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【高校漢文】重要語と漢文特有の語法を図解で総まとめ—然・則・而・以・之・其・者・所|武蔵野個別指導塾

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「之」を「の」と読む場合と「これ」と読む場合を、語順から見分けます。頻出60語の読み、以・於の用法、者と所の違いを図3点と例題で確かめ、短文の現代語訳に取り組めます。

よくあるのは、理科室の実験台の脇で授業開始を待ちながら漢文の小テストを見直し、「之」を全部「これ」と読んだために、知っている漢字ばかりの短文が訳せなくなるという場面です。「山」「人」「書」なら意味を思い浮かべられても、「之」「其」「以」のような短い語になると、どこへつなげればよいか決まらなくなります。漢字の読みを知らないことと、文の中での働きを見失うことは、分けて考える必要があります。

漢文の重要語には、物や動作の内容を表す語と、語と語の関係を示す語があります。後者は、読みを1つ暗記しただけでは使いこなせません。前後に名詞があるのか、動詞があるのかを確かめて、文の中の役割を選びます。この単元では、接続の語、対象や手段を示す語、指示する語を順に整理し、短い文を根拠つきで読めるようにします。覚えるときの単位を「漢字と訳」から「漢字と語順と訳」へ広げていきましょう。

この単元で身につけること

中学校で学んだ主語・述語・修飾語の区別と、漢文の返り点の基本が土台です。返り点は読む順を示し、語法はその順で何を意味するかを支えます。書き下し文が作れても現代語訳が不自然なときは、返り点だけを見直すのではなく、語の働きにも戻って確かめます。

基本の考え方

接続の語は前後の関係と一緒に覚えます

「然」は、もともと「そのとおりである」という意味を表し、「然り」と読む語です。文をつなぐ位置では「然れども」と訓読して逆接を表すことがあり、「然則」なら「然らば則ち」と読んで「それならば」とつなぎます。「然」の字だけを見て、いつでも「しかし」と訳すわけではありません。「そうである」という指示的な意味と、文をつなぐ働きの両方を持つと押さえます。

「則」は、代表的には「すなはち」と読みます。前の条件や事実を受けて、「そうであれば」「そのときは」と後ろへ進める働きがあります。「乃」も「すなはち」と読みますが、こちらは出来事の進行や、その段階でようやく起きたことを表す場合があります。同じ読みだから完全に交換できる、とは考えません。「乃」をいつでも「ようやく」と強く訳すのも不適切で、単に「そこで」と訳すのが自然な場合があります。

「而」は、順接なら「て」「して」など、逆接なら「ども」などと訓読します。学校の訓読では置き字として扱い、書き下し文に「而」の字を残さず、前の語に添える送り仮名でつながりを表す場合が多くあります。順接には、動作の連続だけでなく並列もあります。たとえば「読んで、考える」は動作のつながり、「貧しいが、楽しむ」は対立する内容のつながりです。後半が前半から予想される方向なのか、それを外れる方向なのかを考えると、判断の根拠ができます。

「故」は「ゆゑに」と読み、前の事柄を理由として後の結果を導きます。ただし、名詞の「ゆゑ」、つまり理由・事情を表す使い方もあります。「理由を表す字がある」だけで因果関係を作らず、どちらが理由で、どちらが結果かを文中で示しましょう。図1のように、接続語を真ん中に置いて左右の内容を確かめると、読みが同じ語も区別しやすくなります。

図1 接続の語が示す前後の文の関係を比べる図

図1の「而」の行だけは2つの関係を並べています。字の形から一方に決めず、実際の前後の内容で選ぶ必要があるためです。逆接の訳語を選んだら、何と何が対立しているのかまで説明できるようにします。

以・於・之・其・者・所は周りの語を見ます

「以」は「もつて」と読む場合が多く、「以+名詞」のまとまりで手段・材料・理由などを示します。道具なら「〜を使って」、材料なら「〜で」、理由なら「〜のために」と訳し分けます。いずれも同じ「を以て」という書き下しになることがあるので、読みが決まっても現代語訳はまだ確定していません。後ろの動作と名詞の関係を調べる必要があります。

