社会——年号を覚える前にやること|武蔵野個別指導塾が薦める学習の仕方

社会の勉強は、たいてい用語集と年号の語呂合わせから始まる。そして模試が返ってくると、用語は書けているのに、並べ替えと記述だけが落ちている。「覚えた量は足りているはずなのに点にならない」——社会でいちばん多い詰まり方はこれである。

順番が逆になっている。年号は、出来事の順番と「なぜ次が起きたか」が言えるようになってから、入試に必要な分だけ入れるものである。つながりの無い数字は、覚えた翌週にはもう崩れている。逆に、つながりが先にできていれば、覚えなければならない年号の数はかなり減る。

この記事は、その「先にやること」を紙1枚の作業に落とす。出来事を10個だけ並べ、間に矢印を引き、矢印の上に理由を一言書く。書けなかった矢印が、その単元で理解できていない場所である。以下、歴史・地理・公民の順に、学年で分けて手順を書く。

この記事の結論

  • 最初に作るのは年表ではなく、出来事10個と、その間の矢印9本。矢印の上に理由を一言書けたところまでが、その単元の理解である。
  • 年号を覚えるのは、順番と理由が言えるようになった後。覚える精度は「入試でどう問われるか」から逆算して決める。並べ替えしか出ない範囲に年号は要らない。
  • 覚える作業の本体は、書き出して思い出すこと。読み直しとまとめノート作りでは代わりにならない。語呂合わせは最後に少数へ使う道具であって、最初に作るものではない。
  • 地理は白地図に書き込む対象を3つに絞る。統計は数字を覚えず、順位や桁が変わった場所だけに印をつける。
  • 公民は用語を「何を防ぐために作られた制度か」とセットで覚える。時事はその実例として後から接続する。逆順にしない。

手順1 出来事を10個だけ並べる

単元まるごとを年表にしようとすると、まず量で潰れる。最初に置く数は10個でよい。選ぶ基準は「これが無かったら次の出来事は起きなかった」と言えるものだけである。

  1. 教科書の1単元(20〜30ページ程度)を開き、出来事を10個選んで紙に書き出す。人物名や制度名ではなく、動きのある出来事にする。
  2. A4を横に置き、左から右へ10個を一列に並べる。ここでは年号を書かない。書くのは順番だけである。
  3. 隣り合う出来事の間に矢印を引く。矢印は9本になる。
  4. 矢印の上に、理由を15字以内で書く。「なぜ左の出来事が右の出来事を呼んだか」を一言で書く。
  5. 書けなかった矢印に印をつける。ここが、その単元で分かっていない場所である。
  6. 印のついた矢印の前後だけ教科書を読み直す。読み直すのは印のついた箇所に限る。単元を頭から読み返さない。

この「節点と線でつなぐ図」を作る作業そのものには、教育研究の蓄積がある。ネズビット(Nesbit)とアデソペが55研究・5,818人分をまとめた分析では、概念地図の利用は知識の保持と結びついていた。ただし効果の大きさは「どう使ったか」と「何と比べたか」で小から大まで振れており、できあいの図を眺めるのと、自分で線を引くのは別の作業である。眺めるだけなら教科書の年表と変わらない。

手順2 矢印の上に理由を書く

矢印に理由を書かせるのは、自分に説明させるためである。自己説明(self-explanation、学んだ内容を自分の言葉で「なぜそうなるか」と言い直す作業)を促す介入を集めた分析では、64報告・69の効果量から平均 g = 0.55 が得られている(ビスラ(Bisra)ら)。一方で、学習法を10種類並べて格付けしたダンロスキーらの総説では、自己説明は「有望だが教育現場での検証が足りない」として中位の評価にとどめられている。過大に見ないこと。

Dunlosky J, Rawson KA, Marsh EJ, Nathan MJ, Willingham DT. Improving students’ learning with effective learning techniques: Promising directions from cognitive and educational psychology. Psychological Science in the Public Interest. 2013;14(1):4-58.

書き方には型がある。「誰(何)が、何をしたから、次が起きた」の1文にする。主語を人・集団・制度のどれかにすると、曖昧な言い換えが減る。「不満が高まったから」は主語が無いので書き直す。「土地を失った武士が幕府に不満を持ったから」まで下ろす。

この矢印は、そのまま記述問題の骨になる。「なぜ〜が起きたか、説明せよ」という設問は、要するに矢印1本の中身を書かせている。矢印の理由が15字で書けていれば、そこに主語と結果を足して2文にするだけで答案の形になる。白紙になる生徒は、知識が無いのではなく、矢印を一度も言葉にしていないことが多い。逆に、矢印の理由を書く段階で言葉に詰まるなら、その単元の記述はまだ書けない。模試を待たずに、その場で分かる。

