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三平方の定理から内積とノルムへ 「長さ」と「直交」の一般化|武蔵野個別指導塾
直角三角形の辺の計算から、ベクトルや関数の長さへ進みます。内積が0になる意味を具体例で確かめ、三平方の定理を使う前に確かめたい条件まで押さえましょう。

三平方の定理から内積とノルムへ 「長さ」と「直交」の一般化
斜めの長さを求めた、その先へ
よくあるのは、雨の日の廊下で、窓枠を見ながら「横と縦の長さがわかれば、斜めも計算できるんですよね」と話す場面です。三平方の定理を覚えると、直接測りにくい長さを計算で求められます。それでも、問題集に出てくる直角三角形を探すためだけに、この公式を練習するのだろうかと感じるかもしれません。
実は、この定理には長く使える考え方が入っています。互いに直角な方向に分けて調べると、全体の長さを組み立てられる、という考え方です。高校ではその「方向」をベクトルで表し、大学では矢印だけでなく関数についても、長さや直交を考えるようになります。
関数に長さがあると言われても、すぐに姿を思い浮かべる必要はありません。まず、三平方の定理にある直角という条件を丁寧に読みましょう。その条件を式で言えるようにするのが内積です。図の直角が計算できる性質に変わるところから、数学の扱える対象が広がっていきます。

三平方の定理で座標の距離を測る
三平方の定理は、直角三角形の直角を挟む辺の長さを a、b、斜辺の長さを c とすると、次の関係が成り立つという定理です。斜辺は直角に向かい合う辺を指します。
a²+b²=c²
ここで足しているのは辺の長さそのものではなく、その二乗です。それぞれの辺を一辺とする正方形を描けば、小さい側の正方形の面積の和が、斜辺側の正方形の面積に等しいと読めます。三角形を回転させても斜辺の役割は変わりません。紙面で上にある辺や、斜めに描かれた辺を機械的に選ぶと、図の向きが変わったときにつまずきます。
直角を挟む辺が 3 cm と 4 cm なら、斜辺について次のように計算できます。
c²=3²+4²=9+16=25
c=5
長さなので、最後は正の値を選びます。方程式 x²=25 の実数解には 5 と -5 がありますが、辺の長さという条件が c の値を決めます。また、直角を挟む辺を通って進む道のりは 3+4=7 cm、斜辺に沿って進む道のりは 5 cm です。足し算だけでは斜めの長さにならないことも、この図から確かめられます。
逆に、斜辺が 5 cm、一方の辺が 3 cm とわかっていれば、残る辺を b として b²=25-9=16、b=4 と求められます。「いつも二乗して足す」と覚えるより、斜辺の二乗を等号の片側に置いてから、未知の辺を探すほうが関係を保てます。
この考えを座標平面に移しましょう。A(1,2)、B(4,6) の距離を求めます。A から横に進んで C(4,2) に着き、そこから縦に進んで B に着くと考えると、AC は 3、CB は 4 です。横方向と縦方向が直角なので、AB は先ほどと同じく 5 になります。
AB=√((4-1)²+(6-2)²)=5
一般に A(x₁,y₁)、B(x₂,y₂) の距離は、横の変化と縦の変化を二乗して足し、平方根を取ったものです。
AB=√((x₂-x₁)²+(y₂-y₁)²)
座標の差は負になることもありますが、辺の長さは差の絶対値です。そして絶対値を二乗しても、もとの差を二乗しても結果は同じです。そのため、この式には座標の差をそのまま入れられます。A と B を入れ替えると差の符号が両方とも反転しますが、二乗した結果も距離も変わりません。
座標の距離の式は、三平方の定理と別に突然現れた公式ではありません。横と縦の補助線を引いて直角三角形を作り、その辺を座標の差で書いたものです。公式を思い出せないときも、この図が描ければ、自分で式を組み直せます。
