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指定校推薦の「保護者の意見」欄の書き方—親が書く数行で何を伝えるか|武蔵野個別指導塾

調査書にも推薦書の例にも親の欄はありません。大学の書類に欄があるときだけ、家庭で見てきた学びの事実と家族で確かめた進学の意思を数行に収める順番を、骨組みの例文で追えます。
保護者の意見の欄は、国が大学と高校に示している出願書類のひな形には入っていません。文部科学省の令和9年度大学入学者選抜実施要項が載せる様式は調査書・推薦書・活動報告書の三つで、そのどれにも親の書く場所が無いからです。その要項に「指定校推薦」という呼び名は出てこず、学校推薦型選抜のうち、大学から推薦の枠を受けた高校が校長の名で生徒を送り出す出願を、高校や家庭でそう呼んでいます。親がペンをとるのは、出願先の大学が自分の書類に保護者の欄を置いたときだけで、書くことは、家庭で見てきたお子さまの学びの事実と、合格したら入学すると家族で確かめたことの二つで足ります。
| 書類(令和9年度の実施要項での位置) | 誰が書き、誰の名で出るか | 親の書く場所 |
|---|---|---|
| 調査書(別紙様式1) | 担任などの原案を先生の委員会で審議し、校長の責任で大学へ出す | 様式に無い |
| 推薦書(参考様式1のイメージ例) | 校長の名で大学の学長に宛て、記載責任者が名を記す | 例に無い |
| 活動報告書(参考様式2のイメージ例) | 志願者本人 | 例に無い |
| 指導要録(高校に残る原簿・平成31年3月29日通知の別紙3) | 高校 | 保護者の氏名と現住所は記録するが、意見を書く欄ではない |
| 大学の出願書類(第10の1) | 出願の手続きは大学が決め、募集要項に書く | 欄を置くかどうかは大学が決める |
よくあるのは、願書の封筒の上で、ボールペンを持ったまま父親の手が止まる場面です。夕食の皿を片づけた食卓に、お子さまが高校から持ち帰った書類が広がっていて、その一枚に「保護者の意見」と見出しのついた数行の罫線がある。横には書き上がった志望理由書の写しが置いてあります。読み返すほど、同じことを親の言葉で言い直すのか、わが子を褒めればよいのか、空けておくほうが無難なのか、決められなくなる。ペン先は紙の数ミリ上で止まったままです。
調査書にも推薦書にも、親の書く欄は用意されていない
令和9年度の実施要項は、大学が高校に出させる調査書のひな形を別紙様式1として載せています。表の面には氏名と学校名、在学の期間、教科ごとの修得単位数、学習成績の状況、成績の段階別の人数が並び、裏の面には総合的な探究の時間、特別活動、指導上参考となる諸事項、備考、出欠の記録が続きます。最後は、記載事項に誤りがないことを証明する一文と、学校名・校長名・記載責任者の欄で締めくくられています。保護者の名前を書くところも、意見を書くところもありません。調査書の下書きは担任などが受け持ち、関係する教員でつくる委員会の審議を通ってから、校長が仕上げて自分の責任で大学へ送ります。はじめから学校の書類として組まれていて、家庭が書き込む前提がありません。
目を引くのは、その調査書の元になる指導要録の決まりです。高校の原簿である指導要録には、学籍の記録として保護者の氏名と現住所を書く項目があります。高校の手元には親の名前と住所があるのに、大学へ渡る調査書の様式にはそれを写す欄が無い。国が示す書類の流れの中で、親は書き手として数えられていないと言ってよいでしょう。
推薦書も同じです。参考様式1のイメージ例は、大学の学長に宛て、学校名と学校長名、志望する学部と学科、生徒の氏名、推薦理由、記載責任者の欄で組まれています。推薦理由の欄の注記は、学力の三要素について、その大学・学部が掲げる入学者の受け入れ方針に照らし、本人がどう学び何に取り組んできたかをふまえた評価を書くよう求めています。親の目から見た評価を書き込む欄は、このイメージ例にもありません。
