出願書類は何を予測しているか——GRE・推薦書・成績の予測妥当性

出願書類は何を予測しているか——GRE・推薦書・成績の予測妥当性

大学院の出願を前に、書類の束を見る志願者は少なくありません。成績証明書。英語のスコア。推薦書。束を見ると、どれが効くのかを、合格の一点で測りたくなります。効くか、効かないか。二値です。二値のままだと、GRE が当たる、当たらない、という短い文が残りやすい。短い文は、書類が何を予測し、何を予測しにくいかを消します。この回は、その役割を戻します。

Kuncel、Hezlett、Ones は、GRE と学部 GPA(UGPA)が大学院成績を予測する妥当性を、メタ分析として検討しています [1]。論文の表題は “A comprehensive meta-analysis of the predictive validity of the Graduate Record Examinations: Implications for graduate student selection and performance” です。2001年の報告です。扱うのは、米国の GRE と学部 GPA です。日本の大学院入試、英語試験、推薦書制度そのものを測った研究ではありません。1,753、6,589、82,659 を、合格率や偏差値に換算することは、この回ではしません。

Kuncel、Kochevar、Ones は、推薦書を、学部と大学院の入試のメタ分析として置いています [2]。論文の表題は “A Meta‐analysis of Letters of Recommendation in College and Graduate Admissions: Reasons for hope” です。2014年の報告です。推薦書は学術入試・人事選抜で広く使われるが、複数アウトカムへの予測力については比較的知見が少ない、と著者らは書いています。現行形式の推薦書は、高等教育の複数の成績面と一般に正の相関はあるが弱い。ただし学位取得については増分情報を提供する。弱い、を無意味、と読むこともしません。増分情報がある、を、厚く書けば合格する、と読むこともしません。

結論を先に言います。GRE と UGPA は、大学院 GPA、1年目大学院 GPA、総合試験得点、論文引用数、教員評定の一般化可能な予測因子である、と2001年の報告は述べています [1]学位取得・研究生産性との GRE 相関は一貫して正だが、一部の下位 90% 信頼区間は 0 を含む、とも述べています [1]現行形式の推薦書は、高等教育の複数の成績面と一般に正の相関はあるが弱い。ただし学位取得——困難で動機づけが強いアウトカム——については増分情報を提供する、と2014年の報告は述べています [2]。一般化可能な予測因子である、と、GRE が当たる、は違います。一貫して正だが一部の下位 90% 信頼区間は 0 を含む、と、学位取得は予測できない、も違います。弱い、と、無意味、も違います。増分情報、と、厚く書けば合格する、も違います。どちらも、日本の大学院入試の書類の手順書ではありません。

先に、この回がしないことも言っておきます。一次証拠は、米国の GRE・学部 GPA のメタ分析と、推薦書のメタ分析です。日本の大学院入試、英語試験、推薦書制度にそのまま当てはめません [1] [2]。GRE が当たる、当たらない、と単純化しません。1,753、6,589、82,659 を合格率や偏差値に換算しません。推薦書を厚く書けば合格する、とも書きません。弱い相関を、無意味、とは書きません。合格者の内側に限った予測の話は、すでに別稿があります。この回では再説明しません。睡眠、運動、教室環境も、軸にしません。研究計画書の書き方も、扱いません。この回の軸は、出願書類が何を予測し、何を予測しにくいかを、同じ重さで置くことです。志願者の書類が薄いことを、責めの文にはしません。受験生の準備を、足りない、と決めつけません。

1. 出願書類の予測は、合格の一点とは別の技術である

志願者が「書類が効く」と呼ぶものの中には、いくつかの層が混ざります。入るか入らないか。入ったあとの大学院 GPA。1年目の成績。総合試験。論文の引用。教員の評定。学位を取るか。研究の生産性。層が混ざったまま、「GRE が当たる」と言うと、どの層の、どの基準の話なのかが見えなくなります。

Kuncel、Hezlett、Ones が置いているのは、大学院での成績の予測妥当性です [1]。合格の一点ではありません。入試の合否を、日本の点数に直した表でもありません。置いているのは、GRE と学部 GPA が、大学院成績のどの面を予測するかです。面が複数あることと、当たる当たらないの二値は、最初から違います。違うものを、同じ「効く」という言葉で結ぶと、書類の役割が一つの勝者に見えます。見せません。

Kuncel、Kochevar、Ones が置いているのも、推薦書が複数のアウトカムをどれだけ予測するかです [2]。厚く書けば合格する、という操作ではありません。現行形式の推薦書、という側です。形式の側と、志願者が今夜書く分量は、層が違います。層が違うものを、出願の手順に溶かすことはしません。