ただし、座標の目盛りは両軸で同じ長さの単位を使い、軸は直交しているとします。横軸が時間、縦軸が温度のグラフに、同じ式をそのまま当てはめても、紙の上の見かけの距離が物理的な距離になるわけではありません。何を測る座標なのかを確かめることも、公式を使う条件の一部です。
内積で直角を式にする
高校では、大きさと向きを持つ量をベクトルで表します。平面のベクトル u=(u₁,u₂) は、横方向の成分 u₁ と縦方向の成分 u₂ を持ちます。同じ矢印を平行に移しても同じベクトルとして扱うので、出発点をそろえて向きや長さを比較できます。
三平方の定理から、u の大きさ |u| は √(u₁²+u₂²) です。ここで |u| はベクトルの大きさを表す記号です。実数に付ける絶対値と似た役割ですが、中に入っているものを見分けてください。点の位置と、点から点へ動く量も区別しておくと、距離の式を読みやすくなります。
2 つの零でないベクトル u、v のなす角を θ とすると、内積は次の式で表されます。なす角は 0° から 180° までの範囲で考えます。
u·v=|u||v|cosθ
内積の計算結果はベクトルではなく実数です。互いの方向がどの程度そろっているかを、大きさも含めて表します。同じ向きなら cosθ=1 なので正の値となり、直角なら cosθ=0 で内積も 0 になります。反対向きなら cosθ=-1 なので負の値です。
直交する座標軸に沿った成分を使えば、同じ内積は次のようにも計算できます。
u·v=u₁v₁+u₂v₂
この成分表示によって、図で角度を測らなくても直交を判定できます。たとえば u=(3,4)、v=(-4,3) としましょう。
u·v=3×(-4)+4×3=-12+12=0
どちらも零ベクトルではないので、なす角は 90° です。u の長さは 5、v の長さも 5 ですが、長さが同じだから直交するのではありません。直交を決めているのは、成分の積を足した結果が 0 になることです。長さだけを知っても、2 本の矢印の向きの関係は決まりません。
この例で和を取ると、u+v=(-1,7) です。その大きさの二乗は (-1)²+7²=50 となり、|u|²+|v|²=25+25=50 と一致します。直角三角形を作る 2 辺が u と v、その斜辺に当たる移動が u+v だと見れば、これも三平方の定理です。
では、直交していないとどうなるでしょうか。一般に、成分を展開すると次の式になります。
|u+v|²=|u|²+2u·v+|v|²
真ん中の 2u·v が、向きの関係を受け持っています。直交する場合にこの項が消えるため、三平方の定理の形になるのです。中学の公式に直角という条件が必要だった理由を、高校では「内積の項が 0 になるから」と説明し直せます。
角度を求める例も見てみましょう。p=(1,0)、q=(1,1) とすると、p·q=1、|p|=1、|q|=√2 です。
cosθ=(p·q)/(|p||q|)=1/√2
したがって θ=45° です。成分から内積と大きさを計算し、その比から角度を読む、という順序になります。角度を問われたときにすぐ三角形の辺を探す方法に加え、成分で処理する道ができました。
ただし、どちらかが零ベクトルなら、大きさの積で割れません。成分の式で内積を計算することはでき、結果は 0 ですが、零ベクトルの向きや、他のベクトルとのなす角は定まりません。「内積が 0 なら角度は 90°」と言うときには、両方が零でないという条件を添えます。この区別が大学での直交の定義につながります。

関数にも長さと直交を定める
大学では、矢印だけに注目する代わりに、足し算と実数倍のできる対象をまとめて考えます。そうした演算が、交換法則や分配法則など所定の規則を満たす集合を、実ベクトル空間と呼びます。平面や空間のベクトルだけでなく、ある区間で連続な実数値の関数全体も、その例になります。
関数なら足し算は同じ x での値を足すこと、実数倍は各 x での値を同じ実数倍することです。関数全体を矢印として描く必要はありません。演算の規則をそろえることで、共通の議論ができるようになります。
