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学校推薦型選抜の小論文—教科の知識を問わない決まりと、学部の求める学生像|武蔵野個別指導塾

推薦の小論文を教科の知識を試すだけの問題にしないよう、国の要項は大学に求めています。学部の受け入れ方針を三つの層に分けて線を引けば、出そうな題材の見当がつきます。
学校推薦型選抜の小論文で問われるのは、覚えた知識の量ではありません。問いを受け取り、自分の考えを筋道立てて組み立て、それを文章で相手に届ける力です。2027年度入学者選抜(令和9年度)に向けて文部科学省が大学に示した実施要項は、小論文を教科のテストとは別の評価方法として位置づけています。そのうえで、中身が教科の知識を試す問題にすり替わらないよう、大学に注意を求めています。何が出るかの手がかりは、学部のアドミッション・ポリシーと、大学が公表した過去のテーマの中にあります。
| 知りたいこと | 答え | 読む所 |
|---|---|---|
| 小論文で見られる力 | 考えを論理的に組み立てる力と、その過程や結論を的確に書き表す力 | 実施要項 第6の3 |
| 教科の知識は出るか | 知識を問うこと自体が中心になる出題は避ける決まり。知識は考えの材料として使う | 実施要項 第6の3 |
| 題材の手がかり | 学部の受け入れ方針のうち、求める学生像より下に書かれた具体的な記述 | 募集要項・大学案内 |
| 過去のテーマ | 公表は望ましいとされる段階。どの学部でも見られるとは限らない | 大学のサイトの入試情報 |
| 時間と分量 | 全国共通の決まりは無い。大学・区分ごとに違う | 募集要項の試験の欄 |
よくあるのは、学部のパンフレットを机に広げ、「求める学生像」と見出しの付いた三行に蛍光ペンを引いていく場面です。主体的に学ぶ人、社会の課題に関心を持つ人、他者と協働できる人。引き終えると三行とも黄色に染まり、どこが大事なのか、かえって見えなくなります。ペンを置いて「それで、小論文には何が出るんですか」と顔を上げる。手がかりは、その三行の下に続く段落の中にあります。線を引く場所を一段下げるだけで、パンフレットは題材の地図に変わります。
推薦の小論文は、教科のテストとは別の物差しとして置かれている
入試のルールをまとめた実施要項は、大学が使える評価の方法を第6に集め、番号で分けています。第6の1が大学ごとに行う教科・科目の個別テスト、第6の2が共通テスト、第6の3が小論文・面接・実技検査など、第6の4が資格・検定試験、第6の5が活動報告書や学修計画書のように志願者本人が書く資料です。小論文は、エッセイ、口頭試問、ディベート、集団討論、プレゼンテーションと同じ第6の3の仲間に入っています。
第6の3が何を測るために置かれているかも、要項ははっきり書いています。一つは、自分の考えを論理的に、また創造的に形づくっていく思考と判断の力。もう一つは、考えた過程や結論を的確に、さらに効果的に表現する力です。要項の冒頭が挙げる学力の三要素でいえば、二つ目の思考力・判断力・表現力等と重なる部分になります。
そのうえで要項は、第6の3の試験が「専ら教科・科目に係る知識を問うこと」にならないよう、大学に注意を求めています。避けるべき例として名指しされているのは、教科の知識を問う問題を小論文の形にして出すことです。小論文を個別テストとは違う評価方法として定めた以上、中身が教科のテストになってしまえば、区分けした意味がなくなるからです。図1のように、教科の力を測る箱と、考えを組み立てて書く力を測る箱は別々に用意されていて、片方の中身をもう片方の箱に移し替えることを、要項は避けるよう求めています。

推薦の側の決まりとも結びついています。学校推薦型選抜では、調査書や推薦書などの書類だけで合否を決めず、第6の1から4のうち少なくとも一つを使い、そのことを募集要項に書くことになっています。小論文を課す区分は、この一つ以上の枠に第6の3を充てているか、ほかの方法と組み合わせているかのどちらかです。また、小論文や面接は2027年2月1日より前に行ってよいとされる一方で、高校の教育への影響と受ける人の負担に十分配慮するよう求められています。自分がいつ書くのかは、志望する区分の募集要項の日程で確かめてください。
