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英単語は書かずに覚えてよいか—高校生が書く語と書かない語を分ける線|武蔵野個別指導塾

たとえば1回5秒で100語を10回ずつ書けば約83分、1語3秒で声に出せば5分。高校の英単語を、英作文やつづりの問題で書く語と読めれば足りる語に分け、20分の割り振りと殴り書きの使いどころまで決めて、ノートの減り方を変えましょう。
高校生なら、英単語の大半は書かずに覚えてかまいません。長文やリスニングで出会ったときに意味がわかればよい語は、英語を見て意味を声に出す練習のほうが、同じ時間で何倍もの回数その語に当たれます。書いて覚えるのは、英作文や記述の答案で自分が書く語と、定期テストでつづりを問うと先生が言った語の2種類だけです。線を引く基準は語の難しさではありません。その語を自分の手で答案に書く日が来るかどうかです。何回も書く練習、いわゆる殴り書きは、書く語のうち、決まった文字で毎回崩れる語にだけ短く使います。
よくあるのは、高1の冬休み明けに、英単語の書き取りだけで使い切ったノートを1冊、机に置いて見せてくれる場面です。どの頁にも同じ語が縦に10回ずつ並び、下の行へ行くほど字が崩れています。ところが単語帳の日本語を手で隠し、英語を指して意味を聞くと、ノートに何度も書いたはずの語で口が止まります。反対に、一度も書いていない語の意味をすっと言えることもあります。手が覚えた分と、読める分が、別々に増えていたのです。
書き取りの回数が、読める語の数にならないわけ
書き取りの1行目を書くとき、目はお手本の英語を見ています。2行目からは、たいてい自分がいま書いた1行目を見ています。10回書いた語でも、頭の中から思い出して書いた回数は0回ということがよくあります。そのうえ、手を動かしているあいだ、口も頭も「環境」や「増える」といった意味を言っていません。ノートの最後の行がきれいに書けていても、それは「さっき見た形を写せた」という印で、「英語を見て意味が出る」という印ではありません。冒頭の高1のノートで、書いた語の意味が出てこなかったのはこのためです。
二つ目は時間です。図1のように、たとえば1語を1回書くのに5秒かかる生徒が100語を10回ずつ書くと、5秒×10回×100語で5000秒、約83分かかります。同じ100語を、英語を見て意味を声に出すだけなら、1語3秒として300秒、5分で1回りします。83分あれば、声で100語に16回あまり当たれる計算です。書く練習は1語にかける時間が長いぶん、その語に出会う回数が減ります。単語を覚える日々の差は、この出会う回数の差が積もって開きます。

三つ目は、高校で増える語の量です。文部科学省の高等学校学習指導要領は、全員が履修する「英語コミュニケーションⅠ」で、小学校と中学校で学んだ語に400〜600語程度の新しい語を加えるとしています。Ⅱではそこへ700〜950語程度、Ⅲでもさらに700〜950語程度が加わり、Ⅲまで履修すると小学校からの合計は4,000〜5,000語程度になります。Ⅱ・Ⅲを履修するかどうかは、学校の教育課程と科目の選択によります。中学では、1,600〜1,800語程度の新しい語を3年かけて足しました。高校のⅡの1科目で足す語の数は、その半分ほどにあたります。中学のときのように全部の語を書いて覚えようとすると、手の時間がまず足りなくなります。
四つ目は、試験が求める力の違いです。大学入試センターの実施要項によると、共通テストは主に選択肢から選ぶ形で出題され、解答はマーク方式です。英語はリーディングとリスニングの2つで、語のつづりを自分で書く欄はありません。一方で、学校の「論理・表現」の授業の英作文、和文英訳や自由英作文を出す大学の個別試験、定期テストのつづりの問題では、語を自分の手で書きます。志望校の個別試験で英作文が出るかは、募集要項と過去の問題で確かめます。
読むときに要るのは「英語を見て意味が出る」力で、書くときに要るのは「言いたい中身から英語が出て、つづりまで合う」力です。高校で出会う語の多くは前の力だけで足り、書いて身につくつづりの力が要るのは、自分が書く語に限られます。書き取りで鍛えているのは後ろの力の、さらにつづりの部分だけです。読むための語に書き取りをかけると、要らない力に時間を払い、要る力の練習が後回しになります。
書く語と書かない語を分け、平日20分で回す手順
書いたほうが良い語を先に決めてしまえば、残りは声で回せます。たとえば単語帳の今週の範囲が100語前後で、平日に1日20分を英単語に使える高1を例に、始め方を書きます。範囲の語の数や1日の時間が違うときは、分の配分の比だけを使い、自分の時間に合わせて伸び縮みさせてください。
- 範囲の初日に、声で仕分けます(10分)。単語帳の日本語を紙で隠し、英語を見て意味を声に出します。2秒以内に言えなかった語に、鉛筆で小さな点を付けます。ここではまだ1文字も書きません。