実ベクトル空間の内積とは、2 つのベクトル u、v から実数 〈u,v〉 を定める規則で、対称性、各変数についての線形性、正定値性を満たすものです。対称性は順序を交換しても値が同じという性質です。線形性は、和を入れれば内積の和になり、実数倍を入れればその実数が外に出るという性質です。
正定値性は、〈u,u〉 が常に 0 以上であり、それが 0 になるのは u が零ベクトルのときに限るという性質です。このような内積を備えたベクトル空間を、内積空間と呼びます。ここでは実数を使う場合に範囲を絞ります。高校の成分の積の和は、この条件を満たす内積の一例です。
内積が定まると、次の式でノルムを定められます。
‖u‖=√〈u,u〉
ノルムは長さに当たる量です。一般にノルムと呼ぶには、値が非負で零になるのは零ベクトルだけであること、実数倍で絶対値の倍率だけ変わること、そして三角不等式 ‖u+v‖≦‖u‖+‖v‖ を満たすことが必要です。内積から作った上の量は、これらの条件を満たします。距離は ‖u-v‖ として測れます。
直交も定義し直します。〈u,v〉=0 となるとき、u と v は直交するといいます。この定義では零ベクトルもすべてのベクトルと直交します。零ベクトルに幾何的な向きを与えるのではなく、内積が 0 という条件で用語を定めているからです。
具体的に、区間 -1≦x≦1 で連続な実数値の関数 f、g の内積を、次の積分で定めましょう。
〈f,g〉=∫₋₁¹ f(x)g(x) dx
積分は区間全体にわたって値を足し合わせる操作です。成分ごとの積を足した高校の式に対して、ここでは各 x での積を積分します。連続な関数に限れば、f がどこかで零でないとき、その近くでも f(x)² は正の値を持つため、〈f,f〉 は正になります。内積の条件を支えるのは、この性質です。
f(x)=1、g(x)=x を選ぶと、積は x です。負の側と正の側の積分が打ち消し合い、〈f,g〉=0 となります。つまり、この 2 つの関数は直交します。グラフの交わる角度を測っているわけではありません。選んだ区間全体で積を積分した結果について述べています。
それぞれのノルムの二乗は 〈f,f〉=2、〈g,g〉=2/3 です。和 f+g は x に 1 を足す関数なので、ノルムの二乗は次のようになります。
‖f+g‖²=∫₋₁¹ (1+x)² dx=8/3
一方、‖f‖²+‖g‖²=2+2/3=8/3 です。関数についても、直交するものの和ではノルムの二乗が足し算になります。三平方の定理の骨組みが、三角形の辺から関数へ移ったのです。
最後に、基底とは、その空間の各ベクトルを、ただ一通りの係数で有限個の要素の和として表せる、もとになるベクトルの組です。有限次元の内積空間で、基底のベクトルが互いに直交していれば直交基底、さらに各ノルムが 1 なら正規直交基底と呼びます。上の 1 と x は、一次以下の多項式全体を考えると直交基底になります。
関数をこうした成分に分ける見方は、測定した信号を近似する場面で役立ちます。どの成分がどれだけ含まれるかを内積で取り出し、元の信号との差をノルムで測るのです。有限個で近似することと、すべての関数を有限個で表せることは区別します。対象の空間と、使う成分の範囲を決めることが出発点です。
二乗の和を支えているもの
中学では、直角三角形の辺を手がかりに長さを求めました。高校では、ベクトルの成分から内積を計算し、直角という図の条件を内積が 0 という式に置き換えました。大学では、その式の性質を定義として取り出すことで、関数のように矢印として見えない対象にも、長さと直交を広げました。
通して残っているのは、直交する成分に分ければ、全体の大きさの二乗が成分の大きさの二乗の和になるという関係です。直交していない成分では、混ざり合う項が残ります。三平方の定理も内積も、分けたものを組み合わせるときの関係を調べているのです。
一方で、長さの意味は少しずつ変わります。中学の長さは定規で測る線分に結び付いています。関数のノルムは、ここで選んだ定義では値の二乗の積分から作る量であり、グラフの曲線の長さではありません。同じ「長さ」という言葉でも、何をどう測るかを確かめる必要があります。