日本の大学院入試に、成績証明書と推薦書が載ることがあります。載ることと、2001年の GRE のメタ分析が測っている選抜が同じであることは、別です。別である、を、本番では書類は関係ない、と読むこともしません。関係がある、と著者が書いているのは、米国の GRE と学部 GPA、および推薦書の予測妥当性の側です。側があることと、日本の英語試験や推薦書制度が同じ式であることは、違います。違う、を、この回の入口に置きます [1] [2]

合格者の内側に限った予測の話は、すでに別稿があります。この回は、その層を厚くやり直しません。別である技術を、同じ「予測」という言葉で結ぶと、当たる、という教訓と、内側では当たらない、という教訓が、一つの方針に見えます。見せません。この回の層は、基準の違いです。基準が違うことを、合格の一点の言い換えにはしません。

2. GRE と学部 GPA は、複数の基準に対する一般化可能な予測因子である

2001年の報告が入口に置いているのは、合否の保証ではありません。予測の対象です [1]

GRE と UGPA は、大学院 GPA、1年目大学院 GPA、総合試験得点、論文引用数、教員評定の一般化可能な予測因子である。

一般化可能な予測因子、です。当たる、ではありません。一般化可能、という語が付いています。どの一校の、どの一回の入試でも同じ点が取れる、という書き方ではありません。著者らが置いた複数の基準に対して、一般化可能な予測因子である、という位置です。位置を、日本の大学院入試の当日点の証明にはしません [1]

基準は、次が並んでいます。大学院 GPA。1年目大学院 GPA。総合試験得点。論文引用数。教員評定。並んでいることと、列挙が同じ強さであることは、別です。同じ強さの表は、この回が使う範囲にはありません。無い表を、書類の順位表として配ることはしません。配ると、著者が書いていない順位が生まれます。生まれた順位を、根拠の顔で出すことはしません。

学部 GPA も、GRE と並んで書かれています。並んでいることと、成績証明書があれば GRE は要らない、という口語の助言は、別です。口語の助言には、総合試験も、引用も、教員評定も、入っていません。入っていない助言を、この一文の言い換えとしては使いません [1]

日本の点数へ換算することもしません。換算する元の効果量を、この回が新しく作ることもしません。向きだけを使います。GRE と UGPA は、ここに列挙された基準の一般化可能な予測因子である。それ以上の点数の話は、この回にはありません。無い点数を、偏差値の動きにしない。

3. 1,753 の独立サンプル、6,589 の相関、82,659 人、8 種類の基準

一般化可能、という語の前に、著者らは規模を置いています [1]。規模を隠すと、一般化が、日本の一校の話に見えます。見せません。

  1. このメタ分析は、GRE と学部 GPA(UGPA)が大学院成績を予測する妥当性を検討した。
  2. 複数分野のサンプル、異なる基準尺度、統計的アーティファクトの補正を含む。
  3. 1,753 の独立サンプル、6,589 の相関、82,659 人の大学院生、8 種類の基準。

1,753 の独立サンプルです。6,589 の相関です。82,659 人の大学院生です。8 種類の基準です。著者が書いた数字です。この四つを足したり、割ったりして、新しい数字を作ることはしません。作ると、著者が書いていない合格率や偏差値が生まれます。生まれた数字を、日本の入試の目安の顔で出すことはしません [1]

複数分野のサンプル、です。異なる基準尺度、です。統計的アーティファクトの補正を含む、です。含む、という語が正確です。補正したから、日本の英語試験にも同じ式が使える、という書き方ではありません。補正は、このメタ分析の手続きです。手続きがあることと、日本の推薦書制度が同じ手続きであることは、別です。別である手続きを、出願のチェックリストに下ろすことはしません。

8 種類の基準、です。前の節で列挙した大学院 GPA、1年目大学院 GPA、総合試験得点、論文引用数、教員評定は、その中に入ります。入ることと、8 の内訳をこの回が全部の名前で埋められることは、別です。埋めていない名前を、推測で足すことはしません。足すと、著者が書いていない基準が、根拠の顔で並びます。並べません [1]

82,659 人、です。人数が大きいことと、日本の志願者にそのまま当てはまることは、別です。当てはまる、と読むと、米国の GRE のメタ分析が、日本の英語試験の説明に見えます。見せません。著者が置いているのは、大学院生 82,659 人を含むメタ分析です。含む、です。日本の大学院入試の受験者数ではありません。受験者数に読み替える数字は、この回にはありません。