また、「以」は前後をつないで目的などを表す場合もあります。その場合は、前の行為が何を目指しているのかを見ます。「以て」を見たら必ず直前に道具がある、という覚え方はできません。「以為」は「おもへらく」などと読み、考えや判断を述べる形になります。一方、「以A為B」は「Aを以てBと為す」と読み、「AをBとする・みなす」という関係を表します。「以為」の2字が続く形と、間に目的語が入る形は、分けて覚えましょう。

「於」は、場所・相手・比較の基準などを示します。学校の訓読では置き字として、書き下し文には原則として「於」の字を残しません。場所なら「〜に」「〜において」、相手なら「〜に」、比較なら「〜より」などと表します。とくに比較では、「誰が、何について、誰より」という3点を取り違えないことが必要です。さらに受身の形で動作をする相手を示す場合もあるため、「於=場所」という固定は避けます。

「之」は、名詞と名詞をつなぐときは「の」、動詞の目的語なら「これ」、移動を表す動詞なら「ゆく」などと読みます。「之」の前に動詞があっても、機械的に「これ」と決めず、文のまとまりを確かめます。「其」は「その」と読み、後ろの名詞を修飾して、前に出た人や物との関係を示す場合が基本です。ただし推量・反語などに関わる用法もあるので、文末の語や句形を無視して「その」を当てはめないようにします。

「者」は、動作や性質を表す語の後ろに置かれ、「〜する者」「〜であるもの」という名詞相当のまとまりを作ります。人物に限らず事柄を指す場合や、話題を取り立てる場合もあります。「所」は動詞の前に置かれ、「所+動詞」という形で、その動作の対象などを名詞相当にまとめます。「所」を現代日本語の場所の意味だけで訳すのは危険です。読むという動作なら、読まれるもの・内容を指すことができます。動詞によっては場所を指す場合もあるので、「絶対に場所ではない」と覚えるのも避けます。

頻出60語の代表的な読みと意味

次の表は、文中で確かめたい代表的な用法を60語に整理したものです。読みは歴史的仮名遣いを基本とし、活用する語は代表形を示しています。再読文字の欄の「…」は、ほかの語を間に読んでから戻ることを示します。表にある訳をそのまま埋めるのではなく、複数の用法を持つ語では、前後の語と合わせて選びます。