もう一段やるなら、書けた矢印のうち2本を選び、別の説明も書けないか試す。歴史の因果はふつう一本ではない。経済の事情と、外からの圧力と、内部の対立が同時に効いていることが多い。記述問題で差がつくのは、この「2本目」を持っているかどうかである。高校生は最初からここまでやる。

手順3 史料は3つの問いで読む

資料集の史料を「読んでおきなさい」で終わらせると、ほぼ読まれない。読み方を3つの問いに固定する。ノークスらは高校生246人を8クラスに分け、教科書のみと複数史料、内容の指導と読み方(sourcing・corroboration・contextualization)の指導を組み合わせた4条件を3週間比べた。複数の史料を読んだ生徒は、内容知識の得点が高く、出典を確認する動作も多かった。

Nokes JD, Dole JA, Hacker DJ. Teaching high school students to use heuristics while reading historical texts. Journal of Educational Psychology. 2007;99(3):492-504.

  1. だれが、いつ、何のために書いたか(sourcing)。本文より先に、出典欄と著者を読む。「政府の公式発表」と「反対派の日記」では、同じ出来事でも書かれることが違う。
  2. その時代には何が普通だったか(contextualization)。今の常識で善悪を判定しない。ハウヘン(Huijgen)らは冷戦を題材にした単元を実験群96人・対照群73人で比べ、実験群では現在の視点に引きずられた答えが減ったと報告している。
  3. もう一方の史料と合うか、食い違うか(corroboration)。史料は必ず2つ並べる。食い違う点を1つ書き出して、なぜ食い違うかを一言添える。

この3つを明示的に教える介入は、書く力にも効いている。デ・ラ・パス(De La Paz)らは高校生231人・14クラスで、認知面を強調した明示的指導を受けた生徒が歴史の記述課題で高い得点だったと報告した(効果量 0.33)。ただし介入は1週間で、追跡は短い。

De La Paz S, Wissinger DR, Gross M, Butler C. Strategies that promote historical reasoning and contextualization: a pilot intervention with urban high school students. Reading and Writing. 2022;35:353-376.

なお、この読み方を軸にした授業を半年規模で導入したライスマン(Reisman)の研究では、歴史的思考・事実知識・一般的推論・読解の4つの測度すべてで学習の効果が確認されている。史料を読ませると事実の暗記が犠牲になる、という心配は要らない。

手順4 年号は「問われ方」から逆算して絞る

年号を全部覚えるのは、費用に対して得るものが小さい。過去問を3年分開いて、年代がどう問われているかを数える。問われ方によって、必要な精度は次のように変わる。

問われ方 必要な精度 覚える対象
出来事を古い順に並べ替える 順番のみ 年号は不要。矢印図で足りる
同じ世紀・同じ時代の出来事を選ぶ 世紀・時代区分 時代の境目になる出来事だけ
「西暦何年の出来事か」を直接問う 4桁の年 過去問で実際に出た年だけ
論述で年代の幅を示す おおよその年代 世紀の前半・後半まで

覚える作業そのものは、読み直しではなく白紙に書き出して思い出すことである。学校や教室で行われた検索練習の実験を集めた総説では、約2,000本の抄録から絞った50実験・49の効果量(総計 n = 5,374)のうち、57%で中程度以上の利益が出ていた。

Agarwal PK, Nunes LD, Blunt JR. Retrieval practice consistently benefits student learning: A systematic review of applied research in schools and classrooms. Educational Psychology Review. 2021;33(4):1409-1453.

「できない生徒には向かない」という懸念も検証されている。レゲット(Leggett)らが中学3年相当の地理の授業で行った実験では、練習の場で正答できなかった生徒でも、1週間後のテストでは思い出す練習をした内容のほうが成績が良かった。思い出せなかった経験そのものが無駄にならない。

具体的な回し方はこうする。1回15分・週1回でよい。①白紙に、その単元の出来事10個を順番に書く。②年号が要ると決めたものだけ、横に年を書く。③教科書で答え合わせをする。④間違えたものに印をつけ、翌日もう一度その印の分だけ書く。⑤週が変わったら、また白紙から始める。間隔をあけて繰り返す配り方の詳細は、別記事にゆずる。

語呂合わせは最後に来る。ダンロスキーらの格付けでは、語呂合わせ(keyword mnemonic)は最低位の「低い有用性」に置かれ、使える材料が限られ、保持できる期間が短いことが理由に挙げられている。使うなら、どうしても順番では入らない少数の年号に限る。単元の最初に語呂を作り始めたら、それは勉強ではなく作業になっている。

