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標準偏差と分散の公式—計算の手順を小さな例で|武蔵野個別指導塾

得点 3, 5, 6, 7, 9 を表に並べ、分散 4、標準偏差 2 点まで手で出します。同じ 62 点が偏差値 55 にも 60 にもなる理由まで、数字で確かめてみてください。
| 求めるもの | 公式 |
|---|---|
| 平均 x̄ | (x₁ + x₂ + … + xₙ) / n |
| 分散 s² | {(x₁ − x̄)² + (x₂ − x̄)² + … + (xₙ − x̄)²} / n |
| 分散のもう一つの式 | (x₁² + x₂² + … + xₙ²) / n − (x̄)² |
| 標準偏差 s | √(分散) |
n はデータの個数、x₁ から xₙ は一つ一つの値、x̄ は平均で「エックスバー」と読みます。分散は「平均からのずれの 2 乗の平均」、標準偏差はその正の平方根です。範囲は数学Ⅰの「データの分析」です。
よくあるのは、夕食の皿を下げたテーブルに模試の成績表を広げ、湯のみを脇へ寄せて 2 つの行を見比べている場面です。数学も英語も 62 点で、平均はどちらも 54 点。平均を上回った 8 点は同じなのに、偏差値は数学が 55、英語が 60 と印刷されています。「数学の採点だけ厳しいのでは」と口に出したくなりますが、印刷の誤りではありません。違いを生んでいるのは、成績表には載らないこともある標準偏差という数です。
公式の形と文字の意味
標準偏差は、データの散らばりを 1 つの数で表したものです。平均が「真ん中はどこか」に答える数なら、標準偏差は「真ん中からどれくらい離れているのが普通か」に答える数です。計算は 4 段あり、順番は入れ替わりません。
- 値を全部足して n で割り、平均 x̄ を出す。
- 一つ一つの値から平均を引いて、偏差を出す。
- 偏差を 2 乗して平均をとる。これが分散 s² です。
- 分散の正の平方根をとる。これが標準偏差 s です。
使う文字と呼び名を、10 点満点のテストの得点を例に並べると次の表になります。
| 記号 | 呼び名 | 表すもの | 得点のデータでの単位 |
|---|---|---|---|
| n | データの個数 | 人数や回数 | 人 |
| xₖ | k 番目の値 | 1 人分の得点 | 点 |
| x̄ | 平均 | 値の合計 ÷ n | 点 |
| xₖ − x̄ | 偏差 | 平均からのずれ。正にも負にもなる | 点 |
| s² | 分散 | 偏差の 2 乗の平均 | 点の 2 乗 |
| s | 標準偏差 | 分散の正の平方根 | 点 |
単位の欄に注目してください。分散だけが「点の 2 乗」で、元のデータと比べられません。標準偏差で √ をとる理由はここにあります。Σ を使うと、分散は s² = (1 / n) Σ (xₖ − x̄)² と短く書けます。k を 1 から n まで動かして足すという意味で、中身は上の表の式と同じです。
小さな例で形を見ます。5 人が小テストを受け、得点が 3, 5, 6, 7, 9 だったとします。合計 30 を 5 で割って、平均は 6 点です。図1のように、数直線の 6 の位置から各得点まで矢印を引くと、左へ 3 と 1、右へ 1 と 3 の矢印ができ、ちょうど 6 点の人だけ矢印がありません。この符号つきの距離が偏差です。

平均が同じでも、散らばりは同じとは限りません。得点が 5, 6, 6, 6, 7 の 5 人なら、平均は同じ 6 点でも偏差は -1, 0, 0, 0, 1 しかなく、標準偏差は約 0.63 点に縮みます。3, 5, 6, 7, 9 の 2 点とは 3 倍以上の開きです。平均だけを見ていたら、この 2 つのテストは同じに見えます。
なぜこの形になるのか
ずれの大きさを知りたいのなら、偏差をそのまま平均すれば済みそうです。ところが図1の偏差を足すと、-3 − 1 + 0 + 1 + 3 = 0 になります。これは偶然ではありません。
(x₁ − x̄) + (x₂ − x̄) + … + (xₙ − x̄) = (x₁ + x₂ + … + xₙ) − n x̄
平均の定義から x₁ + x₂ + … + xₙ = n x̄ なので、右辺はどんなデータでも 0 です。平均は、左右のずれがちょうどつり合う点だと言えます。どれほど散らばっていても 0 しか出ない計算は、物差しになりません。
