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学資保険—入るか、入らないかを決める考え方|武蔵野個別指導塾

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月1万円を17年払って220万円受け取る計算なら、返戻率107.8%は年あたり0.88%です。祝いの席で勧められたら、親の保障と満期の月と解約の表を見てから決めてください。

入るかどうかを決めるのは、返戻率の高さではありません。次の3つです。3つとも「はい」なら検討する値打ちがあり、1つでも「いいえ」なら別の貯め方を先に考えます。ここに書く金額と制度は2026年度時点の姿で、最新は各窓口で確かめてください。

確かめること 「はい」のとき 「いいえ」のとき
親に万一のときの備えが、教育費の分だけ足りないか 払い込みが止まる仕組みに意味がある 死亡保障はすでにあり、重ねる理由が薄い
17年ほど引き出さずに置いておけるか 使えない形のほうが貯まる 車や住宅で途中に要り、解約で減るおそれがある
満期の月を、受験と入学の支払いより前に置けるか 入学金に間に合う つなぎのお金が別に要る

よくあるのは、出産祝いの席で親戚に「学資保険は早いほうがいいよ」と言われた帰り道、という場面です。駅までの坂を抱っこひもで歩きながら、紙袋の底のチラシが気になる。返戻率の数字だけが大きく印刷されています。生まれて2か月のお子さまの17年先を、今夜のうちに決めなければいけないような気がしてくる。ですが、急ぐ理由はチラシのどこにも書いてありません。先に持ち帰るのは、決める順番です。

学資保険は貯金と保険を束ねた契約です

学資保険は、親が契約者、お子さまが被保険者になる生命保険の一種です。毎月の保険料を払い、高校や大学の節目の頃に祝い金や満期金を受け取ります。ここまでなら積立と変わりません。違いが出るのは、図1のように、親に万一があったときです。多くの契約では、契約者が亡くなるなど定められた状態になると、それ以後の払い込みがなくなり、満期金は予定どおり受け取れます。預金の積立なら、親が亡くなった月で積み増しは止まり、残るのはそれまでに貯めた額だけです。

図1 学資保険のお金の流れと、親に万一のときと解約のときの動き

保険料には、貯める分のほかに、万一に備える分と保険会社の経費が含まれています。増え幅が小さいのはそのためです。医療や入院の特約を付けると保険料が増え、返戻率は下がります。特約は学費とは別の話なので、見積もりは特約なしと特約ありを並べてもらうと、何にいくら払っているかが見えてきます。

もう1つの特徴は、受け取る額が契約の時点で決まることです。円で受け取る一般的な形なら、満期金は17年後も同じ額のままです。これは強みであり、弱点でもあります。文部科学省の資料によると、私立大学の授業料の平均は平成17年度の830,583円から令和7年度の968,069円へ、20年で137,486円上がりました。国立大学の標準額は同じ期間ずっと年535,800円ですが、各大学は標準額の120%まで授業料を定めることができ、実際に上げた大学もあります。決まった額で受け取る契約は、上がった分までは追いかけません。物価の側で計算しても、年1%ずつ上がるだけで、17年後の220万円は今の約186万円分です。

外貨で運用する形の契約では、円で受け取る額が為替で動きます。同じ学資保険という名前でも中身は別物なので、最初に受け取りの通貨を見てください。

返戻率は時間を見ていない数字です

チラシの大きな数字が返戻率です。受け取る総額を払い込む総額で割った割合で、100%を超えれば払った額より多く戻ります。ここからの数字は計算のために置いたもので、実際の商品の値ではありません。

月1万円を17年払うと、1万円×12か月×17年で204万円です。受け取りが220万円なら、220÷204で返戻率は107.8%、増えた分は16万円です。図2のように棒で並べると、増えた分は棒の先の細い帯にしかなりません。

図2 月1万円を17年払い220万円受け取る例の返戻率と年あたりの増え方

この107.8%は、17年かけた結果です。1回目の1万円は17年置かれますが、最後の1万円はほとんど置かれていません。月ごとの払い込みを複利で計算すると、年あたりの増え方は0.88%です。

時間を見ていないことは、次の例ではっきりします。同じ204万円を10年で払い込み(月1万7,000円)、17年目に同じ220万円を受け取る形なら、返戻率は107.8%のままで、年あたりは0.63%に下がります。お金を長く置いた分だけ、同じ増え幅の値打ちが薄くなるわけです。短く払う形の返戻率が高く出やすいのも、長く置いているからで、月の負担はそのぶん重くなります。

家庭の電卓で確かめるなら、増えた割合を「払い込みの年数の半分+払い終えてから受け取るまでの年数」で割ると、近い値が出ます。17年払いなら7.84%÷8.5年で0.92%、10年払いなら7.84%÷12年で0.65%です。見積もりを2通り取ったら、大きな数字のまま比べず、年あたりに直してから比べてください。

