水面の変化から密度を求める例題と、気体の集め方を比べる3枚の図を掲載。物質の分類や実験器具の扱いから、酸素・二酸化炭素・水素・アンモニアの見分け方まで、判断の理由を順に確かめられます。
よくあるのは、図書館の机で理科の問題集を開き、「酸素は水上置換」と答えられたのに、「なぜその方法で集めるのか」という問いで手が止まる場面です。気体の名前と集め方を組にして覚えていると、見慣れない気体が出てきたときに判断できません。密度の問題でも、覚えた式に数字を入れるだけでは、どの体積を使うかで迷います。
この単元で頼りになるのは、物質の名前そのものより、測った値や調べた性質です。見た目が同じ白い粉でも性質は違い、色のない気体でも水への溶けやすさは違います。性質を順に確かめれば、物質を見分ける根拠や、その実験方法を選ぶ理由を説明できるようになります。
多くの教科書では中1で学びます。固体の密度も気体の集め方も、「比べる条件をそろえる」という共通の考え方でつながっています。
この単元で身につけること
- 物体と物質を区別します。スプーンという用途や形と、それをつくる鉄などの材料を分けて考えます。
- 有機物・無機物と金属の性質を整理します。燃え方や電気の通り方など、判断に使う性質を具体的に挙げます。
- 密度を求めます。質量と体積の単位をそろえ、同じ体積あたりの質量として物質を比べます。
- 器具を目的に合わせて使います。上皿てんびんは質量、メスシリンダーは体積を測り、ガスバーナーは加熱に使います。
- 4種類の気体を見分けます。発生に使う物質と、発生した気体を確認する方法を区別します。
- 気体の集め方を選びます。まず水への溶けやすさを調べ、必要に応じて空気との密度の違いを使います。
小学校で学んだ、物の重さを比べることや、水に溶ける様子を観察することが土台になります。今回は「重そう」「よく溶けそう」という印象を、数値や性質を使った説明へ変えていきます。
基本の考え方
物質は見た目だけでは決められません
コップやくぎのように形や用途に注目したものを物体、ガラスや鉄のように材料に注目したものを物質といいます。同じ形のスプーンでも、鉄製とプラスチック製では、熱や電気の通り方が異なります。
砂糖やデンプン、紙、プラスチックなどは有機物です。有機物は炭素を含み、燃焼によって二酸化炭素を生じます。水素も含むものは水も生じます。有機物以外は無機物と呼び、食塩、ガラス、金属などが当てはまります。ただし、炭素を含んでいても、炭素そのものや二酸化炭素などは無機物です。「炭素がある」という条件だけで、例外なく有機物と決めないようにします。
金属には、磨くと光沢が出る、電気や熱をよく通す、たたくと薄く広がる、引っ張ると細く伸びるという共通の性質があります。薄く広がる性質は展性、細く伸びる性質は延性です。磁石につくことは全ての金属に共通しません。アルミニウムや銅が磁石につかなくても、金属であることと矛盾しません。
密度は同じ体積で比べるための値です
密度は、単位体積あたりの質量です。固体や液体では、1 cm³あたり何gかを表す g/cm³をよく使います。大きな木片と小さな鉄片の質量だけを比べても、材料の性質を公平には比べられないため、体積で割って条件をそろえます。
密度 = 質量 ÷ 体積 です。質量をg、体積をcm³で入れると、密度の単位は g/cm³になります。同じ物質で温度などの条件が同じなら、大きさが違っても密度は同じです。質量が大きいほど密度も大きい、とは限りません。
図1のように、水に溶けず、水を吸わず、完全に沈む固体なら、水面の上昇から体積を求められます。入れた後の水の目盛りそのものではなく、入れる前後の差が固体の体積です。空気の泡がつくと余分な体積まで数えてしまうので、泡がないことも確認します。

図1は主な目盛りだけを示しています。メスシリンダーは水平な台に置き、目を水面と同じ高さにして、へこんだ水面の中央の最も低い部分を読みます。目盛りは最小目盛りの10分の1まで目分量で読み取り、1 mL = 1 cm³として扱えます。固体は容器を割らないよう、糸などで静かに沈めます。
上皿てんびんでは、水平な場所で指針の振れが左右に等しくなるよう調整してから測ります。右利きなら一般に左皿に物体、右皿に分銅をのせ、分銅はピンセットで扱います。つり合いは指針が中央で完全に止まることではなく、左右へ等しく振れることで判断します。薬品は皿へ直接のせず、薬包紙などを使ってその質量も考慮します。
気体を集める前に性質を調べます
