連載「武蔵野個別指導塾が薦める学習の仕方」全50回の第15回です。全50回の目次を見る
解説を読んで「わかった」と思ったのに、翌日に同じ問題が解けない。この落差の正体は、たいてい読んだだけで、自分の言葉にしていないことにあります。解説の日本語は追えている。しかし、なぜその行からその行へ進めるのかは、説明できないままです。
この穴を埋める方法が自己説明です。教材を読みながら、あるいは問題を解いたあとに、「なぜそうなるのか」を自分に向かって説明する。それだけの作業ですが、学習の研究ではくり返し検証され、メタ分析で中程度の効果が報告されています。
この記事では、実際に何を問い、いつ、どのくらいの時間やるのかを手順として書きます。書かせるか話させるか、保護者が聞き役になるときに何をしてはいけないか、そして自己説明が効かない場面までを扱います。
この記事の結論
- 自己説明とは「なぜ」に答える作業です。要約でも音読でもありません。書いてあることを言い直すのではなく、書いていない理由を埋めます。
- 問いの型は3つだけ覚えれば足ります。「なぜこうなるのか」「なぜ次の行へ進めるのか」「これは前に習った何と同じか」。
- 効果は中程度です。69の効果量を統合したメタ分析で、自己説明を促した群の効果は g = 0.55 でした。「必ず伸びる」方法ではありません。
- 思い出す練習の代わりにはなりません。医学部生を6か月追跡した研究では、繰り返しテストのほうが効果が大きく(η² = 0.33 対 0.08)、両者は別の役割を持ちます。
- 誤った説明をそのまま放置すると害になります。説明させたあと、必ず正誤を確認する手順を組み込んでください。
自己説明は「要約」ではない
最初に、まぎらわしい作業と区別しておきます。
| 作業 | やっていること | 自己説明か |
|---|---|---|
| 要約 | 書いてあることを短くする | 違う |
| 音読 | 書いてあることを声に出す | 違う |
| ノートに写す | 書いてあることを別の場所に置く | 違う |
| 自己説明 | 書いていない理由・つながりを自分で補う | これ |
| 人に教える | 相手に合わせて理由を再構成する | 近い(ただし相手が要る) |
判定は簡単です。教材に書いてある文をそのまま使えるなら、それは自己説明ではありません。「なぜ両辺を3で割ってよいのか」「なぜここで代入するのか」のように、解説が省略している部分を自分の言葉で埋めたときだけ、自己説明が起きています。
自己説明を促すプロンプト(問いかけ)を与えた研究を集めたメタ分析では、64本の研究報告から69の効果量が抽出され、ランダム効果モデルによる全体の効果は g = 0.55 でした。学習課題の種類、教科、学校段階、促し方、実施期間など20の調整変数が検討され、幅広い条件で有効である可能性が示されています。
Bisra K, Liu Q, Nesbit JC, Salimi F, Winne PH. Inducing self-explanation: a meta-analysis. Educational Psychology Review. 2018.
なぜこの作業が効くのかについては、いくつかの説明が提案されています。共通しているのは、説明しようとすると、自分の理解の穴が本人に見えるようになるという点です。読んでいるあいだは滑らかに進んでいたものが、口に出した瞬間に止まります。止まった場所が、次に手を入れる場所です。逆に言えば、止まらずに最後まで言えてしまう教材には、自己説明を使う必要がありません。
何を問うか——3つの型
自己説明は「説明しなさい」と言われてもできません。問いの形が決まっていないと、ほとんどの生徒は要約を始めます。次の3つだけを使ってください。
- 「なぜそうなるのか」——結論の理由を問います。例:「なぜ、この三角形は相似だと言えるのか」
- 「なぜ次の行へ進めるのか」——解説の行と行のあいだを問います。例:「2行目から3行目で何をしたのか、その操作が許されるのはなぜか」
- 「これは前に習った何と同じか」——既習事項との接続を問います。例:「この式の変形は、前にやったどの型と同じか」
