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高校生の読書感想文—評論のように書くための手順|武蔵野個別指導塾

高校生の読書感想文は、問いを一つ立てて作者の意図と自分の読みをぶつける短い評論として書けます。2,000 字を 5 つの段落に配る手順と、あらすじが 7 割になった下書きの直し方を、自作の例文つきで順に通します。
高校生の読書感想文は、「おもしろかった」「考えさせられた」を並べる文ではなく、一つの問いに答える短い評論として書くと、2,000 字が自分の言葉で埋まります。手順は次の 5 つです。
- 読みながら引っかかった一行に線を引き、その中から「なぜ」を一つ選んで問いにする。
- 作者がその場面で何を示したのかを、本文の言葉を根拠にして言い切る。
- 自分の読みを、思い出話ではなく本文のほかの箇所と比べて組み立てる。
- 反対の読みを一つ立てて、それに答える。
- 300・500・700・300・200 字の配分で 5 つの段落に分け、問いへの答えで結ぶ。
よくあるのは、高 1 の国語の課題の前で、鉛筆が止まるという場面です。中学までは本のあらすじを書いて、最後に「ぼくもこうなりたいと思った」と付ければ提出できました。ところが高校の先生は、プリントに「あらすじは不要。自分の読みを書くこと」と一行書いています。本は読み終えました。読み終えたのに、何を書けばよいのかがわかりません。原稿用紙の 1 行目に題名だけが置かれたまま、時計の針が 23 時を回ります。ここで足りないのは感想ではなく、問いです。
書く前にすること
評論のように書くための準備は、読み方を変えるところから始まります。一度目は普通に最後まで読んでかまいません。二度目は鉛筆を持ち、次の 3 つのどれかに当たる箇所に線を引きます。一つ目は、意味が取れない一文です。読み飛ばしたくなる箇所ほど、作者が何かを隠しています。二つ目は、登場人物の行動に納得できない場面です。「なぜここでこうするのか」と思った瞬間が、問いの入口です。三つ目は、作者が同じ言葉や同じ景色を繰り返している箇所です。繰り返しは、作者がそこに読者の目を向けさせたい印です。線は 10 か所も引けば十分で、多すぎると後で選べなくなります。
線を引き終えたら、図1のように 3 つの箱でメモを作ります。左の箱には、引っかかった一行をそのまま書き写します。真ん中の箱には、その一行から出てくる「なぜ」を書きます。右の箱には、その一行と関係がありそうな本文のほかの箇所を、ページ数つきで書きます。この 3 つがそろった列が、問いの候補です。

メモが 3 列から 5 列できたら、その中から問いを一つだけ選びます。選ぶ基準は、答えが本文の中にしかない問いかどうかです。たとえば「なぜ下人は老婆の着物を奪ったのか」は、本文に老婆の言い分が書かれているので、読めば誰でも同じ答えにたどり着きます。これは問いとしては弱い。一方で「作者はなぜ、下人の行方を書かなかったのか」は、本文に答えが直接は書かれていません。本文の別の箇所を根拠にして自分で答えを組み立てるしかなく、ここに読みの違いが出ます。読みの違いが出る問いが、評論の問いです。解説サイトを開けば答えが一行で出てくる問いは、避けたほうが書きやすくなります。
問いが決まったら、答えの見込みを 40 字以内の一文で書いておきます。これを主張の一文と呼びます。「行方を書かないことで、作者は読者に下人と同じ選択を迫っている」のような形です。この時点で正しいかどうかは気にしなくてかまいません。書きながら変わってよい仮の答えですが、仮でも先に一文あると、2,000 字の全部がその一文に向かって進むので、途中で迷子になりません。
最後に、課題の条件を確かめます。学校の課題なら、プリントに書かれた枚数、題名の付け方、書き出しの指示が優先です。青少年読書感想文全国コンクールに出す場合は、第 72 回の応募要項で高等学校の部の本文は 2,000 字以内と決められていて、句読点は 1 字に数え、改行のための空白も数え、題名と学校名と氏名は数えません。原稿用紙に縦書きで自筆することも要項に書かれています。2027 年度の要項が出たら、そちらの数字を確かめてから書き始めてください。この記事の配分は 2,000 字を前提にしていますので、学校の課題が 1,200 字なら、後で示す 5 つの段落を同じ比で縮めます。
書き方の手順
評論の形は、段落の役割が決まっています。図2のように、2,000 字を 5 つの段落に配ります。書き出しと問いに 300 字、作品が示していることに 500 字、自分の読みに 700 字、反対の読みへの答えに 300 字、結びに 200 字です。合計で 2,000 字になります。配分を先に決めると、あらすじが膨らんで後半が書けなくなる事故が起きません。