4. 学位取得と研究生産性は一貫して正だが、一部の下位 90% 信頼区間は 0 を含む

一般化可能な予測因子の列挙の隣に、著者らは、別の基準を置きます [1]。隣を隠すと、GRE は何でも予測する、という文が残ります。残しません。

学位取得・研究生産性との GRE 相関は一貫して正だが、一部の下位 90% 信頼区間は 0 を含む。

一貫して正、です。一部の下位 90% 信頼区間は 0 を含む、です。両方です。片方だけを採って、学位取得は予測できる、という文にはしません。片方だけを採って、学位取得は予測できない、という文にもしません。著者が並べたのは、相関が一貫して正であることと、一部の下位 90% 信頼区間が 0 を含むことです。並ぶ二つを、当たる当たらないの二値に潰すことはしません [1]

下位 90% 信頼区間、です。0 を含む、です。含む、という語が正確です。常に 0 だ、という書き方ではありません。一部の、です。全部の区間が 0 を含む、でもありません。一部、と 90%、と 0、を、新しい割合に丸めることもしません。丸めると、著者が書いていない別の割合が生まれます。生まれた割合を、根拠の顔で出すことはしません。

学位取得と研究生産性、です。前の節の大学院 GPA、1年目大学院 GPA、総合試験得点、論文引用数、教員評定とは、著者が文を分けています。分けていることと、こちらが無意味であることは、別です。一貫して正、が残っています。残っている以上、学位取得は書類と無関係だ、という断定にはなりません。無関係だ、と読むことも、何でも当たる、と読むことも、この一文の外です [1]

日本の修了率へ換算することもしません。換算する元の点推定を、この回が足すこともしません。向きだけを使います。学位取得と研究生産性との GRE 相関は一貫して正である。ただし一部の下位 90% 信頼区間は 0 を含む。それ以上の修了の話は、この回にはありません。無い修了率を、研究室の安心の材料にしない。

5. Subject Tests は Verbal・Quantitative・Analytical より予測力が高い傾向

同じメタ分析は、GRE の中の違いも置いています [1]。違いを隠すと、GRE という一語が、全部同じに見えます。見せません。

Subject Tests は Verbal・Quantitative・Analytical より予測力が高い傾向。

傾向、です。常に高い、ではありません。高い傾向、です。傾向があることと、Subject Tests だけ受ければ足りる、という口語の助言は、別です。口語の助言には、学部 GPA も、総合試験も、教員評定も、入っていません。入っていない助言を、この一文の言い換えとしては使いません [1]

Verbal・Quantitative・Analytical、です。著者が選んだ名前です。日本の英語試験のセクション名ではありません。名前が英語であることと、日本の英語の外部試験が同じ三つであることは、別です。別である名前を、当日の科目の対応表に読み替えることはしません。対応表は、この回が使う範囲にはありません。無い表を、受験科目の順位として配ることはしません。

予測力が高い傾向、です。高い、の主語は、Subject Tests の、Verbal・Quantitative・Analytical に対する予測力です。日本の専門科目の点が高い、という記述ではありません。記述でないものを、専門科目を厚くせよ、という命令に下ろすことはしません。下ろさない理由は、対象が、米国の GRE のメタ分析だからです。日本の専門科目の配点が、この報告で測られているわけではありません。測っていない配点を、志願者の方針の勝者にしない [1]

傾向、を、無視してよい、と読むこともしません。著者らが書いたのは、Subject Tests のほうが予測力が高い傾向がある、という観察です。観察があることと、Verbal・Quantitative・Analytical が無意味であることは、違います。無意味、という語は、この節には置きません。置くと、前の節の一般化可能な予測因子と、矛盾した短い文が残ります。残しません。

6. 推薦書は広く使われるが、複数アウトカムへの予測力の知見は比較的少ない

GRE と学部 GPA の隣に、2014年の報告は推薦書を置きます [2]。隣を、同じ「書類」という言葉で溶かすと、成績も推薦書も同じ効き方に見えます。溶かしません。

  1. 推薦書は学術入試・人事選抜で広く使われるが、複数アウトカムへの予測力については比較的知見が少ない。
  2. 学部 GPA、大学院 GPA・成績評定・学位取得・研究生産性(非医学系)、医学系の GPA・インターン評定などを統合したメタ分析。