本人が書く書類について、要項は活動報告書・大学入学希望理由書・学修計画書をまとめて「志願者本人が記載する資料」と呼んでいます。名前のとおり書き手は本人で、参考様式2の活動報告書のイメージ例にも、氏名の欄のほかに家族が書く欄はありません。図1のように書類と書き手を並べると、国の様式はどれも書き手が決まっていて、保護者の欄はその外側にあることが見えてきます。出会うとすれば、出願先の大学が自分で作った書類の中です。

では大学の書類に欄があったとき、それがどう読まれるのか。要項は大学に、調査書や本人が書く資料をどう使うかを募集要項などに明記するよう求めていますが、保護者の欄はそこに名前が挙がっていません。読まれ方を要項から言い当てることはできず、確かなのは、欄があるかどうかと、欄に付いた注意書きの中身だけです。
それでも、要項から引き出せる線が二本あります。一本目は約束の重さです。要項は指定校推薦を名前では呼んでいません。触れているのは、高校との密な連携で意欲や適性まで含めた組み合わせが丁寧にできていると考えられる非公募型で、受かれば入学すると志願者が約束して臨むもの、という書き方です。学費を出し、通学を支えるのは家庭ですから、この約束の半分は親が背負うことになります。二本目は公平さです。要項の第13は大学に、合格発表の前に受験者の保護者などと個別に接触するような、公平・公正を損なう行為を慎み、特定の受験者への優遇や配慮を求める外からの働きかけには毅然と対応するよう求めています。同じ第13は、記入事項や提出書類が本物であることを募集要項などで知らせ、出願書類が適正かを確かめることも大学に求めています。保護者の欄は、頼みごとを届ける窓口でも、本人の代筆を差しこむ場所でもありません。
欄の有無も行数も、出願先の書類を開くまで決まらない
国の様式に無い以上、保護者の欄の形は大学ごとに違います。欄を置くかどうか、見出しを何と呼ぶか、志願票の中に組みこむか別の紙にするか、何行ぶんの罫線を引くか、手書きか入力か、署名や押印を求めるか、書かなくてもよい任意の欄か。どれも要項は決めていません。前の年に兄や姉、近所の先輩が書いた用紙を見せてもらっても、今年の出願先の書類と同じだとは限りません。募集要項は大学が年度ごとに出し直すものなので、前年の用紙を手本にして書き始めるのは避けてください。
高校の側にも違いがあります。指定校の出願書類は大学から高校に届くので、家庭が保護者の欄を目にするのは、お子さまが高校から用紙を持ち帰った日です。そこから先、書いた用紙を高校へ戻して先生がまとめて点検するのか、保護者の欄まで先生が読むのか、校内の締め切りを大学の締め切りより早く置くのか、書き損じたときに予備の用紙があるのか。これは高校ごとの段取りで、校内の推薦の要項に書かれていることもあれば、面談で口頭で伝えられることもあります。校内選考の申込書の側に家庭の確認や署名の欄があるかどうかも、同じ要項で確かめられます。
自分の場合を知るために見る物は四つです。一つ目は、出願先の大学の募集要項と、出願書類に付いた記入上の注意です。保護者の欄を誰が書くのか、黒のボールペンか、消せる筆記具が使えるか、訂正は二重線か、といった指定があればここに書いてあります。欄の見出しの近くに、何について書くよう添え書きがあれば、それが大学の聞きたいことです。家庭の方針なのか、志望への考えなのか、ふだんの本人の様子なのか。添え書きの無い欄なら、この先の段取りで挙げる二つ、家庭で見た学びの事実と家族で確かめた進学の意思に絞ってください。二つ目は、高校が配る校内の推薦の要項で、校内の締め切りと提出の窓口がわかります。三つ目は、担任か進路指導の先生との面談で、書類の流れのうち紙に書かれていない部分を聞けます。四つ目が、お子さまの志望理由書の写しです。これを読まずに親の欄を書くと、食い違いに気づけません。
