水の電気分解や酸化銀の熱分解を粒子の図で読み解き、化学反応式の係数をそろえる手順を例題で確かめます。原子と分子、単体と化合物の違いも整理し、記号と実験の変化を結びつけ、式を自分で組み立てる練習に進みます。
よくあるのは、理科室で実験結果をまとめる時間に、水から水素と酸素ができたことは書けたのに、反応式の前につける「2」の位置で手が止まるという場面です。H₂Oの小さな2と、2H₂Oの前の2が同じに見えると、何を数えているのかが曖昧になります。ここで必要なのは、式を丸ごと覚えることだけではありません。粒子を描いて、反応の前後で残るものと変わるものを分けることです。
水が沸騰して水蒸気になる変化と、水を分解して別の気体を得る変化は、どちらも気体が現れても中身が違います。その違いを原子と分子で説明できると、実験の観察、物質の名前、化学式がつながります。多くの教科書では中2で学ぶ内容です。まず物質をつくる粒子から始め、最後に自分で化学反応式を完成させましょう。
この単元で身につけること
- 化学変化を見分けること。 もとの物質とは性質の異なる別の物質ができる変化です。見た目が変わっただけで判断せず、できた物質の性質を調べます。
- 原子と分子を区別すること。 原子は物質をつくる基本の粒子です。分子は原子が結びついてできた粒子で、その物質の性質を示す最小の粒子として扱います。
- 記号から物質の成り立ちを読むこと。 元素記号は原子の種類を、化学式は物質を表します。化学式の小さな数字には、原子の数などの意味があります。
- 分解と結びつく変化を説明すること。 1種類の物質が2種類以上の別の物質になる分解と、鉄と硫黄のように別の物質をつくる反応を比べます。
- 化学反応式の数をそろえること。 反応の前後で原子の種類と数が変わらないことを使い、化学式の前につける係数を決めます。
前の単元で学んだ状態変化と比べることが、物質そのものが変わる化学変化を理解する入り口になります。
基本の考え方
原子・分子と化学式をつなぐ
原子は、ふつうの化学変化では新しくできたり、なくなったり、別の種類に変わったりしません。化学変化で変わるのは、原子の結びつき方です。原子の種類を元素といい、元素記号で表します。水素はH、酸素はO、炭素はC、窒素はN、硫黄はS、鉄はFe、銅はCu、銀はAg、ナトリウムはNaです。2文字の記号は最初を大文字、次を小文字で書きます。
水素分子H₂は水素原子2個、酸素分子O₂は酸素原子2個からできています。水分子H₂Oは水素原子2個と酸素原子1個です。右下に数字がないOは1個と読みます。二酸化炭素CO₂なら炭素原子1個と酸素原子2個です。図1のように丸を原子に見立てると、同じ「分子1個」でも含む原子の種類と数が違うことが見えます。色や丸の大きさは区別のためで、実物の色や大きさの比ではありません。

すべての物質が分子でできているわけではありません。鉄や銀、塩化ナトリウムなどは分子をつくらない物質として扱います。鉄はFe、塩化ナトリウムはNaClと書きますが、NaClを「分子1個」とは読みません。NaClは、ナトリウムと塩素の原子の数の割合が1:1であることを表しています。
純粋な物質のうち、1種類の元素からできているものが単体、2種類以上の元素からできているものが化合物です。O₂は原子が2個あっても酸素だけなので単体、H₂Oは水素と酸素からできているので化合物です。混合物は、空気のように複数の物質が混ざったものです。元素の種類を数える前に、1種類の物質なのかも確認しましょう。
分解では何ができたかを確かめる
加熱による分解を熱分解といいます。炭酸水素ナトリウムを加熱すると、炭酸ナトリウム、二酸化炭素、水ができます。反応式は2NaHCO₃ → Na₂CO₃ + CO₂ + H₂Oです。出た気体で石灰水が白くにごることから二酸化炭素を確かめ、水は青色の塩化コバルト紙が赤色に変わることで確かめます。残った固体は、もとの物質と水への溶け方や水溶液のアルカリ性の強さが異なります。
学校でこの実験を行うときは、保護眼鏡を着用し、試験管の口を少し下げます。生じた水が熱い部分へ流れて試験管を割るのを防ぐためです。気体を液体に通している場合は、加熱をやめる前にガラス管を液体から抜きます。冷えると液体が逆流するおそれがあるからです。
