かれ方は、まったく別の記事に何度も出てきます。見つけたら、見開きの右上に、その話題を一段広い言葉に言い換えた見出し語を2つ書きます。駅前の自転車置き場の記事なら、「まちの場所」「移動」のような言葉です。
日曜は、その見出し語を「〜について論じなさい」の形の一行の題にします。「まちの場所について論じなさい」と書いたら、ノートをめくって、使えそうな見開きを探します。一行の題は短いぶん、見出し語のような広い言葉になりやすいものです。広い言葉からノートの見開きにたどり着く練習をしておくと、本番で切り抜きの束を前に迷うことが減ります。構成メモまで作れたら、その日は終わりにしてかまいません。時間があれば、答案まで書いてみてください。
駅前の自転車置き場のノートを、直す前と直した後で比べる
ここからの例は、練習のために作った町の話です。実在の町や記事ではありません。話題は「駅前の自転車置き場が足りない」で、立場は「置き場を増やす前に、ほかの手を探す」側に立ちます。
1組目 ノートの4行
直す前のノートです。
できごと: 駅前の自転車置き場が足りないという記事を読んだ。 意見が分かれる所: 置き場を増やすべきかどうか。 自分の立場: 自転車を使う人のために、置き場を増やすことが大切だと思う。 反対の立場の言い分: お金がかかる。
どこが弱いかを見ます。1行目は記事を読んだという報告で、何が起きているのかも、誰の発表なのかも書いてありません。2行目は増やすか増やさないかの2つで止まり、前提を疑っていません。3行目は「大切だと思う」で終わり、理由が「使う人のため」の一言です。4行目は6字で、反対の側がいちばん言いたいことになっていません。この4行から試験で使えるのは、せいぜい話題の名前くらいです。
直した後のノートです。
できごと: 朝のうちに駅前の置き場が埋まり、入りきらない自転車が歩道に並んでいる。市は置き場を広げる案を出した(市の発表)。 意見が分かれる所: 置き場を広げるか、広げないか。ただ、足りないのは台数なのか、朝から夜まで動かない自転車が場所をふさいでいるのか。 自分の立場: 広げる前に、一日中止めたままの自転車を減らす手を試すべきだ。空いた場所が、朝に止めに来る人に回るからだ。 反対の立場の言い分: 足りないなら広げるのがいちばん確実で、止め方の決まりを変えても、効き目が出るまで時間がかかる。 余白: 朝に止めに来る台数と、夜まで動かない台数(市の発表で確かめる)。
いちばん大きく変わったのは2行目です。「台数が足りないのか、場所がふさがれているのか」という前提への疑いが入ったことで、3行目に「増やす以外の手」という立場が生まれました。4行目も、反対の側が会議で本気で言いそうな言い分になっています。これがあれば、試験では「時間がかかるのは、広げる工事も同じである」と答える再反論の一文を書けます。
2組目 答案の一段落
直す前の段落です。
駅前の自転車置き場の不足は、地域全体で考えるべき大切な問題である。自転車は環境にやさしく便利な乗り物であり、利用する人が困らない町にすることが求められる。一人ひとりが譲り合いの心を持てば、問題は解決に向かうだろう。
3つの文は、「自転車置き場」をほかの施設の名前に置き換えても、そのまま通ります。広げるのか、ほかの手を取るのかという立場がどこにもありません。困っている人は「利用する人」と書かれているだけで、歩道を通る人の姿が見えません。「譲り合いの心」は気持ちの話で、町が取れる手立てではありません。
直した後の段落です。
置き場を広げる前に、一日中止めたままの自転車を減らすべきだ。たとえば朝7時半の駅前で困っているのは、止める場所のない利用者ばかりではない。歩道に並んだ自転車をよけて、車いすの人やベビーカーを押す人が車道の端を通っている。置き場の中に朝から夜まで動かない自転車が多いなら、広げても同じように埋まるだろう。まず確かめるべきは、朝に止めに来る台数と、夜まで動かない台数の差である。
立場が1文目に出ました。誰が困るのかが、自転車を止める人から、自転車を使わずに歩道を通る人にまで広がりました。そして、確かめる数字を答案の中で名指ししたことで、数字を作らずに論の筋を示せています。直した後の段落の中身は、どれもノートの4行と余白から取ってきた物です。