一つ目の段落は、書き出しと問いの 300 字です。「この本は〜という話です」から始めると、そのまま、あらすじに流れていきます。代わりに、線を引いた場面を 2 文か 3 文で描いて、その直後に問いを 1 文で置きます。場面の描写は本文を長く写すのではなく、自分の言葉で情景を言い直します。読んだ人が「その場面の何が気になるのか」をすぐにつかめることが、この段落の仕事です。
二つ目の段落は、作品が示していることの 500 字です。ここで本文を根拠にします。引用は 1 か所、長くても 40 字までにして、かぎかっこでくくり、何ページの一文かを添えます。引用のあとに、その一文がなぜ問いと関係するのかを自分の言葉で説明します。注意したいのは、作者の心の中を言い当てないことです。「作者は〜と考えていた」と書くと、確かめようのない断定になります。「本文は〜を示している」「この一文は〜のように読める」と書けば、根拠が本文に置かれたまま、主張は保てます。
三つ目の段落は、自分の読みの 700 字で、感想文の中心です。一つ目の根拠だけでは、解説を写したのと変わりません。本文の別の箇所を 2 つ持ってきて、問いに対する自分の答えを組み立てます。たとえば、最初の場面での登場人物の言葉と、終わりの場面での同じ人物の沈黙を並べて、「作者は言葉を奪うことで変化を描いている」と読む、という具合です。自分の経験を書きたくなったら、1 つまで、100 字以内にとどめます。高校の読書感想文で求められているのは、経験ではなく読みです。経験を書くときも、「だから私はこう読む」と本文に戻る一文を必ず付けます。
四つ目の段落は、反対の読みへの答えの 300 字です。「〜と読むこともできる。しかし〜」の型で書きます。反対の読みを一つ立てることで、自分の読みが、思いつきではなく比べた上で選んだものだと示せます。反対の読みはわざと弱いものを立てないことが大切で、自分でも「そう読めるかもしれない」と思える読みを立て、それでも自分の読みを選ぶ理由を本文から出します。ここが書けると、文章の背骨が通ります。
五つ目の段落は、結びの 200 字です。最初に置いた問いに、一文で答えます。主張の一文を、本文で確かめた分だけ強くした形で言い直す、と考えてください。そのあとに、本を読む前と読んだ後で自分の見方がどう変わったかを 1 文だけ書きます。「私もこれからは人を思いやって生きたい」のようなきれいごとは、問いと関係がないので入れません。問いに答えて終わるのが、評論の結びです。
段落の役割が決まったら、下書きの前に骨組みを作ります。5 つの段落それぞれの 1 行目だけを、先に 5 行書きます。この 5 行を読み返して、1 行目の問いと 5 行目の答えがつながっていれば、骨組みは通っています。つながっていなければ、問いか答えのどちらかを直します。骨組みが通ってから肉付けをすると、下書きのやり直しが減ります。時間の目安は、二度目の読みと線引きに 1 時間、メモと問い選びに 30 分、骨組みに 15 分、下書きに 1 時間、清書に 1 時間です。合計で 4 時間弱ですから、週末の午後 1 回で間に合います。
例文で見る
例文は、型を見るためのものです。そのまま提出できる長さにはしていません。自分の本と自分の問いに置き換えて使ってください。
一つ目は、書き出しと問いの段落の例です。本は芥川龍之介の『羅生門』を想定しています。
雨の降る夕方、門の下で下人は途方に暮れている。仕事を失い、盗人になるか飢えて死ぬかを決めかねたまま、楼の上に登ると、老婆が死体の髪を抜いている。下人は老婆の着物をはぎ取り、夜の闇に消える。そして作者は、「下人の行方は、誰も知らない。」の一文で切り、その後どこへ行ったのかを書かない。私が引っかかったのはこの沈黙である。なぜ作者は、下人の行方を書かなかったのか。
この例の良いところは 3 つあります。第一に、場面を自分の言葉で 4 文に言い直していて、本文の写しになっていません。第二に、「私が引っかかったのは」と、自分が目を留めた箇所をはっきり示しています。第三に、段落の最後が問いの一文で終わっていて、次の段落で何を論じるかが読み手にわかります。あらすじを書いているように見えますが、問いに必要な場面だけを選んでいるので、あらすじではなく問いの準備になっています。
二つ目は、反対の読みへの答えの段落の例です。同じ問いの続きとして書いています。
行方を書かなかったのは、単に短編だから話を切り上げただけだと読むこともできる。たしかに、この作品はほかの場面でも説明を省いている。しかし、作者は下人が楼を降りる場面までは細かく描き、闇に消えるその瞬間だけを切り落としている。省いたのではなく、切り落としたのだと私は読む。読者は下人の行方を、自分ならどうするかという問いとして受け取るしかない。
この例の良いところも 3 つあります。第一に、反対の読みを「短編だから切り上げただけ」と、自分でもそう読めると思える形で立てています。第二に、「たしかに」でいったん受けてから「しかし」で返していて、相手の読みを踏まえた上で選んだことが伝わります。第三に、「省いた」と「切り落とした」という自分の言葉の対比で、本文の描き方の違いを根拠にしています。経験談は一つも出てきませんが、読みの深さはこちらのほうが伝わります。