内積そのものも、対象に応じて選びます。先ほどの関数 1 と x は区間 -1≦x≦1 では直交しましたが、積分する区間を 0≦x≦1 に変えると、積の積分は 1/2 で、直交しません。関数の式だけを見て直交かどうかを断定せず、内積の定義まで読むことが、大学の数学に向かう読み方です。
つながりを使った学び方
学習では、公式を増やす前に、同じ関係を図と言葉と式で行き来してみましょう。最初の手順は、三平方の定理を使いたい図に直角の印を入れ、斜辺を指でたどることです。辺の長さが並んでいても、直角という条件がどこからわかるのかを確かめてから式を書きます。
次の手順は、同じ問題を座標で表すことです。横と縦の差を書き、その差が直角三角形のどの辺に対応するかを結びます。点の順番を入れ替えても距離が変わらない理由を説明できれば、公式の形だけでなく、その仕組みもつかめています。
さらに高校生なら、ベクトルの内積を成分で計算したあと、結果の符号から向きの関係を予想します。零でないベクトルどうしで、正なら角度は 90° より小さく、0 なら直角、負なら 90° より大きくなります。同方向の 0° と反対方向の 180° も含め、図と照らして判断しましょう。そのうえで和の大きさの二乗を展開し、内積の項が現れることを確かめます。
最後に、解答の末尾へ「どの条件を使ったか」を短く書き添えます。直交する軸を使った、両方のベクトルが零でない、積分する区間が決まっている、といった条件です。大学の定義にまだ慣れていなくても、条件と結論を組にして読む練習は、今の問題で始められます。
塾で扱うのは、誤答の式だけではありません。斜辺の取り違えなら図へ戻り、座標の差の誤りなら移動の向きを確かめ、内積とベクトルの和の混同なら計算結果が数か矢印かを区別します。同じ不正解でも戻る場所を分け、次の問題で自分で選び直せるかを見ます。
家庭では、お子さまが解いた図を使って「直角はどこからわかったの」と尋ねるくらいで十分です。先の学年の言葉を覚えさせる必要はありません。説明が途中で止まった箇所を残しておけば、次の授業で尋ねたい点が具体的になります。答えが合ったかに加えて、使った条件を言えたかにも目を向けてみてください。
よくある質問
三平方の定理が苦手だと内積も難しいですか
つながりはありますが、今の苦手がそのまま固定されるわけではありません。まず、直角を挟む辺と斜辺を区別し、二乗の関係を書くところまで戻れます。内積を学ぶと、直角のときだけ二乗の和になる理由が別の角度から見えて、中学の内容を整理し直す機会にもなります。
内積とノルムは同じものですか
内積は 2 つのベクトルから実数を作る規則で、ノルムは 1 つのベクトルの大きさを測る量です。内積からノルムを作れますが、すべてのノルムが内積から作られるわけではありません。まずは、自分自身との内積の平方根が長さになるという関係を押さえましょう。
関数の直交まで今すぐ理解する必要がありますか
中学生なら、直角を条件として使えて、座標の距離を直角三角形から説明できれば、先へ進む足場になります。高校生なら成分の式と角度の式を往復してみてください。関数の話は、現在の公式が将来も形を変えて働くことを知るための見通しとして読めます。
雨の日の廊下で眺めた窓枠の斜めの線から、関数の直交までには、何段階もの言葉の変化があります。それでも最初に確かめることは具体的です。直角はどこにあるか、何を二乗しているか、その値は何の長さか。目の前の式に問いを戻すと、遠く見えた大学の数学とも道がつながります。
武蔵野個別指導塾の授業では、生徒が式を書き始める前に指さした直角まで、理解の手がかりとして受け止めます。一本の補助線を自分で引けたところから、次に学ぶ内積への道筋を確かめていきます。
本気になった日が、入塾の日。
お子様の教育、迷ったら「丸投げ」してください。必ず、期待以上の結果で返します。武蔵野で育む、武蔵境で学ぶ。
電話は年中無休。365日、24時間、お電話可能。



