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スピーチ原稿の暗記のコツ—発表で頭が真っ白にならない覚え方と、覚えやすい原稿の書き方|武蔵野個別指導塾

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頭から何度も音読した原稿ほど、段落の変わり目で言葉が切れます。始めと終わりの一文だけを一字一句で固め、途中は見出しの順で話す覚え方と、止まったら次の見出しへ進む戻り方を、演説の前夜から使える形にまとめています。

スピーチ原稿の暗記のコツは、原稿の全部を同じ重さで覚えようとしないことです。始めの一文と終わりの一文だけは一字一句で覚え、途中の段落は「何の話を、どの順で話すか」という見出しだけを覚えて、言い回しはその場で組み立てます。覚え始める前に、原稿を一段落に一つの話、一文を短く言い切る形に書き直しておくと、覚える量そのものが減ります。本番で止まったら頭から言い直さず、次の見出しへ進みます。前の晩しか残っていないなら、書き直しは長い一文を切るところまでにとどめ、見出しを付ける作業から始めてください。

よくあるのは、生徒会の立会演説を翌日に控え、洗面所の鏡の前で練習していると、毎回3文目で止まってしまう夜という場面です。生徒会長に立候補した2年生として名前を名のる1文目と、「私が立候補したのは、」で始まる2文目までは口からすらすら出ます。ところが3文目の最初の語が出てこない。原稿を見れば「そうだった」とすぐ思い出せるのに、伏せるとまた同じ所で切れます。時計は夜11時を回り、もう一度頭から読み直そうと原稿を持ち直しています。

なぜそうなるのか

鏡の前で止まる生徒の原稿と練習の仕方を見せてもらうと、つまずきの元はたいてい同じ所にあります。覚える力が足りないのではなく、覚え方と原稿の形が、止まりやすい作りになっているのです。

一つ目は、原稿を頭から順に音読して覚えていることです。この覚え方では、前の文の終わりの語が、次の文を引き出す合図になります。1文目の終わりが2文目を呼び、2文目の終わりが3文目を呼ぶ。鎖の輪が順につながっているようなもので、輪が一つ外れると、その先は全部出てこなくなります。図1の左側がこの状態です。1文目から何十回読んでも、外れやすい輪は外れやすいままで、読む回数を増やすほど「頭からでないと言えない」癖が強くなります。

図1 頭から鎖で覚えると切れた所で止まり、見出しで覚えると次へ進める

二つ目は、止まる場所がたいてい段落の変わり目だということです。同じ段落の中の文は、話の中身がつながっているので、前の文から次の文を推しやすい。ところが段落が変わる所では話が切り替わるため、前の文の続きとして次の文を思い出すことができません。冒頭の場面で3文目が出てこないのは、3文目が「名のり」の段落を出て、「学校の困りごと」を話す新しい段落の頭にあるからです。図1の右側のように、段落ごとに見出しを持っていれば、輪が一つ外れても、次の見出しから話をつなげます。

三つ目は、原稿が書き言葉のまま自分の口に合っていないことです。作文として書いた原稿は、一文が長くなりがちです。「〜を実現するために」「〜を掲げ」のように、ふだんの会話では使わない言い回しも混ざります。意味はわかっていても、口が言い慣れていない語は、緊張した場面で真っ先に抜けます。一文の途中で言い回しを一つ忘れると、文の後半まで巻き込んで止まります。

四つ目は、練習が「見ながら読む」に偏り、「伏せて言う」が少ないことです。原稿を見ながら声に出すと、目が先の語を拾ってくれるので、覚えていない所もすらすら言えてしまいます。何回も読んだ手応えだけが残り、覚えたつもりで本番を迎えることになります。鏡の前で原稿を伏せた途端に3文目が消えるのは、そこで初めて、見ないで言う練習をしたからです。