酸素 O₂は水に溶けにくく、空気より密度が大きい気体です。二酸化マンガンにうすい過酸化水素水を加えると発生し、ものが燃えるのを助けます。火のついた線香を入れたとき、激しく燃えることが確認の手がかりです。酸素そのものが燃えているわけではありません。
二酸化炭素 CO₂は、石灰石や大理石にうすい塩酸を加えて発生させます。空気より密度が大きく、水に少し溶け、石灰水を白くにごらせます。水に溶けた液は酸性を示します。
水素 H₂は、亜鉛などにうすい塩酸を加えると発生します。水に溶けにくく、空気より密度が非常に小さく、燃えると水を生じます。アンモニア NH₃は、塩化アンモニウムと水酸化カルシウムを混ぜて加熱すると発生します。空気より密度が小さく、水に非常によく溶け、その水溶液はアルカリ性を示します。刺激臭があるため、直接吸い込んではいけません。
薬品や火を使う実験は、保護眼鏡を着け、換気のできる学校などで先生の指示に従います。ガスバーナーは器具の種類を確認し、一般的なものでは調節ねじを閉じた状態で元栓とコックを開き、火を近づけてからガス調節ねじを開きます。点火後はガス量、次に空気量を調節して青い炎にします。消すときは空気調節ねじ、ガス調節ねじの順に閉じ、コックと元栓も閉じます。点火しない場合にガスを出し続けないことも必要です。
例題で解き方を確かめる
例題1 磁石につかない金属を説明する
ある固体は磁石につきませんが、磨くと光り、電気をよく通り、たたくと薄く広がりました。「磁石につかないので金属ではない」という判断は正しいでしょうか。
- 金属に共通する性質を取り出します。光沢、電気の通りやすさ、展性は、分類の根拠になるためです。
- 磁石につくことが共通の性質かを確かめます。鉄には当てはまっても、アルミニウムや銅には当てはまらないためです。
- 結論を理由とともに書きます。「判断は正しくありません。磁石につかない金属もあり、観察した性質は金属の特徴に合っています」と答えます。
この観察は金属の特徴に合いますが、金属の種類までは決められません。
例題2 水面の変化から密度を求める
質量54.0 gの固体を水に完全に沈めると、図1のように目盛りが40.0 mLから60.0 mLになりました。この固体は水に溶けず、水を吸いません。密度はいくらでしょうか。
- 固体の体積を求めます。水と固体を合わせた体積から水の体積を引くので、60.0 – 40.0 = 20.0 mL、つまり20.0 cm³です。
- 密度の式へ入れます。1 cm³あたりの質量に直すため、54.0 ÷ 20.0 = 2.7 g/cm³となります。
- 単位と大小関係を確かめます。20.0 cm³分の質量を20.0で割ったので、54.0 gより小さい数値になることも説明できます。
答えは2.7 g/cm³です。54.0 ÷ 60.0とすると、固体だけの質量を水も含む体積で割ることになり、測っている対象がそろいません。逆に、この物質が10.0 cm³あるときの質量は、2.7 × 10.0 = 27.0 gです。
例題3 水上置換の図を読む
図2は、水に溶けにくい気体を集める装置です。集気びんを最初に水で満たす理由と、発生直後の気体を集めない理由を説明しましょう。

- 気体が入る前のびんを考えます。中に空気を残さず、水で満たして口を下にし、水中で立てるためです。
- 入ってきた気体の行き先を追います。図2のように気体が上にたまり、その分だけ水がびんの口から押し出されるので、水と気体が置き換わります。
- 発生装置や管の中も考えます。最初はそこに空気があるため、発生直後に出る気体には空気が混じっています。しばらく発生させてから集めます。
答えは、「びんの中の空気が混ざるのを防ぐため」と「装置内にあった空気が混ざって出てくるため」です。水上置換は比較的純粋な気体を集めやすい方法で、酸素や水素に使います。二酸化炭素も水に少し溶けますが、この方法で集められます。
水素は空気と混ざると爆発の危険があります。確認実験は先生の管理のもとで、空気を十分に追い出して別の試験管へ少量採取して行い、発生装置へ直接火を近づけません。また、加熱して発生させた気体を水上置換で集める場合は、水の逆流を防ぐため、導管の先を水から抜いてから加熱をやめます。
例題4 アンモニアの集め方を選ぶ
アンモニアを、水上置換・上方置換・下方置換のどれで集めるか考えます。名前を思い出す前に、2つの性質を順に使いましょう。
- 水への溶けやすさを見ます。水に非常によく溶けるため、水上置換では十分に集められません。
- 空気との密度を比べます。空気より密度が小さいため、口を下に向けた乾いた容器の上部へ気体を送ります。
- 方法名を決めます。上の方へたまる気体で空気を押し出す方法なので、答えは上方置換です。
