等号を答えを書く記号と読む誤解と関係理解の妨げ|武蔵野個別指導塾が薦める学習の仕方

連載「単元別のつまずき研究——その単元で、生徒は実際に何をどう誤るか」全50回の第3回です。学習の仕方の目次を見る

「3+4=」と書かれたプリントを前に、生徒が「7」とだけ書き込む。先生が「3+4=5+2」と板書すると、首をかしげて「左は7で、右も7……でも、=のあとに答えが二つある」とつぶやく。この小さな違和感は、計算力の問題ではなく、等号の読み方の問題です。

等号は「左と右が等しい」という関係を表す記号です。ところが、小学校の早い段階から「=は答えを書く場所を示す記号」として刷り込まれると、中学以降の方程式や文字式で深刻なつまずきにつながります。今回は、等号を「答えを書け」と読んでしまう生徒の実態と、その読み方を関係の記号へ変えるための手立てを、研究知見に基づいて整理します。

この記事では、等号の誤読がどのような文脈で強まり、どのような文脈で和らぐのかを示します。そのうえで、机の前で1対1の指導をするときに使える具体的な問いかけと、学年別の注意点をまとめます。

要点(結論から)

  • 等号を「答えを書け」という操作の記号と読む生徒は、計算はできても関係を読めていません。この読み方は、中学以降の等式変形や方程式で手が止まる原因になります。
  • 教科書や問題集では「3+4=7」のような「演算=答え」の形が多く、等号の右側に答えが一つだけ来る文脈に偏っています。この文脈だけでは、等号を関係の記号と捉える力は育ちにくいのです。
  • 「3+4=5+2」のように等号の両側に式がある文脈は、等号を関係の記号として読む力を最も引き出しやすい形です。ただし、この形は教科書にあまり登場しません。

結論——等号の誤読は計算力ではなく文脈の癖から生まれる

  • 等号を「答えを書け」という操作の記号と読む生徒は、計算はできても関係を読めていません。この読み方は、中学以降の等式変形や方程式で手が止まる原因になります。
  • 教科書や問題集では「3+4=7」のような「演算=答え」の形が多く、等号の右側に答えが一つだけ来る文脈に偏っています。この文脈だけでは、等号を関係の記号と捉える力は育ちにくいのです。
  • 「3+4=5+2」のように等号の両側に式がある文脈は、等号を関係の記号として読む力を最も引き出しやすい形です。ただし、この形は教科書にあまり登場しません。
  • 「7=7」のような、演算を含まない等号も、関係の読み方を引き出す効果があります。答えを書く余地がないため、「等しい」という意味に注意が向きやすくなります。
  • 指導では、等号の意味を言葉で定義させるだけでなく、複数の文脈を見せて「どこが等しいのか」を問いかけることが有効です。文脈を変えるだけで、同じ生徒の読み方が変わることが研究で示されています。

理由——「=」の読み方は文脈によって切り替わる

教科書が与える文脈は「演算=答え」に偏っている

等号の読み方を調べた研究では、中学生向けの教科書4シリーズを対象に、等号がどのような形で提示されるかが分析されました。その結果、等号は「3+4=7」のような標準的な「演算=答え」の文脈で頻繁に登場し、「3+4=5+2」のように等号の両側に式がある非標準的な文脈ではほとんど登場しないことが報告されています。

McNeil N, Grandau L, Knuth E, et al. Middle-School Students’ Understanding of the Equal Sign: The Books They Read Can’t Help. Cognition and Instruction. 2006;24(3):367-385.

この偏りは、生徒が等号を「左の式を計算して右に答えを書くための記号」と捉える傾向を強めます。計算ドリルや小テストでも、等号の右側には常に一つの数値が来る形がほとんどです。生徒は「=を見たら、左を計算して右に結果を置く」という手続きを何度も繰り返すうちに、等号の関係的な意味に触れる機会を失っていきます。

ただし、同じ研究では「7=7」のような演算を含まない非標準的な文脈も教科書に存在することが示されています。この形は、答えを書く余地がないため、等号を「等しい」という関係の記号として読むきっかけになります。教科書にまったく多様な文脈がないわけではありませんが、最も効果的な「両側に式がある文脈」はまれなのです。

同じ生徒でも文脈が変われば読み方が変わる

等号の理解が数学の経験によってどう変わるかを調べた研究では、小学生、中学1年生相当、大学生、大学院生が、三つの文脈で等号をどう解釈するかが比較されました。三つとは、等号だけを単独で見せる文脈、「4+8+5+4=」のような典型的な足し算の文脈、「4+8+5=4+」のような等価関係を問う文脈です。

McNeil N, Alibali M. Knowledge Change as a Function of Mathematics Experience: All Contexts are Not Created Equal. Journal of Cognition and Development. 2005;6(2):285-306.