今夜からの手順

手順は5段です。本番まで3日以上あるときは1から順に進めます。前の晩しか残っていないときの縮め方は、この節の終わりに書きます。

1. 原稿を段落に切り、段落ごとに見出しを付ける

まず原稿を通して読み、話の中身が変わる所に線を引きます。線と線の間が一つの段落です。その段落の上に、2〜6字ほどの見出しを書き込みます。1分半ほどの立会演説なら、「名のり」「困りごと」「約束」「お願い」の4つくらいに分かれることが多いはずです。

見出しは原稿の中の言葉から取らなくてかまいません。自分がその語を見たときに、段落の中身がぱっと浮かぶ語を選びます。数の目安は、話す時間1分につき2〜3個です。3分の発表なら6〜9個になります。これより多いと見出しを覚えること自体が重荷になり、少ないと一つの段落が長すぎて、途中で迷子になります。ここまでで10分ほどです。

2. 覚えやすい形に書き直す

次に、見出しで区切った段落ごとに、原稿を口に合う形へ直します。直す点は4つです。一文は一息で言える長さにする(目安は30〜40字)。一つの段落には話を一つだけ入れる。段落の頭に「一つ目に」「次に」「最後に」のような順番の語を置く。そして、場所・数・場面のような具体を入れる。具体は頭の中で絵になるので、抽象的な言葉より思い出しやすくなります。

たとえば、こんな一文があったとします。「私は、全校の皆さんが毎日の学校生活をより安心して過ごせる学校を実現するために、皆さんの声を集める仕組みを作ることを公約として掲げ、立候補しました。」これを書き直すと、「私の約束は一つです。昇降口に、意見を入れる箱を置きます。集まった声には、月に1回、掲示板で答えます。」になります。文の数は増えましたが、一文ごとに言い切っているので、どこかで止まっても次の文から言い直せます。昇降口・箱・掲示板という具体が、そのまま思い出す手がかりにもなります。

書き直しは本番の2日前までに終えます。生徒会の原稿や行事のあいさつは、先に先生へ出して見てもらう決まりの学校もあります。出したあとに中身を変えてよいかは、学校の決まりを先生に確かめてください。

3. 始めの一文と終わりの一文を一字一句で固める

原稿の中で、一字一句まで覚えるのはこの2文だけです。壇上に立って最初の数秒は、頭がいちばん空になりやすい時間です。始めの一文が考えなくても口から出る状態なら、2文目からは話の流れに乗れます。終わりの一文は、聞き手の耳に最後に残る言葉です。言い切って礼をするところまでを決めておくと、途中で何があっても、着地する場所が一つ確保できます。

覚え方は、声に出すより先に紙に書きます。原稿を伏せて2文を書き、原稿と照らして、違う字に赤で印を付けます。3回続けて一字も違わずに書けたら、今度は立って声に出し、礼まで通します。図2のように、原稿の上と下の端だけを固く覚え、間は見出しで支える形にすると、覚える量は原稿全体の一部で済みます。

図2 始めと終わりの一文は一字一句、途中の段落は見出しと筋で覚える

4. 見出しの順番を先に覚え、見出しから段落を話す

名刺ほどの大きさの紙に、見出しだけを縦に並べて書きます。これが見出しのカードです。最初に、見出しの順番を言えるようにします。「名のり、困りごと、約束、お願い」と、指を折りながら声に出します。4つなら数回で言えるようになります。

次に原稿を伏せ、カードの見出しを一つ見て、その段落を自分の言葉で話します。原稿と言い回しが違っていてもかまいません。段落の中の具体(さきほどの例なら昇降口・箱・掲示板)が全部出ていれば合格です。一段落を話し終えるたびに原稿を開き、抜けた具体にだけ印を付けます。言い回しの違いまで直し始めると、また一字一句の鎖に戻ってしまうので、直すのは中身の抜けだけにします。

慣れてきたら、見出しの順番をばらばらにして話します。見出しを1つずつ小さな紙に書いて裏返し、1枚引いて、その段落から話し始めます。途中の段落からでも話し出せるようになれば、どこで輪が外れても、そこから立て直せる状態になっています。

