星が動く向きと季節で変わる太陽の高さを、観察者の位置から整理します。3枚の図と、移動角度・南中高度・透明半球の記録を読む例題で、地球の自転と公転を区別して考えられます。
よくあるのは、部活帰りの校舎の外階段で星を見上げ、ノートの「東から西へ」という矢印と、北の空の円形の矢印が合わないと感じる場面です。星は同じ向きに動くはずなのに、図によって右向きにも左向きにも見えます。ここで必要なのは矢印を丸暗記することではなく、自分がどの方角を向いているかを確かめることです。
天体の動きは、地面に立って空を見る図と、宇宙から地球を見る図を行き来すると理解できます。また、数時間後の変化と数か月後の変化では、注目する地球の運動が違います。問題文の「同じ日」「同じ時刻」に線を引くだけでも、考える道筋が見えてきます。
多くの教科書では中3で学びます。星の動きだけでなく、夏に昼が長い理由や、冬の太陽が低い理由まで、地球の動きから順番につなげていきましょう。
この単元で身につけること
- 天球を使って空の位置を表します。実際の星までの距離とは切り離し、観察者から見た方向を考えます。
- 日周運動を地球の自転で説明します。太陽や星が1日のうちに動いて見える理由と、方角による見え方の違いをつかみます。
- 透明半球の記録を読み取ります。太陽の通り道、時刻ごとの印、地平線との交点を対応させます。
- 年周運動を地球の公転で説明します。同じ時刻に見る星の位置と、同じ位置に見える時刻の変化を区別します。
- 地軸の傾きと季節を結びつけます。南中高度と昼の長さの両方から、地面が受ける太陽の光を考えます。
これまで学んだ光の直進と角度の測り方が、太陽の位置の記録や南中高度の計算につながります。天体の名前だけでなく、「何を基準にした角度か」を言葉にすることが、この単元を解く土台です。
基本の考え方
天球と太陽の通り道
空全体を、観察者を中心とする大きな球面として考えたものが天球です。星や太陽をその球面上にあるように表しますが、実際の天体が同じ距離に並んでいるわけではありません。頭の真上が天頂、水平な面と天球が交わる線が地平線です。高度は地平線から上へ測る角度で、地平線上が0°、天頂が90°です。
日本の多くの地域では、太陽は東寄りから昇り、南の空を通って西寄りに沈みます。太陽が真南に来ることを南中といい、そのときの高度が南中高度です。太陽が真東から昇って真西に沈むのは春分・秋分のころです。夏至のころは日の出・日の入りが北寄りに、冬至のころは南寄りになります。南中する時刻は場所や日付で変わるため、時計の12時ちょうどとは限りません。
透明半球は、観察者の上半分の天球を小さく表した道具です。水平に置いた台紙に東西南北と中心を記し、方位を合わせて半球を固定します。ペン先の影が台紙の中心に重なる位置に、時刻とともに印をつけます。光が直進するので、中心から印へ向かう方向が太陽の方向に対応するからです。太陽を直接見たり、望遠鏡や双眼鏡を向けたりしてはいけません。
等しい時間間隔の印を滑らかにつなぐと、太陽の通り道を記録できます。通り道を半球のふちまで延ばした交点が、日の出・日の入りの位置です。印の間の長さは球面に沿って測ります。上から見た写真の直線距離で測ると、球面の曲がり方によって長さが縮んで見える点に注意しましょう。
地球が回ると空が動いて見える
地球は地軸を中心に、西から東へ約1日に1回自転します。北極側から見ると反時計回りです。地球上の観察者も一緒に回るため、太陽や星は反対の東から西へ動いて見えます。この1日の見かけの動きを日周運動といいます。中学校の計算では、1時間に約15°動くとして扱います。
図1のように、南を向くと左が東、右が西です。南の星は左から右へ動きます。一方、北を向くと右が東、左が西になり、北極星付近を中心に星が反時計回りに動いて見えます。北極星は地軸を北へ延ばした方向の近くにあるため、ほとんど動かない目印になります。

図1は向きの違いを示す模式図です。東の空では星が右上がりに昇り、西の空では右下がりに沈みます。これは日本付近で、それぞれの方角に正面を向いた場合です。北の空では、北極星に近い星の中に地平線の下へ沈まないものもあります。「すべての星が毎日昇って沈む」とは限りません。
同じ時刻の星空が変わる理由
