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小論文のテーマの読み方—問いに答える手順|武蔵野個別指導塾

答案が問いからずれる原因はテーマの読み方にあります。テーマを「何について・何を求めているか・条件」の3つに分けるメモと、800字を4段落に配る手順を講師が示します。
小論文のテーマは、読んだ回数ではなく、分けた回数で決まります。手順は次の 4 つです。
- テーマを「何について」「何を求めているか」「どんな条件か」の 3 つに分けて、紙に書き出す。
- 求められている形(是非、原因、対策、自分の考え)に合わせて、答えの一文を先に作る。
- その一文を支える根拠を、経験、観察、仕組みの 3 つの引き出しから 2 つ選ぶ。
- 反対の立場を 1 つ置いて、それに答えてから結ぶ。
よくあるのは、試験室で配られた用紙のテーマを 3 回読み直しても、鉛筆が動かないという場面です。「あなたの考えを述べなさい」という一行は目に入っています。けれど、何について、どこまで書けばよいのかがつかめない。時計の針は進み、周りの鉛筆の音だけが大きくなる。そこであわてて書き始めた答案は、たいてい最後の段落で問いと別の場所に着きます。テーマは読むものではなく、分けるものです。分けてしまえば、書く順番はひとりでに決まります。
書く前にすること
小論文の答案でいちばん多い失敗は、文章が下手なことではなく、聞かれていないことに答えていることです。原因はテーマの読み方にあります。目で読むだけでは、頭の中で自分の書きやすい話にすり替わっていきます。防ぐ方法は一つで、テーマを紙の上で 3 つに分けることです。
分け方は図1のとおりです。上の段に「何について」を書きます。テーマの中の名詞を抜き出す作業で、たとえば「地域の図書館の役割について述べよ」なら、「地域の図書館」が何についてです。真ん中の段に「何を求めているか」を書きます。「役割を述べよ」なのか、「必要かどうか」なのか、「どうすればよいか」なのか。ここが答案の形を決めます。下の段に「条件」を書きます。「具体例を挙げて」「600 字以内で」「課題文をふまえて」といった指示で、落とすと中身を読まれる前に減点されます。

求められている形は、だいたい 4 つに分かれます。「賛成か反対か」を聞く是非型。「なぜ起きるのか」を聞く原因型。「どうすればよいか」を聞く対策型。「あなたはどう考えるか」とだけ聞く自由型。自由型は何を書いてもよいように見えて、いちばん危ない形です。自分で問いを一つ決めてから書かないと、感想文になります。たとえば「情報化社会について、あなたの考えを述べよ」なら、「情報化社会で学校の役割は変わるべきか」のように、自分で是非の形に直してから書きます。直した問いは答案の 1 行目に書いておくと、読み手にも自分にも見えます。
課題文が付いている場合は、分ける前にもう一つ作業があります。筆者の主張を一文で言い直すことです。主張は課題文の最後の段落か、「つまり」「しかし」の後ろにあることが多いものです。言い直した一文をメモのいちばん上に書き、そのうえで「筆者の意見に賛成か」「筆者の挙げた問題にどう対策するか」のどちらを求められているかを確かめます。課題文を読んだ感想を書くことは求められていません。感想を書いた答案は、どれだけ文章がうまくても、問いの外に立っています。
このメモにかける時間は、60 分の試験なら 5 分です。長く感じるかもしれませんが、分けないまま 50 分書いて問いからずれる方が、はるかに高くつきます。メモは答案用紙の余白ではなく、問題用紙の空いたところに書きます。答案用紙に残ると、採点者が読む文の邪魔になります。
メモができたら、3 つの段を指でなぞりながら、もう一度だけテーマを読みます。この 1 回は「読み直し」ではなく「照らし合わせ」です。テーマの中に、メモに書かなかった語が残っていないかを見ます。「地域の」という一語が抜けていれば、答案は図書館一般の話になり、問いの半分に答えていないことになります。小さな語ほど、落としたときの代償が大きいものです。