酸化銀の熱分解では銀と酸素ができます。反応式は2Ag₂O → 4Ag + O₂です。酸素は、火のついた線香を入れると激しく燃える性質で調べます。銀は、取り出せる温度まで冷ましてから調べると、こすった部分に金属光沢が見られます。火や薬品を使う確認は、先生の指示のもとで行います。
電気による分解と物質の結びつき
電流を流して物質を分解することを電気分解といいます。水の電気分解では、陰極に水素、陽極に酸素が生じます。純粋な水には電流が流れにくいため、学校では少量の水酸化ナトリウムなどを溶かして電流を流れやすくします。水酸化ナトリウムは目や皮膚を傷めるので、家庭でまねをせず、保護眼鏡を着用して指定の装置を使います。
一方、鉄と硫黄の混合物を加熱すると、硫化鉄という別の物質ができます。反応式はFe + S → FeSです。反応前の混合物では鉄が磁石につきますが、十分に反応した硫化鉄は鉄のようには磁石につきません。ただ混ぜた状態と、化学変化で結びついた状態を区別する観察です。加熱は換気の整った場所で先生の指示に従います。硫化鉄に酸を加えると有害な硫化水素が出るため、自分で試したり、発生した気体を直接かいだりしてはいけません。
例題で解き方を確かめる
例題1 化学式から単体と化合物を分ける
問題: H₂、H₂O、Fe、CO₂を単体と化合物に分け、H₂Oの分子1個に含まれる原子の総数を答えましょう。
- 元素記号の種類を数えます。単体と化合物の区別は、原子の個数ではなく種類で決まるからです。H₂はHだけ、FeはFeだけです。
- H₂OにはHとO、CO₂にはCとOがあると読みます。それぞれ2種類の元素を含むので、化合物になります。
- H₂Oの右下の数字を読みます。Hが2個、Oが1個なので、原子の総数 = 2 + 1 = 3個です。
答え: 単体はH₂とFe、化合物はH₂OとCO₂です。水分子1個に含まれる原子は3個です。Feは分子をつくらない単体なので、「単体は同じ原子が集まった分子」と覚えると鉄を説明できなくなります。
例題2 水の電気分解を式にする
問題: 水が水素と酸素に分解する反応式を完成させましょう。また、同じ温度・圧力で集めた酸素が10 cm³なら、水素の体積はいくらですか。気体は逃げずに集められたとします。
- 反応前を左、反応後を右に置き、H₂O → H₂ + O₂と書き始めます。まず物質の化学式を正しく決めるためです。この段階では原子の数がそろっていません。
- Oを数えると左1個、右2個なので、左を2H₂Oにします。酸素原子を左右2個ずつにするためです。すると左のHは2 × 2 = 4個になります。
- 右を2H₂にして水素原子も4個にします。左右を数え直すと、Hが4個、Oが2個で一致します。
答え: 2H₂O → 2H₂ + O₂です。図2のように、水分子2個から水素分子2個と酸素分子1個ができる対応になっています。水分子のHとOが別々の分子をつくり直す様子をたどってください。

水の電気分解で得られる水素と酸素の体積比は、同じ温度・圧力で2:1です。したがって、水素の体積 = 10 × 2 = 20 cm³となります。体積比は質量比ではありません。また、式の係数から液体の水の体積まで同じ比で読めるわけではありません。
例題3 酸化銀の分解を原子で確かめる
問題: Ag₂O → Ag + O₂の係数をそろえましょう。さらに、この反応の関係を5組分まとめて考えると、生じる銀原子は何個に対応しますか。
- O₂のOは2個なので、左を2Ag₂Oにします。右の酸素分子を分割せずに、酸素原子の数をそろえるためです。
- 左のAgは2 × 2 = 4個になったので、右を4Agにします。化学式の前の係数は、その式に含まれるすべての原子にかかります。
- 左右ともAgが4個、Oが2個かを確認します。Ag₂Oは分子をつくらない物質なので、ここでは式で表した原子の数の対応を調べています。
答え: 2Ag₂O → 4Ag + O₂です。5組分では銀原子は4 × 5 = 20個に対応し、酸素分子は5個に対応します。実験では非常に多くの原子が反応しますが、式には最も簡単な整数の比を書きます。4Ag₂O → 8Ag + 2O₂も数は合いますが、係数をすべて2で割って表せます。