一般論で終わる小論文から抜け出せない、3つのつまずき
1つ目は、自分の立場の行に、どの題にも通る文を書いてしまうことです。「〜は大切だ」と書いたら、図3のように、その1文に3つの問いを当てます。「どんな場面か」には、時刻と場所と目に見える物で答えます。「誰が困るか」には、当事者を2人以上挙げます。使う人と、使わないのに影響を受ける人です。「どの数字を確かめるか」には、数字そのものではなく、比べる項目で答えます。3つを通すと、どの題にも通る文が、この題だけの文に絞られていきます。

2つ目は、反対の立場の言い分を、言い負かしやすい形で書いてしまうことです。弱い反論に答えても、主張は少しも強くなりません。反対の側の人が、聞いている人をいちばんうなずかせる言い方で書き直してください。自転車置き場なら、「お金がかかる」より「広げるのがいちばん確実だ」の方が手ごわい言い分です。手ごわい言い分に答えようとすると、自分の理由をもう一段掘り下げることになり、その分だけ答案の論が深くなります。
3つ目は、出たばかりの話題や、ネットの書き込みを根拠にしてしまうことです。出たばかりの話題は、数日のうちに事実や数字が変わることがあり、後から確かめる手立ても少ないものです。書き込みは、誰がどう確かめたのかが見えません。根拠に使うのは、省庁の審議会の報告や、市・事業者・団体といった当事者の発表です。どれも出した側が名乗っていて、後から確かめられます。ノートの1行目の括弧が「ネットの書き込み」になっている見開きは、話題の候補にとどめ、答案の根拠には使わないでください。
よくある質問
小論文に使うニュースは、どう選べばよいですか
意見が分かれる話題を選び、そのうち半分ほどは、志望する学部の学びに近い物にしておくと、ノートが本番の題に寄っていきます。駅前の自転車置き場の記事なら、まちのつくり方、きまりの決め方、費用の分け方と、いくつもの学部の題につながります。出題がテーマ型か課題文型か、何分で書くのかは大学が決めます。志望する大学の募集要項で小論文の扱いを先に確かめておくと、ノートの話題をどの学部の学びに寄せるかも決めやすくなります。
記事の日付や数字を覚えきれないときは、どう書けばよいですか
覚えていない数字は、答案に書かないでください。作った数字は、一つでも誤りが見つかると、答案のほかの部分まで疑わしく読まれやすくなります。代わりに、何と何を比べれば判断できるかを書きます。たとえば「雨の日と晴れた日で置き場の埋まり方が違うなら、足りないのは晴れた日の朝に限られるかもしれない」と書けば、数字を一つも作らずに、確かめるべき点を示せます。
一般論は一文も書いてはいけないのですか
書いてかまいません。問題提起の入口に1文置くのは自然な組み立てです。弱く読めるのは、一般論で段落が終わるときです。「まちの場所には限りがある」と書いたら、次の文で、夕方に置き場から自転車を出せずに困っている人のような、目に見える場面へ降りてください。一般論の次の文が具体なら、一般論は話の入口として働きます。
個別指導で確かめること
見開きのノートを一緒にめくるとき、最初に読むのは4行目です。反対の立場の言い分が、反対の側のいちばん強い言い分になっているか、3行目の理由とかみ合っているかを確かめます。答案が一般論で止まっていたら、答案の文を直す前に、その話題の見開きまで戻ります。
戻った見開きの2行目に前提への疑いが書けていれば、そこから問題提起を作り直します。書けていなければ、記事をもう一度読むところからやり直します。言い回しを整えるのは、ノートの行がそろってからです。
まとめ
切り抜きを何枚増やしても、一行の題の前で鉛筆は動きません。読んだ記事を自分の材料に変えるのは、記事の横に書き足した4行で、なかでも反対の側の言い分の1行が、答案に再反論の場所を作ります。駅前の自転車置き場の切り抜き1枚に、「広げるのがいちばん確実だ」という反対の声を書き込んだ人は、一行の題を前にしても、答えるための一文目をノートから取り出せます。
読んで終わりにするか、ここから変えるか。
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