そこで符号を消します。方法は絶対値と 2 乗の 2 つです。絶対値の平均でも散らばりは測れて、小テストの例なら (3 + 1 + 0 + 1 + 3) / 5 = 1.6 点です。それでも 2 乗が標準の形になっている理由の 1 つは、式の扱いやすさです。絶対値は中身の正負で場合分けが要りますが、2 乗はそのまま展開できます。この後に出てくる分散のもう一つの式は、展開できるからこそ生まれる式です。
2 乗の意味は図にするとはっきりします。図2のように、偏差を 1 辺とする正方形を描くと、面積は順に 9, 1, 0, 1, 9 です。合計 20 を 5 人で割ると、1 人あたりの面積は 4 になります。面積 4 の正方形の 1 辺は 2 です。標準偏差とは、ずれを正方形にして面積をならし、もう一度 1 辺の長さに戻した値です。

図2を見ると、1 辺 3 の正方形は 1 辺 1 の正方形の 9 倍の面積を持っています。平均から大きく外れた値ほど、標準偏差を強く押し上げるということです。1 人だけ極端な得点の人がいると、標準偏差が目に見えて大きくなるのはこのためです。
分散のもう一つの式は、偏差の 2 乗を展開して導きます。
- 1 つの項を展開します。(xₖ − x̄)² = xₖ² − 2 x̄ xₖ + (x̄)²
- k を 1 から n まで足します。Σ (xₖ − x̄)² = Σ xₖ² − 2 x̄ Σ xₖ + n (x̄)²
- 平均の定義 Σ xₖ = n x̄ を入れます。Σ (xₖ − x̄)² = Σ xₖ² − 2n (x̄)² + n (x̄)² = Σ xₖ² − n (x̄)²
- 両辺を n で割ります。s² = (Σ xₖ²) / n − (x̄)²
言葉にすると「2 乗の平均から、平均の 2 乗を引く」です。3, 5, 6, 7, 9 で試すと、2 乗は 9, 25, 36, 49, 81 で合計 200、その平均は 40、平均の 2 乗は 6² = 36 なので、40 − 36 = 4 となって最初の計算と一致します。
偏差値もこの延長にあります。模試の成績表で使われる偏差値は、次の式で計算されるのが基本です。
偏差値 = 50 + 10 × (得点 − 平均) / 標準偏差
(得点 − 平均) / 標準偏差 は「平均から標準偏差何個ぶん離れているか」を表します。1 個ぶん上なら 60、2 個ぶん上なら 70、1 個ぶん下なら 40 です。この変換をすると、どの科目のデータも平均 50、標準偏差 10 にそろいます。点数の散らばりが違う科目どうしを同じ物差しで比べられるのは、そのためです。
例題で使い方を確かめる
例題 1 計算の表で求める
10 点満点の小テストで、5 人の得点が 3, 5, 6, 7, 9 でした。分散と標準偏差を求めなさい。
- 平均を出します。30 ÷ 5 = 6 点です。偏差の基準になる数なので、最初に確定させます。
- 下の表の順に、偏差とその 2 乗を書きます。縦にそろえると、計算漏れがすぐに見つかります。
- 偏差の合計が 0 になることを確かめます。0 でなければ平均か引き算を誤っているので、2 乗に進む前に止まれます。
- 偏差の 2 乗の合計 20 を 5 で割ります。2 乗の「平均」をとる段で、20 ÷ 5 = 4 が分散です。
- 4 の正の平方根をとります。単位を点に戻す段で、√4 = 2 が標準偏差です。
| 得点 x | 偏差 x − 6 | 偏差の 2 乗 |
|---|---|---|
| 3 | -3 | 9 |
| 5 | -1 | 1 |
| 6 | 0 | 0 |
| 7 | 1 | 1 |
| 9 | 3 | 9 |
| 合計 30 | 合計 0 | 合計 20 |
答え: 分散 4、標準偏差 2 点
例題 2 平均が小数のときはもう一つの式
5 日間の家庭学習の時間が 2, 3, 3, 4, 7 時間でした。分散を求め、標準偏差を四捨五入で小数第 2 位まで求めなさい。
- 平均を出します。19 ÷ 5 = 3.8 時間です。小数になったら、偏差を 1 つずつ 2 乗する道は重くなるので、もう一つの式に切り替えます。
- 値の 2 乗を足します。4 + 9 + 9 + 16 + 49 = 87 です。元の値が整数なら、2 乗の計算も整数で済みます。
- 2 乗の平均を出します。87 ÷ 5 = 17.4 です。公式の前半にあたります。
- 平均の 2 乗を引きます。3.8² = 14.44 なので、17.4 − 14.44 = 2.96 が分散です。小数の 2 乗はこの 1 回で終わります。
- 平方根をとります。√2.96 は約 1.72 です。1.72² = 2.9584 で 2.96 に近いことを確かめれば、電卓がなくても見当が合います。