5. 立って、時間を計り、通して言う

最後に本番と同じ姿勢で通します。立って、声を出し、時計で時間を計ります。持ち時間が決まっている演説なら、持ち時間の8〜9割で終わる量にそろえます。本番は練習より間が増えるので、ぴったりに合わせると時間が足りなくなります。

通しは、1回ごとに少し間を空けて、一晩に3〜5回までにします。同じ夜に何十回も続けると、疲れて同じ所で止まり、その止まり方まで覚えてしまいます。スマホの録音機能などで1回録っておき、聞き返して、早口になる所と語尾が消える所に印を付けるのも効きます。通しのうち1回は、止まっても練習を中断せず、次の見出しから続ける回にします。止まったときの体の動かし方は、あとの失敗の節で図にしています。

前の晩しか残っていないときは、2の書き直しは長い一文を2つに切る程度にとどめ、1の見出しを付ける作業に10分、3の始めと終わりに15分、4の見出しから話す練習に20〜30分、5の通しを2〜3回、という順に縮めます。寝る前に見出しのカードを一度だけ声に出して読み、それ以上は通しを重ねずに寝てしまうほうが、翌朝の通しが崩れにくくなります。

学年と時期で変わるところ

中学1年生は、国語の授業の班の発表や、委員会の初めてのあいさつのような、1〜2分の短い原稿から始まることが多い学年です。小学校までは原稿を手に持って読む発表が中心だった生徒も多く、伏せて言う練習そのものに慣れていません。見出しは3〜5個ほどで足ります。まず始めの一文と終わりの一文だけを固め、途中は原稿やメモを見てよいかを先生に確かめてから、見る前提で準備するのも一つの手です。

中学2年生と3年生になると、生徒会や委員会の演説、行事の代表のあいさつなど、全校の前で話す場面が出てきます。原稿は2〜4分に伸び、見出しは5〜8個になります。原稿を持たずに話すか、持って読み上げてよいかは学校と場面で違うので、ここも決まりを確かめます。中3の秋以降は受験勉強の時間を削りたくないので、見出しの順番の確認は通学の途中に、通しは夕食の後に1回、と決まった時刻に置くと、勉強の時間とぶつかりません。

高校生は、授業の探究の発表など、スライドを映しながら話す発表が増えます。スライド1枚を見出し1つに当て、スライドの題をそのまま見出しにすると、覚える物が一つ減ります。ただし、スライドに文を並べると、それを読み上げるだけになり、顔が画面の方を向いたままになります。スライドに載せる文字は、見出しと数字くらいに絞ります。

時期で見ると、ふだんの授業の発表は、1週間前に原稿を書き終え、3日前から覚え始めれば間に合います。定期テストの前と発表が重なるときは、覚える時間を1日15〜20分に区切り、テスト勉強の区切りの合図として通しを1回だけ入れます。原稿の書き直しは、テスト前の週末までに済ませておきます。夏休みや冬休みが明けてすぐの発表は、休みの間に原稿を書き終え、休みの最後の3〜4日で覚えます。書いてから日がたつと、自分で書いた原稿でも中身を忘れているからです。

よくある失敗と直し方

止まったら頭から言い直す、または原稿の言葉を探して黙り込む

なぜそうなるのか。原稿の言い回しで覚えていると、その一語が出てくるまで先へ進めません。頭から言い直すと、聞き手には同じ話が2回聞こえるうえ、自分も同じ所でもう一度止まりがちです。

直し方は図3の順番です。言葉が止まったら、まず今いる段落の見出しを思い出します。続きが出てくれば、そのまま続けます。出てこなければ、その段落の残りはあきらめて、次の見出しへ進みます。そして最後は、固めておいた終わりの一文で締めます。聞き手の手元に原稿はありません。段落の途中が少し抜けても、話の筋が通っていれば、抜けたことは伝わりにくいものです。

図3 本番で言葉が止まったら、今の見出しから次の見出しへ進む戻り方

前の晩に原稿を大きく書き直す

なぜそうなるのか。前の晩になると「もっとよい言い方があるのでは」と思い、話を足したり言い回しを替えたりしたくなります。すると、覚えかけた古い言い回しと新しい言い回しが頭の中で混ざり、本番でどちらも中途半端に出てきます。