教科別に当てはめると次のようになります。
| 教科 | 使う問い | 具体例 |
|---|---|---|
| 数学 | 2を中心に | 「この行で両辺に何をしたか。それをしてよい理由は」 |
| 理科 | 1を中心に | 「なぜ電流が小さくなるのか。何が原因で何が結果か」 |
| 社会 | 1と3 | 「なぜこの政策が出てきたのか。前の時代の何が問題だったのか」 |
| 英語(文法) | 2と3 | 「なぜここが過去完了なのか。基準になる時点はどこか」 |
| 国語(現代文) | 1 | 「筆者がこう言えるのは、本文のどこを根拠にしているか」 |
手順——例題・問題・教科書の3場面
場面1:例題の解説を読むとき
- 解説を1行読むごとに止めます。通しで読み切らないことが条件です。
- 各行について「なぜ次の行へ進めるのか」を口に出すか、余白に1行で書きます。
- 説明できない行に印を付けます。印の付いた行が、その単元で理解していない場所です。
- 印の行だけを、教科書に戻って確認します。全部を読み直しません。
この場面でよくある失敗は、解説を全部読んでから振り返ろうとすることです。最後まで読むと「全体としては分かった」という感覚が残り、どの行で詰まったのかが分からなくなります。1行ずつ止めるのは、その感覚が生まれる前に穴を見つけるためです。
場面2:問題を解き終わったあと
- 正解した問題についても、「なぜこの解法を選んだのか」を1行書きます。正解した問題ほど飛ばされがちですが、ここが次の応用力になります。
- 間違えた問題は、答えを見る前に「自分はどこで判断を誤ったか」を言います。
- 答えを見たあと、もう一度「正しい判断はどこで分かれたか」を1行で書きます。
場面3:教科書を読むとき
- 見開き1ページにつき、自己説明は2か所か3か所にとどめます。全文に対してやると終わりません。
- 選ぶのは、図・グラフ・太字の直後です。ここは説明が省略されやすい場所です。
- 1か所あたり30秒を上限にします。長く考え込むより、回数を確保します。
時間の目安は、1回の勉強につき合計5分から10分です。これ以上増やすと、問題を解く時間が削られます。自己説明は、他の勉強を置き換えるものではなく、既存の勉強に差し込むものです。
実際の1問で、どう言うのか
手順だけでは伝わりにくいので、中学2年の連立方程式を例に、実際の言い方を並べます。解説にはこう書いてあるとします。「2x + 3y = 12 …(1)、x – y = 1 …(2)。(2)より x = y + 1。これを(1)に代入して 2(y + 1) + 3y = 12。」
- 悪い例(要約になっている):「(2)を x について解いて、(1)に代入した。」——書いてあることをなぞっただけです。
- よい例(型2「なぜ次の行へ進めるのか」):「(2)は x の係数が1だから、x について解くと分数が出ない。だから(2)のほうを変形した。代入すると文字が y だけになるので解ける。」
- よい例(型3「前に習った何と同じか」):「これは前にやった代入法。加減法でもできるが、係数が1の文字があるときは代入法のほうが速い、という判断が先にある。」
違いは「なぜ他の方法ではなくこれを選んだのか」が入っているかどうかです。テストで問われるのはこの選択であり、計算そのものではありません。上の悪い例で止まっている生徒は、解説を読めていても、初見の問題で手が止まります。
例題を使う学習と組み合わせる
自己説明は、例題(解法が最後まで示された問題)と一緒に使うのが定番の形です。例題そのものの効果も検証されています。小学校から大学までの数学を対象に、8033本の抄録を絞り込み、43本の論文・55の研究・181の効果量を統合したメタ分析では、例題学習の効果は g = 0.48(p = 0.01)と中程度でした。
Barbieri CA, Miller-Cotto D, Clerjuste SN, Chawla K. A meta-analysis of the worked examples effect on mathematics performance. Educational Psychology Review. 2023.