広く使われる、です。比較的知見が少ない、です。両方です。広く使われる、を、よく効く、と読むことはしません。知見が少ない、を、無意味だ、と読むこともしません。著者が置いているのは、使われる頻度と、予測力の知見の少なさです。頻度と知見は、層が違います。層が違うものを、推薦書は書くだけ無駄だ、という文にしない [2]

統合した対象も、長いです。学部 GPA。大学院 GPA。成績評定。学位取得。研究生産性。ただし研究生産性は非医学系です。医学系では、GPA とインターン評定です。長い列挙を、一つの「成績」に潰すことはしません。潰すと、非医学系と医学系の違いが落ちます。落ちた違いを、日本の研究科の理系文系に読み替えることもしません。理系文系への換算は、この回が使う範囲にはありません。無い換算を、出願先の選び方の規則として配ることはしません [2]

人事選抜、という語も、拾います。学術入試と並んで書かれています。並んでいることと、就職の推薦と大学院の推薦が同じであることは、別です。同じだ、と読むと、2014年のメタ分析が、就職活動の手順書に見えます。見せません。著者が書いたのは、学術入試と人事選抜で広く使われる、という観察です。観察を、職場の推薦状の書き方にはしません。

比較的知見が少ない、です。比較的、という語が付いています。知見が無い、ではありません。少ない、です。少ない知見の中身は、次の節です。入口の少なさと、中身の相関を、同じ一文に溶かさない。

7. 現行形式の推薦書は正の相関はあるが弱い。学位取得には増分情報がある

知見の少なさのあと、著者らは、相関の向きと、学位取得の増分を置きます [2]。両方残す、がこの節の中心です。

  1. 現行形式の推薦書は、高等教育の複数の成績面と一般に正の相関はあるが弱い。
  2. ただし学位取得——困難で動機づけが強いアウトカム——については増分情報を提供する。

正の相関はあるが弱い、です。正、です。弱い、です。両方です。正だけを採って、推薦書は効く、という文にはしません。弱いだけを採って、推薦書は無意味だ、という文にもしません。著者が並べたのは、一般に正であることと、弱いことです。並ぶ二つを、出願の一枚の命令に潰すことはしません [2]

現行形式、です。いま広く使われている形式、という側です。新しい形式を発明せよ、という書き方ではありません。形式を変えれば強く効く、という点推定も、この回が使う範囲にはありません。無い点推定を、推薦書の書き方の規則として配ることはしません。配ると、著者が書いていない手順が生まれます。生まれた手順を、根拠の顔で出すことはしません。

ただし、です。学位取得については増分情報を提供する、です。困難で動機づけが強いアウトカム、という但し書きが付いています。但し書きを外して、推薦書があれば学位が取れる、という文にはしません。増分情報、です。全部の情報、ではありません。増分があることと、厚く書けば合格する、は、層が違います。層が違うものを、今夜の分量の助言に溶かすことはしません [2]

動機づけが強い、です。著者の語です。志願者のやる気が足りない、という責めの文ではありません。学位取得というアウトカムが、困難で、動機づけが強く効く、という位置です。位置を、受験生の性格の診断にはしません。診断にすると、弱い相関の外側が、本人の欠点の証明に滑ります。滑らせません。

2001年の、学位取得・研究生産性との GRE 相関は一貫して正だが一部の下位 90% 信頼区間は 0 を含む、という報告と、この増分情報は、並びます [1] [2]。並ぶことと、GRE の代わりに推薦書を厚くせよ、という口語の助言は、別です。口語の助言には、下位 90% 信頼区間も、現行形式の弱さも、入っていません。入っていない助言を、二つの報告の合成としては使いません。合成して新しい数値を作ることもしません。

8. 二つの研究を並べる。当たる当たらない、厚く書けば合格、にはしない

一次証拠を二篇並べたところで、並べ方だけを固定します。新しい点推定は、ここから取り出しません。

2001年が置いているのは、GRE と学部 GPA です [1]。一般化可能な予測因子として、大学院 GPA、1年目大学院 GPA、総合試験得点、論文引用数、教員評定が並びます。学位取得と研究生産性は、一貫して正だが、一部の下位 90% 信頼区間は 0 を含む。Subject Tests は Verbal・Quantitative・Analytical より予測力が高い傾向。規模は、1,753 の独立サンプル、6,589 の相関、82,659 人の大学院生、8 種類の基準です。

2014年が置いているのは、推薦書です [2]。広く使われるが、複数アウトカムへの予測力の知見は比較的少ない。現行形式では、高等教育の複数の成績面と一般に正の相関はあるが弱い。ただし学位取得——困難で動機づけが強いアウトカム——については増分情報を提供する。