番号 語 代表的な読み 意味・確かめる点
1 然 しかり・しかれども そのとおりだ・しかし。接続か叙述かを確認します。
2 則 すなはち そうであれば・そのときは。前を条件として受けます。
3 而 て・して・ども 順接や逆接。送り仮名で関係を示します。
4 故 ゆゑに・ゆゑ だから・理由。接続か名詞かを確認します。
5 乃 すなはち そこで・そこでようやく。出来事の進行を見ます。
6 以 もつて 手段・理由など。「以為」などの形にも注意します。
7 之 の・これ・ゆく 連体修飾・指示・移動。前後の品詞を見ます。
8 其 その その人の・その物の。指す内容を戻って探します。
9 者 もの・は 人や事柄のまとまり・話題の提示に関わります。
10 所 ところ 動作の対象などをまとめます。場所とは限りません。
11 於 に・より 場所・相手・比較などを示す置き字です。
12 何 なに・なんぞ 何・どうして。疑問と反語を区別します。
13 誰 たれ 誰。問われている人物を確認します。
14 孰 たれ・いづれ 誰・どちら。選択肢のある問いにも使います。
15 安 いづくんぞ どうして。疑問・反語での代表的な読みです。
16 悪 いづくんぞ・にくむ どうして・憎む。疑問詞か動詞かを見ます。
17 奚 なんぞ どうして。理由を問う形などで使います。
18 胡 なんぞ どうして。疑問・反語の文脈を確認します。
19 焉 いづくんぞ どうして。置き字や指示的な用法もあります。
20 豈 あに まさか〜だろうか。反語を導く代表的な語です。
21 不 ず 〜しない。否定の及ぶ範囲を確かめます。
22 非 あらず 〜ではない。判断を否定します。
23 無 なし ない。存在や所有の否定に使います。
24 未 いまだ…ず まだ〜していない。再読文字です。
25 莫 なし・なかれ ない・〜するな。否定と禁止を区別します。
26 勿 なかれ 〜するな。禁止を表します。
27 将 まさに…んとす 今にも〜しようとする。再読文字です。
28 当 まさに…べし 当然〜すべきだ。再読文字の用法があります。
29 応 まさに…べし きっと〜だろう・当然〜すべきだ。再読文字です。
30 宜 よろしく…べし 〜するのがよい。再読文字です。
31 須 すべからく…べし ぜひ〜しなければならない。再読文字です。
32 猶 なほ…ごとし ちょうど〜のようだ。再読文字の用法です。
33 盍 なんぞ…ざる どうして〜しないのか。勧誘を表す再読文字です。
34 可 べし できる・よいなど。可能や許可を文脈で選びます。
35 能 よく 〜できる。後ろの動作を行う能力を表します。
36 得 う 得る・〜できる。動詞か可能の表現かを見ます。
37 欲 ほつす 〜したいと思う。願望の主体を確認します。
38 使 しむ 〜させる。使役での読みです。
39 令 しむ 〜させる。使役での読みです。
40 為 なす・なる・ため 行う・〜となる・〜のため。役割を見ます。
41 見 みる・らる 見る・〜される。動詞と受身を区別します。
42 被 かうむる・らる 受ける・〜される。受身の形を確認します。
43 若 ごとし・もし 〜のようだ・もし。比況と仮定を区別します。
44 如 ごとし・しく 〜のようだ・及ぶ。「如かず」の形にも注意します。
45 雖 いへども たとえ〜でも。後ろへ逆接でつなぎます。
46 苟 いやしくも もしも。条件を仮に立てます。
47 縦 たとひ たとえ。後ろの逆接の内容と合わせます。
48 且 かつ そのうえ・なお。累加や抑揚などの文脈を見ます。
49 況 いはんや まして。前後を比べて強めます。
50 唯 ただ ただ〜だけ。限定の範囲を確かめます。
51 独 ひとり ただ〜だけ・ひとりで。限定か単独かを見ます。
52 耳 のみ 〜だけ。文末などで限定を表します。
53 亦 また 〜もまた。加える内容を確かめます。
54 復 また 再び。動作の繰り返しなどを表します。
55 嘗 かつて 以前に。過去の経験を表す用法です。
56 既 すでに もう。出来事が済んでいることを示します。
57 遂 つひに とうとう・その結果。経過の行き着く先を示します。
58 輒 すなはち そのたびに・すぐに。前の事態との対応を見ます。
59 請 こふ どうか〜させてほしい。願い出る用法があります。
60 与 あたふ・と 与える・〜と。動詞か並列などかを見ます。

疑問詞は、現代語の疑問符の代わりに置かれる記号ではありません。「何」が物事を問うのか理由を問うのか、「孰」が誰を問うのか選択を求めるのかで、答える内容が変わります。反語なら、形は問いでも話し手は否定や肯定を強く伝えています。「豈」のような語があるか、前後に答えが明らかになる事情があるかを合わせて読みましょう。

表を覚える順は番号順でなくてもかまいません。「不・非・無」のように似た役割を並べて違いを言う練習と、「之」のように1字の複数の働きを比べる練習を組み合わせます。読みだけ言えて意味が言えない語と、意味はわかるが書き下しにできない語を分けると、復習する箇所が具体的になります。

例題で解き方を確かめる

以下の短文は語法を確かめるための自作です。白文、訓読文、書き下し文、現代語訳を別々に示します。横書きの訓読文では、送り仮名を片仮名で添え、返り点を〔レ〕のように表示します。これは縦書きで漢字の左下につける返り点を、その漢字の後ろへ移して示した表記です。〔一〕〔二〕も同様で、原文にある文字ではありません。

例題1 「之」の働きを語順から選びます

次の2文の「之」の読みと働きを答え、現代語訳を作りましょう。

白文A:友之書多。

訓読文A:友之ノ書多シ。

書き下し文A:友の書多し。

白文B:我読之。

訓読文B:我読ム〔レ〕之ヲ。

書き下し文B:我之を読む。

Aの訓読文の「ノ」は「之」が示す関係を表しています。Aには返り点がなく、Bのレ点は「読」の左下につけます。レ点のある「読」をいったん後回しにし、すぐ下の「之」を先に読みます。