書き方の手順
是非型なら、まず立場を決めます。決め方の基準は「本当にそう思うか」ではなく、「根拠を 2 つ書けるか」です。心から賛成でも根拠が 1 つしか出ないなら、反対で書いた方が答案は強くなります。小論文は意見の正しさではなく、意見の支え方を見る試験です。立場を決めたら、答えの一文を作ります。「私は、地域の図書館は本を貸す場所から、人が集まる場所へ役割を広げるべきだと考える」のように、問いの語を使って一文で言い切ります。この一文が答案の背骨になり、最初の段落と最後の段落に姿を変えて現れます。
原因型と対策型は、立場の代わりに「いちばん大きい一つ」を決めます。原因を 3 つ並べる答案より、一つの原因を掘った答案の方が評価されます。対策も同じです。「意識を高める」のような誰にでも言える対策ではなく、「誰が、いつ、何をするか」まで書ける対策を一つ選びます。選ぶ基準はやはり、根拠を 2 つ書けるかどうかです。
根拠は 3 つの引き出しから出します。1 つ目は経験で、自分が見たこと、したことです。2 つ目は観察で、周りの人や社会で起きていることです。3 つ目は仕組みで、「なぜそうなるのか」の理屈です。経験だけで書くと「あなたの話は聞いていない」と言われ、仕組みだけで書くと借り物の言葉に見えます。引き出しを 2 つ使うと、具体と理屈の両方がそろいます。図書館の例なら、「放課後に図書館で友人と調べ学習をした経験」と、「本を貸すだけなら電子書籍で代わりがきくという仕組み」を組み合わせます。根拠を書くときは、「なぜなら」で始めて「からだ」で受けると、文の形が崩れません。
段落は 4 つに分けます。800 字の答案なら、図2のように、主張 100 字、根拠 300 字、反対意見と応答 250 字、結論 150 字が目安です。主張の段落は、分けた問いに対する答えの一文と、理由の見出しだけを書きます。根拠の段落がいちばん長く、ここに引き出しから出した 2 つを置きます。3 つ目の段落で反対の立場を 1 つ取り上げ、「たしかに〜。しかし〜」の形で答えます。反対意見を書くのは譲るためではなく、自分の主張が一方的でないと示すためです。結論は主張の一文を言い直し、少しだけ先の話を添えて閉じます。

この配分は、問いを支える部分に全体の半分以上を使う形になっています。主張と結論を合わせても 250 字で、残りの 550 字が支えです。逆の配分、つまり主張と結論が長くて根拠が短い答案は、同じことを 3 回言っているように読めます。長さの指定が 600 字なら、それぞれを 4 分の 3 にします。1,000 字なら根拠を 2 段落に分けて、引き出しを 1 つずつ置きます。段落の数を増やすのではなく、根拠の段落を厚くするのが基本です。
書く順番は、段落の順番と同じでかまいません。ただし、主張の段落を書き終えたら、いったん手を止めて、結論の一文を先に欄外にメモします。始まりと終わりが同じ答えを指していれば、途中でどれだけ寄り道しても答案は問いに戻ってきます。逆に、終わりを決めずに書き始めると、根拠を書いているうちに自分の意見が変わり、結論で別のことを言い出す答案になります。採点者はこれを「ぶれ」と呼び、いちばん嫌います。
60 分で 800 字なら、メモに 5 分、答えの一文と根拠の選択に 5 分、書くのに 40 分、読み返しに 10 分です。読み返しの 10 分は削らないでください。問いの語が結論に入っているか、「なぜなら」の受けが「からだ」になっているか、この 2 つを確かめるだけで、ずれた答案のかなりの部分が救えます。書く 40 分の内訳は、主張 5 分、根拠 15 分、反対と応答 12 分、結論 8 分が目安で、根拠に時間が足りなくなったら、反対の段落を短くして調整します。
例文で見る
例文は型を見るためのもので、そのまま提出できる長さにはなっていません。自分のテーマに置き換えて使ってください。