並べる目的は、どちらが勝つかを決めることではありません。入試書類が何を予測し、何を予測しにくいかを、同じ重さで置くことです。GRE と UGPA が一般化可能な予測因子である基準と、学位取得・研究生産性で区間が 0 を含む場合があること。推薦書が弱い正の相関であることと、学位取得への増分情報があること。弱い、を無意味にしない。増分を、厚く書けば合格する、にしない。一般化可能を、当たる、にしない。区間が 0 を含むを、当たらない、にしない。

日本の大学院入試の英語試験、推薦書制度、学内成績への読み替えも、ここではしません。読み替える数値は、この二つの報告からは出てきません。出ない、を、この回の答えの一つにします。合格者の内側に限った予測も、再説明しません。睡眠も、運動も、研究計画書の書き方も、軸にしません。軸は、書類の予測の対象です。対象が複数あることと、書類の束が志願者の価値の一点であることは、別です。別である対象を、本人を責める文にはしません [1] [2]

9. 【反証】この回が言えないこと

第一に、一次証拠は二篇です。Kuncel、Hezlett、Ones の2001年と、Kuncel、Kochevar、Ones の2014年です [1] [2]。日本の大学院入試、英語試験、推薦書制度を、一次資料として測った研究ではありません。合否も、偏差値も、この二つの報告は述べていません。

第二に、2001年は米国の GRE と学部 GPA のメタ分析です。日本の英語の外部試験そのものではありません。1,753 の独立サンプル、6,589 の相関、82,659 人の大学院生、8 種類の基準は、合格率や偏差値ではありません。複数分野のサンプル、異なる基準尺度、統計的アーティファクトの補正を含む、は、日本の一校の入試が同じ補正を受けている、という意味ではありません [1]

第三に、GRE と UGPA が一般化可能な予測因子である、を、GRE が当たる、という断定にはできません。対象は、大学院 GPA、1年目大学院 GPA、総合試験得点、論文引用数、教員評定です。一般化可能な予測因子である、です。日本の当日点の保証ではありません [1]

第四に、学位取得・研究生産性との GRE 相関は一貫して正だが、一部の下位 90% 信頼区間は 0 を含む、です。一貫して正、だけを残して、学位は予測できる、とは言えません。0 を含む、だけを残して、学位は予測できない、とも言えません。一部、です。全部ではありません。90% を、新しい割合に丸めることもできません [1]

第五に、Subject Tests は Verbal・Quantitative・Analytical より予測力が高い傾向、です。傾向、です。常に高い、ではありません。日本の専門科目や英語試験のセクションへの対応表は、ありません。Subject Tests だけ受ければ足りる、という助言も、この報告からは出てきません [1]

第六に、2014年は推薦書のメタ分析です。日本の推薦書制度にそのまま当てはめることはできません。広く使われるが知見は比較的少ない、は、無意味だ、という意味ではありません。学部 GPA、大学院 GPA・成績評定・学位取得・研究生産性(非医学系)、医学系の GPA・インターン評定などを統合した、を、日本の理系文系に換算する表も、ありません [2]

第七に、現行形式の推薦書は正の相関はあるが弱い、の主語は、現行形式の推薦書です。志願者への「厚く書け」ではありません。学位取得——困難で動機づけが強いアウトカム——については増分情報を提供する、は、推薦書があれば学位が取れる、という意味ではありません。増分情報、です。合格の保証ではありません [2]

第八に、二つの研究を合成して、新しい数値を作ることはできません。GRE の代わりに推薦書を厚くせよ、という読み替えも、この回からは出てきません。合格者の内側に限った予測の話は、再説明していません。すでに書いた話だからです。必要でも、参照に留めます。

第九に、睡眠、運動、食事、教室環境を、この回の軸にもしていません。研究計画書の書き方も、扱いません。一次資料として見込んでいない題材だからです。

第十に、この回は、志願者の書類が薄いことを間違っていると決めつけていません。準備が足りない、という責めの文にもしていません。推薦書が弱いことを、本人の欠点だとも書いていません。著者らが述べたのは、GRE と学部 GPA の予測妥当性のメタ分析と、推薦書のメタ分析です。研究があることと、受験生を責めることは、別です [1] [2]