  1. Aの「之」の両側を見ます。「友」と「書」は名詞なので、「友の書」という修飾関係をまず考えます。
  2. Bの「之」の前を見ます。「読」は動詞で、「何を読むのか」という対象が必要なので、「之」をその目的語と判断します。
  3. 訳す前に「之」の指すものを確かめます。Bだけでは具体的な本の名前などは示されていないため、勝手に補わず「これ」と訳します。

現代語訳A:友人の書物は多い。

現代語訳B:私はこれを読む。

Aの「の」は漢字の「之」を残さず仮名で書きます。Bでは指示語として「之」を残します。同じ原字でも書き下し文での表記が変わるのは、役割が違うためです。なお、動詞「之く」の場合には、後ろに移動先が置かれる形などから判断します。目的語の「これ」と区別するには、文にすでに述語があるかを確かめることが役立ちます。

答え:Aは「の」で名詞同士をつなぎ「友人の書物は多い」、Bは「これ」で読む対象を指し「私はこれを読む」です。

例題2 「以」の示す手段を確かめます

次の「以」の用法を答え、現代語訳を作りましょう。

白文:工以斧伐木。

訓読文:工ハ以テ〔レ〕斧ヲ伐ル〔レ〕木ヲ。

書き下し文:工は斧を以て木を伐る。

「工」はここでは職人です。レ点は「以」と「伐」の左下につき、それぞれすぐ下の「斧」「木」を先に読みます。

  1. 文の中心を取り出します。誰が何をするかを先に押さえるため、「工」が「木」を「伐る」という骨組みを作ります。
  2. 「以」の直後の名詞を確かめます。「斧」は木を切るための道具なので、この文の「以」は手段を示すと判断します。
  3. 書き下しの「を以て」を自然な現代語に直します。道具の関係が伝わるように「斧を使って」と訳します。

現代語訳:職人は斧を使って木を切る。

図2のように、原文の並びと読む順は分けて考えます。図の下段の数字は、上段で左から付けた原文の位置番号を読む順に並べたものです。「以」の返り読みが済んでから、次の「伐」の返り読みに進みます。

図2 以と伐のレ点による原文の位置と読む順の図

図2では「斧」が「以」より先、「木」が「伐」より先になります。しかし現代語訳を作る段階では、単に順番を入れ替えるだけでなく、斧が道具であり、木が動作の対象であることを表す必要があります。「斧のために木を切る」とすると理由に変わり、この文の関係を表せません。

答え:「以」は手段を示し、現代語訳は「職人は斧を使って木を切る」です。

例題3 「者」と「所」で指すものを分けます

次の2つのまとまりは、それぞれ何を指すでしょうか。

白文A:読書者

訓読文A:読ム〔レ〕書ヲ者

書き下し文A:書を読む者

白文B:所読之書

訓読文B:所〔レ〕読ム之ノ書

書き下し文B:読む所の書

Aのレ点は「読」の左下、Bのレ点は「所」の左下につきます。Aの「者」は前の「書を読む」全体を受け、Bの「之」は「読む所」と「書」をつなぎます。どちらも名詞のまとまりであり、完結した文ではありません。

  1. 「者」「所」の位置を確かめます。「者」は動作の後ろ、「所」は動詞の前にあり、まとまり方が違うためです。
  2. 読む動作を中心に、する側と対象を分けます。Aは読む人、Bは読む対象である書物を指します。
  3. 現代語訳を具体化します。Bの「所」を場所と訳すと後ろの「書」とつながらないため、「読む書物」とまとめます。

現代語訳A:書物を読む人。

現代語訳B:読む書物。

書き下し文では「所」を残しても、現代語訳で「ところ」という言葉を必ず残す必要はありません。「所」は対象をまとめる働きをしており、後ろの「書」がその対象の内容を示しています。語ごとに訳を足して不自然な文を作るより、まとまり全体が何を指しているかを考えます。