ここから出てくる準備の方針は単純です。教科の知識を詰め込んでも、それだけで答案の評価は上がりません。知識は、問いに答える理由や例として使ったときに、はじめて答案の力になります。
求める学生像に線を引く前に、アドミッション・ポリシーを三つの層に分ける
アドミッション・ポリシーは、大学が入学者をどう受け入れるかを示す方針です。大学が法令にもとづいて定めるもので、卒業までに身につけさせたい力の方針と、教育課程の方針を踏まえて作られます。実施要項の第2は、この方針を抽象的な求める学生像だけで終わらせないよう、大学に求めています。高校までにどんな力を培ってきてほしいのか、その力をどんな基準と方法で評価するのかまで、できる限り具体的に決めるという求めです。さらに、高校で履修しておくべき科目や持っていると望ましい資格を並べるなどして、「何をどの程度学んできてほしいか」も具体的に書くことになっています。
つまり、ていねいに作られたアドミッション・ポリシーには、図2のような三つの層があります。いちばん上が求める学生像で、ここはどの学部でも似た言葉になりやすい層です。二段目が、高校までに身につけてほしい力や、学んできてほしい科目。三段目が、その力をどの試験でどう見るかの記述です。小論文の題材を探すときに線を引くべきなのは、二段目と三段目です。

引き方の例を一つ挙げます。二段目に「身近な事例を手がかりに社会の仕組みを考える力」、三段目に「小論文では資料を読み取り、自分の考えを根拠とともに述べる力を評価する」と書かれていたとします。説明のために作った文で、実在の学部の方針ではありません。この二つを並べると、題材は社会の仕組みにかかわる身近な事例で、答案には資料の読み取りと根拠の両方が要る、という見当がつきます。一段目の「社会の課題に関心を持つ人」だけを読んでいては、ここまで絞り込めません。
方針は、どこで読めるのでしょうか。募集要項にはアドミッション・ポリシーを載せることが決まっていて、大学案内や説明会でも、方針や学部の教育研究の中身を伝えるよう大学は求められています。パンフレットに線を引くのは、正しい出発点です。加えて、二つ以上の選抜の区分で入試を行う大学は、区分ごとの評価の方法と、その区分を置く理由を、アドミッション・ポリシーとの関係を整理して示すことになっています。推薦の区分の説明に、小論文で何を見るかが書かれていれば、それがいちばん直接の手がかりです。
学部全体の方針と、推薦の区分の説明とで、言葉が少し違うことがあります。そのときは区分の説明を優先して読み、学部全体の方針は、題材の幅を知るために使うと迷いが減ります。
公表された過去のテーマを、年ごとに並べて読む
入試の情報の公表は、学校教育法施行規則の改正(2025年4月1日施行)で、大学に求められるようになりました。実施要項は、教科・科目の個別テストについて、試験問題と、解答または解答例、出題の意図を原則として公表するとしています。小論文のテーマや口頭試問の内容は一段弱く、積極的に公表することが望ましい、という書き方です。公表した試験問題などについて、文部科学省のQ&Aは、複数年にわたって載せておくのが望ましいとしています。
この差は、準備に直接ひびきます。教科のテストなら過去の問題が残っている見込みが高いのに対し、推薦の小論文は、テーマが出ている学部と出ていない学部に分かれます。出ている学部なら、テーマを年ごとに並べた表を自分で作ってください。列は四つで足ります。
| 列 | 書くこと |
|---|---|
| 年度 | 何年度の入試のテーマか |
| 形式 | 題だけか、課題文があるか、表や数値の資料があるか |
| 問われた力 | 意見を述べる、資料を読み取る、案を出す、のどれが中心か |
| 方針とのつながり | アドミッション・ポリシーの二段目・三段目のどの語に当たるか |