10. 実務——出願と面談で使える3つの確認

  1. GRE が当たる、当たらない、と単純化していませんか。Kuncel、Hezlett、Ones によれば、GRE と UGPA は、大学院 GPA、1年目大学院 GPA、総合試験得点、論文引用数、教員評定の一般化可能な予測因子です。学位取得・研究生産性との GRE 相関は一貫して正ですが、一部の下位 90% 信頼区間は 0 を含みます。Subject Tests は Verbal・Quantitative・Analytical より予測力が高い傾向です [1]。一般化可能、です。傾向、です。一部、です。当たる当たらないの二値に上げていないか。面談の前に、断定に上げていないか、を一度だけ言い直す、という確認です。
  2. 推薦書の弱い相関を無意味と読んでいませんか。厚く書けば合格する、としていませんか。Kuncel、Kochevar、Ones によれば、現行形式の推薦書は、高等教育の複数の成績面と一般に正の相関はあるが弱い。ただし学位取得——困難で動機づけが強いアウトカム——については増分情報を提供します。推薦書は広く使われるが、複数アウトカムへの予測力の知見は比較的少ない、とも書いてあります [2]。弱い、です。増分、です。比較的少ない、です。無意味、でも、厚く書け、でもない。層を混ぜない、という確認です。
  3. 米国の GRE と学部 GPA、推薦書の数値を、日本の合格率や偏差値に換算していませんか。日本の英語試験・推薦書制度の手順に読み替えていませんか。2001年は、1,753 の独立サンプル、6,589 の相関、82,659 人の大学院生、8 種類の基準です。複数分野のサンプル、異なる基準尺度、統計的アーティファクトの補正を含みます [1]。2014年は、学部 GPA、大学院 GPA・成績評定・学位取得・研究生産性(非医学系)、医学系の GPA・インターン評定などを統合したメタ分析です [2]。換算表は、この報告からは出てきません。出ない、を、確認の答えにします。合格者の内側に限った予測は、別稿です。この回の層は、書類が何を予測し、何を予測しにくいかです。

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まとめ

  1. Kuncel、Hezlett、Ones は、GRE と学部 GPA(UGPA)が大学院成績を予測する妥当性をメタ分析として検討した。1,753 の独立サンプル、6,589 の相関、82,659 人の大学院生、8 種類の基準。複数分野のサンプル、異なる基準尺度、統計的アーティファクトの補正を含む。米国の GRE・大学院選抜である。日本の大学院入試・英語試験・推薦書制度そのものではない [1]
  2. GRE と UGPA は、大学院 GPA、1年目大学院 GPA、総合試験得点、論文引用数、教員評定の一般化可能な予測因子である。当たる、という断定にはしない [1]
  3. 学位取得・研究生産性との GRE 相関は一貫して正だが、一部の下位 90% 信頼区間は 0 を含む。Subject Tests は Verbal・Quantitative・Analytical より予測力が高い傾向。傾向、である。日本の科目への対応表は出さない [1]
  4. Kuncel、Kochevar、Ones は、推薦書を学部と大学院の入試のメタ分析として置いた。広く使われるが、複数アウトカムへの予測力の知見は比較的少ない。日本の推薦書制度へはそのまま当てはめない [2]
  5. 現行形式の推薦書は、高等教育の複数の成績面と一般に正の相関はあるが弱い。ただし学位取得——困難で動機づけが強いアウトカム——については増分情報を提供する。弱い、を無意味にしない。増分を、厚く書けば合格する、にしない [2]
  6. 二つの研究を並べると、出願書類は何を予測し、何を予測しにくいかがある。日本の点数への読み替えも、当日の手順も、この研究からは出てこない。合格者の内側に限った予測は再説明しない。志願者の書類を薄いと決めつけない。受験生を責めない。

出典

本文中の番号に対応します。書誌を確認し、抄録に直接あたったものだけを挙げています。結論に反する記述も、同じ基準で載せています。

  1. 【GRE・学部GPAの予測妥当性メタ分析】Kuncel, Nathan R.; Hezlett, Sarah A.; Ones, Deniz S. (2001). A comprehensive meta-analysis of the predictive validity of the Graduate Record Examinations: Implications for graduate student selection and performance. Psychological Bulletin, 127(1), 162–181. DOI: 10.1037/0033-2909.127.1.162
  2. 【推薦書のメタ分析】Kuncel, Nathan R.; Kochevar, Emily K.; Ones, Deniz S. (2014). A Meta‐analysis of Letters of Recommendation in College and Graduate Admissions: Reasons for hope. International Journal of Selection and Assessment, 22(1), 101–107. DOI: 10.1111/ijsa.12060
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宮川 涼 Founder
早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。

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