小学生はどの文脈でも等号を「答え」や「合計」を意味する操作の記号と解釈しました。一方、大学生と大学院生はどの文脈でも等号を「等価関係」の記号と解釈しました。注目すべきは中学1年生相当の生徒で、等号だけの文脈と足し算の文脈では操作の記号と解釈したのに、等価関係を問う文脈では関係の記号と解釈したのです。

この結果は、等号の読み方が固定的な能力ではなく、文脈によって引き出され方が変わることを示しています。中学1年生相当の生徒は、関係の読み方を潜在的に持っていても、慣れ親しんだ「演算=答え」の文脈ではそれを使えません。逆に、等価関係を問う文脈に置かれると、新しく芽生えつつある関係の読み方を活性化できるのです。

「答えを書け」という読み方は代数の入り口で壁になる

等号を操作の記号と読む生徒は、左から右へ計算を流すことには慣れています。しかし、代数では「x+3=7」を「x=7-3」と変形したり、「2x+1=x+5」の両辺から同じものを引いたりと、等号の左右を関係として扱う操作が求められます。等号を「答えを書く場所」としか読めないと、等式の両辺に式がある場面で「どこが答えなのか」が分からなくなり、変形の意味を失います。

また、等号の右側に式が来る「7=3+4」のような形を不自然に感じる生徒もいます。左に式、右に答えという順序の固定は、等式の対称性を理解する妨げになります。等号は左右の順序を問わず、両辺が等しいことを示す記号だという読み方が、代数の学習を支える土台になります。

指導の場では、等号の定義を「左と右が同じ大きさを表す印」と教えるだけでは不十分です。生徒が実際に等号をどう読んでいるかは、文脈によって変わるからです。大切なのは、定義を暗記させることではなく、多様な文脈の中で「等しいとはどういうことか」を繰り返し問い、関係の読み方を活性化する経験を積ませることです。

誤答の例——等号の右に式が来ると手が止まる

よくある誤答 その子が考えていること 確かめる問いかけ
「3+4=5+2」を見て「7=7だけど、=のあとに5+2があるのは変」と言う =の右には一つの答えだけが来るはずだと思っている 「左の3+4と右の5+2は、それぞれいくつになる? その二つは同じ?」
「7=3+4」を「3+4=7」に直さないと気持ち悪いと感じる 式は左、答えは右という順序が絶対だと思っている 「7と3+4は同じ大きさ? 同じなら、左右を入れ替えても等しいと言える?」
「x+3=7」で「x+3の答えが7」と言い、xを求めようとしない =を「左の式の結果が右にある」とだけ読んでいる 「xに何が入れば、左と右がちょうど同じになる? 右の7と同じになるには、xはいくつ?」
「4+8+5=4+□」の□に17と書く 左の合計を=の右に書くのが習慣になっている 「右の4+□が左の合計と同じになるには、□はいくつ? 右の4を足す前の数は?」
「2×3=6=12÷2」のような式を書いて「=でつなげば全部同じ」と言う =を「次に計算を続ける」という作業の区切りと見ている 「6と12÷2は同じ? 2×3と12÷2は同じ? どこで区切ると、左と右が本当に等しくなる?」

机の前で1対1で確かめるときは、次の手順が有効です。

  1. まず「3+4=7」と「3+4=5+2」を並べて書き、「どちらも=が使われているね。=の左と右で、何が同じになっている?」と尋ねます。生徒の言葉で「同じ」と言えるかどうかを確認します。
  2. 次に「7=7」とだけ書いて、「これは正しい? 答えを書く場所がないけど、=の意味は何?」と問います。答えを書く余地のない形で、等号の関係性に注意を向けさせます。
  3. それから「4+8+5=4+□」を出し、「左の合計はいくつ? 右も同じにするには、□に何が入る?」と、両辺を関係として見ることを促します。□に左の合計をそのまま書いた場合は、右の4を足す前の数に戻るよう誘導します。
  4. 最後に、生徒自身に「=の左と右が等しい式」を一つ作らせます。作った式の両辺をそれぞれ計算させ、「同じ大きさになっているね」と確認して終わります。

小学生では、まず「=は同じ」という感覚を、具体物や図で育てることが優先です。左右の皿がつり合う天秤のイメージや、同じ数のブロックを左右に置く活動が有効です。中学生では、方程式の導入時に「x+3=7」を「左と右が同じ重さの天秤」として扱い、両辺から同じ数を引く操作を関係の維持として説明します。高校生では、等号の誤読が「2x+1=x+5=x=4」のような連鎖した誤った表記に現れることがあります。等式の変形は、等号でつながれた式全体が等価であることを保つ操作だと、記号の使い方から点検する必要があります。