公表されている年の分をすべて並べると、形式が毎年そろっているのか、年によって変わるのかが見えてきます。形式がそろっていれば、練習の型もそれに合わせて固定できます。変わっているなら、どの形式でも共通している「問われた力」の列を練習の軸にします。最後の列は、自分で埋めるしかありません。テーマを一本ずつ方針の語と結びつける作業そのものが、その学部が何を見たいのかを自分の言葉で言い直す練習になるからです。
テーマが公表されていない学部では、方針の二段目と三段目、推薦の区分の説明、大学案内の中の学部の授業や研究の紹介が主な手がかりになります。方針は教育課程の方針を踏まえて作られるので、入学して最初の年にどんな授業を受けるのかは、題材の候補を出すのに十分な材料です。
出題の意図の公表が原則とされているのは教科・科目の個別テストの側で、小論文に添えるかどうかは大学しだいです。もし小論文に出題の意図が添えられていたら、それは大学がその題で何を見たかったのかを、大学自身の言葉で書いた文です。答案を読み直すときの物差しとして、表の横に書き写しておきましょう。
学校推薦型選抜で「作文」と書かれた試験の読み方
募集要項の試験の欄に、小論文ではなく「作文」と書かれていることがあります。名前だけで中身を決めつけないでください。実施要項が第6の3に並べているのは小論文やエッセイなどで、「作文」という名前はその一覧に出てきません。試験にどんな名前を付け、何をどう評価するかは大学が決め、募集要項の評価の方法の欄に書きます。読むべきなのは名前ではなく、その欄の説明です。
読み分けの目安は三つあります。一つ目は題の向きで、自分の体験や高校生活を振り返らせる題なのか、社会の出来事や資料について意見を求める題なのか。二つ目は評価の観点で、表現力、意欲、論理的な思考など、どの語が書かれているか。三つ目は、課題文や資料が付くかどうかです。体験を振り返る題で意欲を見ると書かれていれば、志望の動機と結びついた答案が求められています。資料が付き、論理を見ると書かれていれば、名前は作文でも、準備は小論文と同じ形でかまいません。
体験を書く題で迷うのが、どこまで私的なことを書くかです。実施要項は、評価や判定に使わない情報を志願者に求めないよう大学に求めています。文部科学省のQ&Aは、本人に責任のない事柄や、思想や信条のように本来自由であるべき事柄を、作文や面接などで聞き出さないという採用選考の考え方を、大学が参考にする例として挙げています。家庭の事情を書くことが点の条件になる、と考える必要はありません。書く体験は、考えが動いた場面や、学びたいことにつながった場面から選べば足ります。
体験を書く題でも、出来事を時間の順に並べただけでは、考えを組み立てた跡が見えません。その出来事で何に気づき、その気づきが学部で学びたいこととどうつながるのかまで書いて、はじめて第6の3が見たい力が答案に出ます。作文という名前に油断して、思い出の記録で終わらせないことです。
時間と分量を募集要項で決めてから始める練習
試験の時間と、何字で書くかの指定には、全国共通の決まりがありません。大学・学部・区分ごとに違い、同じ学部でも年度によって変わることがあります。練習を始める前に、志望する区分の募集要項で、時間、分量の指定、課題文や資料の有無を確かめ、それを練習の条件にしてください。条件と違う練習を重ねると、本番で時間の配り方が狂います。
手順は次のとおりです。
- 方針の二段目と三段目に引いた線の語を、ノートの左の端に縦に並べる。
- その語ごとに、学部の授業の紹介から関連する話題を一つ、自分の経験から関連する場面を一つ、右に書き足す。これが題材ノートになります。
- 公表されたテーマがあれば、本番と同じ時間で一本書く。無ければ、題材ノートの語から自分で題を立てて書く。
- 書き終えたら、問いに答えているか、意見を支える理由があるか、教科の知識を並べただけの段落が無いか、の三点で読み直す。
- 答案の要点を、声に出して短く説明する。
時間の配り方は、条件に合わせて先に決めておきます。たとえば試験時間が60分と書かれていた場合なら、最初の10分で問いを分解して構成のメモを作り、40分で書き、残りの10分で読み直す、という割り振りが一つの形です。この数は配り方を説明するための例で、実際の時間は募集要項の値に置き換えてください。