答え:Aは「書物を読む人」で動作をする側、Bは「読む書物」で動作の対象を指します。

例題4 「於」が比較の基準を示す場合を読みます

次の文を現代語訳し、何が何より高いのかを説明しましょう。

白文:此山高於彼山。

訓読文:此ノ山ハ高シ〔二〕於彼ノ山ヨリ〔一〕。

書き下し文:此の山は彼の山より高し。

「高」の左下に二点、後ろの「山」の左下に一点をつけます。「於」は直接音読せず、比較の基準である「彼の山」に「より」を添えて表します。

  1. 比較される性質を見つけます。「高」が高さを表すため、この文は場所ではなく高低を比べる文と判断できます。
  2. 主語と基準を分けます。「此山」が述べる対象であり、「於」の後ろの「彼山」が比較の基準です。
  3. 「より」を含めて訳します。基準を先に読んでも主語は変わらないので、こちらの山のほうが高いと確かめます。

現代語訳:この山はあの山より高い。

「あの山はこの山より高い」とすると、語順は整っていても比較の方向が逆です。「於」の用法を答える設問なら「比較の基準」、現代語訳の設問なら「あの山より」という形まで書き分けましょう。

答え:「於」は比較の基準を示し、「この山はあの山より高い」、つまり高いのはこの山です。

つまずきやすいところと直し方

誤り1 「すなはち」をすべて言い換えと考えます

誤った書き方:「則・乃・輒は、どれも『つまり』と訳す。」

どこが違うか:現代語の「すなわち」には言い換えの意味がありますが、漢文の訓読の「すなはち」は、その意味だけではありません。「則」は条件を受け、「乃」は事態の進行を示し、「輒」はそのたびに起きる反応を示す場合があります。読みの共通性を、意味の同一性に置き換えたことが原因です。

正しい書き方:「前を条件として受けるなら『そうであれば』、出来事が進むなら『そこで』、反復的な対応なら『そのたびに』などと、前後に合わせて訳す。」

直すときは、訳語を増やすだけで終えません。前半を条件・出来事・繰り返されるきっかけのどれとして読んだかを余白に書きます。その区別ができれば、理由のない訳語選びから抜け出せます。

誤り2 「所」を必ず場所にします

誤った書き方:「読む所の書」を「読む場所の本」と訳す。

どこが違うか:「所」が動詞の前について、その動作の対象をまとめる働きを見落としています。例題3では、読む場所を述べているのではなく、読む対象が「書」だと示しています。図3のように、読む人・読む動作・読まれる書物を別々に置くと、「者」と「所」の違いが見えます。

図3 読む者と読む所を動作の主体と対象に分ける図

正しい書き方:「読む書物」と訳し、「所」は読む対象をまとめると説明する。

図3の矢印は返り点の読む順ではなく、動作が人から対象へ向かう関係を示しています。図2とは矢印の役割が異なります。ここを混同せず、訓読の順と意味の関係をそれぞれ確かめましょう。「者=人」「所=物」と絶対化せず、今回の動詞が「読む」なので、その区別が当てはまると捉えます。

誤り3 「於」はどこでも「に」と訳します

誤った書き方:「此の山は彼の山より高し」を「この山はあの山に高い」と訳す。

どこが違うか:場所や相手を示すときの助詞を、比較の文にも使っています。「高い」という述語と、2つの山が並ぶ関係を見れば、後ろの山は場所ではなく比較の基準です。置き字で直接読まないことを、意味の働きがないことと取り違えないようにします。

正しい書き方:「この山はあの山より高い」と訳し、「於」の後ろが比較の基準だと説明する。

同じことは「以」にも当てはまります。「を以て」と訓読できたら、道具か理由かまで確認します。訓読の形を決める作業と、現代語として意味を決める作業には、もう1段階の点検が必要です。

練習問題

次の短文も自作です。まず答えを隠し、指定された語の働きと訳を両方書きましょう。訓読文の返り点は例題と同じ表記で、〔レ〕は直前の漢字の左下につけるものを示しています。