書類の読み方で迷っても、大学へ電話をかける前に、まず高校の先生をたずねてください。先生に聞けば、届いた書類の束のどの紙を読めばよいかから話を始められます。家庭だけで答えを探すより、用紙を手渡した高校に段取りを聞くほうが早く片づきます。
高2のお子さまが受ける年の要項、つまり令和10年度の実施要項は、公表がまだ先です。公表されたら、調査書の様式と推薦書のイメージ例に保護者の欄が足されていないかを見てください。いまの様式のままであれば、ここに書いた順番がそのまま使えます。
封筒を開けてから清書を入れるまでの六つの段取り
図2のように、書き始める前に三つ、書くときに三つの段取りがあります。順番を入れ替えないほうが、書き直しが減ります。

一つ目は、欄と注意書きを見ることです。保護者の欄の見出し、記入者の指定、筆記具、訂正の仕方、署名の有無、校内と大学の二つの締め切りを、用紙の余白ではなく別のメモに書き出します。罫線だけで何字とも書かれていない欄なら、定規で幅を測っておくと下書きの長さが決まります。たとえば欄の幅が15センチで、1字を6ミリ角で書くなら1行に25字、罫線が4行なら100字ほどです。下書きは80字前後で止めておくと、清書で字が詰まらず、読みやすい余白が残ります。
二つ目は、お子さまの志望理由書を先に読むことです。目的は写すためではなく、ずらさないためです。志望する学部と学科、学びたいこと、そのきっかけとして挙げた経験に、鉛筆で印をつけます。親の欄では、その経験を言い直すのではなく、同じ時期を家の中から見ていた者として、本人が書いていない側面を一つ足せるかを考えます。
三つ目は、進学の意思を家族で確かめることです。指定校推薦は合格したら入学すると約束して受けるもので、塾でも、校内選考を通ったあとに出願してしまえば辞退は原則できない、とお伝えしています。お金の面も同じ重さです。納めた授業料などは、3月31日までに辞退を申し出れば原則として返ってくる扱いですが、令和9年度の実施要項は、学校推薦型選抜に受かって大学と在学契約を結んだ人をこの原則の外に置いています。学費の出し方、通学の道のり、一人暮らしをするかどうかまで、この段で話し切ってください。話し合った日付をメモに残しておけば、欄の最後の一文がそのまま書けます。
四つ目は、家庭で見てきた事実を三つ書き出すことです。「努力家」「まじめ」「好奇心が強い」のような形容詞は、読む側には確かめようがありません。代わりに、いつ、どこで、何をしていたかを書きます。たとえば「高2の夏、毎晩同じ時刻に机に向かっていた」「新聞の同じ欄を切り抜いて、ノートに貼っていた」「家族で出かける先を、自分で調べた資料館に決めた」のような事実です。三つのうち、志望理由書と重ならないものを一つ、重なるものを一つ選ぶと、本人の書類と響き合いながら、親にしか書けない一文が残ります。
五つ目は、骨組みに当てはめて下書きすることです。保護者の欄の骨組みは、次の四文で足ります。
- (時期)から(場面)で、(本人がしていたこと)を見てきました。
- (その後に変わったこと)を、家族として(感じたこと)とともに覚えています。
- (学部で学びたいこと)を学びたいという本人の考えを(いつ)家族で聞き、進学先として納得しました。
- 合格した際には入学することを家族で確かめており、学業を家庭で支えます。
かっこの中身は、四つ目で書き出した事実で埋めます。一文目と二文目が親の見た事実、三文目が家族で確かめた志望、四文目が約束です。書けたら声に出して読み、形容詞を一つずつ削り、志望理由書と学年や時期、出来事の順番が食い違っていないかを照らします。欄が2行しかなければ、一文目と四文目だけを残し、見てきた事実と約束に絞ります。
六つ目は、清書して控えを残すことです。清書は一度で書き切れるよう、下書きを横に置いて写します。書き終えたら、封をする前にお子さまにも読んでもらってください。面接で出願書類の中身に触れられたとき、親が何を書いたかを本人が知らないままでは、答えがずれます。控えを家に残してよいかは高校に一言確かめ、かまわないと言われたらコピーか写真で残します。