4番の三点目は、第6の3の決まりを、答案の側から使う読み直しです。用語の説明や年号を並べた段落は、知識を見せてはいても、考えを組み立てた跡にはなりません。その段落を、自分の意見を支える理由の一つに書き換えられるかを試してください。書き換えられない段落は、削っても答案は弱くなりません。
5番は、口頭試問やプレゼンテーションが小論文と同じ第6の3の仲間であることを踏まえた練習です。書いた考えを口で言い直せない答案は、たいてい構成のどこかがあいまいです。説明に詰まった所が、次に書き直す所になります。言語能力と数理的思考力を含む力を推薦でも適切に評価するよう要項が求めていることを考えると、表や数値の資料を読み取って意見の根拠にする練習も、早いうちに一度入れておくと備えになります。
よくある質問
推薦の小論文で、教科で習った知識は書かないほうがよいのですか
書いてかまいません。決まりが避けるよう求めているのは、知識を問うこと自体が試験の中心になる出題で、受ける側が知識を使うことではありません。知識は意見を支える根拠や例として短く使い、知識の説明そのものを答案の目的にしないことが大切です。
過去のテーマが公表されていない学部は、何を手がかりに準備しますか
アドミッション・ポリシーの二段目と三段目、推薦の区分の説明、大学案内の中の学部の授業の紹介の三つです。そこから題材ノートを作り、自分で題を立てて書きます。公表の範囲は年によって変わることがあるので、出願の前にもう一度、大学のサイトの入試情報の頁を開いてください。
推薦の小論文は、いつ書くことになりますか
小論文や面接は、2027年2月1日より前に行ってよいことになっています。実際の試験の日は区分ごとに募集要項の日程の欄に書かれていて、全国共通の日付はありません。高3でこれから受ける人は、試験の日から逆に数えて、本番の条件で何本書けるかを先に決めてください。
高2のいまは、何から始めればよいですか
来年度の実施要項はまだ出ていないので、来年の日程や条件を今年の数字で決めつけないでください。いま始められるのは、志望しそうな学部のアドミッション・ポリシーを読んで題材ノートを作ることと、公表されたテーマで時間を測って書く練習です。来年の募集要項が出たら、時間と分量の条件だけを差し替えれば、それまでの練習がそのまま生きます。
確かめる順番
今週のうちに、次の順で確かめてください。図3は、その順番を一枚にまとめたものです。
- 募集要項の評価の方法と試験の欄: 志望する推薦の区分に小論文や作文があるか、時間、分量の指定、課題文や資料の有無、評価の観点。
- アドミッション・ポリシー: 学部全体の方針と、推薦の区分の説明の両方。二段目と三段目に線を引く。
- 大学のサイトの入試情報: 公表された過去のテーマと、出題の意図が添えられているかどうか。
- 高校: 国語の先生や担任の先生に、答案を読んでもらう時間を取ってもらえるかを相談する。出願の書類の準備と重なる時期なので、早めに頼みます。
- 大学: 募集要項を読んでもわからない点だけを、入試の窓口に問い合わせる。

図3の上の三段は、手元の紙と画面だけで今夜のうちに終わります。四段目からは人の時間を借りるので、答案を一本書いてから頼むと、読んでもらう側も指摘がしやすくなります。五段目の問い合わせは、一段目から三段目をすべて読んだあとに回してください。読む前に聞くと、募集要項に書いてあることを尋ねることになります。
個別指導で確かめること
推薦の書類と面接の準備を受け持つ立場から、小論文では二つの所を一緒に確かめます。募集要項とアドミッション・ポリシーを読んで題材ノートを作るところと、時間を測って書いた答案を、問いへの答え・理由の立て方・知識の使い方の三点で読み直すところです。書いた答案を口で説明し直す練習は、面接の準備と同じ時間の中で行います。
まとめ
推薦の小論文は、教科のテストを文章の形に移した試験ではありません。学部が方針の中で言葉にした力を、限られた時間の中で、答案に書いて見せる試験です。パンフレットの三行に引いた線は、その下の段まで延ばしてください。何を書かせたいのか、学部はもう紙の上で言っています。
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