1 つ目は是非型です。テーマは「中学校に制服は必要か。あなたの考えを 600 字以内で述べなさい」とします。メモは、何についてが「中学校の制服」、求めている形が「是非」、条件が「600 字以内」です。答案の骨は次のようになります。
私は、中学校に制服は必要だと考える。理由は、朝の選択を減らすことと、家庭の差が服に出にくいことの 2 つである。 まず、私の通う学校では制服があるおかげで、朝は顔を洗って着替えるだけで家を出られる。なぜなら、何を着るかを考える時間がそもそも無いからだ。次に、制服は家庭ごとの服にかける費用の差を見えにくくする仕組みである。 たしかに、制服は個性を奪うという意見がある。しかし、個性は服ではなく、発言や行動で示せるものだ。 したがって、中学校に制服は必要である。
どこが良いかというと、1 行目に問いの語「中学校」「制服」「必要」がそのまま入っていて、採点者は読み始めた瞬間に、この答案が問いに向いているとわかります。根拠は経験の引き出しと仕組みの引き出しから 1 つずつで、「なぜなら」と「からだ」の対も崩れていません。反対意見を一つ置いて答えているので、主張が一方的に見えません。結論は 1 行目の言い直しで、途中で意見がぶれていないことが見た目でわかります。
2 つ目は課題文型です。課題文は自作のものです。「筆者は、地図アプリに頼る生活が道を覚える力や人に尋ねる力を弱めていると述べ、便利さの代わりに失うものを意識すべきだと主張している」という内容だとします。テーマは「筆者の主張をふまえて、便利さとの付き合い方についてあなたの考えを述べよ」です。メモは、何についてが「便利さとの付き合い方」で、求めている形が「筆者の主張をふまえた自由型」です。自由型なので、自分で「便利な道具は何を失うかを決めてから使うべきか」という是非の形に直します。条件は「筆者の主張をふまえる」です。
筆者は、便利さが人の力を弱めると述べている。私はこの見方に半分賛成し、便利な道具は、何を失ってよいかを決めてから使うべきだと考える。 私の祖母は地図アプリを使わず、駅で人に尋ねて目的地に着く。尋ねた相手と話が弾み、その町の話を土産に帰ってくる。地図アプリが奪うのは道を覚える力だけではなく、こうした偶然の会話だ。 たしかに、失う力を気にしていては道具は使えない。しかし、失ってよい力と失ってはいけない力を分けることはできる。 だから私は、便利さを拒むのではなく、使う前に一度だけ、何を手放すかを決めるという付き合い方を選ぶ。
どこが良いかというと、筆者の主張を一文で言い直してから自分の立場を述べているので、「ふまえて」という条件を 1 行目で満たしています。「半分賛成」でも立場は明確で、何に賛成し何に賛成しないかが結論で示されています。根拠は観察の引き出しから出した祖母の話で、筆者の挙げた「道を覚える力」に、自分の見つけた「偶然の会話」を足した形です。筆者の言葉をなぞるだけでなく、一つ足すところに、自分の考えが出ます。
まちがえやすいところ
ずれ方には型があります。図3の 3 つを知っておくと、読み返しのときに自分の答案のどこを見ればよいかがわかります。
1 つ目は、問いの形と答えの形が違う誤りです。テーマが「学校で部活動を必修にすべきか」なのに、書き出しが「私は中学で 3 年間バスケットボール部に入り、たくさんのことを学んだ」になっている答案です。どこが違うかというと、これは経験の報告であって、是非に答えていません。学んだことがどれだけ多くても、必修にすべきかどうかには一言も触れていないのです。直した文は、「私は、部活動を必修にすべきではないと考える。学んだことが多かったのは、自分で選んだからだ」です。同じ経験が、立場の後ろに置かれると根拠に変わります。
2 つ目は、根拠が感想になっている誤りです。「ごみの分別は大切だと思う。みんなが気をつけるべきだ」という文は、「大切」も「気をつける」も気持ちの言葉で、なぜそう言えるかがどこにもありません。直した文は、「ごみの分別は、燃やす量を減らす最初の工程だ。私の家では区分を増やしてから、燃やすごみの袋が週に 1 つ減った」です。仕組みの引き出しと経験の引き出しから 1 つずつ出すと、気持ちの言葉を使わずに同じ主張が支えられます。