地球が太陽の周りを約1年で1周する運動が公転です。地球の北極側から見ると、公転も反時計回りです。公転によって夜の地球が向く宇宙の方向が変わるため、季節によって見やすい星座が変わります。夜中に南に見える星座を考えるときは、地球から太陽と反対側の方向をたどると整理できます。
同じ場所で同じ時刻に星を観察すると、日がたつにつれて西へずれて見えます。これが星の年周運動です。移動は1日に約1°、1か月に約30°です。同じ星が同じ位置に来る時刻は、1日で約4分、1か月で約2時間早くなります。数時間後を見る問題では日周運動、日付を変えて同じ時刻に見る問題では年周運動を使いましょう。
例題で解き方を確かめる
例題1 星の移動角度から時間を求める
北の空を連続して観察したところ、ある星が北極星付近を中心に45°動きました。観察を始めたのが19時なら、終えたのは何時ですか。移動は1時間に15°とします。
- 1日の中の観察なので日周運動と判断します。日付ごとの変化を扱う約1°という値は使いません。
- かかった時間 = 移動角度 ÷ 1時間の移動角度として、45° ÷ 15°/h = 3 hを求めます。角度を角速度で割ると、単位は時間になります。
- 19時に3時間を足し、答えは22時です。観察を後へ進めるので、時計の時刻も遅くなります。
ここでの45°は、北極星付近と星を結ぶ線が回った角度です。星が地平線から45°高くなったという意味ではありません。日周運動の移動角度と高度は、角度の頂点も測る向きも違います。
例題2 1か月後に同じ位置へ来る時刻
ある星が、ある日の21時に南中しました。1か月後、同じ場所では何時ごろ南中しますか。また、1か月後の21時には、元の位置からどちらへ約何度動いて見えますか。年周運動は1か月に約30°とします。
- 日付が1か月進むので、公転による年周運動を考えます。同じ時刻で比べる星は西へ約30°ずれます。
- 30°を日周運動の時間に置き換え、30° ÷ 15°/h = 2 hとします。同じ星の位置のずれを、時計で何時間分かに直すためです。
- 星は元の時刻にはすでに南中を終えているので、21時より2時間早い19時ごろに南中します。21時に見る位置は元より西へ約30°です。
「西へ動くから時刻を遅くする」と決めないようにしましょう。同じ時刻の位置を問うのか、同じ位置になる時刻を問うのかで、答えの表し方が変わります。約30°も約2時間も、月による違いを省いた目安です。
例題3 季節ごとの南中高度を求める
北緯35°の地点で、春分・秋分、夏至、冬至の南中高度を求めます。地軸は公転面に垂直な方向に対して23.4°傾いているものとします。図2は同じ地点から南を見たときの高さを、横から比べた図です。

- 春分・秋分は、南中高度 = 90° – 北緯で計算します。赤道では太陽が天頂付近に来るため、北へ進んだ緯度の分だけ低くなります。90° – 35° = 55°です。
- 夏至はその値に23.4°を足します。北半球が太陽の側へ傾き、太陽が高く見えるため、55° + 23.4° = 78.4°です。
- 冬至は23.4°を引きます。北半球が太陽と反対側へ傾くので、55° – 23.4° = 31.6°です。
答えは順に55°、78.4°、31.6°です。図2の角度は地平線から測っています。夏至と冬至の差は78.4° – 31.6° = 46.8°で、23.4°の2倍です。この式は日本付近の北緯の地点で使う形として覚え、南半球などへそのまま当てはめないようにします。
例題4 透明半球から日の出の時刻を読む
透明半球の通り道に沿った9時から10時までの長さが6 cm、日の出の位置から9時の印までが18 cmでした。日の出から日の入りまでの全体は72 cmです。等しい時間に進む長さを一定とみなし、日の出・日の入りを求めます。
- 1時間に6 cm進むので、日の出から9時までの時間は18 cm ÷ 6 cm/h = 3 hです。球面に沿った同じ通り道の長さを比べます。
- 日の出は9時より3時間前なので6時です。日の出の位置から9時へ向かう順序を確認すると、足し引きを取り違えません。
- 昼の長さは72 cm ÷ 6 cm/h = 12 hです。6時から12時間後なので、日の入りは18時です。