つまずきやすいところと直し方
小さな数字を書き換えてそろえてしまう
誤った考え方は、「H₂OのOをO₂に変えれば酸素の数が合う」です。ところがH₂O₂は水とは別の物質を表すので、問題の反応を変えてしまいます。正しくは、化学式を固定して前の係数だけを変えます。2H₂Oなら水分子が2個になり、水素原子4個と酸素原子2個を表します。下付きの数字は1分子の中、前の係数は分子全体にかかる、と区別しましょう。
沸騰と分解を同じ変化だと思う
誤った考え方は、「水から気体が出るなら、どちらも水素と酸素になる」です。沸騰で出る水蒸気はH₂Oのままで、水分子の間隔などが変わっています。電気分解ではH₂とO₂という別の物質になります。図3の上段では水分子の組を保って間隔を広げ、下段では原子の組み合わせを変えています。

正しくは、気体になったかどうかではなく、物質が変わったかで判断します。水蒸気も水素も目には見えない気体ですが、性質は違います。なお、湯気として白く見えるものは、小さな液体の水滴です。見え方と物質名を一対一で決めないことが、実験の読み取りにも役立ちます。
鉄と硫黄を混ぜれば硫化鉄になると思う
誤った考え方は、「2種類の元素があれば化合物」です。鉄粉と硫黄の粉を混ぜた段階では、それぞれの物質が残る混合物です。加熱して反応が進むと、性質の異なる硫化鉄になります。正しくは、元素の種類だけでなく、原子が結びついて1種類の物質をつくったのかを確かめます。
磁石につく部分が残ったときも、すぐに説明が間違いだとは決めません。反応せずに残った鉄が含まれる可能性があります。観察した試料がすべて反応したものなのかを確認してから、物質の性質と結びつけましょう。
練習問題
練習1: 3CO₂に対応する炭素原子、酸素原子、原子の総数をそれぞれ答えましょう。CO₂は単体と化合物のどちらですか。
練習2: 水の電気分解で、陰極と陽極にできる気体を答えましょう。同じ温度・圧力で陰極に30 cm³集まったとき、陽極の体積を求めましょう。気体は逃げないものとします。
練習3: 炭酸水素ナトリウムの熱分解の式、2NaHCO₃ → Na₂CO₃ + CO₂ + H₂Oについて、左右それぞれのNa、H、C、Oの原子の数を答えましょう。
答えと解説
練習1: 炭素原子3個、酸素原子6個、総数9個です。CO₂は2種類の元素からできた化合物です。前の3をCにもO₂にもかけ、3 × 1 + 3 × 2 = 9個と数えます。
練習2: 陰極は水素、陽極は酸素です。酸素の体積 = 30 ÷ 2 = 15 cm³です。水素:酸素 = 2:1を、どちらが多いかと一緒に確認します。
練習3: 左右ともNaは2個、Hは2個、Cは2個、Oは6個です。右のOはNa₂CO₃の3個、CO₂の2個、H₂Oの1個を合計します。物質の数が増えても原子の数は変わりません。
次の単元へのつながりと家庭での確かめ方
原子の種類と数が保たれるという見方は、次に学ぶ質量保存の法則につながります。燃焼や酸化・還元も、何と何が結びつき、どの原子の結びつきが変わったかを追って考えられます。今は質量の計算を急がず、式の左右を数える力を整えましょう。
家庭では、5分ほどでできる確認が2つあります。1つ目は紙にHを4個、Oを2個書き、水分子2個の組から水素分子2個と酸素分子1個の組へ囲み直す方法です。文字を足したり消したりせずにできるか確かめます。2つ目はH₂、H₂O、Fe、CO₂を紙に書き、単体と化合物に分けて理由を声に出す方法です。
個別指導では、係数が合わないときに、元素記号の読み方や「数字がないと1個」という約束まで戻って確認します。お子さまの説明を聞く際も、答えだけでなく、どの原子を数えたかに注目すると理解の位置が見えます。
まとめ
化学反応式に迷ったら、消しゴムを使う前に粒子を描いてみましょう。図から式へ戻ったとき、係数の理由を説明できれば、記号の並びが反応の様子として読めています。実験結果も「気体が出た」で止めず、何ができたと判断したのか、その根拠となる性質まで言葉にして確かめてください。化学変化を読み解く手がかりは、変わった物質の中に残り続ける原子です。