- 同じ日に、書く語を選びます(5分)。点があるかどうかに関係なく、次の2つのどちらかに当たる語だけを「書く語」にします。一つは、英作文や記述の答案で自分が書く語です。学校で次に出る英作文の題をノートの1頁目に書き、その題で自分が使いそうな語を拾います。たとえば「環境を守るために高校生ができること」という題なら、environment(名詞・環境)、increase(動詞・増える、増やす)、important(形容詞・重要な)が書く語の候補になります。自分の意見を述べる題なら、In my opinion と書き出すときの opinion(名詞・意見)も入ります。もう一つは、定期テストでつづりを問うと先生が言った語です。教科書の新出語のうち、どれがつづりまで問われるかは、授業での先生の言葉か配られたプリントで確かめます。
- 書く語の数を決めます。たとえば週に1回英作文の課題が出る高1なら、書く語は週に10語前後から始めます。英作文で言いたいことが英語にならない場面が増えたら書く語を足し、週末の確かめで書く語の半分も書けない週が2週続いたら数を減らします。残りの語は、ancestor(名詞・祖先)、volcano(名詞・火山)、agriculture(名詞・農業)のように、長文の中で出会って意味がわかれば足りる「書かない語」です。
- 平日は、20分を下の表のように割ります。書かない語には手を使わず、声だけで回します。書く語も、最初の12分では声で意味を言う側に入れます。書く語は、意味が言えたうえで書けることが要るからです。
- 書く語は、写さずに日本語から書きます。お手本を見ながら書くのではなく、日本語だけを見て書き、書き終えてから単語帳で答え合わせをします。塾ではまず、1語につき1日に短い英文を1つ書くところから始めます。英文は短くてかまいません。increase なら The number of visitors is increasing. のように、英作文で使いそうな形のまま書きます。語だけを10回並べるより、英作文の答案に近い形で1回書くほうが、本番の手の動きに近くなります。
- 土曜に、週の確かめをします(15分)。書かない語は、英語を見て意味を言う形で範囲の全部を確かめます。書く語は、日本語を見て英語を書く形で確かめます。確かめの形を分けるのは、書かない語に「書けるか」を問うと、覚えなくてよい力まで不合格に数えてしまうからです。
- 週の終わりに一覧を入れ替えます。英作文で使いたくなった書かない語は書く語へ移し、定期テストが終わってつづりを問われなくなった語は書かない語へ戻します。戻した語も、英語を見て意味を言う確かめは続けます。
| 時間 | すること | 対象の語 | 使うもの |
|---|---|---|---|
| 最初の12分 | 英語を見て2秒以内に意味を声に出す。言えなかった語だけもう一度 | 範囲の全部の語 | 口 |
| 次の6分 | 日本語を見て、その語を入れた短い英文を1つ書く。書き終えてから答え合わせ | 書く語だけ | 手と口 |
| 最後の2分 | つづりを間違えた文字に丸を付け、その語をノートの一覧の頁に書き足す | 間違えた書く語 | 手 |
語の分け方を流れにすると、図2のようになります。問いは2つだけで、どちらにも当たらない語は書かない語に入ります。迷う語は、まず書かない語に入れておき、英作文で使いたくなった週に書く語へ移せば足ります。

| 語の種類 | 例 | 覚えるときにすること | 確かめの形 |
|---|---|---|---|
| 書かない語 | ancestor、volcano、agriculture | 英語を見て意味を声に出す | 英語を見て2秒以内に意味を言う |
| 英作文や記述で書く語 | environment、increase、important、opinion | 日本語を見て短い英文を書く | 日本語を見て英文の中で書く |
| つづりを問われる語 | 先生が指定した教科書の新出語 | 日本語を見てつづりを書く | 日本語を見てつづりを書く |
高校の書く語の中に、中学で習った語のつづりがあやしいものが混じっていたら、高校の語より先にその語を固めます。中学の語は英作文で何度も使うので、そこが崩れていると、高校の語をいくら書いても答案の減点が減りません。
殴り書きが役に立つ語と、ノートが減るだけの書き方
何回も書く練習、いわゆる殴り書きは、使う場所を絞れば役に立ちます。図3のように、役に立つのは書く語のうち、意味はもう言えるのに、同じ文字で毎回崩れる語です。たとえば necessary(形容詞・必要な)は、c が1つ、s が2つという並びで崩れやすい語です。この語だけ、崩れる文字を声に出しながら3回ほど速く書くと、手が正しい並びを通ります。使う時期は、間違えた答案が返ってきたその日か、つづりのテストの前です。反対に、次の4つの書き方は、ノートが減るだけで読める語が増えません。

- 範囲の全部の語を、同じ回数ずつ書いてしまう。こう変えます。書くのは書く語だけにします。全部を書くと、図1の計算のとおり時間の大半が手の動きに消え、書かない語に声で何度も当たる時間がなくなります。1週間の手応えは、ノートの減り方ではなく、2秒で意味が言える語の数で測ります。
- 上の行を写してしまう。こう変えます。1回書いたら紙を折り返してその行を隠し、日本語だけを見て次を書きます。殴り書きで手が速くなるほど、目は直前の行を追うだけになり、思い出す場面がなくなります。隠してから書けば、1回ごとに思い出すことになります。