昼の長さは日の出から日の入りまでの時間です。太陽の位置を示す角度ではないので、72 cmをそのまま15°で割ることはできません。観測記録には測定のずれもあるため、実際には複数の時間間隔を比べて読み取ります。
つまずきやすいところと直し方
夏は太陽に近づくから暑い、と思ってしまう
「夏は地球が太陽へ近づくから暑い」という考えでは、北半球の夏に南半球が冬になることを説明できません。季節を生む主な理由は、地軸が傾いたまま、ほぼ同じ方向を向いて公転することです。図3では、北極側の地軸の向きをそろえて、半年離れた2つの位置を比べています。

図3の左では北半球が太陽側へ傾き、右では太陽と反対側へ傾きます。北半球の夏は太陽の南中高度が高く、昼も長くなります。同じ量の光が当たる地面の面積は、光が斜めに当たるときより小さくなるので、単位面積あたりに届くエネルギーが大きくなります。日照時間も長くなり、1日に受けるエネルギーが増えます。図の大きさや距離は実際の比ではありません。
地軸は公転面から23.4°傾く、と思ってしまう
「公転面から23.4°」では、基準の線が違います。23.4°は公転面に垂直な方向から測った角度です。公転面そのものと地軸との角度なら、90° – 23.4° = 66.6°になります。
図3の点線は、公転面に垂直な方向を表します。公転するたびに地軸が太陽へ向き直ると、夏と冬の違いが作れません。地球の位置を移して描くときも、地軸の線は平行に保ちます。
北の空だけ逆向きに回る、と思ってしまう
「南では左から右だから、北でも左から右」とすると、観察者が向きを変えたことを見落とします。図1の北の空では、円の上側の星は左へ、下側の星は右へ動きます。どちらも同じ反時計回りの一部です。
直すときは、まず紙に「北を向く」「南を向く」と書き、左右の東西を入れます。その後で矢印を描けば、左右という自分の基準と、東西という方位の基準を混ぜずに済みます。
練習問題
練習1 同じ夜、星が北極星付近を中心に30°動きました。1時間に15°動くとして、経過時間を求めてください。
練習2 ある日に20時に南中した星は、2か月後には何時ごろ南中しますか。1か月に約30°ずれるとして、2か月後の20時に見える位置も答えてください。
練習3 北緯40°の地点の春分・秋分、夏至、冬至の南中高度を求めてください。地軸の傾きは23.4°とします。
練習4 北半球が夏のとき、南半球は何の季節ですか。地軸の傾きと太陽の光に触れて、理由も説明してください。
答えと解説
練習1 30° ÷ 15°/h = 2 hなので、2時間です。1日に約1°という年周運動の値は使いません。
練習2 約16時です。移動角度は30° × 2 = 60°、時間では60° ÷ 15°/h = 4 hに当たり、南中が4時間早まります。20時では元の位置から西へ約60°ずれます。
練習3 順に50°、73.4°、26.6°です。90° – 40° = 50°を基準に、夏至では23.4°を足し、冬至では引きます。
練習4 冬です。北半球が太陽側へ傾くとき、南半球は太陽と反対側へ傾き、太陽の高度が低く、昼も短くなるためです。
次の単元へのつながりと家庭での確かめ方
地球上から見た方向と、宇宙から見た位置関係を区別する考え方は、月や金星の満ち欠けにもつながります。天体が実際に動く向きと、観察者に見える動きを分ける練習が役立ちます。
家庭では、5分で次の2つを試せます。1つ目は、紙に東西南北を書いて中央に立つ人を描き、北向きと南向きで左右がどう変わるかを確かめる方法です。2つ目は、丸めた紙に地軸の線を描き、机の中央を太陽に見立てて周りを動かす方法です。地軸の線を同じ方向へ向けたまま、どちら側の半球が中央へ傾くかを比べます。
個別指導で手が止まる場合は、角度の基準、東西の位置、時間の足し引きまで戻って確かめます。答えだけでなく、図の中で観察者がどこにいるかを説明できるかが確認点です。
まとめ
天体の問題では、最初に観察者を置くと図の意味が定まります。「北を向いて数時間後を見る」のか、「同じ時刻に1か月後を見る」のかを短く書き添えると、必要な運動と数値を選べます。計算が合っていても矢印の向きが説明できなければ、方位に戻って確かめましょう。
空の矢印を説明する出発点は、星の位置だけでなく、それを見ている自分の位置です。