直し方は、中身の書き直しを2日前で締め切ることです。前の晩に直してよいのは、長すぎる一文を2つに切ることと、言いにくい語を言い慣れた語に替えることの2つだけにします。足したくなった話は、紙の端に書いて今回は捨てます。

鏡の前でだけ練習する

なぜそうなるのか。鏡を見ると、目が自分の顔や手の動きに引っぱられ、言葉を思い出すほうに頭が回りません。言葉がまだ固まっていない段階で鏡に向かうと、表情を直すことと思い出すことを同時にやることになり、どちらも途中で止まります。

直し方は、言葉が通るまでは鏡を使わず、壁の一点か家の人に向かって話すことです。鏡は、通しで止まらなくなってから最後の1〜2回だけ使い、段落の変わり目で顔を上げられているかを見る道具にします。

よくある質問

スピーチの暗記は何日前から始めればよいですか

原稿の長さで決めます。1〜2分なら3日前から、3〜5分なら1週間前から覚え始めるのが、教室で見ていて無理のない目安です。もう一つ大事なのは、原稿を書き終える日と覚え始める日を分けることです。書き終えた原稿を一晩おいてから読み直すと、他人の目で読めるので、言いにくい所や長すぎる一文が見つかります。書いたその日に覚え始めると、直したい所に後から気づいて、覚え直しになります。

発表で原稿やメモを見てはいけないのですか

決まりは学校・先生・場面ごとに違います。授業の発表では手元のメモを見てよいこともあれば、演説では原稿を読み上げる形が決まっていることもあります。まず先生に確かめてください。見てよい場合でも、手に持つのは全文の原稿より見出しのカードがおすすめです。全文を持つと目が文を追い、顔が下を向いたままになるうえ、読んでいる行を一度見失うと、かえって止まってしまいます。

グループ発表の暗記で、自分の担当だけを覚えるコツはありますか

自分の担当の前にいる人の、最後の一文を覚えておきます。それが自分の話し出しの合図になります。自分の始めの一文は、前の人の話を受ける形にしておくと入りやすくなります。自分の終わりの一文は、次の人の話の題を出して渡す形にします。班で少なくとも1回は通しをして、人と人のつなぎ目を確かめてください。誰かが休んだときに備えて、隣の担当の見出しだけは知っておくと、つなぎ目で慌てずに済みます。

保護者が手を貸すなら

いちばん助かるのは、聞き手になってもらうことです。見出しのカードを持ち、お子さまが止まったときだけ、次の見出しを小さな声で言ってあげてください。原稿の文そのものは読まないほうが、見出しから話を組み立てる練習になります。話の途中で言い回しを直すのは控え、終わってから「いちばんよくわかった段落」を一つだけ伝えます。夜遅くの通しは「あと1回で終わり」と回数を決め、前の晩に原稿の中身へ新しい案を出すのは避けてください。洗面所の鏡の前で同じ所を何度も繰り返している姿を見かけたら、「一回聞かせて」と声をかけて聞き手を引き受けるだけで、鏡から離れて人に向かって話す練習に切り替わります。

個別指導で確かめること

戻って確かめるのは、原稿の段落の切り方と見出しの付け方までです。毎回同じ所で止まるなら、その直前の段落の切れ目に見出しが立っているか、段落の中に思い出す手がかりになる具体が入っているかを原稿の上で一緒に見直し、そのうえで見出しを見て段落の中身が言えるか、見出しを1枚引いた段落から話し始められるかを、講師の前で一度ずつ通して確かめます。

まとめ

鏡の前で3文目が出てこないのは、覚えが足りないからではありません。3文目が新しい段落の頭にあり、そこに思い出す合図が置かれていないだけです。今夜はその段落の上に見出しを一つ書き、伏せた原稿を前に、まずその見出しを口にしてから3文目へ入ってください。壇上で言葉が切れても、次の見出しさえ口から出れば、演説はそこから立て直せます。

読んで終わりにするか、ここから変えるか。

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