練習1

白文:其友読書。

訓読文:其ノ友読ム〔レ〕書ヲ。

書き下し文:其の友書を読む。

前の文で1人の少年が話題になっていたとします。「其」は誰を指し、どの語を修飾しますか。文全体も現代語訳しましょう。

練習2

白文:我以筆写字。

訓読文:我以テ〔レ〕筆ヲ写ス〔レ〕字ヲ。

書き下し文:我筆を以て字を写す。

「以」の用法を答え、文全体を現代語訳しましょう。レ点は「以」と「写」の左下につきます。

練習3

白文:貧而楽。

訓読文:貧シケレドモ而楽シム。

書き下し文:貧しけれども楽しむ。

「而」は書き下し文に字を残さず、前の語の送り仮名「ケレドモ」で関係を示しています。「而」が表す関係を答え、主語を「その人は」と補って現代語訳しましょう。返り点はありません。

練習4

白文:何人読此書。

訓読文:何人カ読ム〔二〕此ノ書ヲ〔一〕。

書き下し文:何人か此の書を読む。

ここでの「何人」は「なんぴと」と読み、読み手を尋ねる問いとします。二点は「読」の左下、一点は「書」の左下です。現代語訳を作り、答えとして求められるのが人数・人物・理由のどれかも示しましょう。

答えと解説

練習1の答え:「其」は前の文の少年を指して「友」を修飾し、訳は「その少年の友人が書物を読む」です。「其」を独立した主語にして「その少年が読む」とすると、主語のまとまりである「其の友」を切り離してしまいます。読む動作をするのは友人です。

練習2の答え:「以」は手段を示し、訳は「私は筆を使って字を写す」です。筆は字を写すための道具です。例題2の「斧」を「筆」に替えても、道具と動作の関係は同じだと確かめられます。

練習3の答え:「而」は逆接を示し、訳は「その人は貧しいけれども楽しむ」です。ここでは「ケレドモ」という訓が示されているため、逆接と判断します。白文から読む場合には前後の文脈も必要ですが、与えられた訓を無視して順接に変えることはできません。

練習4の答え:訳は「誰がこの書物を読むのか」で、求められるのは人物です。「何人」を現代語の「なんにん」と同じ感覚で読むと、人数を問う文に変わります。今回は読みと場面が指定されているので、書物を読む人物を答える問いとして捉えます。

次の単元へのつながりと家庭での確かめ方

重要語の働きが捉えられると、思想の文章では理由と結論の関係を、史伝では人物の行動とその結果を追いやすくなります。漢詩でも、疑問詞や否定語をどう読むかによって作者の思いの受け取り方が変わります。語彙は、長文を読む前に別に済ませておく暗記項目ではなく、読解の途中で使い直す道具です。

家庭での5分の確かめ方は2つあります。1つ目は、表から「之・以・於」のような多義の語を1つ選び、例題を見ずに読みと働きを書く方法です。読みだけで終えず、「どんな語が前後にあれば、その働きになるか」まで書き、最後に本文と照合します。

2つ目は、例題の書き下し文を紙で隠し、白文から読む順を番号で示す方法です。その後に現代語訳を作り、主語・対象・手段にそれぞれ印を付けます。順番が正しくても対象が逆になっていれば、語法のところを復習します。お子さまの学習を確かめる保護者の方は、訳の正誤だけでなく「その語の前後のどこを見たのか」を聞くと、迷った箇所を把握しやすくなります。

個別指導では、読みの暗記が不足しているのか、主語と目的語の区別で止まっているのかを短文で確かめます。必要に応じて名詞・動詞の区別やレ点の読む順まで戻り、その後で同じ短文をもう一度訳してつながりを確認します。

まとめ

知らない漢字を見つけたときだけが、辞書や語彙表に戻る場面ではありません。知っている「之」を「の」と読むのか「これ」と読むのか迷った瞬間にも、文を読み直す手がかりがあります。前後の語を確かめ、働きを選び、その根拠を言葉にできれば、短い語が長い文の関係を支えることが実感できます。

訳が不自然になったら、滑らかな日本語に言い換える前に、誰の動作か、何が対象か、どこが比較の基準かへ戻りましょう。漢文の一字の意味は、その一字の両隣から確かめられます。

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