気体の確認には、湿らせた赤色リトマス紙が青色になる性質を使います。水に溶けたアンモニアがアルカリ性を示すので、紙を湿らせておく必要があります。刺激臭を確かめるために容器へ鼻を近づけることはしません。
つまずきやすいところと直し方
密度の式の上下を逆にする
「体積 ÷ 質量でもよさそう」と迷うのは、何を1あたりにするかが決まっていないためです。g/cm³は「1 cm³あたり何g」という意味なので、質量を体積で割ります。体積を質量で割った値は「1 gあたり何cm³」であり、密度とは別の量です。
直すときは、計算前に「20 cm³で54 gなら、1 cm³では何gか」と書きます。かたまりを半分にすると質量も体積も半分になるので、密度が変わらないことまで説明できれば、式と意味が結びついています。
上方置換と下方置換を空気の動きで名づける
「空気が上へ出るから上方置換」と考えると、名前が逆になります。図3のように、集めたい気体が容器の上方へたまるか、下方へたまるかで整理します。橙の矢印は送り込む気体、灰の矢印は押し出される空気を表しています。

上方置換では口を下に向けた容器にアンモニアなどを集めます。下方置換では口を上に向け、二酸化炭素などを容器の底近くへ送ります。導管の先を容器の奥まで入れるのは、気体をたまる場所へ送り、空気と混ざりにくくするためです。
「空気より重いなら必ず下方置換」とも限りません。まず水に溶けにくいかを考えれば、酸素を水上置換で集められる理由も説明できます。問題で純度や装置の条件が示されたら、それも判断に加えます。
燃える気体と燃焼を助ける気体を同じにする
「酸素も水素も火を使って調べるので、どちらも燃える」と考えるのは誤りです。酸素の中では線香などが激しく燃え、水素は気体そのものが燃えて水を生じます。観察では、何が燃えているかという主語をつけて記録します。
また、火が消えたことだけで二酸化炭素と決めることもできません。燃焼を支えない別の気体もあるため、石灰水が白くにごるなど、その気体を見分ける別の性質と合わせて判断します。
練習問題
練習1 質量78.0 g、体積10.0 cm³の固体の密度を求めましょう。同じ物質を5.0 cm³に切り分けたときの質量も求めてください。
練習2 ある無色の気体を石灰水に通すと白くにごりました。気体の名前と化学式、発生に使う薬品の組を1つ答えましょう。
練習3 水に非常によく溶け、空気より密度が小さい気体を集めます。適した方法と、その方法を選ぶ理由を説明しましょう。
練習4 「有機物には炭素が含まれるので、二酸化炭素も有機物である」という説明を直しましょう。
答えと解説
練習1 78.0 ÷ 10.0 = 7.8 g/cm³です。切り分けても密度は同じなので、質量は7.8 × 5.0 = 39.0 gです。
練習2 二酸化炭素 CO₂です。石灰石とうすい塩酸などを使います。石灰水は、ここでは発生した気体を確かめるための液で、発生用の薬品とは役割が違います。
練習3 上方置換です。水に非常によく溶けるため水上置換を避け、空気より密度が小さい性質を利用して、口を下にした容器へ集めます。
練習4 二酸化炭素は炭素を含みますが、無機物に分類します。「炭素を含むものは全て有機物」とは言えないためです。
次の単元へのつながりと家庭での確かめ方
密度で使った「一定の量あたりで比べる」という考え方は、水溶液の濃度へつながります。気体が水に溶ける性質は水溶液の学習で、酸素や水素の性質は化学変化を考えるときに使います。
家庭では、まず5分で身近な容器を3つ選び、形や用途を表す名前と、表示で確かめた材料名を別々にメモしてみましょう。次に別の5分で、紙にびんを2つ描いて口を上向き・下向きにし、空気より密度の大きい気体・小さい気体がたまる位置と空気の出口を矢印で書きます。火や薬品を使わずに、物体と物質、置換の向きを確かめられます。
個別指導では、密度の計算が止まったら「どれが固体だけの体積か」まで戻ります。気体の問題なら、方法名より先に、水への溶けやすさを根拠として言えるかを確かめます。
まとめ
実験の結果を説明するときは、「そう覚えたから」の先にある理由を探してみましょう。測定値の差を取る、水への溶けやすさを先に見る、燃えているものを区別する。こうした小さな判断が、まだ名前の示されていない物質を考える手がかりになります。
問題を解き終えたら、答えの横に根拠を1つ添えてみてください。水面の差は固体の体積を示し、容器の向きは集める気体の性質を示します。実験器具の向きには、物質の性質を生かす理由があります。