他の貯め方とは3つのものさしで比べます

比べるものさしは、増え方と元本、途中で使うとき、親に万一のときの3つです。

貯め方 増え方と元本 途中で使うとき 親に万一のとき
学資保険 契約時に決まる。早い解約は元本を割りやすい 解約か、契約者への貸付 以後の払い込みなしで満期金
預金の積立 預金の金利の分だけ。預金保険の範囲で元本は守られる いつでも引き出せる 貯めた分だけ残る
投資の積立(NISAなど) 値動きしだい。元本を割ることがある 売れば使える。売りたくない時期もある 貯めた分だけ残る

表を横に読むと、学資保険を選ぶ理由は増え方の列にはなく、残りの2列にあることがわかります。親の備えだけなら、掛け捨ての保険と積立に分けても作れます。分ければ片方だけ見直せますし、束ねれば手間が1つで済む代わりに途中で動かしにくくなります。17年の長い契約なので、保険会社の経営が傾いたときに受け取りが減る場合があることも、頭に置いておいてください。

途中で使えないことには、値打ちもあります。手元にあると使ってしまう家庭では、引き出しにくさそのものが貯まる理由になるからです。貯まらなかったときの重さを数字で見ておきます。日本政策金融公庫の案内によると、国の教育ローンの金利は令和8年11月時点で固定の年4.60%です。足りない100万円を借りて10年で毎月同じ額を返すと、保証料を入れない計算で月10,412円、利息は約25万円になります。例の増えた分の16万円より大きな額です。

ここから言えるのは、預金でも投資でも学資保険でも、貯まらないのがいちばん高くつくということです。毎月の自動積立を止めずに続けられる家庭なら、引き出しにくさにお金を払う理由は小さくなります。児童手当の振込口座をそのまま教育費の口座にしてしまう、という手もあります。

満期の月は受験の暦に重ねて決めます

18歳満期で、満期の日がお子さまの誕生日に結びつく契約で考えます。高校3年の1年間に、どのお子さまも18歳になります。4月生まれは高3の4月、12月生まれは高3の12月、3月生まれは高3の3月です。図3のように受験の暦に重ねると、同じ18歳満期でも受け取りの位置がまるで違います。

図3 18歳になる月と入学金の頃を高校3年の暦に重ねた図

文部科学省の令和9年度の実施要項では、総合型選抜の結果の発表は11月以降、学校推薦型選抜は12月以降、一般選抜の試験は2月からです。合格が秋から冬に決まれば、入学金の締切もその後すぐに来ます。3月生まれで一般選抜なら、満期金より先に入学金の締切が来ることがあります。入学金は私立大学の平均で240,365円(令和7年度)、国立大学の標準額で282,000円です。併願の押さえに別の学校へ入学金を納めれば、さらに増えます。締切は学校ごとに違うので、志望校が決まったら募集要項で確かめます。

手当ての方法は3つあります。1つめは、17歳満期を選べる契約なら、高校2年のうちに受け取っておくことです。置く期間が短くなるぶん返戻率は下がりやすいので、見積もりを並べて差を見ます。2つめは、高校や大学の節目に分けて受け取る形を、1回で受け取る形と総額で比べることです。分けると使える時期は早まりますが、総額は同じとは限りません。3つめは、間に合わない分をつなぐ手段を知っておくことです。日本政策金融公庫の案内では、国の教育ローンの限度額はお子さま1人につき350万円で、自宅外通学や修業年限5年以上の大学などは450万円です。受験前でも申し込むことができ、必要な時期の2〜3か月前の申し込みがすすめられています。

満期の日が誕生日ではなく契約日に結びつく契約もあります。「いつ」を口頭で聞いて安心せず、書面の日付で確かめてください。

始める時期は、月額と親の健康で決まります

「早いほどよい」は半分だけ正しい話です。正しい半分は、払い込みの期間を長く取れるので月額を抑えられることと、親の健康状態を聞かれる契約では病気が見つかる前のほうが入りやすいことです。お子さまの年齢にも親の年齢にも加入の上限があり、上限は契約ごとに違います。保険の役割で見ても、お子さまが小さいほど、親に万一があったときに残る教育費は大きくなります。早く入る理由はたしかにあります。

正しくない半分は、今夜決めないと手遅れになるという空気です。数か月遅れて変わるのは月額の差で、その差は見積もりを2通り取れば数字で見えます。合わない契約に入って5年目に解約すれば、払い込んだ60万円のうち戻らない分が出ることがあります。その額は解約返戻金の表の5年目の行に書いてあります。比べるのは、この2つです。