実務では、次の順で組み合わせます。(1) 例題を自己説明しながら読む。(2) すぐに類題を自力で解く。(3) 解けなかったら例題に戻り、説明できなかった行を探す。例題だけを読み続けるのでも、いきなり問題だけを解き続けるのでもなく、この往復が要点です。例題を読む時間と、自力で解く時間は、おおむね同じくらいに配分します。
書かせるか、話させるか
どちらが優れているかを直接比べた決定的な研究は見当たりません。したがって、ここは効果の比較ではなく、運用のしやすさで選びます。
| 話す | 書く | |
|---|---|---|
| 速さ | 速い。1か所10秒で済む | 遅い。1か所30秒以上かかる |
| ごまかしやすさ | ごまかせる(「えーと、こうだから」で流れる) | ごまかせない |
| 後から見返せるか | 残らない | 残る。次の復習に使える |
| 向く場面 | 解説を読みながらの逐次確認 | 間違い直し、テスト前の点検 |
実務上は「ふだんは話す、間違い直しだけは書く」という分け方を勧めます。話す場合の注意は一つで、頭の中で言うのではなく、声に出すことです。頭の中だけだと、言葉になっていない状態でも「説明できた」と感じてしまいます。
保護者が聞き役になるときの注意
自己説明は、聞き手がいると続きやすくなります。ただし、聞き役のやり方を間違えると逆効果になります。次の4点だけを守ってください。
- 教えないこと。説明が止まっても、答えを言いません。「そこまでは分かった。その次は?」と返します。
- 正誤を即座に判定しないこと。「それは違う」と言うと、そこで説明が終わります。最後まで言わせてから、教材で一緒に確認します。
- 内容を理解している必要はありません。聞き役の仕事は、説明が飛んだ場所を指摘することだけです。「いまの、なぜそうなるの?」と聞ければ足ります。
- 時間を区切ること。1回5分まで。長引くと、説明が愚痴や言い訳に変わります。
実際のやり取りは、次のくらいの短さで十分です。保護者「今日の数学、1問だけ説明して」/生徒「ここで両辺を3で割って…」/保護者「割っていいのはなぜ?」/生徒「えっと…両辺に同じことをしてもいいから」/保護者「どこにそう書いてある?」/生徒「教科書の…ここ」。ここまでで1分です。保護者の発言は「なぜ?」と「どこに書いてある?」の2つだけで回ります。
逆に、やってはいけない言い方も挙げておきます。「そんなことも分からないの」「前にやったでしょう」は、説明そのものを止めます。自己説明は、説明できない場所を見つけるための作業です。説明できない場所が出てきたら、それは失敗ではなく、この作業が機能した証拠です。見つかったことを歓迎する反応にしてください。
ただし、誤った説明をそのままにしてはいけません。説明の最後には必ず教材で答え合わせをします。ここを省くと、間違った理解が「自分の言葉で説明した」という強い記憶とともに残ります。
学年別
小学生
- 問いは「なぜ」ではなく「どうして?」の形にします。1回に1問だけ聞きます。
- 算数の文章題で「どうしてかけ算を使ったの?」だけを毎回聞く、という運用から始めます。
- 書かせません。話すだけで十分です。
中学生
- 数学の例題1つにつき、説明できない行を探す作業を入れます。1日1題で構いません。
- 間違い直しノートに「なぜ間違えたか」ではなく「正しい判断はどこで分かれたか」を書かせます。
- 理科・社会は、太字の用語の直後だけを自己説明の対象にします。
高校生
- 解説の行間を埋める作業を、数学と物理の学習の既定手順にします。
- 英文法は「なぜこの形になるか」を、日本語で1行書けるかどうかで確認します。
- 模試の復習で、正解した問題についても選択の理由を1行書きます。
効かない条件
第一に、覚える作業の代わりにはなりません。医学部1年生47人を6か月追跡した研究では、繰り返しテストを受けた条件と繰り返し自己説明をした条件の両方が、単に読み直す条件を上回りました。ただし効果の大きさには差があり、テストのほうが η² = 0.33、自己説明が η² = 0.08 でした。
Larsen DP, Butler AC, Roediger HL. Comparative effects of test-enhanced learning and self-explanation on long-term retention. Medical Education. 2013;47(7):674-682.
第二に、概念の理解そのものが自動的に伸びるわけではありません。8歳から11歳の児童85人を対象に、数学の等号の意味を学ばせた実験では、自己説明を求めた条件は手順の習得と転移(習っていない形の問題への応用)を促しましたが、独立に測った概念的知識の得点は、自己説明の有無で差が出ませんでした。
Rittle-Johnson B. Promoting transfer: effects of self-explanation and direct instruction. Child Development. 2006;77(1):1-15.