よくある誤読——「教科書が悪い」でも「文脈を変えれば即解決」でもない

研究結果を「教科書のせい」とだけ読む誤用

教科書で「演算=答え」の文脈が多いという研究結果は、「教科書が悪いから生徒が誤読する」という単純な非難に使われることがあります。しかし、研究が示しているのは、教科書に多様な文脈が少ないという偏りであり、教科書が等号の誤読の唯一の原因だということではありません。生徒は教科書以外にも、ドリル、板書、口頭の説明、家庭での学習など、さまざまな場面で等号に触れています。

また、同じ研究では「7=7」のような非標準的な文脈も教科書に存在することが報告されています。つまり、教科書に多様な文脈がまったくないわけではなく、最も効果的な「両側に式がある文脈」がまれだというのが正確な読み方です。指導者は、教科書を責めるよりも、自分の授業でどの文脈をどれだけ見せているかを点検する方が建設的です。

「文脈を変えればすぐ直る」と期待する誤用

中学1年生相当の生徒が等価関係の文脈で関係の読み方を示したという結果は、「文脈を変えれば等号の誤読はすぐ直る」という楽観的な期待につながることがあります。しかし、この結果は、ある文脈で関係の読み方が引き出される可能性を示したものであり、一度の文脈変更で読み方が定着することを保証するものではありません。

小学生はどの文脈でも操作の記号と解釈したという結果も重要です。年齢や経験によっては、文脈を変えても関係の読み方が現れない段階があります。指導では、一つの文脈で正しく読めたからといって終わりにせず、別の文脈でも同じ読み方ができるかを確認し、時間をかけて定着を図る必要があります。文脈はスイッチではなく、読み方を育てる土壌です。

今週やること——等号の文脈を三つ用意して問いかける

  1. 授業や家庭学習の最初の5分で、「3+4=7」「7=7」「3+4=5+2」の三つを並べて書きます。それぞれについて「=の左と右は同じ?」と尋ね、生徒の言葉で説明させます。
  2. 計算ドリルの答え合わせの際に、一つだけ「7=3+4」のように左右を入れ替えた式を見せ、「これも正しい?」と問います。正しいかどうかだけでなく、なぜ正しいかを言わせます。
  3. 1週間のうちに、等号の両側に式がある問題を一つだけ宿題に混ぜます。例えば「4+8+5=4+□」のような形です。答えが合っているかよりも、□に入る数をどう考えたかを短く書かせます。

この記事で言えないこと

第一に、ここで紹介した研究は、等号の読み方と文脈の関係を示したものであり、特定の指導法の効果を長期的に測定したものではありません。文脈を変える問いかけが、すべての生徒の等号理解を持続的に改善するとは言えません。指導の効果は、生徒の年齢、既習事項、言語能力、学習意欲などによって変わります。

第二に、研究で対象となったのは限られた地域と時代の教科書や生徒です。日本の現在の教科書や、武蔵野市の教室に通う生徒にそのまま当てはまるとは限りません。等号の提示のされ方は教科書によって異なり、指導者の言葉かけによっても文脈は大きく変わります。ここで述べた傾向は、一つの参考として受け取るべきです。

第三に、等号の誤読は、計算力や論理的思考力と切り離して語れるものではありません。等号を関係の記号と読めるようになっても、それだけで方程式が解けるようになるわけではなく、式変形の手続きや記号操作の練習も必要です。また、発達段階や学習障害の有無によって、等号の関係的な理解に至る道筋は個人差が大きいことを踏まえる必要があります。

当塾の立場

等号の読み方を点検するための問いかけは、家庭でも十分にできます。三つの式を並べて「左と右は同じ?」と尋ねるだけなら、特別な教材も塾も要りません。むしろ、日常の計算練習の中で保護者が気づいた違和感を言葉にする方が、生徒にとって自然な学びになります。まずは家庭で、等号の左と右に注目する会話を試してみてください。

そのうえで、塾が担えるのは、文脈を変えても読み方がぶれないかを継続的に観察し、生徒の反応に合わせて問いを調整することです。当塾では、等号の誤読が見られた生徒に対して、1対1の対話の中で「左と右が同じ大きさになるように式を一つ作ってみて」という作問の手順を一度だけ挟みます。生徒が作った式の両辺を一緒に計算し、等しさを確認する。この小さな手順を、単元の変わり目に繰り返すことで、等号を関係の記号として使う感覚を育てます。

出典

  1. McNeil N, Grandau L, Knuth E, et al. Middle-School Students’ Understanding of the Equal Sign: The Books They Read Can’t Help. Cognition and Instruction. 2006;24(3):367-385.
  2. McNeil N, Alibali M. Knowledge Change as a Function of Mathematics Experience: All Contexts are Not Created Equal. Journal of Cognition and Development. 2005;6(2):285-306.

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