地理の手順 書き込む対象を3つに絞る

地理で白地図を配ると、たいてい情報を載せすぎて読めない紙ができあがる。1枚の白地図に書くのは3種類までにする。

  1. 1枚目に地形(山脈・川・平野)だけを書く。
  2. 2枚目に気候区分だけを書く。1枚目の上に重ねない。
  3. 3枚目に主要都市と交通路だけを書く。産業・貿易・人口は、この3枚を閉じてから別の紙に表で作る。
  4. 3枚とも、書き終わったら閉じて、白紙にもう一度書く。写す作業では記憶にならない。

地図を自分で描くことには、空間を頭の中で扱う力の訓練という側面がある。空間能力の訓練研究217件をまとめた分析では、訓練群と対照群の差は平均 g = 0.47(SE = 0.04)で、効果は時間をおいても保たれ、訓練していない別の空間課題にも及んでいた。

Uttal DH, Meadow NG, Tipton E, Hand LL, Alden AR, Warren C, Newcombe NS. The malleability of spatial skills: A meta-analysis of training studies. Psychological Bulletin. 2013;139(2):352-402.

ただしこれは空間能力の研究であって、地理の成績が上がることを示した研究ではない。白地図作業を勧める理由は、書く場所を絞ると覚える対象がはっきりする、という実務的なものだと理解しておく。

統計資料は、数字を覚えようとしない。見るのは変化の起きた場所だけである。①1位と2位が入れ替わった年に印をつける。②数量の桁が変わった品目に印をつける。③印をつけた箇所について「なぜそこで変わったか」を一言書く。歴史の矢印と同じ作業である。グラフや統計そのものの読み方は、別記事で扱っている。

公民の手順 用語を制度の目的とセットにする

公民の用語を定義だけで覚えると、選択肢で入れ替えられた瞬間に判別できなくなる。カードを作るなら、裏に書くのは定義ではない。

  1. 表に用語、裏に「何を防ぐために/何を保障するために作られたか」を1文で書く。定義は教科書を見れば載っている。目的は自分で書かないと出てこない。
  2. 目的が同じ用語を束ねる。三権分立・違憲審査・二院制は、いずれも「権力が一か所に集まることを防ぐ」で束ねられる。束が3つ4つできれば、単元の骨格ができたことになる。
  3. 実例を後から1つだけ足す。用語から実例の順で進める。ニュースを先に見て用語を探す順にすると、たいてい用語のほうが増えない。

資料を使う問題も、目的から逆算すると読みやすくなる。憲法や法律の条文が資料として出されたときは、条文の文言を覚えようとせず、「この条文が無かったら誰が困るか」を一言書く。グラフや統計が出されたときは、数値ではなく、その制度が作られた前後で線の傾きが変わっているかを見る。公民の資料問題は、資料そのものの知識ではなく、制度の目的を知っているかを問うていることが多い。

時事の扱いには注意が要る。アメリカの社会科の教室を多水準で分析したシーゲル・ステクラー(Siegel-Stechler)の研究では、時事の話し合いが「意見を言いやすい学級の雰囲気」と最も強く結びついていた。ただしこれは相関の分析であり、家庭で親がニュースについて意見を求めれば同じことが起きる、とは言えない。家庭でやるなら「どの用語が出てきたか」を1行書かせるところまででよい。時事を入試で使える形に整理する手順は、別記事にまとめてある。

学年別の分量

同じ手順でも、置く数と書く量は学年で変える。次の表を出発点にして、10分で終わるなら増やし、途中で止まるなら減らす。

項目 小学生(社会) 中学生(地理・歴史・公民) 高校生(日本史・世界史・地理・公民)
並べる出来事 5個 10個 15個(単元ごと)
矢印の理由 口で言う。書かなくてよい 15字以内で書く 1文で書き、うち2本は別の説明も書く
年号 覚えない。順番だけ 並べ替えに必要な順番+定期テストで実際に問われた年 世紀と年代の幅。直接問われる年のみ4桁で
地図 都道府県と地形 地形・気候・都市を3枚に分ける 3枚+統計の変化点に印
公民 該当なし 用語と目的をカードで対にする 目的で束ねたうえで、対立する立場を1つ書く
1回の時間 1回10分 1回15分 1回25分

効かない条件

この手順が空回りする型は、だいたい4つに決まっている。

  • 流れは言えるのに用語が出てこない。矢印図で止めた状態である。図は「どこを覚えるか」を決める道具であって、覚える作業の代わりにはならない。図ができたら、必ず白紙への書き出しに進む。
  • 語呂合わせから始めてしまう。低い有用性と評価されている方法を、いちばん体力のある時期に当てている。順番を入れ替えるだけで、同じ時間の実りが変わる。
  • まとめノート作りが目的化する。要約(summarization)も低い有用性の側に置かれている。判定は簡単で、ノートを閉じて白紙に同じことを書けるかどうかを見る。書けないなら、それは教科書の縮小コピーを作る作業だった。
  • 史料を1つしか読まない。ノークスらの4条件のうち、教科書だけを読んだ群は内容知識でも伸びが小さかった。読み方だけを教えても、読む材料が1つでは動かない。