この「手順は伸びるが、概念の得点は動かない」という結果は、自己説明だけの話ではありません。同じ研究者が小学2年生180人を対象に行った実験でも、概念の説明だけを与える指導と、概念と手順の両方を与える指導を比べており、何をどの順で教えるかによって伸びる側が変わることが示されています。自己説明は万能の補助輪ではなく、伸ばす対象が限られている道具です。
第三に、問いを用意する側の負担が大きいことが指摘されています。上のメタ分析は、指導者が台本として用意するプロンプトには限界があるとして、今後は計算機による自動生成を探るべきだと述べています。裏を返せば、家庭で毎回よい問いを作るのは簡単ではないということです。上に挙げた3つの型を固定して使うのは、この負担を下げるためです。
第四に、効果の評価そのものが控えめです。ダンロスキー(Dunlosky)らが10種類の学習法の有用性を比較した報告では、思い出す練習と分散学習が最も高い評価を受けたのに対し、自己説明はその次の段階に位置づけられました。関連する「自分で生成する」系の手法についても、シンドラー(Schindler)とリヒター(Richter)が文章学習の生成課題を統合したメタ分析で g = 0.41 と報告しており、いずれも中程度です。劇的な差を期待する方法ではありません。
第五に、説明が長くなるほど良いわけではありません。自己説明は問題を解く時間を奪います。1回5分から10分という上限を守り、解く時間を確保してください。
この記事で言えないこと
自己説明の効果量 g = 0.55 は、さまざまな課題・年齢・促し方を混ぜた平均です。中学生が数学の例題に対して行った場合に同じ大きさが出るとは限りません。メタ分析自体、20の調整変数を検討していること自体が、条件によって結果が動くことを示しています。
「書く」と「話す」のどちらが有利かについては、この記事で根拠を示せていません。上の表は効果の比較ではなく、運用のしやすさの整理です。同様に、保護者が聞き役になる形式そのものを検証した研究も引用していません。4つの注意点は、自己説明の定義(理由を自分で埋める作業)から導いた運用上の指針です。
自己説明と「人に教える」の関係についても、この記事では区別しきれていません。上の表では「近い」と書きましたが、教える相手がいる場合、説明の中身は相手に合わせて変わります。両者を同じものとして扱ってよいかは、ここで引用した研究からは判断できません。保護者を相手にした説明は、自己説明と教授行動の中間にあると考えるのが妥当です。
また、引用した研究の多くは英語圏で行われています。日本語で説明する場合、あるいは日本の教材の解説の書き方に対して同じ手順が有効かは確認されていません。成績が上がることを保証する記事ではありません。
当塾の立場
ここまでの手順は、塾に通わなくても実行できます。必要なのは3つの問いの型だけで、教材も費用もかかりません。今日から、数学の例題を1題選び、解説を1行ずつ止めながら「なぜ次の行へ進めるのか」を声に出してみてください。説明できない行が、そのまま次にやるべきことになります。
その上で塾を使う意味があるとすれば、誤った説明を検出する部分だと考えています。この記事の研究から分かるとおり、自己説明は転移を促す一方で、説明の中身が正しいかどうかまでは保証しません。誤った説明は、自分の言葉で述べたぶんだけ強く残ります。家庭で聞き役をする場合、内容の正誤までは判定できないことが普通です。武蔵野個別指導塾では、説明させたあとに講師が教材と突き合わせ、どこで理由が飛んだかを指摘する形を取っています。説明を引き出す役と、正誤を判定する役を分けたい方には、この使い方を勧めます。
関連する研究の解説
- 自己説明——「なぜそうなるか」を言わせると何が起きるか——自己説明の研究の全体像を、効果量つきで整理しています。
- 「分かったつもり」はなぜ生じるか——メタ認知的モニタリングの研究——説明できないのに分かった気になる仕組みを扱っています。
- 数学が「解法の暗記」で止まる理由——考えるとは何をすることか——解説の行間を埋める作業が、なぜ数学で重要かを扱っています。
出典
- Rittle-Johnson B (2006). Promoting transfer: effects of self-explanation and direct instruction. Child Development, 77(1), 1-15. doi:10.1111/j.1467-8624.2006.00852.x
- Larsen DP, Butler AC, Roediger HL (2013). Comparative effects of test-enhanced learning and self-explanation on long-term retention. Medical Education, 47(7), 674-682. doi:10.1111/medu.12141
- Dunlosky J, Rawson KA, Marsh EJ, Nathan MJ, Willingham DT (2013). Improving students’ learning with effective learning techniques: promising directions from cognitive and educational psychology. Psychological Science in the Public Interest, 14(1), 4-58. doi:10.1177/1529100612453266
- Bisra K, Liu Q, Nesbit JC, Salimi F, Winne PH (2018). Inducing self-explanation: a meta-analysis. Educational Psychology Review.
- Rittle-Johnson B, Fyfe ER, Loehr AM (2016). Improving conceptual and procedural knowledge: the impact of instructional content within a mathematics lesson. British Journal of Educational Psychology, 86(4), 576-591. doi:10.1111/bjep.12124
- Barbieri CA, Miller-Cotto D, Clerjuste SN, Chawla K (2023). A meta-analysis of the worked examples effect on mathematics performance. Educational Psychology Review.
- Schindler J, Richter T (2023). Text generation benefits learning: a meta-analytic review. Educational Psychology Review.