偏差で計算しても、-1.8, -0.8, -0.8, 0.2, 3.2 の 2 乗の合計が 14.8 で、5 で割ると同じ 2.96 になります。2 つの道が同じ値に着くことを 1 度確かめておくと、公式を信用して使えます。
答え: 分散 2.96、標準偏差 約 1.72 時間
例題 3 同じ値が何人もいるとき
10 人の得点が次の表のとおりでした。平均、分散、標準偏差を求めなさい。
| 得点 x | 2 | 4 | 6 | 8 | 計 |
|---|---|---|---|---|---|
| 人数 | 1 | 3 | 4 | 2 | 10 |
- 得点 × 人数を足します。2 + 12 + 24 + 16 = 54 で、平均は 54 ÷ 10 = 5.4 点です。同じ得点の人を 1 人ずつ足す手間を、かけ算で省いています。
- 得点の 2 乗 × 人数を足します。4 + 48 + 144 + 128 = 324 です。2 乗してから人数を掛ける順番を守ります。先に掛けてから 2 乗すると、別の数になるからです。
- 2 乗の平均を出します。324 ÷ 10 = 32.4 です。割る数はデータの種類の 4 ではなく、人数の合計 10 です。
- 平均の 2 乗を引きます。5.4² = 29.16 なので、32.4 − 29.16 = 3.24 が分散です。
- 平方根をとります。1.8² = 3.24 なので、√3.24 = 1.8 です。
答え: 平均 5.4 点、分散 3.24、標準偏差 1.8 点
例題 4 成績表の謎を解く
ある模試の数学は平均 54 点、標準偏差 16 点、英語は平均 54 点、標準偏差 8 点でした。どちらも 62 点をとったときの偏差値を求めなさい。また、数学で偏差値 60 に届くのは何点ですか。
- 平均との差を出します。どちらも 62 − 54 = 8 点です。ここまでは 2 科目で何も違いません。
- 差を標準偏差で割ります。数学は 8 ÷ 16 = 0.5、英語は 8 ÷ 8 = 1 です。同じ 8 点が、標準偏差何個ぶんかに直すと別の数になります。
- 偏差値の式に入れます。数学は 50 + 10 × 0.5 = 55、英語は 50 + 10 × 1 = 60 です。
- 数学で偏差値 60 は、標準偏差 1 個ぶん上のことです。54 + 16 = 70 点と逆算できます。
答え: 数学は偏差値 55、英語は偏差値 60、数学で偏差値 60 に届くのは 70 点
図3の色の帯は、平均から上下に標準偏差 1 個ぶんの範囲です。図3のように、数学は帯が広く、62 点はまだ帯の右半分の途中にあります。英語は帯が狭く、62 点が帯の右端にちょうど重なります。点が平均の近くに固まったテストでは、わずかな点差で前に出られるのです。保護者の方がお子さまの成績表を読むときも、平均との差だけでは科目どうしを比べられない点は同じです。

得点の分布が左右対称の山形に近ければ、偏差値 60 以上は全体の約 16%、およそ 6 人に 1 人です。ただし、この割合が言えるのは分布が山形に近いときだけで、偏った分布には当てはまりません。
まちがえやすいところ
1 つ目は、分散をそのまま標準偏差として答える誤りです。
- 誤った書き方: 分散が 4 なので、標準偏差は 4 点。
- どこが違うか: 4 は偏差の 2 乗の平均で、単位は点の 2 乗のままです。図2で言えば面積の段階で止まっていて、1 辺に戻す段が抜けています。
- 正しい書き方: 分散は 4、標準偏差は √4 = 2 点。
2 つ目は、2 乗の平均と平均の 2 乗を取り違える誤りです。
- 誤った書き方: 3, 5, 6, 7, 9 の分散を、平均の 2 乗 − 2 乗の平均 = 36 − 40 = -4 とする。あるいは 2 乗の平均 − 平均 = 40 − 6 = 34 とする。
- どこが違うか: 1 つ目の式は引く順番が逆です。分散は 2 乗の平均なので負にはならず、負が出た時点で誤りと判定できます。2 つ目の式は平均を 2 乗し忘れていて、値が大きくなりすぎています。
- 正しい書き方: 2 乗の平均 − 平均の 2 乗 = 40 − 36 = 4。
3 つ目は、関数電卓や表計算ソフトの値をそのまま写す誤りです。
- 誤った書き方: 3, 5, 6, 7, 9 の分散を 20 ÷ 4 = 5、標準偏差を √5 で約 2.24 とする。