例文を写すときは、文の形だけを借りてください。「私が引っかかったのはこの沈黙である。なぜ〜のか。」という骨組みに、自分の本の場面と自分の問いを入れます。「〜と読むこともできる。たしかに〜。しかし〜。」の骨組みに、自分で立てた反対の読みと、それに答える根拠を入れます。骨組みは同じでも、本と問いが違えば、文章は別のものになります。
まちがえやすいところ
一つ目の誤りは、あらすじが 7 割を占めることです。図3のように、よくある下書きは 2,000 字のうちあらすじが 1,400 字、感想が 600 字になっています。あらすじが長いのは、書くことが無いからではなく、問いが無いからです。問いが無いと、何を省いてよいかが決まらず、最初から順に書き写すしかなくなります。直すには、問いに関係する場面だけを残して、あらすじを 400 字まで削り、残りの 1,600 字を論に回します。削るときの目安は、「この場面が無くても問いは立つか」と自分に聞くことです。立つなら、その場面は要りません。

二つ目の誤りは、「〜と思った」が続くことです。誤りの例は、「下人の行動はひどいと思った。老婆もひどいと思った。でもどちらも仕方がないと思った。」という形です。どこが違うかというと、思ったことを 3 つ並べただけで、そう思った根拠が本文のどこにもつながっていません。直した文は、「下人の行動は、老婆の言い分をそのまま自分に当てはめたものだ。老婆が死人の髪を抜く理由を語った直後に下人が着物をはぎ取る、という順番が、それを示している。」です。「思った」を消して、本文の順番を根拠にすると、感想が論に変わります。
三つ目の誤りは、作者の気持ちを言い当てることです。誤りの例は、「作者は、人間の弱さを伝えたかったのだと思う。」という文です。どこが違うかというと、作者の心の中は本文のどこにも書かれていないので、確かめようがありません。読み手は「本当にそうなのか」と止まります。直した文は、「本文は、下人の迷いを雨と門の暗さで描き、決断の瞬間だけを一行で片づけている。この書き方が、迷いの長さと決断の速さの差を際立たせている。」です。作者の気持ちではなく、本文の書き方を根拠にすると、言い当てではなく読みになります。
この 3 つに共通するのは、根拠が本文の外にあることです。あらすじは本文の写し、「思った」は自分の頭の中、作者の気持ちは作者の頭の中にあって、どれも本文そのものではありません。根拠を本文に戻すだけで、同じ本、同じ問いでも、文章は評論の形になります。
よくある質問
問いが一つも見つからないときは、どうすればよいですか
線を引く基準を変えてみてください。納得できない場面が無ければ、「自分なら別の行動をとる場面」を探します。それも無ければ、作品の題名と本文の関係を問いにします。「なぜこの題名なのか」は、どの本にも立てられる問いで、答えは必ず本文の中にあります。それでも見つからないときは、本の選び方を見直す合図です。すらすら読めて何も引っかからない本は、感想文には向いていません。
課題の本が小説ではなく評論や新書のときは、同じ手順で書けますか
書けます。線を引く基準だけが変わります。小説では登場人物の行動に線を引きましたが、評論では筆者の主張の中で「本当にそうか」と思った一文に線を引きます。問いは「筆者はなぜこの例を選んだのか」「筆者の主張はこの場合にも当てはまるのか」の形になります。反対の読みの段落は、筆者への反論の段落になり、そこで自分の考えを出せます。配分は小説と同じです。
引用はどのくらいまでなら、よいですか
1 か所につき 40 字までを目安にして、全体で 3 か所までにしてください。引用は根拠を示すためのもので、文章を埋めるためのものではありません。引用した一文の前後に、自分の言葉での説明が必ず付いているかを確かめてください。説明の無い引用は、あらすじと同じ扱いになります。コンクールの要項でも、不適切な引用は審査の対象外になることがあると書かれています。
親の手伝い方と個別指導で確かめること
高校生の感想文に、保護者が文を直す必要はありません。手伝うなら、問いを選ぶ場面で聞き役になってください。「どこが引っかかったの」「それはなぜだと思う」と 2 つ聞くだけで、お子さまの頭の中にある問いが言葉になります。答えを言わないことが、一番の手伝いです。個別指導では、骨組みの 5 行を見て、1 行目の問いと 5 行目の答えがつながっているか、根拠が本文の外に出ていないかの 2 点を確かめます。文章の良し悪しより先に、この 2 点が通っているかを見ます。通っていれば、肉付けは本人の言葉で進みます。
まとめ
線を引き、問いを一つ選び、主張の一文を書き、5 つの段落に配り、反対の読みに答えて、問いに答えて終わる。この順番を守れば、あらすじに逃げる場所はなくなります。本を閉じたときに問いを一つ持っている人は、2,000 字の最後の行まで、自分の言葉で歩き切れます。
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