この記事で言えないこと

ここで挙げた効果量は、国も学年も教科の構成も違う研究から取っている。日本の入試のように用語の量が多く、記述の形式が決まっている試験で、同じ大きさの差が出るとは言えない。検索練習の総説でも、非WEIRD国(欧米の豊かな民主国以外)で行われた実験は全体の6%にとどまっている。

歴史の読み方を教えた介入は、いずれも教員の訓練や教材の準備を伴う。デ・ラ・パスらの研究は1週間の介入で効果量 0.33、ノークスらは3週間であり、追跡期間は長くない。家庭で同じ手順を真似たときに同じ差が出る、という保証はどこにもない。空間能力の訓練の分析も、地理の得点を扱ったものではない。

学年別の表に載せた出来事の数や時間も、研究から出た値ではない。単元の分量と集中の続く時間から引いた、指導の現場での目安である。目安どおりに進まないことを失敗と受け取らず、数を減らす方向で調整してほしい。

また、ここに書いたのは手順であって、成績の約束ではない。単元の内容そのものが分かっていない場合は、矢印を引く前に本文の読解に戻る必要がある。社会が苦手な生徒の一定数は、社会ではなく読む力でつまずいている。

当塾の立場

この手順は、塾に来なくても全部できる。必要なものは紙とペンと教科書だけで、教材を買い足す必要はない。保護者が矢印の内容を採点する必要もない。書けなかった矢印に印がついていれば、それだけで次に読む場所が決まる。むしろ親が正解を教えてしまうと、印が消えて手がかりが失われる。

他人の目が要るのは、効かない条件のうち2つである。ひとつは、書けない矢印を自分で見つけられない場合。分かったつもりで全部の矢印を埋めてしまう生徒は少なくない。もうひとつは、史料を2つ並べて食い違いを見つける作業で、どちらを並べるべきかが判断できない場合。武蔵野個別指導塾では、矢印の理由を口頭で言わせて、詰まった場所を特定するところから始める。1対1なら、その場で言い直させて、どこまで言葉にできるかを確かめられる。通うかどうかは、この2点を家庭で埋められるかで判断してよい。

出典

  1. Nokes JD, Dole JA, Hacker DJ. Teaching high school students to use heuristics while reading historical texts. Journal of Educational Psychology. 2007;99(3):492-504.
  2. Reisman A. The Document-Based Lesson: Bringing disciplinary inquiry into high school history classrooms with adolescent struggling readers. Journal of Curriculum Studies. 2012;44(2):233-264.
  3. De La Paz S, Wissinger DR, Gross M, Butler C. Strategies that promote historical reasoning and contextualization: a pilot intervention with urban high school students. Reading and Writing. 2022;35:353-376.
  4. Huijgen T, Holthuis P, van Boxtel C, van de Grift W, Suhre C. Students’ historical contextualization and the Cold War. British Journal of Educational Studies. 2019;67(4):439-468.
  5. Dunlosky J, Rawson KA, Marsh EJ, Nathan MJ, Willingham DT. Improving students’ learning with effective learning techniques: Promising directions from cognitive and educational psychology. Psychological Science in the Public Interest. 2013;14(1):4-58.
  6. Agarwal PK, Nunes LD, Blunt JR. Retrieval practice consistently benefits student learning: A systematic review of applied research in schools and classrooms. Educational Psychology Review. 2021;33(4):1409-1453.
  7. Bisra K, Liu Q, Nesbit JC, Salimi F, Winne PH. Inducing self-explanation: A meta-analysis. Educational Psychology Review. 2018;30(3):703-725.
  8. Nesbit JC, Adesope OO. Learning with concept and knowledge maps: A meta-analysis. Review of Educational Research. 2006;76(3):413-448.
  9. Uttal DH, Meadow NG, Tipton E, Hand LL, Alden AR, Warren C, Newcombe NS. The malleability of spatial skills: A meta-analysis of training studies. Psychological Bulletin. 2013;139(2):352-402.
  10. Leggett JMI, Burt JS, Carroll A. Retrieval practice can improve classroom review despite low practice test performance. Applied Cognitive Psychology. 2019;33(5):759-770.
  11. Siegel-Stechler K. Teaching for citizenship: Instructional practices and open classroom climate. Theory and Research in Social Education. 2021;49(4):570-601.

Warning: Attempt to read property "show_author" on false in /home/c1531448/public_html/musasinokobetu.com/wp-content/themes/heal_tcd077/single.php on line 165

関連記事

PAGE TOP
お電話