- どこが違うか: n − 1 で割る式は、手元のデータから背後にある大きな集団の散らばりを推し量るときに使う別の式です。電卓やソフトには両方が用意されていることが多く、選び間違えても警告は出ません。数学Ⅰの「データの分析」の分散は n で割ります。
- 正しい書き方: 分散は 20 ÷ 5 = 4、標準偏差は 2 点。
覚え方と忘れたときの戻り方
丸暗記より、順番を 4 語で持っておくほうが長持ちします。「ずれ、2 乗、平均、ルート」です。1 語ずつ理由が言えます。ずれを見たいから偏差をとり、足すと 0 になるから 2 乗し、人数に左右されないように平均し、単位を戻すためにルートをとります。もう一つの式は、語呂というより唱え方として「2 乗の平均引く平均の 2 乗」と言われることがよくあります。
式の形があやしくなったら、いちばん小さなデータ 0 と 2 で試してください。平均は 1、偏差は -1 と 1、2 乗はどちらも 1、平均して分散は 1、標準偏差も 1 です。数直線で 0 も 2 も平均 1 から 1 だけ離れているので、答えが 1 なのは見ただけで納得できます。もう一つの式の順番を忘れたときも同じです。2 乗の平均は (0 + 4) / 2 = 2、平均の 2 乗は 1 で、2 − 1 = 1 なら分散に一致し、逆の順番なら -1 で負になります。全部で 1 分もかかりません。全員が同じ得点なら偏差がすべて 0 で、標準偏差も 0 になることも、合わせて確かめられます。
練習問題
練習 1: 15 点満点の小テストで、5 人の得点が 1, 5, 7, 9, 13 でした。平均、分散、標準偏差を求めなさい。
練習 2: データ 1, 2, 4, 4, 7 の分散を、もう一つの式で求めなさい。さらに標準偏差を四捨五入で小数第 2 位まで求めなさい。
練習 3: 平均 61 点、標準偏差 12 点のテストで 70 点をとったときの偏差値を求めなさい。その後、採点の修正で受験者全員に 3 点が加わりました。偏差値はどう変わりますか。
答えと解説
練習 1: 合計 35 を 5 で割って、平均は 7 点です。偏差は -6, -2, 0, 2, 6 で、合計が 0 になることを確かめます。2 乗は 36, 4, 0, 4, 36 で合計 80 です。80 ÷ 5 = 16 が分散で、√16 = 4 が標準偏差です。答えは平均 7 点、分散 16、標準偏差 4 点です。
練習 2: 合計 18 を 5 で割って、平均は 3.6 です。小数なので、もう一つの式が向いています。2 乗の和は 1 + 4 + 16 + 16 + 49 = 86 で、2 乗の平均は 86 ÷ 5 = 17.2 です。3.6² = 12.96 を引いて、17.2 − 12.96 = 4.24 が分散です。2.06² = 4.2436 で 4.24 に近いので、標準偏差は約 2.06 です。
練習 3: 平均との差は 70 − 61 = 9 点で、9 ÷ 12 = 0.75 です。偏差値は 50 + 10 × 0.75 = 57.5 になります。全員に 3 点を足すと、平均は 64 点、得点は 73 点に上がりますが、差は 9 点のままです。全員の偏差が変わらないので、標準偏差は 12 点のままで、偏差値は 57.5 から動きません。図1で言えば数直線の上を全員が平行に動くだけで、矢印の長さは 1 本も変わらないからです。
次に確かめる公式
- 四分位範囲: 第 3 四分位数 − 第 1 四分位数で求めます。極端な値に引きずられにくい散らばりの測り方で、箱ひげ図を読むときに使います。
- 共分散: 2 つのデータの偏差を掛けて平均したものです。片方が高い人はもう片方も高いのか、という傾きを符号で見るときに使います。
- 相関係数: 共分散 ÷ (x の標準偏差 × y の標準偏差) で求めます。2 つのデータの関係の強さを -1 から 1 までの数で比べるときに使います。
個別指導では、標準偏差で手が止まったときに平均の計算と小数の 2 乗、√ の見積もりまで戻って確かめます。つまずきの場所が統計の考え方ではなく、その手前の計算にあることがあるからです。
まとめ
3, 5, 6, 7, 9 の 5 つの数から 2 点という答えまでたどり着けたなら、偏差値も同じ道の先にあります。次に成績表を開いたら、平均との差の横に標準偏差を書き足してみてください。同じ 62 点が 55 にも 60 にもなる理由は、もう印刷の謎ではありません。成績表の 8 点は、標準偏差で割られるまで何も語っていません。
読んで終わりにするか、ここから変えるか。
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