「親の一筆で有利になる」という思い込みをほどく
保護者の欄に向き合うと、書けば何かが動くはずだという期待が生まれます。図3のように、欄に入れるものは二つで、入れないものは三つです。思い込みを一つずつ、要項の決まりに照らしてほどいておきます。

一つ目の思い込みは、熱意や頼みごとを書くほど有利になる、というものです。先に見たとおり、大学は外から特別扱いを頼む働きかけを退ける側に立つよう求められています。「どうか合格を」「特別なご配慮を」と書いた一文は、欄の中にあっても、その働きかけと同じ形をしています。数行は頼みではなく事実で埋めてください。
二つ目は、本人の志望理由を親の言葉で詳しく書き直すほど伝わる、というものです。志望理由は本人が書く資料にすでに書かれていて、要項はそれを志願者本人の書類と位置づけています。親の欄で同じ中身をなぞっても新しい事実は増えず、言い回しの違いが食い違いに見えることさえあります。反対に、本人の下書きを親が書き直して仕上げてしまうのも避けてください。要項は大学に記入事項が本物であることを確かめるよう求めており、本人の書類は本人の手で出すものです。
三つ目は、評定や欠席の事情を親が欄で説明しておけば補える、というものです。評定は高校が定めた方法で決まり、調査書は校長の責任で出る書類なので、親の欄から数字は動きません。病気など本人に帰責されない体調の欠席については、要項のQ&Aが対応の例として、高校が調査書の備考欄にその旨を書くことや、大学が募集要項に欠席の理由の申し出を受け付けると書くことを挙げています。親の欄に書き足すかどうかは、自分の高校の備考欄の扱いと出願先の申し出の窓口を先生に確かめてから決めてください。
もう一つ、欄が無くても手紙を一枚添えたほうが丁寧だ、と考える方もいます。出願書類は大学が決めて募集要項で示すものです。頼まれていない紙を同封するかどうかを家庭だけで決めず、添えたくなったらまず高校の先生に相談してください。
高校の先生に確かめる質問
用紙を持ち帰ったその週のうちに、次の問いを紙に写して担任か進路指導の先生に渡しておくと、面談の時間を書類の中身に使えます。
- 大学から届いた書類のうち、保護者が書く欄はどれですか。その用紙は原本ですか、写しですか。
- 保護者の欄を書いたあと、高校で先生が目を通しますか。下書きの段階で見ていただくことはできますか。
- 校内での提出の締め切りはいつですか。大学の出願の締め切りとはどれくらい離れていますか。
- 書き損じたときに予備の用紙はありますか。訂正の仕方に決まりはありますか。
- 欠席や体調のことは、保護者の欄に書くべきですか。それとも調査書の備考や大学への申し出で扱いますか。
- 合格したら入学するという約束について、家庭から高校へ出す確認の書類はありますか。
- 書類でわからない点が出たとき、大学に問い合わせる前に誰に相談すればよいですか。
- 提出する前に、家族が書いた文の控えを手元に残してもかまいませんか。
個別指導で確かめること
塾では、お子さまの志望理由書の下書きと、面接の受け答えを一緒に見ています。保護者の欄の文を塾が書くことはしませんが、家庭で書き出した事実のメモと本人の下書きを並べ、学年や出来事の順番が食い違っていないかを確かめることはできます。面接の練習では、提出した書類の控えを手元に置き、本人が家族と話し合った志望を自分の言葉で言えるか、親の欄に書かれた出来事と答えがずれないかを聞き取ります。
まとめ
ボールペンが止まったら、褒め言葉を探すのをやめて、カレンダーを開いてください。お子さまが机に向かっていた季節と、家族で進学先を決めた日付が見つかれば、数行の欄はそれで埋まり、形容詞は一つも要りません。保護者の欄は、親がお子さまを売り込む場所ではなく、家族がひとつの約束に名を連ねる場所です。
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