- 書きながら意味を言わない。こう変えます。書く前に、日本語の意味を声に出してから書きます。冒頭の高1のノートのように、手は正しく動いても英語を見て意味が出ない語が残るのは、書いているあいだ意味が頭を通っていないからです。意味を言ってから書けば、つづりと意味が同じ1回の中でつながります。
- 書かない語を、確かめないまま放ってしまう。こう変えます。書かないことと、覚えないことは違います。土曜の確かめで意味が言えなかった書かない語には点を足し、教科書や長文で出会って意味が出なかった語にも、単語帳のその語に点を付けます。点が増えた語は、翌週の最初の12分で先に回します。
4つ目は特に見落とされます。書かない語は手で書いた跡が残らないので、覚えたかどうかが目に見えません。だからこそ、点の数という目に見える形で記録を残します。点が3つ付いた語は、英作文で使わなくても、短い英文の中で意味を言う練習に切り替えます。語だけでは思い出す手がかりが少ない語も、文の中の位置と前後の語が手がかりになります。
確かめの問題
問1 次の3つの語を、書く語と書かない語に分けてください。ある高1の条件は2つです。定期テストのつづりの問題は教科書の新出語から出ると先生が言っていること、次の英作文の題が「身の回りの問題をどう解決するか」であることです。
-
- temperature(名詞・温度、気温)。教科書の新出語で、先生がつづりを問うと言った語
- (b) fossil(名詞・化石)。単語帳の今週の範囲にだけ出てくる語
- (c) solve(動詞・解く、解決する)。英作文で使いたい語
問2 たとえば、1語を1回書くのに7秒かかる生徒が、60語を8回ずつ書くと何分かかりますか。また、英語を見て意味を声に出すのに1語4秒かかるとき、同じ60語を2回くり返すと何分ですか。
問3 次のAとBのうち、短く何回か書く練習(殴り書き)が合うのはどちらですか。理由も答えてください。
- A 英作文でよく使う foreign(形容詞・外国の)を、毎回 e と i の順を逆にして書いてしまう。意味はすぐに言える
- B 単語帳で今週初めて見た harvest(名詞・収穫)。意味はまだ言えず、英作文で使う予定もない
答えと考え方
問1 書く語は (a) と (c)、書かない語は (b) です。(a) はつづりを問われる語、(c) は英作文で自分が書く語なので、日本語を見て書く練習をします。(b) は長文で見て意味がわかれば足りるので、英語を見て意味を声に出す練習で回します。
問2 書く場合は7秒×8回×60語で3360秒、56分です。声に出す場合は4秒×2回×60語で480秒、8分です。同じ60語でも、48分の差が出ます。
問3 A です。A は英作文で使う書く語で、意味はもう言え、崩れる文字(e と i の順)が決まっています。その文字を声に出しながら短く書く練習がそのまま当たります。B は書かない語で、まだ意味が言えないので、まず英語を見て意味を声に出す練習から始めます。
保護者が家でできること
お子さまがノートを書き取りで埋めていると、頑張っている証拠に見えて、つい「たくさん書いたね」と量をほめたくなります。ほめるなら量ではなく、「書く語をどれにしたか」を聞いてください。書く語と書かない語を分けているお子さまは、その答えをすぐに言えます。答えに詰まるなら、全部の語を同じように書いているのかもしれません。
確かめ方は、単語帳を1冊借りて英語の語を指さし、意味を言ってもらうだけです。保護者が英語を読み上げる必要はありません。指で語を指せば、お子さまが自分で読みます。1回に5語ほどで十分で、2秒で意味が出る語が多ければ、書かない語の練習は回っています。
声に出す練習は、家の中で音が出ます。夜に自室から小さな声で英語が聞こえても、「静かにして」とは言わないでください。小声でも口が動いていれば足ります。
言わないほうがよい言葉もあります。「書かないと覚えないでしょう」は、書かない語にまで手を使わせ、時間を手の動きに取られます。「どの語を書くと決めたの」と言い換えてください。「ノート1冊も書いて、まだ覚えていないの」は書き取りの量を責める言葉になり、次からは量だけで見せようとします。「書いた語のうち、英語を見て意味が言える語はどれ」と、言える語の側から聞いてください。
個別指導で確かめること
授業では、書き取りのノートと小テストの答案を並べ、落とした語がつづりで落ちたのか、意味で落ちたのかを1語ずつ分けます。そのうえで、書く語の一覧が学校の英作文の題と定期テストの範囲に合っているかを確かめます。書かない語は授業の最初に英語を見せて意味を言ってもらい、点の付いた語が週ごとに減っているかを見ます。中学の語のつづりがあやしいときは、高校の書く語より先に、中学の教科書の語まで戻って固めます。
まとめ
書き取りで使い切ったノートは、怠けた跡ではなく、手の時間を書かない語にまで配ってしまった跡です。高校のⅠからⅢへ進むたびに増えていく語の大半は、英語を見て意味を声に出せば足ります。鉛筆を持つ前に、その語を自分の答案に書く日が来るかを一度だけ問えば、次のノートは英作文とつづりの問題で使う語だけで埋まっていきます。
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