3 つ目は、条件を落とす誤りです。「課題文をふまえて」とあるのに課題文に一度も触れない答案、「具体例を挙げて」とあるのに理屈だけで終わる答案です。どこが違うかというと、中身の良し悪し以前に、指示に従っていないと見なされます。直し方は決まっていて、「ふまえて」なら 1 段落目に「筆者は〜と述べている」の一文を入れ、「具体例を挙げて」なら根拠の段落に「たとえば」で始まる文を必ず 1 つ置きます。条件は、メモの下の段に書いた語を、答案の中に探しに行けば確かめられます。

図3の右の列は、どれも文章としては成り立っています。ずれは文の中ではなく、問いとの間にあります。だから、答案だけを何度読み返しても見つかりません。読み返すときは、問題用紙のメモと答案を交互に見てください。
よくある質問
テーマが抽象的で、何を書けばよいかわからないときは
「共生について」「豊かさとは何か」のようなテーマは、そのままでは書けません。自分で具体の問いに下ろします。やり方は、テーマの語に「学校で」「私の町で」「家族の中で」のどれかを付けて、「〜は必要か」「〜はどうあるべきか」の形にすることです。「共生について」なら、「学校で、言葉の通じない転校生と共生するために、何が必要か」になります。下ろした問いを 1 行目に書けば、採点者はその範囲で読んでくれます。抽象のまま書き始めた答案より、狭くても答え切った答案の方が点は高くなります。
反対意見が思いつかないときは
自分の主張の「根拠」を否定する文を作ります。制服が必要だという根拠が「朝の選択を減らす」なら、反対意見は「選ぶ経験も教育のうちだ」になります。主張そのものを否定しようとすると大きすぎて手に負えませんが、根拠を一つ選んで否定するだけなら、必ず一つは作れます。作った反対意見には、「たしかに」で受けてから「しかし」で返します。返せない反対意見が出てきたら、それは立場を変える合図です。
自分の意見が「どちらでもない」ときは
「どちらでもない」で書いてもかまいませんが、「条件つきの賛成」の形にします。「平日は制服、行事の日は私服」のように、どの場合に賛成でどの場合に反対かを分けて書けば、それは立場です。避けたいのは、「どちらにも良い点がある」で終わる答案で、これは立場ではなく観察です。分けた条件を 1 行目に書き、根拠をその条件に合わせれば、どちらでもない意見も問いへの答えになります。
親の手伝い方と個別指導で確かめること
家で手伝うなら、答案を読む前にテーマだけを見て、「何について」「何を求めているか」「条件」をお子さまに口で言ってもらってください。3 つが言えれば、答案の形はほぼ決まっています。言えなければ、答案を直す前にメモの段階に戻ります。答案を読むときは、1 行目と最後の段落だけを先に読み、同じ答えを指しているかを見ます。文章のうまさや漢字の誤りは、その後です。
個別指導では、書いた答案より先に、問題用紙のメモを見ます。メモの 3 段が埋まっているか、求めている形の読み違いがないか、自由型を自分で是非の形に直せているかを一緒に確かめます。答案の直しは、ずれの型のどれに当たるかを決めてから始めます。型が決まれば、直す場所は 1 か所か 2 か所で済みます。
まとめ
テーマを「何について」「何を求めているか」「条件」の 3 つに分け、答えの一文を先に作り、根拠を 2 つの引き出しから出し、反対意見に答えてから結ぶ。800 字なら主張 100 字、根拠 300 字、反対と応答 250 字、結論 150 字です。読み返しでは、答案ではなくメモと答案の間を見ます。問いを 3 つに分けた時点で、答案の半分は書けています。
読んで終わりにするか、ここから変えるか。
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