月額は、目標の額から逆算します。金利を考えずに17年(204か月)で割ると、国立大学の標準額の4年分は、入学料282,000円と授業料535,800円の4年分で2,425,200円、月11,888円です。私立大学の平均の4年分は、令和7年度の入学料240,365円に、授業料968,069円と施設設備費172,550円を4年同額と見て足すと4,802,841円(実験実習料などは別)、月23,543円です。例の220万円は、国立の4年分の9割ほど、私立の平均の半分弱にあたります。

日本政策金融公庫の調べ(令和3年度)では、高校入学から大学卒業までの費用は、受験費用や通学費、学習塾の月謝まで含めてお子さま1人あたり942.5万円です。220万円はその4分の1弱にすぎません。1本の契約で全部を賄う前提は、最初から成り立たないのです。

よくある質問

高校の授業料が無償になったのなら、学資保険はいらなくなりましたか

文部科学省の資料によると、2026年4月から就学支援金の所得制限がなくなり、上限は私立全日制で年457,200円、公立で年118,800円です。大学では、扶養する子どもが3人以上の世帯は所得制限なしで減免を受けられ、上限は私立大学で授業料が年70万円、入学金が26万円です。心強い制度ですが、入学金や施設費、修学旅行の費用は高校の支援金の外にあります。いま生まれたお子さまが大学へ進むのは18年ほど先で、そのとき同じ形で残っているかは誰にも言えません。今の制度を見て安心するのは構いませんが、18年先の貯める額を今の制度だけで決めるのは危うい判断です。

返戻率が100%を切る契約は、入る意味がありませんか

目的しだいです。100%を切っても、親に万一のときは払い込みが止まって受け取りが残るので、保障を買っていることにはなります。そのときは、同じ保障が手持ちの保険と重なっていないかを見てください。貯めることが目的なら、100%を切る契約は候補から外して構いません。

祖父母が保険料を払うと言ってくれています

ありがたい話ほど、名義を先に決めます。契約者、実際に保険料を負担する人、受取人の組み合わせで税の扱いが変わることがあり、満期金を受け取るときの税金の話にもつながります。保険料の控除も含めて、金額しだいで答えが変わるので、契約の前に税務署の窓口で確かめてください。祖父母が途中で払えなくなったとき誰が引き継ぐかも、最初に決めておきます。

入ったあとで家計が苦しくなったら、どうすればよいですか

いきなり解約しないでください。契約によっては、保険金の額を減らして保険料を下げる、以後の払い込みを止めて小さな保障で残す、解約返戻金の範囲で借りる、といった手があります。借りた分には利息が付きます。どれが使えるかは契約で違うので、保険会社に書面で出してもらい、解約した場合の戻りと並べて決めます。

確かめる順番

今週のうちに家で確かめるのは次の6つです。祝いの席への返事は、そのあとで間に合います。

  1. 親の死亡保障を数えます。加入中の保険証券、勤務先の団体保険、住宅ローンの団体信用生命保険、遺族年金の見込みを1枚の紙に並べます。
  2. 月にいくら固定で動かせるかを決めます。ボーナスを除いた家計で、17年続く前提で考えます。車の買い替えや住宅の頭金の時期も書き込みます。
  3. チラシや見積もりから払い込みの総額と受け取りの総額を写し、返戻率を年あたりに直します。
  4. 解約返戻金の表を見ます。5年目と10年目の行を取り、月1万円の契約なら払い込みの60万円と120万円に比べて、いくら足りないかを書きます。
  5. 満期の日を書面で確かめ、お子さまの誕生月を図3の暦に重ねます。入学金より後になるなら、満期の選び方を変えた見積もりも取ります。
  6. 同じ月額を預金に積んだ場合を隣に書きます。月1万円を17年なら204万円です。増えた16万円と、17年動かしにくいことを並べて、声に出して読んでみてください。

進路の話とつなげる

高校2年の秋ごろ、満期金の額がそのまま進路の天井に見えてくることがあります。220万円だから私立は無理だ、と早くから志望校を削ってしまう形です。学資保険は貯めたお金の1つにすぎず、奨学金や授業料の減免と組み合わせて考えるものです。個別指導の面談では、志望校と併願の組み方に、受験料と入学金の支払いの月を重ねて並べる相談を受けています。保険の選び方そのものは、保険会社や税務署の窓口でお確かめください。

まとめ

学資保険に入る理由は、増え方の中にはありません。親の万一に備えたいか、手元にあると貯まらないか。どちらも当てはまらなければ、入らないと決めて構いません。どちらを選んでも、毎月のお金を17年積み続けることは変わりません。帰り道に決めることは1つもありません。決める日は、保険証券と電卓とお子さまの誕生月を机に並べた夜です。

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